【連載】早慶レガッタ直前特集『花信風』 第2回 S:井踏直隆副将

漕艇

 3.5艇身。大差をつけて勝利した、第二エイト。それから1年、井踏直隆副将(文構4=東京・早大学院)は再びその一員として早慶戦に挑む。唯一の最上級生として、セカンドに乗るその思いを伺った。 

※この取材は3月4日に行われたものです。

「非常に和やかにやれている」

第二エイト唯一の4年生としてクルーを引っ張っている

――現在の調子は

 クルー組み始めてだいたい1カ月弱になるんですけれども、調子としてはいい感じに来ているのかな、と思います。艇の進み方もそうですし、先日シートレースを行ったりもしているので、気持ち的も緩まずに来ているのかなと思います。

――副将に就任されてから半年経ちますが、振り返っていかがですか

  10月末に先輩方が引退されて、自分たちの代に変わったときに、まだまだ自分たちのことで精一杯になっていたというか、主将や副将のポジションの役割でいっぱいになっていた部分はあったと思うんですけど、今はそれなりに役職にも慣れてきて競技面であったり、就職活動の面もありますけど、やるべきことはやれているのかなと思います。

――飯尾健太郎副将(教4=愛媛・今治西)と2人での副将を務められていますが、それぞれどんな役割をされているのですか

 僕の方が実務的というか、資料を作ったり連絡をしたり。(飯尾)健太郎のほうがプレイヤーとしても上なので競技面で引っ張ってもらったり、締めるべきところは締めてくれたり。彼がいるおかげでチーム全体が緩みすぎずにできているのかなと思います。

――部をまとめていくうえで大変なことはありますか

 視野を広く持たなければいけないな、というのは常に感じていて、自分個人のことばかりになってもいけないですし、リーダーとかの中だけで固まってもいけない。部員1人1人とか、監督とかコーチとかも含めた部全体のことを広く見ないといけないなと思います。

――飯尾副将の印象は

 ぱっと見、軽いなっていう印象はあるんですが、かれこれ3年間漕いできた中で、プライベートではおちゃらけたりするんですけど、やっぱり練習とかになると気を引き締めて仕切っていたりもするので、やっぱりメリハリは上手いなと感じます。

――オンとオフの切り替えが上手なんですね

 そうですね。

――伊藤大生主将(スポ4=埼玉・南陵)についてはいかがですか

 彼は陸でも水上でもふわふわしているなって感じはあるんですけど、そのおかげでみんなリラックスした感じはあるので、全体ミーティングとか非常に和やかに行えつつ、かといって緩みすぎずやれているのかな、と思います。

――ふわっとした雰囲気を副将さんたちがまとめているのですか

 そうですね、だといいです(笑)。

――新体制になってからの部の雰囲気はいかがですか

 主将がふわっとしているので(笑)、非常に和やかにやれているのかな、と思います。

――昨年と比べて雰囲気はだいぶ変わったんですか

 そうですね、主将の雰囲気によって部の雰囲気はガラッと変わるなっていうのは感じますね。

――昨シーズンを振り返っていかがですか

 昨シーズンの始めが早慶戦で、僕はセカンドエイトのストロークとして出場したんですけれども、その手ごたえが非常に良かったですね。結果として、セカンドエイトで大差をつけて勝てたことはもちろんそうですし、僕自身もストロークに乗ってきっちり勝利を得ることができたっていうのは、大きな成果だったかなと思います。

――副将になってから成長したことは何かありますか

 成長したっていうのとは、少し違うかもしれないんですけど、常に穏やかでいられるようにはなりました。やっぱり、副将である以上いろんな人の話を聞かないといけないし、そういった時に気分屋であったりとか、いつ話しかけていいかわからないようではいけないと思うので、常に自分は穏やかでいて話しかけやすいような副将であれたらいいな、って心掛けています。たぶんできているかなって思います。

――後輩の方々から話しかけられることは多いんですか

 そうですね、時折相談してもらえることもあるので。その相談を解決できているかはわからないですけど、頼ってくれるのはありがたいなと思います。

――オフの日の過ごし方について教えてください

 最近は就活とかもあるんですけど、基本的には寝ています。疲れていることとかも多いので、ゴロゴロしながら音楽聞いたりしていることが多いですね。誘われたら、映画を見に行ったりするんですけど、なんにもなければ一人でゴロゴロしていることが多いです。

――チームで仲の良い選手は

 同じ学部の伊藤光(文構4=東京・神代)と、あとスポ科の鈴木大雅(スポ4=埼玉・浦和)ですかね。趣味があったり、(伊藤選手とは)学部も一緒なので。その2人とは結構仲良くしてますね。

――どこかに出掛けることもあるんですか

 あんまりないですね。普段一緒に昼ごはんに行くとかはあるんですけど、オフの日に一緒に出掛けるっていうのは。長期オフで1回箱根に出掛けることはあるんですけど、普段はあんまり。結構みんな個人個人で動いている感じですね。

――就活と部活の両立については

 今セカンドエイトに乗っていて、新4年生が僕だけなので、僕が就活の時間をやりくりができればそんなにクルーには迷惑はかからないかな、と思います。今も時折練習時間が早まったり、ということはあるんですけど、比較的オフの日に入れるようにしているので、そんなに練習に支障を来してはいないんじゃないかな、と思います。

「絶対に超えてやる」

――第二エイトのメンバーが決まったときの心境は

 僕自身は、対校選考に負けてしまって、セカンドエイトに乗ることになったので、対校に乗れなかったなっていう悔しい思いの反面、下級生を率いて対校に食って掛かるくらいの気持ちで挑めたらいいのかなって思いました。新2年生とか新3年生の中でも、隅田で3750(メートル)をまだ漕いだことがない選手もいるので、昨年漕いだ下級生3人にお前らがこのクルーを引っ張ってこい、というふうには伝えました。

――昨年同様、セカンドのストロークでの出場となりますが、プレッシャーは感じますか

 昨年ほどではないですね。昨年は、ストロークとしてエイトを漕ぐって決まった時に、ストロークとしての自信もそうですし、エイトのストロークの経験もなかったので不安な思いはあったんですけど、昨年経験しているのもそうですし、今漕いでいても、自分がストロークであることに対しての不安はあまりないです。

――去年1年間の練習で自信になった部分が大きいですか

 そうですね。

――セカンドでは唯一の4年生での出場ということで、下級生のフォローなど大変な部分もあると思いますが

 みんな非常に勝利を目指して頑張ってくれているので、そこは非常に頼もしいなというふうには思います。自分たちの意見とかもスパスパ言ってくれるので、それがいろんな方向に飛んだりしないように、自分が方向を正すくらいしかしていないので。僕がまとめなきゃいけないなと思う反面、やっぱり助けられているなとは思います。

――後輩方は心強い存在ですか

 そうですね、ちょっと生意気なんですけど(笑)。

――今のセカンドの強みは何ですか

 みんな野心を持っている感じはしますね。セカンドに今回乗れた人間も、対校に乗れなくてセカンドに乗った人間もいますけど、今一緒に練習しているのが対校というのもそうですけど、まだまだ自分たちの上の実力の人たちに食って掛かろう、絶対超えてやるんだ、という気持ちは感じられるので、そこが9人でまとまった時は非常に大きな力になるなと感じています。

――逆に課題は何かありますか

 それぞれが思い思いに自分がやりたいことを言い始めると、それぞれが別々のことを考えてしまって、漕ぎ方が合わなくなるっていうシーンはあるので、そういったところを無くしていくことは大事かなって思います。

――今のセカンドの漕ぎの状態はいかがですか

 良い感じでできていますが、まだコースでしか漕いでいないので、隅田川の荒れたコンディションで通じるかっていうと、それはまだまだだと思うので、そこはもう少し練習が必要だなと思います。

――今年の慶大の印象は

 おそらくエイトで練習し始めて間もないので、あんまり具体的にはわからないんですけど、やっぱり前の精度であったりというのは上手いので脅威にはなるなと思います。

――昨年の早慶レガッタは完全制覇を果たしましたが、1年前の試合を振り返っていかがですか

 昨年は、クルー組み始めは、意見がまとまらず、練習もうまくいかなかったこともあったんですけど、みんなで話し合った後からはスムーズに練習が運んで行ったかな、という印象はありますね。レース本番は自分でもビックリするくらい上手くいったなっていう印象があって、前日とかにもみんなでイメージはしていたんですけど、そのイメージ通りに本番も出来たので非常に良かったなと思います。

――そんな去年の試合を振り返って、今年の試合へのプレッシャーは

 あまりないですね。やっぱり、僕たち自身のクルーもそうですし、昨年と慶大のクルーも変わっていますし。去年勝ったから今年も勝てる、というものでもないと思うので、昨年僕たちがアウトコースだったのがインコースになることで作戦とかも変わってくるので、あまり昨年から続けて連覇とかは意識はしていないですね。

――部全体でも、連覇の意識はされてないのですか

 そうですね、やっぱり連覇という言葉に固執しすぎても自分たちのプレッシャーになるだけなので、自分たちがやることはぶれずにやっていこうという感じです。

――ことしの早慶戦に懸ける思いは

 僕自身副将でありながら、対校に乗れなかったという思いもあるんですけど、副将なりにセカンドエイトを引っ張っていくという意義もあると思うので、完全優勝の3本のうちの1本を僕と他の8人とで、築き上げることができればいいなと思います。

――セカンドエイトでキーマンになる人物は誰だと思いますか

 そうですね、6番ペアの高山(格、スポ3=神奈川・横浜商)と堀内(一輝、スポ3=山梨・富士河口湖)、あとバウの土屋(夏彦、スポ3=山梨・吉田)になるかなと思います。

――その理由については

 僕も含めて、昨年早慶戦を漕いだメンバーなので、僕と彼らでいかにクルーをまとめ上げられるかという所になると思います。昨年の隅田川の経験というのを活かして、かつそれを伝えていけるかというのが要になるかな、というふうには思います。

――ラストイヤーとなる今年1年の意気込みは

 ラストイヤーにはなるんですけど、焦らずにやっていきたいなと思っています。昨年は自分の気持ちばかりが先行して、練習しすぎて腰も壊してしまったので、しっかり先のことを見据えて、目先のことだけにとらわれずに1日1日の練習を積み上げていくべきかな、と思います。

――最後になりますが、早慶戦への意気込みをお願いします

 生意気な後輩たちとともに僕の最後の早慶戦、しっかり勝ちたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 秦絵里香)

最後の早慶戦、『広背筋』を武器にクルーを優勝へ導きます!

◆井踏直隆(いぶみ・なおたか)

1996(平8)年6月25日生まれ。171センチ、75キロ。東京・早大学院出身。文化構想学部4年。ポジションは第二エイトのストローク。どんな質問にも優しい笑顔で答えてくださった井踏選手。後輩が生意気で少し大変、と話されていましたが、仲の良い様子が伝わってきました。思いを1つにチームをまとめ上げ、第二エイトを勝利へと導きます!