全日本大学選手権(インカレ)で王座奪還に挑む女子部。今年の舵手付きクォドルプルは、コックスの澤田夏実(スポ4=東京・小松川)以外は、U23日本代表の安井咲智(スポ2=東京・小松川)を筆頭に、松井友理乃(スポ2=愛媛・今治西)、藤田彩也香(スポ2=東京・小松川)、宇野聡恵(スポ1=大分・日田)の下級生クルーとなった。女王ワセダの復活の起爆剤となることが期待される四人に、インカレを前に話を伺った。
※この取材は8月7日に行われたものです。
「完全優勝することに意味がある」(松井)
層の厚い2年生の中で着実に力を伸ばしている松井
――夏休みが始まりましたが、現在はどのような練習をされていますか
松井 私たちは安井がU23日本代表の方で結構長い期間いなかったので、乗り始めてから1週間くらいなんですけど、まずは低レートで全員の漕ぎを合わせることを意識してやっていて、基礎となるレースづくりみたいなことをやっています。
――コンディションはいかがですか
安井 始めたばかりで精神的にも身体的にもそんなに疲労感はないかなという感じです
――では前期の振り返りに移りますが、松井選手は早慶戦で女子エイトの一員として出場されて勝利を収めました
松井 エイトもスイープ(オール)も初めてのことだったんですけど、早慶戦に向けた練習の頃から、早慶戦後では自分の考え方とか感覚が結構変わって、早慶戦を経験したからいろいろなことがいい方向にいったかなと思います。インカレ優勝を目指す段階的なステップとして、すごくいい経験でした。
――早慶戦の時の雰囲気はいかがでしたか
藤田 早大は早慶戦からシーズンが始まるので、男女で完全優勝だったので、部の雰囲気も良かったですし、いいスタートが切れたかなと感じました。
――男子部と女子部の垣根を超えて盛り上がった感じですか
松井 女子部が勝っても男子部が勝たないとどよんとなるし、完全優勝することに意味があるので、どちらかだけでもあまりうれしくないです。
「まだまだ強くなりたい」(宇野)
1年の宇野にとって今回が初のインカレとなる
――安井選手はジャパンカップでナショナルチームの一員として早大OGの方と戦いました
安井 自分の性格的に抜けているところがあって、ちょっと失敗してしまったりした場合に、これだからと言われてしまうのが嫌で、OBやOGの方がいるので、ヘマしないようにと思っています。試合に関しては、そんなにOGだからというのはなかったんですけど、一緒に出た、OGであり、今日本のトップで活躍されている方とレースができるのはすごくありがたいことだなと思いました。
――先日行われたU23の世界選手権はいかがでしたか
安井 このレースをする前まで、自分がいいなと思うようなレースができずに納得がいっていなくて、最後の締めのレースでいいレースができたことは、気持ちよく終われて、インカレに向かって頑張ろうという気持ちになりました。
――安井選手のようなナショナルチームの方がチームメイトにいることは刺激になりますか
松井 去年私と藤田もそこを目指していて、自分たちは入れなかったんですけど、二人とも今年は絶対に入るという気持ちで、安井がいない間も練習していましたし、安井が得てきたものをしっかりとインカレで発揮できるように、私たちもいない間にしっかりとやらないといけないなという気持ちで練習をできていたので、すごくいいかたちでできたと思います。
――宇野選手はこのような先輩方と日々練習されていていかがですか
宇野 高校生と大学生では漕ぎの感じで求められるところが全然違かったりするんですけど、そこで分からないところとかを教えてくれるので、結構練習はきついんですけど、嫌なきつさではないです。楽しんで追い込めているので、助かっています。
一同 (笑)。
――東日本選手権ではシングルスカルに出場されましたが、大学に入学されてからのレースはいかがでしたか
宇野 まだまだ技術的に足りない部分とかがあって、後半とかにそこでの差が出て、ちょっとずつ差が開いてしまうなと実感して、まだまだ強くなりたいと思えるいい機会になりました。
――藤田選手と松井選手は舵手なしクォドルプルに出場されましたがいかがでしたか
藤田 予選で負けたという結果だったんですけど、他クルーを見ていて、冬からそのメンバーで乗っていて、仕上がってきているなと感じて、クルーでの統一感が割とそろってきているなと感じました。
――チームとしてこの前期シーズンを振り返っていかがでしたか
安井 早慶戦の時はみんなが早慶戦に向かっていたんですけど、それからだんだんクルーが細かくなって、それぞれの種目になってきて、力が分散するわけではないんですけど、まだ完全にみんなが余裕があるわけではなくて、自分たちのクルーで精一杯な状況です、女子部でインカレに向けて固まっていけているかと言われるとまだその段階ではないので、これからだなと思います。
――前期シーズンでご自身で成長したと感じる点はありますか
安井 ケガをしやすくなってしまったり、一人で孤独感を感じてしまうので、一人でずっと漕いでいるのが心身共にあまり得意ではなかったんですけど、前期はシングルでほとんど漕いでいて、それがあったからこそ一人で努力ができるようになりました。
松井 これという大会というよりは、自分が1年生の時は自分に自信もなかったし、結果もあまり出なかったので、焦っていて、悪循環みたいな感じだったんですけど、いろいろと割り切って練習ができるようになって、自分を客観視できるようになったので、気持ちの面でも練習に対する取り組みが変わってきました。自分の状態的には常にいい状態で練習に取り組めていると思います。
宇野 入学した時に比べたら、単純に漕ぎがうまくなったと思います。あとは、毎回の練習でちゃんと集中して最後までメニューをこなせるようになりました。最初はよそ見がすごくて、集中できなかったです…(笑)。
藤田 1年生と乗る機会が結構あって、いろいろと教えなければいけないことがあったので、今までは自分で精一杯だったところがあったんですけど、しっかりとクルーのことを考えられるようになったかなと感じます。
――何か課題は見つかりましたか
安井 クルーとしてはまだ1週間しか乗っていなくて、まだベースの段階ではあるんですけど、ベースの段階なので、一緒に船を進ませるというのをもう少し精度を高くしていくことが課題かなと思います。
松井 クルーとしてはこんな感じで、もっと個々の体力面とかを根本的に上げていけたらいいなと思います。
宇野 技術的なことはまだまだたくさんあるんですけど、まだ漕ぎに無駄がたくさんあったり、もっと無駄なく楽に船を進められるようにできるかなと思います。
藤田 技術的な面はもちろんありますし、『筋量増加』が課題です(笑)。
「みんな近い感じ」(藤田)
2年生にして初めてのインカレとなる藤田。懸ける思いは人一倍だ
――ここからはプライベートな話などをしていきたいと思います。今年の女子部の雰囲気はいかがですか
安井 1年生の時に4年生に遠い距離かなと思っていたんですけど、今年の4年生とはたくさん何気ない話もできる雰囲気があると思います。
藤田 みんな近い感じですね。
――部員同士で遊びに行かれたりはしますか
安井 大体遊ぶのはボート部の誰かとが多いですね。
――宇野選手は早大に進学を決められた理由はありましたか
宇野 私は多分性格的に寮では生活ができないので、一人暮らしがとても魅力的でした。
松井 私も寮は嫌でした。
――安井選手と藤田選手と澤田選手は小松川高出身ですが、高校の先輩がいることは大学選びに影響はありましたか
安井 夏実さんがいるというのは結構ありました。
松井 私はもう引退された今治西高の先輩に憧れていたので入りました。
――2年生になられて意識の変化はありましたか
安井 さっきも抜けているところがあるという話をしたんですけど、頑張ってそういうところを直そうと思っています。
――直っているように見えますか
安井 直っていると言って(笑)。
松井 多少は…(笑)。
――お二人は何かありましたか
松井 心境の変化はあまりなくて、ちゃんとけじめをつけるところはやってほしいんですけど、自分がやろうと思ったらみんなできると思うので、先輩後輩みたいなのはあまりないです。
藤田 船の上ではワセダの漕ぎを伝えなきゃと思うんですけど、普段は自分もそんなに変わったところがなくて、しっかりとやることをやるようにはしています。
――ちまたでは『平成最後の夏』が話題ですが、今年の夏に何かやりたいことはありますか
安井 最近女子部の中ではパーマをかけるというのがはやっていると思います(笑)。
――髪型の指定はないんですか
安井 女子はそんなにないです。(松井の髪を指して)こんな感じだったら全然大丈夫です(笑)。
松井 きょうのために昨日やってきたんですよ(笑)。
宇野 私は4月の終わりにかけたんですけど、すぐに取れました(笑)。
松井 入学した時にすごく金髪で入ってきたら、さすがに怒られました。
――他にやりたいことはありますか
松井 海に行きたいよね。
宇野 海に行きたいって言ったら、本栖湖のオフの日に一人で泳いでいたらって言われました(笑)。
松井 でも関東の海は汚いよって言われました。ここ(松井と宇野)は愛媛と大分なんですけど…。
藤田 泳げるけど、透明とかではないよね。
一同 (海の話で盛り上がる)
安井 もう合宿が始まってしまって、1日フルで練習がないのがきのうが最後だったのではないかという感じだったので、みんな行きたいところに行ったりしていました。
――ちなみに何をされましたか
宇野 私はそんなに考えていなくて、昼まで寝ていたんですけど…(笑)。1日家でグダグダしていようと思ったんですけど、最後のオフって気付いた時に損するなと思って、同期の子が1人暇と言っていたので、4時くらいから『コード・ブルー』を見に行きました。
藤田 古着屋に行きました。古着が好きなわけではないんですけど、インスタグラムで『西海岸』という古着屋があって、めっちゃおしゃれで…。
松井 下北沢?
藤田 神奈川県。めっちゃ遠くて2時間かかったんですよ。おしゃれな服多かったんですけど、ズポンが入らなかったです…。
一同 (笑)。
藤田 メンズだとウエストがすごいことになって、レディースは太ももが通らなくて、中間が欲しいですね…。結局Tシャツくらいしか買えなくて、逆にいい思い出になりました(笑)。
――個人的に気になることなんですけど、暑さ対策などは何かされますか
安井 水分は絶対に1リットル以上ですね。去年がそんなに暑くなかったので、あまり具体的な策はないんですけど、塩あめとかを持っていったりしています。
一同 帽子をかぶったり、長袖を着たりですね。
松井 私は帽子をかぶらない派だったんですけど、暑すぎてかぶりました。
――夏場の食生活で何か気にされていることはありますか
藤田 バナナ腐りやすくない?
松井 彩也香のバナナはバッグの中で…。
藤田 バナナの腐るスピードが速くなって、1日に何本も食べなきゃいけなくなりました(笑)。
「王座奪還」(安井)
U23日本代表として世界選手権を戦った安井。活躍に期待だ
――こちらは新しいクルーだということですが、編成が決まるまでの経緯を教えてください
安井 東日本選手権で大体スイープ(オール)を漕ぐ組とスカル(オール)を漕ぐ組がいて、その二つは別で選考なんですけど、一応シングルスカルでみんなで選考して、順位付けして上から順番に切っていった感じですね。あと、他の大会に出る人を考慮したりとか。
――実際に練習してみた感触はどうですか
松井 感覚的にはすごく良いかなと思っています。元々宇野以外のメンバーと、あと一人先輩で去年の大会に出ていたんですけど、その時から感覚自体はすごく良かったです。そこからさらに半年ぐらい経って個々に力がついてきた分、みんな似た体型で似た性質の漕ぎなんですけど、それが結構、今日とかの練習でもすごくうまくはまり始めてきました。最終的にこのくらいのスピードを出したいなという感覚にいける自信は多分全員持っていると思うので、すごく感覚的にはいいクルーだなと思います。
――このクルーの強みは何ですか
藤田 勢いがあるメンバーかなと思います。なんか、なんて言うんだろう?
安田 なんか、活発的。ずっと水上とかでも静かじゃなくて、誰かしら喋るみたいな。
宇野 若さ?
藤田 若いのかな?(笑)
松井 若い若い。
藤田 エネルギッシュ!って感じですかね。
――漕ぎだけではなく雰囲気もということですか
藤田 あー、確かに。
松井 雰囲気は、結構みんなで良くしようという感じがあるので、いいかなと思います。
――逆に課題だと感じることはありますか
安井 小さいところ?
宇野 小さい!背が、他のクルーに比べて多分私たちのクルーだけ平均身長が160センチ…。
藤田 ない?
宇野 ないので、無駄な漕ぎをしてしまったら身長がある人たちにはやっぱり敵わない…。だから、そこです。
――その他に、今後どのように仕上げていきたいという目標はありますか
松井 最終的には、確実にインカレ優勝できるようなクルーをつくることが目標というか、しないといけないなと思います。でもこのクルーは多分、全員がピタッとはまれば個々の力以上の力が出る四人かなと思うので、そういう個人の力を全員が引き出せるように、とにかく四人で合わせるっていうところと、毎回の練習で常に艇速を求めて練習していくっていうところをしっかりベースとして仕上げていきたいかなと思います。
――昨年のインカレでは女子部が総合9連覇を逃しましたが、それを受けて今年の意気込みに何か変化はありますか
安井 王者奪還みたいなところはありますね。総合優勝は固めて、目標に向かって女子部全員で頑張ろうっていう雰囲気があります。
――部としての今年の目標はなんですか
松井 (インカレ優勝、舵手付きクォドルプルと舵手付きフォアで優勝、シングルスカルとダブルスカルと舵手なしペアで表彰台、という掲示物を指して)あれですね。
――ではこのクルーとしての目標は何ですか
松井 インカレ優勝。そしてあわよくばこのまま新人優勝したいなって思ってます。
――とりわけ意識している他大クルーはどこですか
一同 メイジだよね。
――理由は何ですか
安井 U23日本代表の4年生の先輩がおそらく乗ってくるっていうのと、1年生も2人くらい乗っけてくるんじゃないかみたいな感じで、平均年齢が同じぐらいになるだろうということです。あとは、去年優勝取られちゃったので、それもあるかなって思います。
――今後どのような漕ぎをしていきたいですか
安井 私はストロークでレートとリズムをしっかり刻む担当なので、決められたレートでみんなが漕ぎやすいリズムを作っていければなと思います。
松井 とりあえず3番は結構エンジン的な感じのところもあるんですけど、多分このクルーはそれ以上に、安井のリズムとかっていうのを後ろに伝えることが大事になってくるかなって思います。だからしっかり個々のリズムをつくって、全員が漕ぎやすいリズムにして全員が追い込める環境をつくりたいなと思います。
宇野 まだ先輩たちに比べると効率の良い漕ぎができてないところがあるので、少しでも無駄がなく漕ぐところと、あとは前から伝わってきたリズムをちゃんと後ろの彩也香さんまで伝えるところ。そして思い切り自分のパワーを出して艇速につなげていけるようにします。
藤田 自分の漕ぎの課題が結構多いので、効率の良い無駄のない漕ぎを詰めていくところと、あとバウなので、全員で漕いでる一体感というのを出していけるように、後ろから目で見て、フィードバックしたり、感覚的なところもしっかり全員で擦り合わせていけるようにしていきたいです。
――最後に、インカレに向けての意気込みをお願いします
安井 早慶戦は勝ってますけど、まだ大学に入ってからこういうたくさんのクルーが出る試合で優勝がないので、優勝、金メダルっていうところに執着して、最後まで集中切らさずやっていきたいと思います。
松井 まずは一緒のクルーに乗っている全員が自信を持って確実に優勝できるっていうくらいの指針と艇速を出して試合に臨めるようにしたいなって思います。それでしっかり優勝を持ち帰ることができたらいいかなと思います。
宇野 せっかく先輩達とも乗せてもらってるので、どんどん自分も成長していけるような練習を積んで、最後の試合では1年生が乗ってると思われないようなうまい漕ぎができるようになって、そこで優勝にも貢献したいなって思います。
藤田 優勝する、勝つことにこだわって、毎日、毎回の練習しっかり自分たちを追い込んで、本当に優勝できる!完璧だ!って思えるくらいの練習をして、自信持って優勝したいです。
――ありがとうございました!
(取材・編集 石井尚紀、犬飼朋花)
ひょっこりはんにインスパイアされたという1枚です!
◆安井咲智(やすい・さち)(※写真右)
1998(平10)年7月24日生まれ。158センチ。東京・小松川高出身。スポーツ科学部2年。U23日本代表の一員として、日の丸を背負い世界の舞台で戦った安井選手。前期はシングルスカルが中心でしたが、舵手付きクォドルプルではストロークとして安定した漕ぎを見せてくれるはずです!
◆宇野聡恵(うの・あきえ)(※写真中央手前)
1999(平11)年12月18日生まれ。162センチ。大分・日田高出身。スポーツ科学部1年。クルーで唯一の1年生として、先輩たちにかわいがられている様子がうかがえた宇野選手。周りは先輩ばかりという環境ですが、それに臆すことも慢心することもなく、自分に足りないことは何でも吸収しようという前向きな姿勢が印象的でした!
◆松井友理乃(まつい・ゆりの)(※写真中央左)
1998(平10)年12月30日生まれ。159センチ。愛媛・今治西高出身。スポーツ科学部2年。春の早慶戦では女子エイトの勝利に貢献し、一回り成長を遂げた松井選手。3番として推進力となることはもちろん、安井選手のリズムを伝える役割も担います!
◆藤田彩也香(ふじた・さやか)(※写真左)
1999(平11)年1月30日生まれ。159センチ。東京・小松川高出身。スポーツ科学部2年。バナナをバッグの中で腐らせてしまったお茶目なエピソードを持つ藤田選手。艇の最後尾から若いクルーを盛り上げて、インカレ優勝へと導いてくれるでしょう!