全日本選手権が開幕 準決勝進出は2艇にとどまる

漕艇

 早慶レガッタから約1ヵ月が経ったこの日、全日本選手権(全日本)が開幕した。社会人も多く出場し、国内では最もハイレベルとなる今大会。例年は全日本大学選手権後の10月に行われてきたが、今年はシーズンの序盤に開催されることによって準備期間が短くなり、学生にとっては難しい状況となった。しかし、男女のシングルスカルで準決勝進出を決めた早大は、敗者復活戦へと回った種目でも健闘が見られる結果となった。

 先陣を切ったのは3年目にして初の全日本出場をつかんだ浅利真美子(スポ3=秋田)である。女子シングルスカルでスタートから先頭に立つと、順調に艇を伸ばし他艇を引き離す。2着に10秒以上の差を付けるフィニッシュで余裕を持って準決勝進出を決め、早大にいい流れをもたらした。続く男子シングルスカルにはU19日本代表に選出されたルーキー・阿部光治(スポ1=愛知・猿投農林)が登場。「少し無理をしてでも(予選を)上がりたい」と序盤からトップに踊り出たが、後半は大下(慶大)の猛追を受ける。それでも冷静にスパートをかけて逃げ切り、無事に準決勝へと駒を進めた。

猛追してくる大下(慶大)の様子を伺いながらスパートをかける阿部

 順調な滑り出しを見せた早大だったが、その後は芳しくない結果が続く。女子ダブルスカルでは早大OGペアのトヨタ自動車に大きく引き離され、2着で敗者復活戦へ回ると、昨年の同大会と同じクルー編成となった男子舵手なしフォアも序盤の出遅れが響き4着に終わってしまう。そんな中、1年生のみで構成された男子舵手なしクォドルプルが健闘した。前半をトップで通過すると東レ滋賀と首位争いを繰り広げる。ラストスパートでは一歩及ばなかったものの、若いクルーが翌日以降に期待が持てるレース展開を披露した。また、2年生から4年生の5人で編成された男子舵手付きフォアは「いいリズムではあったんですけど、その中でもっと加速感というのを追求していかなければならなかった」(土屋夏彦、スポ4=山梨・吉田)との言葉通り、スピードを上げきることができず、敗者復活戦に回る結果となった。この日最後には、前月の早慶レガッタで大接戦を制した対校エイトクルーが登場。「アップまでは本当に良かったです」(徐銘辰、政経4=カナダ・セントアンドリューズ)と話したが、レース特有の緊張感に飲まれたのかスタート直後からこれまで準備してきたものとは全く違うリズムでの漕ぎになってしまい、他艇に先行を許す展開に。「750メートル付近で一瞬いいリズムが出せた」(徐)。1艇をかわしたものの、再びリズムが崩れ、前を行く東北大との差を縮めることはできず。3着でのフィニッシュとなり、敗者復活戦へと回った。表彰台を目標としているだけに悔しい結果となったが、「常に出せていたいいリズムが出せれば勝利は付いてくる」と、本来持っている力に不安はない。敗者復活戦から巻き返しを期待したい。

必死に前を追う男子エイト

 2艇が準決勝進出を決めたほかは悔しい結果が続いた初日。特に、本来の力を発揮できなかったクルーも多い。しかし、シーズン開幕から1ヵ月ほどで大舞台に臨むという難しいコンディションでありながら、今後の戦いぶりに希望が持てることもまた事実である。それぞれが課題を修正し、確実に敗者復活戦を勝ち抜いていきたい。

(記事、写真 加藤千咲)

結果

▽女子部

【シングルスカル】

【予選】

浅利真美子(スポ3=秋田)

8分25秒64 【1着 準決勝へ】

【ダブルスカル】

【予選】

S;中尾咲月(スポ1=三重・津)

B;宇都宮沙紀(商3=愛媛・今治西)

7分48秒75 【2着 敗者復活戦へ】

▽男子部

【シングルスカル】

【予選】

阿部光治(スポ1=愛知・猿投農林)

7分33秒75 【1着 準決勝へ】

【舵手なしフォア】

S:舩越湧太郎(社3=滋賀・膳所)

3:鈴木利駆(スポ3=静岡・浜松西)

2:中川大誠(スポ3=東京・小松川)

B:川田翔悟(基理4=東京・早大学院)

6分58秒46 【4着 敗者復活戦へ】

【舵手なしクォドルプル】

S:中島湧心(スポ1=富山・八尾)

3:森長佑(スポ1=福井・若狭)

2:菅原陸央(政経1=秋田・本荘)

B:越智竣也(スポ1=愛媛・今治西)

6分37秒50 【2着 敗者復活戦へ】

【舵手付きフォア】

C:山田侯太(商3=東京・早大学院)

S:岩松賢仁(スポ2=熊本学園大付)

3:土屋夏彦(スポ4=山梨・吉田)

2:牟田宜平(商4=三田学園)

B:船木豪太(スポ2=静岡・浜松北)

7分13秒77 【4着 敗者復活戦へ】

【男子エイト】

【予選】

C:徐銘辰(政経4=カナダ・セントアンドリューズ)

S:田中海靖(スポ3=愛媛・今治西)

7:坂本英皓副将(スポ4=静岡・浜松北)

6:髙山格(スポ4=神奈川・横浜商)

5:堀内一輝(スポ4=山梨・富士河口湖)

4:菅原諒馬(商4=東京・早大学院)

3:瀧川尚歩(法3=香川・高松)

2:藤井拓弥主将(社4=山梨・吉田)

B:川田諒(社4=愛媛・松山東)

6分27秒74 【3着 敗者復活戦へ】

コメント

C:徐銘辰(政経4=カナダ・セントアンドリューズ)

――早慶レガッタから約1ヵ月が経ちましたが、どのようなことを意識して練習してきましたか

実験しようとしていた海外の漕ぎがまだ早慶戦時点では完璧ではなかったんですね。ということで、しっかり仕上げようと課題を意識してもっと海外の漕ぎに近づけるように練習してきました。

――きょうまでの仕上がりはいかがでしたか

ここ最近仕上がって、きょうのアップまでは本当に良かったです。海外のリズムをしっかり出せるようになってそれが本番のレース前まではいいものが続いてきたんですけど、おそらくまだ甘かったですね。レース本番での実現性が足りなかったのかなと思います。ちょうど3日くらい前からいい感じだったので、レースでもこの通りやればできるだろうと思ったのが、スタートした瞬間、レースの緊張感が影響したのか全く別の漕ぎになって、いつもの漕ぎではなかったですね。

――序盤は他艇に先行されましたが、その後はどのように立て直そうとしましたか

ずっと立て直そうとしていましたが、結局最後までそのリズムでいってしまった感じでしたね。750メートルくらいでちょっといいリズムが一瞬出たんですけど、そこでまたそのリズムに乗れず変なリズムに陥ってしまったという感じです。あときょうは結構藻も浮いていて、レースが終わったあと自分の席の下のフィンを確認したら結構掛かっていたので、いつから掛かっていたのかはわからないんですけど、その影響もあったかもしれません。そういうのも含めて、自分たちのクルーらしさを全く出せなかった感じです。

――思っていた技術が出せなかった要因としてはレースの緊張感が大きいのでしょうか

そうですね。レースの緊張感に慣れていなかった。もっともっとどんな状況でもその漕ぎが出せるような再現性の面が足りなかった感じですかね。きょうは逆風も結構吹いていたんですけど、逆風とレースの緊張感がある中で同じものが出せるくらいの仕上がりではなかったのが原因だと思います。

――敗者復活戦はどのようなレースにしていきたいですか

もともと他の船を意識したっていいことがないので、あしたこそどんな結果になるかはわからないですけど、自分たちが常に出せていたリズムさえ出せれば勝利は付いてくると思うので、とにかく自分たちの動きに集中してもともと目指している漕ぎをしっかり出せれば、と思います。

3:土屋夏彦(スポ4=山梨・吉田)

――今回のクルーを組んでからどのくらい練習されましたか

早慶レガッタ後の5月の頭から1ヵ月くらいです。

――レースまでのクルーの仕上がりはいかがでしたか

2週間前に合宿に行ったんですけど、その時たぶん早大のどのクルーも完成度が低かったんですけど、その後の1週間で少しずつコツをつかんできて軌道修正できて、ある程度仕上がってきてはいるのかなと感じるんですけど、大会期間中も調整は必要だと感じています。

――今大会の目標は

最終日に出場というのが目標です

――きょうのレースプランは

スタートであまり出られないだろうと考えていたのでそこであまり無理をせず、他大に出られても焦らずに2000メートルでいいタイム、順位を出せるように、徐々にリズムをつくって落とさないようにやっていこうというプランでした。

――スタートは出られないだろうというのはこれまでの練習の感覚から感じていたのでしょうか

そうですね、ようやく感覚をつかみ始めてきたところだったので、スタートというのは洗練されていないとなかなか出られないですし、他の大学の情報を聞いてもすごくパワータイプが多いということだったので、出ることは難しいだろうということでした。

――徐々に上げていくという部分はいかがでしたか

練習に比べてはるかにリズムもよくて、徐々に上げていくというのはできたんですけど、やっぱりどこかでもう1ギア上げていかないと追いつけなかったので、少し後悔みたいなものはあります。いいリズムではあったんですけど、その中でもっと加速感というのを追求していかなければならなかったかなと思います。

――きょうの結果はどのように受けとめていらっしゃいますか

やはりすごく悔しいですけど、今すごく成長段階で大きな崩れもなく、リズムをつくっていくことはできたのできょうの課題を徹底できたら結果的にスピードにもつながるのではないかと思います。

――敗者復活戦への意気込みをお願いします

成長できているとは言えど、あす負けてしまったら元も子もないので、自分たちが培ってきたものを全てぶつけられるように全力で勝ちに行きたいと考えています。

阿部光治(スポ1=愛知・猿投農林)

――この種目に出場することが決まってからどのような練習をしてきましたか

1ヵ月前くらいに決まったのですが、U19日本代表の活動があってゴールデンウイーク明けまで違う種目に乗っていたので、短い期間で仕上げるために集中して臨みました。

――今大会での目標は

最終日まで勝ち進むことです。

――きょうのレースプランは

予選を上がると翌日のレースがなくなって有利になるので、少し無理をしてでも上がりたいなと初めから攻めていきました。

――後半は慶大の選手が追い上げてきましたがどのように対応しましたか

ずっと選手が見えていたので最後上げてきて、このまま逃げ切れるかなと思ったんですけど、厳しそうだったので最後はスパートするかたちでした。

――準決勝はどのようなレースにしていきたいですか

予想だとU19のメンバー何人かと当たると思うので、同世代に負けないように頑張りたいです。