2年連続の完全優勝を果たし、桜橋が歓喜に沸いた早慶レガッタから2週間弱。早慶戦には出場しなかったメンバーが、戸田の地でまた一つタイトルを手にした。早大からの出艇は男子エイトの1艇のみにとどまったが、下級生を中心としたクルーで見事優勝を果たした。
男子エイトは早大、成蹊大、日大の3校のみのエントリーであったため、予選なしの一発勝負のレースとなった。スタート前からコースには強い風が吹き荒れ、予定時刻よりやや遅れて出艇。早大はスタートからかなりオールが水を叩くばたついた漕ぎとなったが、他艇より高いレートでわずかにリードを奪う。折り返しの500メートル地点で2番手の日大との差はわずか0.36秒。この状況を受け、当初は700メートル付近でスパートを入れる予定だったが、コックス山田侯太(商2=東京・早大学院)の判断で早めにスパートをかけることに。これが功を奏し、猛追する日大をなんとか抑え込み0.26秒早くゴールラインを切ることに成功。「しっかり1位を取れる大会で1位を取るということが僕は大事だと思っていたので、そこは評価できる」と、クルー唯一の4年生・伊藤光(文構4=東京・神代)は振り返った。早慶レガッタに続いて、順調な滑り出しを見せることができたと言えるだろう。
喜びをあらわにする早大クルー
対校エイト、第二エイトに次ぐサードエイトの活躍の場であると同時に、1年生にとっては経験の場でもあったこの大会。大学デビュー戦となる3月のお花見レガッタではダブルスカルで19位に沈んだ2人。初のエイトでのレースとなる今大会で初めての金メダルを手にしたが、満足はしていない。「しっかりレベルアップして、早慶戦で勝たれた対校やセカンドの皆さんと乗ってもついていけるような技術を身につけていって、インカレ(全日本大学選手権)では順位を狙えるくらいのところにいければいい」(岩松賢仁、スポ1=熊本学園大付)。早慶レガッタでの栄冠を手にした以上、ここからいかにボトムアップできるかが夏の覇権奪還への重要なカギとなる。
(記事、写真 石塚ひなの)
結果
【決勝】
▽男子部
【エイト】
C:山田侯太(商2=東京・早大学院)
S:中川大誠(スポ2=東京・小松川)
7:川田諒(社3=愛媛・松山東)
6:牟田宜平(商3=兵庫・三田学園)
5:瀧川尚歩(法2=香川・高松)
4:船木豪太(スポ1=静岡・浜松北)
3:岩松賢仁(スポ1=熊本学園大付)
2:伊藤光(文構4=東京・神代)
B:大野一成(法2=東京・早大学院)
3分04秒51【1着 優勝】
コメント
伊藤光(文構4=東京・神代)
――クルーを組んでからどのくらいですか
1カ月くらいですかね。
――下級生中心のメンバーでしたが意図はどこにありますか
監督的には1年生をエイトに乗せることによって、基礎的な漕力や技術を身につけさせるという狙いがたぶんあったと思うので、そこを重点的に僕も指導しました。
――この大会の位置付けは
冬の(トレーニングの)成果を見るのと、まだ5月なのでここからどういうふうに組み立ててインカレ(全日本大学選手権)、全日本(全日本選手権)につなげていくかという試金石的な感じですね。
――きょうのレース展開を振り返っていかがでしたか
風が強いのは戸田コースならではなんですけど、きょうはちょっと風向きが目まぐるしく変わっていて、しかも藻もあったのでコンディション的にはそんなに良くはなかったんですけど、たまたま風上にいたのでそんなに影響を受けずに漕げたのが幸いだったのかなと思います。
――日大と接戦でしたが
基本的にたぶん日大と接戦になるだろうなとわかっていました。まあでも向こうは1年生エイトなので、そこはこっちは2、3年生も乗っているので落ち着いてやってきたことをやる、しっかりと技術でカバーしていく、という感じでしたね。
――優勝という結果についてはいかがですか
戸田レガッタってそんなに大きな大会ではないので、大きな大会ではないほど1位と2位の差というのはすごくて、1位以外取る意味がないという感じで。しっかり1位を取れる大会で1位を取るということが僕は大事だと思っていたので、そこは評価できるかなと思います。
――練習やレースを通じて得られたものや見つかった課題はありますか
この冬やってきた練習は間違っていなかったのかなというのは思いますし、クロアチアのコーチから教わってきたこともしっかりと表現できてきたので、後はもう少し完璧に、基本的に体力も伸びてきていると思うんですがまだまだ足りないと思うので、そこは補っていくという感じですかね。
――ここから夏のトップシーズンに向けてどういった練習をしていきたいですか
そんなに変わったことはせずに、基本的に今までやってきたことを積み重ねてやっていくのと、自分自身足りないところを、僕はもう4年生なので就活ももうすぐで終わるので、時間がある分そこを誰よりもやっていくという感じです。
川田諒(社3=愛媛・松山東)
――下級生の多いクルーでしたね
1年生が4番ペアで岩松(賢仁、スポ1=熊本学園大付)と船木(豪太、スポ1=静岡・浜松北)の二人が乗っていたんですけど、大学に入りたてで高3の高校時代の現役生活が終わってから大学のシーズンが始まるまでのブランクがあった上にスイープ種目も初めてだったので、結構自主練しているのも見ましたし、二人はよく頑張ってくれたかなと思います。あと瀧川(尚歩、法2=香川・高松)が今までストロークサイドで漕いでいたんですけど、2カ月前くらいにバウサイにチェンジして、まだ慣れていない段階だったので、瀧川も結構頑張ってくれたかなという印象です。
――この大会にはどういった意気込みで臨まれましたか
自分は7番の役割だったので、後ろが見えないのであんまり後ろから指摘することもなくて、乗艇中は逐一1年生を見てここはこうなってるとか言えないので、ストペアで乗っていいて感じたことを練習が終わってから1年生が自主練やっているところに行って一緒に…バック台っていうんですけど、陸の上から乗艇中と同じオールさばきの練習をする器具があって、それを一緒にやったり下級生とコミュニケーションを取るようにして臨みました。
――きょうのレースを振り返っていかがでしたか
0-500(メートル)は自分たちに余力があったので狙い通りいけたかなと思うんですけど、500過ぎてからちょっと疲れもあってばたついたりはしました。でも中川(大誠、スポ2=東京・小松川)がストロークなんですけど、コンスタントレート34の予定だったところを38でずっと引っ張ってくれていて、他艇に比べてレートが高くてずっと優位に立っていたので、僕は見てもわからなかったんですけど後ろのバウフォアくらいは一目でわかるくらいには日大は大丈夫というのがわかったらしいので、余裕が出たのかなと思います。中盤以降は中川がずっと高レートをキープしてくれたというのは大きかったと思います。あと最後もさっきビデオを見ても後ろは全然ついてきていないんですけど中川が思いっきりラストスパートで1人で急に動き始めて、それにみんなで一緒に頑張ってついていくみたいな感じだったので、中川様様という感じですね(笑)。
――優勝という結果についてはどう思われますか
日大が1年生中心ということもあって3年生の自分としては負けられないというのがあったんですけど、まあ自分たちも下級生中心のクルーではあったので、どうなるかなというところで絶対に勝てるレースというわけではなかったと思うんですけど、それをしっかり勝ち取れたのは率直に嬉しいですね。
――練習やレースを通じて得られたものや見つかった課題があれば教えてください
自分は早慶戦前に主将の伊藤大生さん(スポ4=埼玉・南稜)がU23に参加する関係で欠員が出ていたので、代漕でセカンドエイトに乗っていたんですけど、そこで結構長い間、3週間弱くらい乗っていてセカンドエイトのクオリティーに慣れてサードエイトに戻ってきたときに、やっぱりサードエイトとセカンドエイトはちょっと基準が違うなというか。セカンドエイトではOKと言われないところでサードエイトではOKと言ってしまっているので、そこが今後の課題になるかなと。さっきのレース終わりのクルーミーティングでも話したんですけど、基準がそもそも違うので、そこをなるべくサードエイトの基準をセカンドエイトの基準に近づけていかないといけないのかなというのが課題です。伊藤光(文構4=東京・神代)さんと2週間後にある軽量級(全日本軽量級選手権)にペアで出るので、自分個人の課題としては今回は伊藤光さんは後ろの方に乗っていてあまりコミュニケーションできていないんですけど、次の自分の目標は伊藤さんが次ストロークで自分がバウになるので、そこでしっかりやっていきたいです。他の軽量級のメンバーは今山梨の本栖湖というところに合宿に行っているんですけど、自分たちは戸田レガッタがあったので明日からの始動になるので…ただまあその人たちと比べればきょうレースをやっているので高いレートには体が慣れているので、軽量級が個人的な目標ですね。
――今お話にあった軽量級、そして夏のトップシーズンに向けてこれからどのような点を強化していきたいですか
自分の特徴的にあんまり船の真ん中の方にのってエンジンとなるという感じではなくて、割とバウとかに乗って声で指示を出したり鼓舞したりというところが求められてくるかなと思うので、そこを強化ではないんですけど、今あまり一緒に乗っていない人とも積極的にコミュニケーションを取って、しっかり自分の声に反応してもらえるような関係を誰と乗ってもつくれるようにしたいですね。色んな人とコミュニケーションを取って相性良くしていきたいかなという感じです。
岩松賢仁(スポ1=熊本学園大付)
――クルーを組んでから1カ月ほどだとお伺いしたのですが、大学に入って初めてのエイトはいかがでしたか
僕は高校で引退した後にエイトというかスイープ(種目)が始まるということで高校のメンバーと軽くスイープには…まあでも遊びみたいな感じで乗っていたのでそれとはもちろん全然違っていますし、僕は今バウサイを漕いでいるんですけど高校ではストロークサイドをやっていてそこも全然違っていて、なおかつ僕は今まで6年間スカルばかり漕いでいたのでなかなかスイープにすんなり上手く適応できなくて、毎日練習終わってからもビデオを見ながら2、3年生の先輩に教えてもらったりとか、バック台でだいぶみっちり練習したりして色々教えていただいてできたので、すごく感謝はしています。
――特にお世話になった先輩はいらっしゃいますか
同じバウサイの川田諒さん(社3=愛媛・松山東)と、バウに乗っていた大野一成さん(法2=東京・早大学院)にはずっと色々教えてもらいました。こっちに来て一瞬練習クルーとして川田さんと一成さんと僕と1年生の船木(豪太、スポ1=静岡・浜松北)の四人でフォアに乗ったりはしていたので、サイドも同じなのでその二人からはずっと教わっている感じでした。
――きょうのレースを振り返っていかがでしたか
ちょっと今(レースの)映像を見てきたんですけど、練習とは全然かけ離れた、一言で言うとひどい状態でした。バタバタしてしまったのでとりあえず体力で押す感じのレースになってしまったんですけど、日大のクルーも映り込んでいたりしたんですけど明らかに上手で。練習ではその辺も日大と張れるくらいにはなってきたんですけどコンディションとかの外的要因で上手く適応できないというか、結構練習の段階でフラフラしていることが多かったので、そこがレース中に風が斜めから吹いてきたりしていたことで余計にバタバタしてしまったという感じでした。僕的にはラスト300メートルでスパートを入れる予定だったんですがコックスの山田さん(侯太、商2=東京・早大学院)が600メートルあたりで先に仕掛けるかたちでいったのが最終的にはすごく効いたのではないかなと。向こう(日大)はどちらかというと700メートルで仕掛けようとしてスピードを上げてきたタイミングで山田さんがちょうどスパートをかけて抑えた感じになったので、0.2秒でギリギリだったんですけど一応勝つことはできました。
――優勝という結果についてはどう思われていますか
まあ3艇しか出ていないので日大も1年生が多いと聞いているので、勝ったは勝ったんですけどこれが終わりではなくて、僕は軽量級(全日本軽量級選手権)に出ないのでおそらく次は東日本(東日本選手権)かインカレ(全日本大学選手権)かでちょっと空くので、しっかりレベルアップして早慶戦で勝たれた対校やセカンドの皆さんとちゃんと乗っても恥ずかしくないというかしっかりついていけるような技術を自分で学び、時には教えてもらってしっかり身につけていって、インカレでは順位を狙えるくらいのところにいければいいのかなと個人的には思っています。
――この大会に臨むにあたって得られたものはありますか
この練習期間で早慶戦やオフがあって練習がブツブツ切れていたことがあって、それで試合前のモーション数が少なかったんですけど、その中でそこで復習というか前のモーションの記憶をしっかり呼び戻して1本1本集中して、個人的には乗艇の1時間半で集中を使い切る感じで練習を続けていました。
――ここから夏のトップシーズンに向けてどんな練習をしていきたいですか
1カ月漕いだんですけどまだ1カ月なので、とりあえずスイープを周りの皆さんと同等にというか人並みには漕げるようになって、自分は体重がしっかりある方なので周りの皆さんをドライブで支えられるような漕手になりたいなと思います。