新体制スタート!優勝候補2艇が予選を突破

漕艇

 全日本選手権(全日本)での4年生の引退から2週間。新体制になってから初レースとなる全日本新人選手権が幕を開けた。出場できるのは2年生以下と、部の将来を見据えていく中で重要な大会だ。早大からは男女計7艇が出場。有力クルーである女子舵手付きクォドルプルと男子エイトがそれぞれ準決勝、決勝進出を決めた一方、他5艇は翌日の敗者復活戦へと回った。

 先陣を切って出艇したのは、牟田宜平(商2=兵庫・三田学園)と瀧川尚歩(法1=香川・高松)の、大学から競技を始めたいわゆる未経験者コンビの男子ダブルスカルA。牟田は1年時からのケガの影響でおよそ14カ月ぶりのレースとなった。序盤は「練習中よりも良い感じで漕げていた」(牟田)とレースプラン通りの漕ぎを見せたが、後半は体力不足が響きラストで腹切りにより2つ順位を落とし4着。敗者復活戦では、苦しくなってからいかに同じペースで持ちこたえられるかが勝敗のカギとなる。続く女子ダブルスカルAは高身長を生かしたダイナミックな漕ぎが持ち味のクルー。しかしスタートから隣の立命館大に先行され、逆風の中で順位を上げることができず、組3着でレースを終えた。準決勝進出を決めることはできなかったが、全体では4位の好タイム。宇都宮沙紀(商1=愛媛・今治西)は「しっかり1着で準決勝に上がりたい」と、翌日の敗者復活戦に自信をのぞかせた。

宇都宮・三浦彩朱佳(文1=青森)の女子ダブルスカルBは全体4位の好タイムをマークした

 優勝候補である女子舵手付きクォドルプルは、漕手4人全員が全日本に出場し、そのうち3人がメダルを獲得した実力者ぞろいのクルー。序盤から安定した漕ぎで、ゴールでは2着の立大に1艇身以上の差をつける余裕を見せた。タイムは全日本で敗北を喫した関西電力小浜を抑え全体1位。クルーは変われど、エンジのオールを握る以上は最終日に雪辱を果たしてみせたい。そしてこの日の最終種目は花形種目・男子エイト。スタートでミスがあったもののすぐに挽回し、その後は徐々に差を広げ、2着に約10秒の差をつけフィニッシュ。全体で見ても1位の中大に次ぐ2位の好タイムをたたき出したが、コックスの山田侯太(商1=東京・早大学院)はまだ満足はしていないと語る。「まだまだ成長できるクルーだと思う」(山田)。ここ最近対校エイトの悔しい結果が目立つ中、最終日の準決勝、そして決勝へ、今後を担う下級生クルーに期待がかかる。

非凡なクルーワークを見せた男子エイト

 どの種目も、全日本の終幕後わずか10日ほどの練習で挑んだ急造クルー。しかしここでの結果が来年以降の戦力を占うと言っても過言ではない。新体制の船出となるこの大会で、どれだけのクルーが上位に食い込んでいけるか。まずは翌日、5艇が課題をいかに修正して敗者復活戦に臨めるかが勝負となる。

(記事 石塚ひなの 写真 新開滉倫、佐鳥萌美)

結果

【予選】

▽男子部

【エイト】

C:山田侯太(商1=東京・早大学院)

S:田中海靖(スポ1=愛媛・今治西)

7:坂本英晧(スポ2=静岡・浜松北)

6:高山格(スポ2=神奈川・横浜商)

5:堀内一輝(スポ2=山梨・富士河口湖)

4:中川大誠(スポ1=東京・小松川)

3:土屋夏彦(スポ2=山梨・吉田)

2:藤井拓弥(社2=山梨・吉田)

B:川田翔悟(基理2=東京・早大学院)

6分14秒93【1着 準決勝進出】

【舵手付きフォア】

C:菱谷泰志(スポ1=鳥取・米子東)

S:菅原諒馬(商2=東京・早大学院)

3:鈴木利駆(スポ1=静岡・浜松西)

2:川田諒(社2=愛媛・松山東)

B:山中祐一郎(スポ2=埼玉・本庄第一)

7分25秒20【3着 敗者復活戦へ】

【ダブルスカル】

早大A

S:瀧川尚歩(法1=香川・高松)

B:牟田宜平(商2=兵庫・三田学園)

7分44秒92【4着 敗者復活戦へ】

早大B

S:舩越湧一郎(スポ1=滋賀・膳所)

B:大野一成(法1=東京・早大学院)

7分37秒24【3着 敗者復活戦へ】

▽女子部

【舵手付きクォドルプル】

C:大野絢乃(スポ2=愛媛・松山東)

S:安井咲智(スポ1=東京・小松川)

3:松井友理乃(スポ1=愛媛・今治西)

2:藤田彩也香(スポ1=東京・小松川)

B:南菜月(教2=新潟南)

7分30秒65【1着 決勝進出】

【ダブルスカル】

早大A

S:宇都宮沙紀(商1=愛媛・今治西)

B:三浦彩朱佳(文1=青森)

8分20秒28【3着 敗者復活戦へ】

早大B

S:尾嶋歩美(スポ1=埼玉・南稜)

B:奈良岡寛子(教1=青森)

7分49秒09【5着 敗者復活戦へ】

コメント

【男子エイト】

C:山田侯太(商1=東京・早大学院)

――きょうのレースを振り返っていかがですか

スタートで少し失敗してしまったかなと思うのですが、その後半分くらいまで立て直しできて、そのままいい感じで艇差をつけることができたのでそれは良かったなと思います。ただ、第3クオーターや第4クオーターでちょっと崩れてその後差を広げられずにバタバタしてしまったので、そこは少し改善したいかなと思っています。

――内容としては完全に満足がいっているわけではないと

そうですね。半々くらいですね。

――今のシート順になってから、どのくらい練習されましたか

2週間前の全日本選手権が終わってからすぐ組んだので、10日ちょっとしかできていないですね。

――どういったことを重点的に練習されていましたか

フィニッシュを合わせることをやっていました。その成果はちゃんと出ていて、フィニッシュを押し切り通す長さやタイミングは合ったと思います。

――全体のタイムでは中大が1位、早大は2位でしたが、まだタイムを縮めることができるといった感触でしょうか

いいところもあったんですけど、悪いところも漕手からも僕からも発見していて。まだまだ成長できると思うので、そこは明日の練習と明後日のレースのアップでしっかり段階踏んでレベルアップして、もう少しいいタイムを狙っていきたいと思います。

――このクルーの長所と短所は

長所は、まず雰囲気がすごくいいことです。クルーの仲がいいので、常にいい雰囲気で練習できていたのがいいところだと思います。短所は、技術的に少しレンジが短くなってしまうので、そこをもう少し直していけたらなと思います。

――コックスに転向されて1年目ですが、手応えはありますか

漕手から転向して結構苦労して。特に夏のオッ盾(オックスフォード盾レガッタ)に出させてもらって、一緒に乗っていた4年生の剣志さん(富田、スポ4=愛媛・今治西)に指導していただいて、そこから結構レベルアップできました。今回もちょっと僕が焦ったり、コールのミスしたり、かじをミスったりということはあったのですが、最低限やりたいことはできていて、どんどんレベルアップできているかなと思っています。

――これまでやってきた成果が少しずつ現れていると

そうですね。成果出てきてると思います。

――今回エイトのコックスを任されたことについてはどのように考えていますか

オッ盾を7月くらいに組んで、夏の長い期間エイトを練習してきたので、そういう意味でエイトに対しての自信というのはありましたし、任せられて率直にうれしいです。

――改めて今大会の目標は

目標は、もちろん全日本新人優勝です。

――次のレースは準決勝になりますが、意気込みをお願いします

まだまだ成長できるクルーだと思うので、最後の最後まで成長して、きょうよりも、1秒でもいいタイムを狙っていきたいと思います。

【男子ダブルスカルA】

S:牟田宜平(商2=兵庫・三田学園)

――きょうのレースプランを教えてください

僕がちょっと1年の2月からずっとケガしていて、先月やっと乗れるようになって、試合のときに漕ぐくらいのレート、ハイレートに上げたのも先週の相模湖合宿が初めてでした。僕自身もそこで初めて全力で漕げるようになったので、きょうはもうレースプランというよりも2人で思いっきり漕ぐというのをとりあえず意識してレースしていました。

――レースの序盤ペースが速かったと思いますが

スタート1本目で前の瀧川(尚歩、法1=香川・高松)がミスオールしてしまって、そこから立て直したんですけど結構あのペースは自分たちの中のレースプラン通りで、そんなにスピード上げたとかいうのではないです。途中のコンスタント入ったときは練習中よりも良い感じで漕げていたので、僕が復帰戦なのでそこに関してはなかなか良かったんじゃないかなと思っています。

――最後腹を切ったように見えたのですが

そうですね。最後というよりも途中何回かぐねぐねしていて、ブイ叩いたりしていました。まあ僕が9カ月漕いでいなかったので体力が戻りきっていなくて、最後1000メートル超えてからは結構気合で漕いでいて意識が飛んでいたので最後しんどくて腹切ってしまったんですけど、そこはきょうしっかりミートしたのであしたにはもう1回切り替えていけるんじゃないかと思います。

――レースはいつぶりになりましたか

去年のオックスフォード盾レガッタ以来ですね。

――クルーの雰囲気はいかがですか

瀧川が1年生で、一浪して入っているので同い年で、結構体の大きさも僕ら平均身長180センチで体重も80キロあってオープン級(の大きさ)で進みもパワー系2人が乗ってるので、クルー自体の雰囲気は結構いいんじゃないかなと思いますね。

――クルーの強みはやはりパワーがあるというところですか

そうですね、パワーがあるのと、後は僕は結構声出すので、ボート界はあんまり声出して盛り上げるというのがないかなと未経験で入って思ったので、瀧川とは声はかけようと言ってきょうのレース中も僕ずっと叫んでいたんですけど、強みはパワーと、気持ちの部分で声ですかね。

――あしたまでに修正したいポイントはどこですか

あしたはたぶん組み合わせ的に法大と一騎打ちになるかなと思っています。自分たちの中で、きょうは後半崩れてしまったのでしんどくなってからいかに耐えるかというのを2人できょう話し合っていたので勝負どころをしっかり見極めてという感じですかね。まあそれは僕がやらないとだめなんですけど。なので修正する場面と言ったらきょうやってしまった腹切ったりブイ叩いたりというのをなくしてゆとりを持つということですかね。

――改めて意気込みをお願いします

あした負けたらもう終わりなので、あと応援部の知り合いにわざわざあした来てくださいと言って同期もその人に連れてきてもらうので…まあでもあんまり気負わずに久しぶりのレースなので楽しむことが一番かなと思います。

【女子舵手なしクォドルプル】

C:大野絢乃(スポ2=愛媛・松山東)

――今日のレースを振り返っていかがですか

良くも悪くも、長所も短所も出たかなっていう感じですね。1年生3人と2年生1人の選手なんで、フレッシュでパワーはあって、思い切った漕ぎはできてたと思うんですけど、ちょっと粗削りな部分もあったかなと思います。

――1位で決勝進出という結果についてはいかがですか

関西電力(小浜)が全日本で優勝していてメンバーが1人しか変わっていないので。全日本の時とメンバーは違うんですけど早稲田は悔しい思いをしているので、クルーが結成してから2週間しかたっていないんですけど、ずっと関電に勝つことを考えてやってきたので。関電も多分フルパワーではないと思うんですけど予選でとりあえず(タイムで上回って)抑えられたことは自信にもなるので決勝で気を抜かずに、このままいけたらいいかなと思います。

――練習期間はどれくらいでしたか

全日本が終わってからなのでちょうど2週間ですね。

――クルーの長所と課題があれば教えてください

長所は「勝ちたいというより勝つ」って、勝てるって全員思っているので、それはすごい気持ち的にはずっと前を向けているかなと思います。常に上を向いているメンバーなので、少し良くなってもずっとどんどん向上心を持って2週間常に良くなり続けてこられたかなとは思っています。

――コックスを務められたのはどうしてですか

元々選手で、いろいろケガの関係で今年の春にマネージャーになって、で今女子のコックスが3年生しかいないので新人戦に出られなくて、新人戦に出れる人材が自分しかいないということで出たというだけなので、新人戦が終わったらマネージャーに普通に戻ります。水上にいたのが1年半くらい前なんですけど、その経験をできるだけ思い出して久しぶりに頭をフル回転させて少しでも貢献出来たらいいかなと思っています。

――コックスは今回が初めてだったのですか

そうですね、コックスに乗ったのは2週間前が初めてで、今日はレースが初めてでした。

――その手ごたえはどのような感じでしたか

本当に何もできていないので、コックスとして。でもみんなもコックスとしての技量は自分には求めていないし、自分も多分できないことはできないので、できることしかできないので、それは逆に開き直って自分にしかできないことを、自分にできることを精一杯やっていかなきゃいけないなと思っています。

――決勝への意気込みを教えてください

予選はとりあえず関西電力を抑えて、(予選で)1位のタイムで、でもできた部分もあるけどできてないことのほうが多いレースだったので、これを明日の中日でもう一回整理します。2週間しかたっていないので、まだまだうまくなっていく、良くなっていく部分がどんどんあるのでそれを最後のスタート直前までうまくなり続けてスタート切って思いっ切り漕ぎ切って1位でゴールしたいと思います。

【女子ダブルスカルA】

S:宇都宮沙紀(商1=愛媛・今治西)

――きょうのレースはいかがでしたか

きょうは当たりがあまり良くなくて、強いクルーと当たるということは分かっていたんですけど、そこで相手に惑わされずに自艇集中で行くと二人で決めていて、それはできたかなと思いました。ただ、逆風の中であまりバランスが良くなくてガタガタしてスピードが出なかったので、次の課題が見えたのかなとも思いました。

――逆風は苦手ですか

合宿の時もあまり逆風で練習ができてなくて、ずっと順の風だったので、今日の朝に順だということを知ってちょっと戸惑いました。

――いざ漕いでみると思い通りにはいかなかったという感じでしょうか

そうですね。でも全体のタイムで見ると、自分たちは(組)3着だったんですけど全体のタイムでは4位だったので、まだ表彰台の可能性はあるのではないかなと思っています。

――かなり序盤から突っ込んで入ったように見えました

そうですね。でもスタートで出るという意識はあまりありませんでした。スタートでバランスが悪くなってしまうことがあるので、安定させるということを二人で意識していました。

――漕ぎの長さが長所とお伺いしました

もう一人が177センチくらいあって10センチ離れているんですけど、二人とも身長は高いので、長く漕ぐという意識は持っています。

――高身長を漕ぎに生かせているという実感はありますか

レートは少し上がりにくいんですけど、ワンストロークのレンジやダイナミックさ、強さがあるので、それをあしたも生かせていければいいなと思います

――クルーを組んで何日ほどですか

まだ10日くらいなんですよ。短い練習期間ではありましたけど、確実に一日一日成長してるという実感はありました。

――短い練習期間の中で最低限意識しようと決めていたことはありますか

最初はハイレートでばらつきがあることが多かったんですけど、練習するうちに二人の上体の動かし方がそろってきて、船のトップ(船首)の沈みが出てきたので、それは良かったのかなと思います。

――目下の課題は何になりますか

バランスが少し悪くて、波があるとそれに当たってキャッチがぐらついてしまう時があったので、そこをしっかり固めてキャッチして、ファイナルもしっかり二人同時に抜き切るということを徹底してやっていけたらいいと思います。

――あしたはどんなレースをしたいですか

あしたは敗者復活で、これで上がらないといけないプレッシャーはあるんですけど、タイム的にも比較的楽な当たりだと思うので、しっかり1着で準決勝に上がりたいと思います。あしたは順風の予報なのでしっかり船を伸ばしていけるように、バランスに気をつけてやっていきたいと思います。