台風が過ぎ去り、晴れ渡る空の下で開幕した今年の全日本大学選手権(インカレ)。雪辱を誓う早大漕艇部だが、『日本一』のタイトルの前には全国から集った精鋭たちが立ちはだかった。初日のきょうは計9艇が予選に挑み、そのうち4艇があさっての準決勝へ進出。残る5艇は、3日目以降への残留を懸けてあす敗者復活戦へ臨むこととなった。
(記事 石塚ひなの)
★エイトは僅差で敗北…。2艇が準決勝の舞台へ(男子部)
初日の予選には、男子部からは5艇が出場。準決勝進出を決めたのは2艇にとどまり、残りの3艇はあすの敗者復活戦へ回る。
舵手なしペアとダブルスカルは、惜しくも実力及ばず敗退。そんな中、早大を勢いづけたのは舵手なしフォアだった。スタートから隣のレーンの東大と抜きつ抜かれつのレースを繰り広げる予想外の展開となったが、焦ることなく設定していたペースを維持。「ラストも得意としている」と川田翔悟(基理3=東京・早大学院)が振り返るように、残り500メートル地点で奮起してラストスパートに成功。東大をなんとか差し返し、1着となった。また、続く舵手つきフォアは、終始余裕のある漕ぎを見せて他艇を圧倒。この組唯一の6分台を記録し、危なげなく準決勝進出を決めた。
やや課題の残る展開となった男子舵手なしフォア
そして最後に登場したのはエイトだ。スタートに成功したのは一橋大。早大、慶大がそれを追う展開となった。「なかなか(距離を)詰められなかった」(徐銘辰、政経3=カナダ・St.Andrew’s highschool)。懸命に一橋大を追うが、あと0.45秒差を縮めることはできず無念の敗戦となった。悔しさをバネに変えて、あすの敗者復活戦へ全てを懸ける。
花形種目であるエイトは惜敗してしまったが、2艇が準決勝進出を決めた男子部。『日本一』の称号を目指して、あすのレースに臨む。
(記事 下長根沙羅、写真 松下瑞季)
★逆襲を期す女子部は明暗くっきり(女子部)
9年ぶりの女王陥落から1年、再びの覇権奪回を目指す女子部。しかし、この日の予選は明暗がくっきりと分かれる結果となった。早大から始めに出艇したのは共にインカレ初出場となる舵手なしペアの宇都宮沙紀(商2=愛媛・今治西)と尾嶋歩美(スポ2=埼玉・南稜)。同種目で出場した東日本選手権では入賞を逃しており、その雪辱を果たしたいところ。しかし、先頭を行く法大に対し1500メートル地点で0.5秒差まで追いすがるも最終的には約1艇身差をつけられ、あすの敗者復活戦に回った。ダブルスカルの南菜月(教3=新潟南)と大崎未稀(スポ1=福井・美方)も序盤こそ一進一退のレースを展開したが、「相手が見えなくなって二人とも焦ってしまい、ズレが生じてしまった」(南)とリードを許した中盤以降、その差はみるみるうちに開き、終わってみれば1着と15秒差。完敗での2着となった。敗因として挙げた中盤でのレース運びを改善し、敗者復活戦での挽回を図りたいところだ。
確かな実力を発揮した女子舵手付きクォドルプル
一方、シングルスカルの米川志保(スポ4=愛知・旭丘)と、舵手付きクォドルプルはその実力を存分に見せつけた。数多くの代表経験を持つなど、女子部における絶対的エースの米川はレース開始直後から他の追随を許さず。2位と40秒近い差を付ける圧倒的なレース運びで、準決勝進出を決めた。女子の花形種目である舵手付きクォドルプルは漕手の4人が下級生とフレッシュなメンバーながら、アジア・ジュニア選手権優勝の実績を持つ宇野聡恵(スポ1=大分・日田)などを擁しており、クルーとしての実力は折り紙付き。レースでも得意とする第2クオーター以降で他艇を一気に突き放し、2着と約5艇身差の1着でフィニッシュ。覇権奪回へのカギとなる花形種目は上々の滑り出しを見せた。
(記事 林大貴、写真 石井尚紀)
結果
【予選】
▽男子部
【エイト】
C:徐銘辰(政経3=カナダ・St.Andrew’s highschool)
S:田中海靖(スポ2=愛媛・今治西)
7:飯尾健太郎副将(教4=愛媛・今治西)
6:鈴木大雅(スポ4=埼玉・県浦和)
5:伊藤大生主将(スポ4=埼玉・南稜)
4:金子怜生(社4=東京・早大学院)
3:坂本英皓(スポ3=静岡・浜松北)
2:藤井拓弥(社3=山梨・吉田)
B:尾崎光(スポ4=愛媛・今治西)
5分58秒90 【2着 敗者復活戦へ】
【舵手付きフォア】
C:菱谷泰志(スポ2=鳥取・米子東)
S:井踏直隆副将(文構4=東京・早大学院)
3:堀内一輝(スポ3=山梨・富士河口湖)
2:土屋夏彦(スポ3=山梨・吉田)
B:中川大誠(スポ2=東京・小松川)
6分48秒01 【1着 準決勝進出】
【舵手なしフォア】
S:舩越湧太郎(社2=滋賀・膳所)
3:川田翔悟(基理3=東京・早大学院)
2:高山格(スポ3=神奈川・横浜商)
B:鈴木利駆(スポ2=静岡・浜松西)
6分31秒99 【1着 準決勝進出】
【ダブルスカル】
S:岩松賢仁(スポ1=熊本学園大付)
B:船木豪太(スポ1=静岡・浜松北)
7分09秒84 【4着 敗者復活戦へ】
【舵手なしペア】
S:川田諒(社3=愛媛・松山東)
B:伊藤光(文構4=東京・神代)
7分23秒16 【4着 敗者復活戦へ】
▽女子部
【舵手付きクォドルプル】
C:澤田夏実(スポ4=東京・小松川)
S:安井咲智(スポ2=東京・小松川)
3:松井友理乃(スポ2=愛媛・今治西)
2:宇野聡恵(スポ1=大分・日田)
B:藤田彩也香(スポ2=東京・小松川)
7分06秒52 【1着 準決勝進出】
【舵手なしペア】
S:宇都宮沙紀(商2=愛媛・今治西)
B:尾嶋歩美(スポ2=埼玉・南稜)
7分59秒92 【2着 敗者復活戦へ】
【ダブルスカル】
S:大崎未稀(スポ1=福井・美方)
B:南菜月(教3=新潟南)
7分40秒19 【2着 敗者復活戦へ】
【シングルスカル】
米川志保女子主将(スポ4=愛知・旭丘)
7分48秒00 【1着 準決勝進出】
コメント
【男子エイト】
C:徐銘辰(政経3=カナダ・St.Andrew’s highschool)
――きょうのレースを振り返っていかがですか
余裕を持って効率よく漕いで、後半にしっかり力を残しながら漕ぐのがプランでした。少なくとも相手に並んでほしかったんですけど、ちょっと風に影響されたのか、2コアの時に重くなってしまって、距離を伸ばしてしまいました。その後、向こう(相手)がばてたのがちょっと見えて、コールを入れて(距離を)詰めようとしたんですけど、少し詰めてからがなかなか詰められなくて半艇身くらいの差でした。ラストスパートに入りましたが、最後までぎりぎりで詰められなかったんです。元々の計画だと、前で1キャンバスくらいの差で相手を焦らせたかったんですけど、思ったより2コアで落ちたのと、僕の決定力が足りなかったのかなという意識でした。ラストスパートをちょっと早めに入れたら良かったと思います。みんなが最後、力が余っている感じだったので。そこでコールを早めに入れたら勝てたんじゃないかなと思います。
――敗因は何だと思いますか
ちょっとまとまりが足りなかったことと、船が進むのをしっかり確認してから次の1本に行くべきでした。そこの意識が足りなかったです。100パーセント効率よく漕げたかと言われると、そうではなかったです。
――スタートで一橋大に出られたと思います。スタートに課題があったのでしょうか
スタートの課題はやっぱり、先ほど言ったように船の進みを感じながら漕ぐことが一番の課題かなと思います。元々のスタートだと、船をしっかり押す感じだったんですけど、きょうはレースだったからか最後の押すところを甘くしてしまったというのが遅れた原因だと思います。
――最後、ぎりぎりのところで一橋大を抜かすことができませんでした。どのようなお気持ちでしたか
完全に今回は自分の責任です。みんなをまとめて入るためにはコックスのコールが大事なんですけど、元々計画していたところでコールを入れてしまったのが原因だったと思います。もっと柔軟に対応してあそこまで最後出られた状態ならば、早めにスポットを入れるべきだったと思います。
――あすの敗者復活戦に向けて直すことはありますか
全体的にリズムを感じることです。最後にしっかり押して、船が進むのを感じてから余裕を持ちます。あとは、レースプランにもっと柔軟に対応します。
――あすはどのようなレースをしたいですか
きょうはやっぱり、2コアで少し落ちてしまったのが反省点なので、2コアでしっかり落ちないでスタートの勢いで続けることが一番の狙いです。
【男子舵手付きフォア】
B:中川大誠(スポ2=東京・小松川)
――まずきょうのレースプランを教えてください
スタートのところで力まずうまくスピードに乗せていって、乗ったらひたすら横に横にというプランでした。特にキャッチのところでトップで掴めなかったところと、フィニッシュですこしずれてしまったところは課題だったと思います。ひたすらずれないようにしていました。/p>
――レースプランと比較して実際漕いでみた感触はいかがでしたか
(クルーを)組んで浅いっていうのもあったんですけど、崩れちゃってもすぐカバーするところは上手くいったと思います。
――直前でメンバーの変更があって、意識してなにか変えた部分はありますか
スカル種目からスイープ種目になって、そこで動きは結構変わってしまうところがありました。でも変わった時にあと3週間しかないってことはわかっていたので、切り替えて1モーション1モーション良いものを積み上げて毎回自分が納得して終われるようにしようとは考えていました。
――今日のレースの良かった点を挙げていただけますか
中盤で落ちそうになってから自分たちで切り替えて切り替えてというところで、落ちないでいけたのは良かったと思っています。それでも落ちきってしまったところとか、ラストスパートをかけるところで少し力んでしまったかなというのはあるので、もう少し上手く脱力して楽にボートを進めていけたら良いと思います。
――課題もそこにあるということですか
そうですね。
――あさっての準決勝はどのようなレースにしたいですか
組んでる期間は短いんですが上手くなってはきていて、今日出たテクニカル的な課題、もう少し一本で遠くに船をはこぶっていうのと、中盤のところで上手くボートのスピードと自分の漕ぎをコントロールして、上手いレースに運んでいけたら良いと思います。ラストスパートは、スピード上がっていくところはコツが掴めたので、中盤のところでどれだけ相手が自分たちの見えるところにいて、レースできるかなっていうのがポイントになってくると思います。
【舵手なしフォア】
3:川田翔悟(基理3=東京・早大学院)
――きょうのレースプランは
まず持ち味のスタートで先手を取って、コンスタントで落ち幅を少なくして、ラストも得意としているのでその分コンスタントで多少出られていても差し返せるという自信はあったので、とりあえずコンスタントで置いて行かれすぎないようにしてしっかり(レートを)上げていくというプランでした。
――実際のレース展開はプランと比較していかがでしたか
展開自体は狙っていたものが出せたのでそこはよかったと思います。
――最後かなり東大と競っていましたが視界には入っていましたか
僕の視界に入ったのは本当に最後100メートルくらいだったんですけど、しっかり後ろ2人の視界には入っていたみたいで、結構差が詰まっているというような声が聞こえたので、そこで頑張れた感じですね。
――競る展開は想定内であったということでしょうか
ちょっと想定外というか、本当はコンスタントで差を広げていけるかなと思っていたんですけど、思った以上に東大に行かれてしまって。ただそこで焦らず粘れたので、あまり差をつけられずにラストスパートまで行けたのでそこはよかったかなと思います。1艇身くらい(東大に)出られたんですけど、ラストスパートまでに1艇身以内にいれば差し返せるという計算はあったのですが、まさか東大にあそこまで行かれるとは思っていなかったです。
――差し返せる計算の内ではあったけれども思ったより出られてしまった、という感じですか
そうですね、はい。
――きょうのレースを振り返って良かった点と課題あれば教えてください
良かった点は、コンスタントで出られても焦らずに自分たちのペースを守れて、それが結果的にいいラストスパートにつながったと思うのでそこですね。課題としては、そのコンスタントでもうひと伸びというか、もう少し楽に船を進められたかなと思ったので、そこは準決勝までに修正したいかなと思います。
――準決勝ではどんなレースをしたいですか
今回1着上がりの中でタイムが一番遅いんですけど、1着上がりの1位タイムと、敗復(敗者復活戦)上がりの1位タイム4位タイムと当たることになるので、結構予選の組み合わせが厳しかった組で敗復に回ってしまったクルーが(敗者復活戦を)1位のタイムで上がってくると、厳しいレースになってくるので、特別に新たにやることはないんですが、今回出た課題を修正して自分たちができる最高の漕ぎができればいいかなと思います。
【舵手付きクォドルプル】
S:安井咲智(スポ2=東京・小松川)
――8月上旬に行われた対談からきょうまでの1カ月間はどのような取り組みをされましたか
前回インタビューを受けた時は乗り始めてから2週間しか経っていなかったんですけど、元から船がよく進むクルーだったので、練習の中でムラが出ないように、いい日と悪い日を出さないようにしました。悪い日も悪い悪いと言っているだけではなくて、悪い中でもどういったところを改善していけたかというところにちゃんと着目するようにしてやってきて、感情に左右されなかったり、自分たちの中で最後はいいかたちで終わるということができた練習を続けてこれたと思います。
――レースに臨むにあたり、何かプランはありましたか
スタートの第1クオーターが結構流れていて、自分たちもそれに流れてスピードを出し過ぎてしまうと、その後にだんだん自分たちも疲れてしまって、得意の第2クオーター、第3クオーターのところでだれてしまうかなというのがあったので、そこはマックスて第1クオーターから出し過ぎないようにしていって、得意の第2、3クオーターはいつも通り漕いで、ラストもしっかり上げ際で上げるというのでやってきました。
――実際に漕いでみていかがでしたか
スタートで出過ぎないで、だれやすい第2クオーターの始めのところでだれずにできたのがすごく良かったです。なのでそれが良かった分、得意の第2、3クオーターの意識が薄れてしまったので、そこが今回の課題です。もう少しレートが速いピッチでいけたら、自分たちの目指す理想のタイムで通過できたと思うので、そこを次はみんなでコールに反応して、上げ際でしっかりと上げるというのができたらと思いました。
――対談時にストロークとしてしっかりとレートを刻んでいきたいとおっしゃっていましたが、そこが課題ということですね
まだ今回のがばっちりはまったというわけではないので、もう少し上にいけるかなという印象があります。
―― 準決勝以降ではどのようなレースをしていきたいですか
きょうの予選が課題のところができたからといって、準決勝、決勝でできるという保証は全くないので、そこの今までの課題だった第2クオーターの入りと、スタートで出し切らないというのは意識しつつ、自分の得意分野をもっと大胆に見せていけるようなレース展開をして、自分たちが納得できるようなレースをして結果を残せたらなと思います。
【女子ダブルスカル】
B:南菜月(教3=新潟南)
――きょうのレースプランはどういったものだったのでしょうか
自分たちのクルーの強みが大きい漕ぎで大きく進めるっていうところだったので、リズムを淡々と刻んで、かつダイナミックに進めていけたらいいかなと思っていました。
――その大きい、ダイナミックな漕ぎというのはきょうの実際のレースではいかがでしたか
最初、前半は悪くはなかったんですけど、後半になると急に崩れてしまって、なかなかうまく進めることができなかったかなと思います。
――後半になって崩れてしまった原因というのはどこにあると思いますか
前半までは隣が見えていたんですけど、離されてから急に見えなくなってしまって。二人とも焦ってしまって、そこでズレが生じて(漕ぎが)重くなってしまったかなと思います。
――そういった場面での大崎選手との連携はいかがでしたか
結構私たちはブレードを(水に)入れるキャッチの部分を練習から意識していて、そこはレースでも終始意識できていたんですけど、漕ぎ始める部分で詰めが甘いかなっていう部分があって、大きいズレはそこから生じてしまったかなと思います。なかなか1本で進めることができなかったかなと思います。
――ケガの方がレースに影響することはあったのでしょうか
そこはあまりレースには出なかったかなと。大会に近づくにつれてだんだん練習量も落ちてきて、ケガの方も回復してきていたので。なのであまり大きく影響は出なかったと思います。
――きょうのレースを振り返って、あす以降に生きてくる部分はありましたか
スタートは結構軽いリズムで入れたのでそこは次のレースにつなげられるかなと思います。
――あすのレースまで時間はあまり残されていませんが、どういった部分を改善していきたいですか
前から押していく部分をもう一回大崎と確認して。そこで中盤しっかり持ちこたえて、最後にもう一段階ギアを上げていけるようなレースにしていきたいなと思います。
――あすの敗者復活戦に向けて一言お願いします
前半から攻めるのもそうなんですけど、後半で持ちこたえて、タイムでも準決勝に上がったクルーにプレッシャーをかけられるように。準決勝に向けた敗者復活戦にしていけたらいいかなと思います。