3日間を勝ち抜いた者だけが艇を出すことのできる大会最終日。早大勢唯一決勝に残った男子舵手なしペアAが社会人を抑え見事優勝を果たし、早大陣営は歓喜に沸いた。そして順位決定戦に臨んだ男子舵手なしフォアは組2着につけ、6位入賞と健闘。出艇数は多くなかったものの、夏の覇権奪還へのビジョンが見えてきた今大会となった。
10時10分、多くの観客が見守る中男子舵手なしペアの決勝が始まった。金子怜生(社4=東京・早大学院)と尾崎光(スポ4=愛媛・今治西)が乗る早大Aは、社会人の強豪・東レ滋賀の隣の3レーン。最初の500メートルの通過は0.4秒の差で東レ滋賀がわずかに先行する展開に。しかしこの展開は早大にとって想定済み。強みとするコンスタントで視界に入る範囲内にリードを抑え、相手が落ちてくるタイミングを狙って前に出るプランを立てていたからだ。そうは言っても相手は社会人クルー、そう簡単につけ入る隙は見せてくれない。1秒ほどのわずかな艇差を詰め切れないまま、早大応援部と観客の応援が響き渡るラスト300メートルへ突入。最後の最後まであきらめない勝利への執念がわずかに相手を上回り、一瞬早く早大Aがゴールラインを通過。見事金メダルをもぎ取り、2012年の女子舵手なしクォドルプル以来の6年ぶりの優勝カップを早大にもたらした。レース後、バウの尾崎は「正直ゴールした時信じられないというか本当に1番なのかなと思って、率直に嬉しかった」と笑顔で語った。1カ月前の隅田川、早慶レガッタの対校エイトで栄冠を手にした二人が、戸田で新たなタイトルを手にした瞬間だった。
喜びをあらわにする男子舵手なしペアA
そのおよそ2時間後、男子舵手なしフォアの順位決定戦が行われた。前日の準決勝で惜しくも決勝進出を逃したこのクルーは、予選よりも準決勝、そして準決勝よりも順位決定戦とレースプランを変え精度を上げて臨んできた。スタートで仙台大の先行を許したが、コンスタントに入ってからその差を着実に縮めていく。しかし最後は0.6秒差で逃げ切られ、2着でフィニッシュ。全体6位となり、入賞を果たした。「勝てない相手ではないというつもりでやっていたので、実際コンマ差のレースになって悔しい」(高山格、スポ3=神奈川・横浜商)。クルーは変われど、夏に再戦することの避けられない相手だ。しっかりとレベルアップし、次回は雪辱を果たしたい。
接戦を演じた男子舵手なしフォア
全日本軽量級選手権で早大から優勝種目が出たのは2012年以来。男子部に限れば2000年代に入ってから金メダルは初めてとなる。この快挙によって、早大の『日本一』という目標に向けた取り組みが間違っていなかったと証明されたと言えるだろう。開幕から明るい話題が続き、夏に向けて最高のシーズンの予感がする。
(記事、写真 石塚ひなの)
男子舵手なしペアA
★早大OG、現役選手が表彰台を席巻(ジャパンカップ国際レガッタ)
早大OG二人と共に表彰台に登った安井
前日と同様、朝の予選の結果を受けシングルスカルの伊藤大生主将(スポ4=埼玉・南稜)は順位決定戦B、ダブルスカルの米川志保女子主将(スポ4=愛知・旭丘)とシングルスカルの安井咲智(スポ2=東京・小松川)は決勝に挑んだ。ジャパンカップ2日目には惜しくも表彰台を逃した安井は、きょうの決勝では早大OGの榊原春奈(平28スポ卒=現トヨタ自動車)、大石綾美(平26スポ卒=現アイリスオーヤマ)に次ぐ3着につけ、二人と共に表彰台に登った。大学2年の若きホープが日本代表候補として活躍を見せたことは、早大漕艇部のみならず日本のボート界にとって嬉しいニュースとなったに違いない。
(記事、写真 石塚ひなの)
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結果
【決勝】
▽男子部
【舵手なしペア】
早大A
S:金子怜生(社4=東京・早大学院)
B:尾崎光(スポ4=愛媛・今治西)
7分22秒90 【優勝】
【順位決定戦】
▽男子部
【舵手なしフォア】
S:飯尾健太郎副将(教4=愛媛・今治西)
3:高山格(スポ3=神奈川・横浜商)
2:鈴木利駆(スポ2=静岡・浜松西)
B:藤井拓弥(社3=山梨・吉田)
6分49秒59 【2着 全体6位】
【ジャパンカップ国際レガッタ】
【予選】
【男子シングルスカル】
ナショナルチームC
伊藤大生主将(スポ4=埼玉・南稜)
7分47秒69 【2着 順位決定戦Bへ】
【女子ダブルスカル】
ナショナルチーム
米川志保女子主将(スポ4=愛知・旭丘)
中条彩香(デンソー)
7分55秒02 【1着 決勝へ】
【女子シングルスカル】
ナショナルチームB
安井咲智(スポ2=東京・小松川)
8分41秒21 【1着 決勝へ】
【順位決定戦】
【男子シングルスカル】
ナショナルチームC
伊藤大
7分39秒39 【3着 全体7位】
【決勝】
【女子ダブルスカル】
ナショナルチーム
米川
中条(デンソー)
7分20秒44 【1着 優勝】
【女子シングルスカル】
ナショナルチームB
安井
8分16秒96 【3着 全体3位】
コメント
【男子舵手なしペアA】
B:尾崎光(スポ4=愛媛・今治西)
――優勝おめでとうございます。まずは率直な感想をお願いします
自分自身初めての日本一ということで、正直ゴールした時信じられないというか本当に1番なのかなと思って、率直に嬉しかったです。色んな思いがこれまであったので、すごくそれが報われたかなと感じました。
――きのうの準決勝を踏まえてレース前に意識していたことはありますか
昨日の準決勝は予選のときとレースプランというのは少し変更して、常に一定のペースでできるだけ落ちを少なくしようということをテーマに挙げていました。風もあって、全体的なタイムというのは遅くなってしまったんですけど、そこのタイムキープをきのうはしっかりすることができたので、さらにプラスしよう、最初から攻めてそのタイムをキープしようと意識してきょうは漕ぎました。
――実際のレースを振り返っていかがですか
隣の東レ滋賀さんに先行されるというレースを想定していて、自分たちが見える範囲でついていこうというのを課題として挙げていました。その通りのレース展開を運ぶことができたのではないかと感じていますが、やはり社会人選手の粘りもあってなかなか差すことができなかったので、最後の最後まで諦めずに漕ぐことによって最後は差すことができたのかなと思います。
――ストロークの金子怜生選手(社4=東京・早大学院)との相性はいかがでしたか
金子とペアを組むきっかけになったのが、早慶戦のときの対校エイトの選考だったのですが、そのときに3回という限られた練習時間だったんですけど、いいものを出すことができて、そこですごく相性はいいかなと感じていました。練習を通してさらに積み重ねていくことによって、その感覚は間違っていなくて、お互いに似たものを持っていて、お互いの良いところを最大限引き出すことができたかなと思います。
――この大会を通じて得られたものがあれば教えてください
自分自身大学に入ってからすごく苦しい時期を過ごしていて、その中で腐らず努力を続けてきて、ずっと目指していた日本一ということをここで達成することができて自分の中で新しく変わることができたというのを実感しました。それによってさらに高い目標を自分の中で明確にすることができたというか、夢であったものが実現できるものになったかなと感じました。
――次回の東日本選手権、そして夏の全日本大学選手権(インカレ)に向けて意気込みをお願いします
どのようなクルーになるかというのはまだ全然わからないのですが、監督も良く言っているのですが今までワセダがやってきたことというのは間違っていなかったというのは感じていて、それを体現することができればいいのではないかと思っています。インカレ、全日本(全日本選手権)の舞台に立って、金メダルを掲げたいと思います。
【男子舵手なしフォア】
3:高山格(スポ3=神奈川・横浜商)
――予選と準決勝でプランを変更されたとお聞きしたのですが、きょうはいかがでしたか
きょうもプランを少し変えて、スパートの時間を少し長くしようということで入ったんですけど、あんまり固定はせずに、ある程度このくらいの距離(でスパートをかける)というのはあるんですけど、ここで絶対というわけではなくて、状況を見てバウの藤井(拓弥、社3=山梨・吉田)から声を出して変えていけるというプランにしていました。
――実際のレース展開はいかがでしたか
プランとしては自分たちのやりたいことはしっかりできたので、そこに対してはポジティブな結果だったかなと思っています。
――風が強いレースが多かったように見受けられましたが、風の影響はありましたか
今回は結構風の影響を受けてしまった部分が多くて、急に吹いた風であったりそれによってできた波で自分たちが少しずつずれてしまったので、そこで崩してしまったりとか蛇行してしまったりとかはあったので、そこは影響されてしまいました。
――きょうのレースでもということですか
きょうのレースでもですね。風が強いところに対応しきれなくて、風が強いのはわかってはいたんですけど(4人が)バラバラになってしまうシーンはありました。
――予選や準決勝と比較してきょうのレースはいかがでしたか
タイム的にはそんなに離れていないレースだったとは思いますが、若干仙台大が飛び出ているかなと思っていて、勝てない相手ではないというつもりでやっていたので、実際コンマ差のレースになって悔しいですけど、やりたいことはしっかりできたレースではあったと思います。
――この大会で得られたものは何ですか
夏に向けて東日本(東日本選手権)もあってインカレ(全日本大学選手権)へ…とちょっとずつ積み上げていく1段目にはなったと思うので、ここでやれたことをしっかり積み上げて東日本でもう一つ積み上げて、インカレ、全日本(全日本選手権)で結果を残せるようにという土台にはなったと思います。
――次回の東日本に向けて目標があれば教えてください
色んなことができる時期だと思うので、そこまでやれることは試して、しっかり夏に向けての大会にしたいです。