【連載】インカレ直前特集『One for Oar』 最終回 8+S:内田達大主将 × 8+6:石田良知副将 × 8+2:東駿佑副将

漕艇

 隅田川での悲願の勝利から4カ月。その勝利へと部を率いたのは内田達大主将(スポ4=山梨・吉田)、東駿佑副将(政経4=東京・早大学院)、石田良知副将(スポ4=滋賀・彦根東)の3人だ。誰よりも熱い思いを持って漕ぎ続けてきた3人の大学生活における最後の戦いが始まろうとしている。経歴が違う者が集まる早大漕艇部を率いるカギは何なのか、そして全日本大学選手権(インカレ)に懸ける3人の思いとは――。

※この取材は8月1日に行われたものです。

「今やっていることが正しいかどうかは結果が出てから分かる」(東)

東は早慶戦で対校エイトのストロークを務めた

――最近はどのような練習をされていますか

内田 まだクルーの組み始めなのでUT、長距離の有酸素で8人で動きを合わせています。

――個人的にしていることはありますか

内田 僕は軽量級から戻ってきたのでウエイトトレーニングを意識的にやっています。

 自分は高強度の練習をいろいろやっています。

石田 僕はないですね。

――早慶レガッタでは完全優勝を果たし、今シーズンのスタートは最高でした。それについてどのように受け止めていましたか

石田 通過点と僕は思っていますけどね。インカレで勝つにはケイオーだけではないので、そこは通過点かなと思います。

内田 僕は今度は相手がケイオーではなくて日本のトップになるので早慶戦(早慶レガッタ)は通過点といいますか、特に記憶に残さないようにしています。

 早慶戦はもう早慶戦という一つの区切りというか、そこはもう一回終わっているのでそれを終えて、また(インカレは)隅田川ではなくてコースでやるという点でも全然違うのでまた違う戦いになると思っています。

――チームの状態で春から変わった点はありますか

石田 僕から見ると4年生が仲良くなったかなと思います。とっきー(得居亮太、法4=東京・早大学院)とかフットワーク重かったんですけど最近は結構フッ軽(笑)。4年生がフットワーク重いというかあまりみんなでメシとかどこかに行くということがなかったんですけどここに来て4年目で吹っ切れたのか、仲良くなったとは僕は思いますね。

  個人的に…そうだなあ…。

石田 練習内容は変わってなくね?

 そうだね。でも個々にはスキルアップはできてきているのは確実にあって、それの結果が出るのがインカレだから今はなんとも言えないかなというのがあります。インカレの結果が出てやっとチームの状態が良かったのか悪かったのかというのが分かるのではないかと思うので今は成長過程という感じですね。

石田 同じくです。

内田 まだまだです(笑)。

――個人でシーズン前半を振り返っていかがでしょうか

石田 僕はあまり変わっていないと思うんですよね。大きく漕ぎ方がぶれているわけでもなければ僕はシーズン前半終わってみた時に波がないかんじかなと、良い意味で一定に保てている感じはしますね。

内田 僕はU23(U23世界選手権)で結構悔しい思いをして、得ることの方が多くありました。「なんでそれに早く気づかなかったんだろう」とかどうしようもないカベを感じて、悔しい思いをして帰ってきて今は得たことをみんなに伝えようと思ってやっている中でシーズン前半よりかは少し成長できたかなと。自分の立ち位置というか弱さが認識できたという点ではちょっとは成長しているかな。

 個人的には早慶戦と軽量級があって、テクニカルの面では少しずつ成長しているんじゃないかなというのがあります。結果にも少しずつ出ていますけどトップと比べた時にまだまだカベを感じているのでそこを飛び越えられるかどうかというところがカギになるのではないかと思います。

――少し前のことにさかのぼりたいと思います。去年主将・副将に指名された時のお気持ちはいかがでしたか

内田 指名された時にクロアチアの遠征があったりと結構忙しく主将になったことを感じる暇もなく冬は過ごし、早慶戦とかそういう重圧のかかるレースが近づいてくると「やべえ」って責任感というか、自分がやらなきゃという気持ちはかなり芽生えましたね。芽生えたというか尻尾に火が付いたというか。一つの山場を迎えれば迎える程自分たちが主体的にならなくてはという自覚は芽生えましたね。

 個人的にはうっちー(内田)と良知(石田)が主将、副将になって結果も出してきているし、その中で自分の役割ってどういう役割なんだろうなというのをまず指名された時に考えましたね。自分が副将に指名された理由というのはまた違うかなというのは結構思いましたね。

石田 「俺が副将?」って最初思ったんですけど、東が言ってくれているように副将にもキャラがあるんですよ。自分はアホな副将なんですよ。めっちゃ前を突っ走る主将がいて、それについていくアホな副将がいて、そのアホな副将を支える真面目な良い副将がいて…でも副将二人が真面目だと部はおかしくなるんですよ。だからここに一人アホを入れることによってお互いが引き立つという。コーヒーとミルクの感じですね。ブラックが嫌いな人もいるじゃないですか。ミルクと溶け合うことによって…

 相乗効果ね(笑)。

石田 そう、そんな感じですよ。僕みたいなキャラが二人いたらヤバいですね。今頃お祭り騒ぎです。

内田 俺がノイローゼになってる。

一同 (笑)。

 当初だよね?

内田 あんまり覚えてないな。

 でも最初はヤバいとも思わなかった。俺の中ではうっちーがキャプテンだしっていうのがあったかな。

――内田選手の存在は大きかったですか

石田 圧倒的にな。

 なるだろうなって思っていたし、どうなってもチームは悪い方向にはいかないかなって確信じみたものがありました。

内田 自分は逆にならないかなと思っていたから。

石田 まじで?

内田 監督(内田大介監督、昭54教卒=長野・岡谷南)が親父だし 俺は好き勝手やっているほうがいいのかなと思っていたから話をされた時は「うっす。」みたいな(笑)。

――どのような主将・副将になろうとしましたか

内田 さっき良知が言ってくれたのですがリーダーなので前を突っ走らないといけないから、とにかく実力をつけて「これだけは絶対内田さんだな」というものが欲しかったので実力で示せるようにということは結構意識しましたね。

 自分はもう完全に突っ走る内田とか良知をフォロワーシップでドンと支える感じです。もうそれだけしか考えていませんでした。どちらかというとそういう役の方が俺も好きだからそういうふうに自分なりの価値を見出して今もやっている感じです。

石田 さっき突っ走ると言ったんですけど、うっちーがこっち(真っすぐの方向を指して)を突っ走るとしたら俺はこっち(逸れた方向を指して)を突っ走るんですよ。そこから東が軌道修正する感じなんです。どういう副将になりたいとかなかったんですけど良い意味でも悪い意味でも影響は大きい方なので、悪い影響を与えないようにみんなをうっちーの方に持っていけたらいいかなとは考えましたね。

――現在までの主将・副将ぶりはご自身でどう感じていますか

内田 それは自分では分からないよな。

 難しいな。個人的には全て結果が出てから分かることなのかなというのがあって、今俺らはやっていることが正しいと思ってやっているけど結果的には正しいかどうかわからないから早慶戦の時もそうだったけどそれをもがきながらやっているな。

石田 しかも野球のリーグ戦のように頻繁に試合があるわけではなく、ボートは早慶戦から5カ月後の試合だしそれまでないから今やっていることがあっているのか間違っているのか分からない。

 早慶戦までは少なからず間違っていなかったというのが分かった。だから早慶戦が終わってからインカレまで今やっていることが正しいかどうかは結果が出てから分かることなのかなと思いますね。だけどやることは変わらず、ぶれずにやる。だからさっき言った役割をとにかく全うし続けることしか考えていないんじゃないかなと思うんですけど。

内田 僕はとりあえず艇が速く走ればいいので。どうなんだろうな…いなかったしな(笑)。でもやっぱり自分が行動で示してそれを後輩に伝えていく、細かいところでも時間を守るということは自分で決めたことを守るということにつながるし、自分でこの時間に練習する、それを守る。自分でこの目標をやるって決めたらそれを守るというふうに、そういうふうになっていかないと目標というのは近づいてこない。そういうのを日々言いつつ、って感じですかね。

――ほかの4年生からは主将・副将は「余裕が出てきた」という声もありました。ご自身ではどう感じますか。

内田 就任して自意識を芽生えさせるというか、頻繁に「自分で決めたことを守りなさい」「組織のことをちゃんと考えなさい」ということをずっとミーティングの時とかも言ってきたし、それができていない人間にはお小言も言うというのをずっとやっていました。なんでそれをやったかというと各個人のそういう意識が芽生えて部員一人一人がちゃんと組織の事を考えて行動できるようになれば、僕らが注意しなくても自分自身でコントロールできるというか負担も減ってその後が楽になるし、チームもボートのことに集中できるし、というのを狙っていたからです。最近は分からないですけどそれがピリピリしていたのにつながったのかなと思います。

 最初は個人レベルとか学年レベルで問題もあるしいろんなことに気づかなければいけないと思っていたからそこに気づいて話してということの繰り返しでした。だからそういうふうに思われていたのかなというのはあります。だから今はそういう意味では良くなってきているのは事実だし、でも余裕が出たかというとそうでもない。まだまだやるべきことはたくさんあって、それは一個ずつ潰していかなければいけないからそれはこれからインカレまでの一カ月くらいでたくさん向き合っていくことになるんじゃないかなと思います。

――去年と比べてチームの雰囲気はいかがでしょうか

内田 練習に対して意識が全然違うと思います。去年はサボる人が結構いましたし。

石田 ことしの方が真面目。

 というか多分今は(やるべきことを)していない人間がいたら「目標は何だ」というところから確認して、ということを繰り返しているからぶつかることが多いと思う。だから仲良しクラブというわけではなくてここは部活だから締まりはかなり意識してやっているかなというのはある。

石田 そのおかげでボトムアップはされた感じはあるよね。下級生のレベルが一気に上がって、それで上級生が逃げるように上がったのでみんながドンと上がった感じはあるかな。去年より遥かにボトム自体がドンと確実に上がっている感じかな。

 恐れずに戦う感じかな。それが違いなのかは分からないけど俺たちの色としては結構あると思う。

――内田選手はU23世界選手権に出場されましたが、参加してみていかがでしたか

内田 U23に関わらず、代表に選ばれてからクルー組んで練習している時というのはやっぱり苦しいし、自分自身ももっと上にいかなければやばいという焦りと付き合いながら練習していました。U23のレースの時も自分自身が足を引っ張っている部分もあるし、それが本当に情けなくて不甲斐なくて。で、レースもファイナル目指して、もっといえば(A)ファイナル以上のものを目指していたのですが結局Bファイナルでそれも総合順位4位で悔しいし情けないし苦しかったで、楽しかったことは一つもなかったかな。
 何ていうんだろう…余計にもっと上を目指さなければということに気づかされたし、一番海外の選手との差を感じたのは体格で、フィジカル面でもっと上に行かなければどうしようもないというカベに当たって、でもそのカベが見えたというのは良かったし、こいつら倒したら楽しいんだろうなという気持ちもありました。ただその道は果てしないけど…(笑)。複雑な感情でした。

――チームに何かフィードバックはされましたか

内田 乗艇では少しずつしていますね。全体の話にはする予定だったんですけど、時間がなくてまだできていないです。大した話もできないのですが、得て生かせるものは少しずつフィードバックしていくつもりです。

――東選手は早慶戦や軽量級選手権で結果を残しているシーズンです。去年は「結果が出ていない」とおっしゃっていただけに、それについてはご自身ではどのように感じていらっしゃいますか

 早慶戦で勝ったのは自分の中でもこの漕艇部に入った一つの目標だったから、それはやっぱり本当に嬉しかったし、レースを覚えていないくらいに出し切ったので後悔はないのは一つある。でも軽量級に関しては決勝に残って、決勝で日大のあのクルーと並べたときにカベを感じました。あそこにどうやって勝つのかをこのインカレで追い求めたいし、あそこに勝たないとどうしようもないけど個人レベルで今差があるのは事実だな、と。軽量級の3位に関しては悔しくて、2年前に3位を取ったのと今回3位を取ったのは全然違くて、2年前はすごく嬉しかったけど今は嬉しくないと言ったらおかしいけど、でも悔しさの方が勝ったなという感じです。

――石田選手は他のお二人と比べて出場試合は多くありませんでしたが、どのようなことを意識して練習していましたか

石田 早慶戦が4月に終わって(試合に出ていなくて)4カ月目。軽量級に出ないので何を目標に置こうかなというのはあったんですけど、僕が意識していたのはうっちーが最初に言ったように、艇を速く進めるということです。そもそも僕は体が結構大きいので、誰よりも艇を進めないとダメなのでそういうのは意識しましたね。試合がない分、目標はないんだけど日々のトレーニングでどうすれば速く進むのかなと、自分で小さな目標でも見つけてやっていましたね。その時は目標がなくて結構迷走していたんですけど、東とかにテクニックは及ばないので東の試合を見て「やっぱすげーな」って思ったり、勉強する期間ではありましたね。

内田 (軽量級と同時開催された)オープントライアルに出るって言ったけど就活の都合で出られなかったんだよね。

石田 そう。出るつもりだったんですけど外せない面接が入ってしまって出られなくなって…

内田 あの時はいろいろあったね。

「4年生が仲良くなった」(石田)

石田は不動のエンジン役として1年時から対校エイトの主力だ

――最近のオフはどう過ごされていますか

全員 出たーー(笑)。

 これ、もう用意してきてる(笑)。

石田 用意してきているかなあ、俺。まだ用意してないな。

内田 この間とっきーとこの三人の四人で映画を見に行こうって話になって、金曜日に行こうとして行ったら、その映画が木曜日までの公開で「まじかー」って。

 3週間で公開が終わるっていう(笑)。

石田 3週間で公開が終わるってやばくね?『ジョン・ウィック』って知ってます?キアヌ・リーブスの。

 見ようとしたものが第2作で、わざわざ行く前日にまだ前作を見てなかったので寝る間を惜しんで見て行くぞってなったのにやってないって言い始めて。

内田 良い席を取ろうと思って予約をしようとしたんです。そしたら「あれ、なくね?」って(笑)。

石田 公開3週間でなくなるっておかしくないですか。まだ「君の名は。」やってるんですよ(笑)。もううるさいよ、お前の名はって感じなのに。多分まだどこかで「シン・ゴジラ」もやってる頃でしたよ。それなのに「ジョン・ウィック2」は3週間でなくなるという。うっちーが海外に行っている間に「ジョン・ウィック」見に行こうってLINEもしてずっと楽しみにしていたのに。

内田 帰ってきて金曜日に行こうってなってたんですよ。それなのに…な?思い出しただけで悔しいわ。

石田 オフは、さっきも言ったんですけど最近ここに来て4年生が、仲が悪かったわけではないんだけど急に仲良くなった。

 仲が悪かったわけではないんだけど結構(4年生は)個人で動くのが多いから。

石田 最近4年生でどこかに行くのが多いな。

内田 ボルダリング行ってたね。

石田 うっちーが『ジョン・ウィック』見られなくてショックで寝込んだから(笑)。

 「疲れた。」って言ってね(笑)。ボルダリングはとっきーと良知と俺ととみちゃん(冨田剣志、スポ4=愛媛・今治西)で行きました。結構面白かったよね。

石田 あとは午後の練習が終わったら自転車で飛ばしてラーメン二郎へ行きます。

――やはりラーメン二郎へは今でも通われているのですね

内田 西台に二郎があるんですけどマジで楽しみましたね。海外に行って2日目で次郎食いたいなって思っちゃって。

石田 トッピングがすごいんですよ。

 すごかったね。

内田 豚増し、うずら卵…

 いや、分からないでしょ(笑)。

石田 二郎通には分かる。ひばりが丘に行きたいんですよね。ひばりが丘に行きたいのに…

内田 行きたいんだけど定期切れちゃったからさ。

石田 そろそろひばりが丘行かない?ひばりが最強。

内田 行かないと力が出ない。

石田 それな。東も(行こう)。

 この2人の二郎愛がすごすぎて。俺はいつも良知に連れ出されるんですけど。

石田 いやいや、引きずりながら連れていく。

 本当に引きずりながら。でも最近は「まじかー」とか言いながら行くっていう(笑)。

石田 西台へはチャリで10~15分くらいなんですけど結構疲れるんですよ。

 荒川とかの坂を上らなきゃいけなくて練習後になぜかストイックに、立ちこぎせずに座りながら坂を上るっていう(笑)。

内田 ケツ上げちゃダメだって(笑)。

 なんだかんだ楽しみながら行っているよな。

石田 あとどこか行ったっけ?

 前に新宿の中嶋という割烹料理食べに行くぞってなった。

石田 結構思い立ったが吉日みたいな、気まぐれロマンティックなんですよ、僕。気まぐれでふと思い立ったらまず東を誘って、でも絶対に東は来ないんですよ。そこでゴリ押しします。

 あとは同部屋のとみちゃんがフットワーク重すぎて、本当に外に出ないんですよ。だから「俺が行くならとみちゃんも連れていくぞ」って言ってとみちゃんと3人で行きます。

石田 うまかったよな。

 うまかった。あとスピーカーも秋葉原まで買いに行ったじゃん。

内田 なんか俺はぶられてね?

 うっちーはオフが合わないからいないの!せっかく行こうと思ったら映画はやってないし。それでボルダリング行こうってなったら行かないって言うし。

石田 ショックで寝込んでんの。

内田 知覚過敏で歯医者に行って麻酔をしたんですよ。それで起きたら麻酔が解けててめっちゃ痛かったの。そうだ、金曜日は全部予定がぽしゃったんだよね。二郎に行こうと思ったら二郎がしまっているし、映画もやってないし何しようってなっちゃった。

石田 僕の中ではまだ予定があって、ここのメンバーで海に行きたいんですよ。

 滝行じゃないの?

石田 滝行か海のどっちかに行きたい。でも滝行は金がかかるんですよ。あれって修行だから普通に行って入滝料が5000円くらいかかるんですよ。海行こうよ。金曜は?

内田 ごめん、俺歯医者だ。

石田 おいー!

 まあこんな感じで予定が決まっていくんですよ(笑)。

――入学時と比較して、4年生の代で変わった点はありますか

 自分は入寮したのが5月のゴールデンウィーク明けと遅くて、入ったらまずスポーツ推薦の三人(内田、石田と石橋広陸、スポ4=愛知・豊田北)があんまり仲良くなかったという(笑)。いきなりバチってて俺、得居、有田(雄太郎、法4=東京・早大学院)で入って「大丈夫かな」って思いました。

石田 バチッてなかったよ。

 バチッてた。個人レベルで動いていたのは事実。

石田 最初の1年生はな。

内田 最初は仲悪いよ1年生。

一同 (笑)。

石田 今はすごい仲良くなってるよな。

 今はすごく仲良い。その変化があったかな。

内田 そんな変わってないな。

――個人単位ではいかがでしょうか

石田 うっちーの髪型が。

 (爆笑)。

石田 最近床屋で切るようになったので、普通に格好良くなった。

内田 ちょっと就活が終わるまで。

石田 床屋で?

内田 うん。

石田 うっちーは髪を切る2000円をむっちゃ惜しむんですよ。2000円で切ってもらった方が格好良くなるのに、すげー自分のアレンジをするんですよ。

内田 誰も見てないしいいかなって。

石田 いやいやいや。普通に切れば格好良いのに、惜しむんですよ。

 バリカンで刈って、それで後ろの髪は部屋に来て「東、後ろ髪頼むわー」って電話来たりするんです。

内田 あとは学年LINEで後ろの髪を切ってくれる人を呼びかけます。

石田 ジュース一本でな(笑)。自分でやると最初の方は(慣れていない)バリカンでやるので、頭に大砲が乗っているんですよマジで(笑)。船の大砲が乗ってて頭に(笑)。

 (大爆笑)。

内田 空気抵抗が減る、流線形で(笑)。

石田 こっそり僕らの中で遊戯王のリボルバー・ドラゴンって呼んでましたもん。

 懐かしい(笑)。

石田 本当にそのくらいのレベルで刈っていたので。今は床屋に行けば普通に格好良くなるのに。

内田 それは床屋行って思った(笑)。プロは違うなって。就活終わってもこの髪型いいなって。

石田 だろ?絶対そうやって。

 なんで変わったことか…そんなに変わってないね。とみちゃんが私服を覚えたことかな。

石田 あー、Q(富田のあだ名)。Qね。

内田 ずっと本キャンも新宿もどこにでもジャージで行くから。

 みんな私服で行くのに「お前私服で行くぞ」って言ったら「いや、ジャージで」って絶対言うんですよ。

内田 ジャージが私服だから。

石田 新宿にPUMAのジャージで行くんですよ。

内田 一回僕、とっきー、東でプレゼントを買いに行こうってなって、とみちゃんも「俺も行くわ」って来たんですけど、駅来たら「ジャージやん」って(笑)。

 「マジか!」って。

石田 最近Qもおしゃれになったよな。クロアチアの時にQがニューバランス買ったの覚えてる?あそこくらいからだ。

 「選んでくれや」みたいに言い始めて…あそこで変わってきたね。聞いてみると意外と欲しいって言うんだよあいつ、可愛いから(笑)。

石田 ちなみにQっていうのはとみちゃんのあだ名なので、ちゃんとQって書いてもらっていいですかね(笑)。英語の大文字のQです。(あだ名の移り変わりは)とみちゃん、とみQ、Qです。

 それで「Q(冨田剣志、スポ4=愛媛・今治西)」ってして(笑)。あれ大事(笑)。

石田 (笑)。

――1年生も入ってきましたが、下級生に思うことは何かありますか

石田 僕は、下級生といいますか、推薦で入った人には厳しくしているんですよ。日大は推薦で13人取っているんですよ。それで明大は(推薦で入ってくるのが)9人かな。法大でも結構(推薦で)取っている中、僕らって2人か3人なんですよ。最高の戦力として入ってくるスポーツ推薦が、他の一般であったり未経験に負けたら絶対ダメですし、圧倒的な差を見せないとダメだと思っているので、それはずっと言っていますね、本当に。
 他の人には何も言わないんですけど、推薦で入ったからには、推薦で4年間ワセダでボートを続けると言って入ってくるわけなので、生半可では困るというか、「お前らが最高の戦力にならなアカンねんぞ」って意味で、めちゃくちゃ厳しくしています。それ以外は全然良いと思うんですけど、推薦で入ってくる人が引っ張らないとついてきたいと思われないし、メンバーになってあいつに勝とうという意識もなくなったら困るし、うっちーみたいな圧倒的な、世界に行くような人もいればついていくとなるけど、抜かれてしまったら元も子もないじゃないですか。高校の時にすごい成績を残して入ってきたんだから。それはずっと言っているよな?泣いてでも言うもん。

 ずっと言ってるな。…逆に自分は良知がそっち(推薦)に行く分だけミドルのあたりでボトムアップしているやつらに「(上を)抜け」と。そのくらいの勢いで食えという話は結構しています。でも自分たちが2年生の時にどうだったかと言われると、俺は推薦の三人と実力が離れすぎていてそいつらに追いつきたいと思いながら…。今もそうだし、やっぱりそういう気持ちが絶対大事だなと。
 スポ推だけだと勝てないのがワセダだから、そいつらがいて、その下に追いつきたいやつらがいて、やっとそれでチームが成り立つと思っているので、その意識をもっと持ってやってほしいなと思います。

内田 俺は結構未経験のやつを見てるかな。一緒にダブルで乗ったり教えたりして。

石田 この前尚歩(瀧川尚歩、法1=香川・高松)と乗ってたやん。

内田 瀧川と新井(裕也、社1=埼玉・早大本庄)と山中(裕一朗、スポ2=埼玉・本庄第一)とも乗った。やっぱり未経験の人を大事にして高め合ってほしいかな。「もっと来いや」みたいなところはあるけどね。

 本当にそう思う。がむしゃらさというか、ストイックさというか。

内田 東たちがまだ入っていなかった時に僕、良知、石橋は選考で「先輩食ったるわ」みたいな感じだったし、「エイト乗るわ」て感じだったんですよ。

――「もっと来てほしい」というのは他の4年生の方もおっしゃっていました

 (後輩は)どちらかというと縮こまってしまうというか、そういうところはあるかもしれない。

石田 4年生の良いところは吹っ切れるところなんですよ。僕は小さい頃から先輩関係なく結構いってたんですけど、今はおとなしいというか。

 おとなしさも大事なんですけど、がむしゃらさ、熱さというか。

石田 俺らの時は違ったよな。もっとガツガツいってたよな。

内田 一番最初の選考で勝った先輩と同部屋で、一カ月くらい口が利けなかった。水上は先輩だろうと関係なしに、「勝ちたいな」と思ってやっていたけど部屋は地獄だったね。何にも喋れなかった。

石田 そんな感じが今はないんだよね。ずっと伝えてるんですけどね。

 伝え続けてるな、良知とか。それが伝わるのがいつになるかだよね。俺が引退してそいつらが4年生になってからなのか、今なのか、1年後なのか。もしかしたら伝わらないかもしれないし。ワセダの今後はそいつらにかかっているので。 そんな感じかな、ちょっと熱くなっちゃった(笑)。

――みなさん去年までは仲が良い方といえば先輩や同期のお名前が挙がっていましたが、ことしはどなたと仲がいいですか

内田 同部屋のやつとはめっちゃ仲が良い。あとはいろいろ頼むことも多いし。

石田 そうだな。全然もっと来てくれていいのにな。東は結構(後輩との付き合い方が)うまいんですよね。

 まあいろいろ、井踏(直隆、文構3=東京・早大学院)とか光(伊藤光、文構3=東京・神代)とか尾崎(光、スポ3=愛媛・今治西)とか、3年生が多いかもしれない。

石田 それも良い意味で東に言ってることがあって、俺は東に「(後輩に)甘いんだ」って言っているんですよ。そう言っているから後輩が「東さん、助けてください」って意味なのか、東が上手いのか分からないんですけど、僕とうっちーのところにはあまり来ないですね。

内田 嫌われてる。

 いや嫌われてるわけではないと思うよ(笑)。

石田 俺は「東だけいいな」って思う。(東に)お前は甘いんだって言ってますね。

内田 俺は練習が好きだから、後輩と練習したいと思って。もっと(身体を)追い込みたくて、「エルゴをもっとやろうぜ」って言うんですけど、「きょうはちょっと…」って断られる(笑)。

 シューンてなっちゃう(笑)。

石田 うっちーはストイックすぎるよな。だって海外から帰ってきたその日の夜にウエイトしてるんです。「いや寝ろよ」って(笑)。

 次の日エイト乗るんだから休めって。

内田 Monster飲んだら元気になっちゃった。

――漕艇部4年目になります。部について思うことは何かありますか

 少なからず、日大とか、一橋大とか、明大とか、中大とは全然違う。部員の構成もそうだし。スポ推と内部と一般。でもこれがうまくはまっているときは強いっていうけど、2年前もそうだったから「確かにそうだな」って思う。一つの特徴としてそれがあるから自分も内部生として、頑張ってスポ推にとって刺激にならなきゃいけないかな。

内田 『負けない部』じゃなくて『勝てる部』にしたい。日大とかは常勝だから負けないって感じ。俺らは『負けない』じゃなくて『勝ちたい』っていう、そういうチャレンジャーというか、守るものがないから勝てる部というか。

石田 練習でも守りに入ったらダメなんですよ。攻めなきゃっていう姿勢を4年生が見せているので、勝ちにこだわっているところはあると思うんですよね。それが全員スポーツ推薦の学校なら、絶対『負けない』であって『勝ちたい』とかではダメじゃないですか。僕らは推薦は2、3人で、未経験で入った子もいて、内部生とかちょっとボートをしていた子も組んで、それで勝とうと決めているので。僕らがボート部の推薦枠を増やすわけではないし、みんなが混ざってそいつらに勝つぞって決めているのでそれは一つの特徴だと思いますね。

「世界で一番きついレースができれば良い」(内田)

内田は主将としての締めくくりの時期に入る

――競技の話に戻ります。早慶戦からのエイトのシート変更についてはどのように思われますか

 個人的には2番に乗って、早慶戦ではストロークに乗っているのですが、後ろに乗って気づくことも多いし、言えることもたくさんあるだろうし、自分で気づくこともあるし、今は自分の新しい課題も見つかっているので、後悔のないように自分のポジションをまっとうできればと思います。特にポジションに対してこだわりがあるわけではないので、そこで死ぬ覚悟を持ってやりたいと思っています。

内田 僕は…どうなんだろうな…。二面的というか、いろんなポジションに乗っていて、1年生の時は2番に乗って、新人戦(全日本大学新人選手権)ではストロークに乗って、インカレは3番で、去年はバウ、早慶戦は4番に乗って、練習で長いこと7番にのったこともあるし、いろいろやってきました。ストロークとかストペア(ストロークペア、ストロークと7番)になったらシングルに乗っているような感じで、自分のリズムで黙々と漕いでリズムをつくる。ミドルフォアのエンジンに乗ったら、ただただパワーとフィジカルで漕いで、バウペア(2番とバウ)に乗ったらクルー見渡して技術的に感じたことを言ったりという感じでいろいろやっているので、そんなに違和感はないけど、ただ「後ろがちゃんと漕ぎやすいリズムになっているかな」とかを気にします。
 あと「自分だけができている」と思ったら、その時点でプレイヤーとして終了だと思っているので、自分ができていてもできていなくても、課題を共有するというか、全員でやらないと艇は進まないので、エイトは特に。自分ができていないところをみんなに言うという感じですね。

石田 僕はずっと6番に乗っているんですけど、去年のインカレで一回ストロークに乗った時、僕の中でやっぱり6番が一番好きといいますか、エンジンが合っていると思うんですよ。僕はワセダの中でも戸田の中でも、記憶に残る6番になりたいなと思っているんです。「ワセダで6番といえばあの良知さんがいた」「昔に本当にすげー6番がいた」という風に、僕が引退しておじいちゃんになってもOBたちがあの時の6番は良かったねと言ってくれる6番になりたくて、自分からも6番と言っています。
 (2015年に)インカレで優勝した時がすごく嬉しくて、その時のストロークの長田さん(敦元主将、平28スポ卒=現日本紙パルプ商事)に「あの時それぞれ(のメンバーに)完全に役割があった。」という話をされて、「6番ペア(6番と5番)はどこの大学のやつよりも良知と是澤(祐輔前主将、平29スポ卒=現明治安田生命)は艇を動かした。」と言われたのがすげー嬉しくて。それが戸田でも「あいつが6番だったら怖いな」くらいに言われたいと密かに思っていて、いつでも6番を志願して乗っていますね。

――他大に目を転じると、ことしは例年以上に実力が伯仲している年だと思いますが、みなさんはどう感じていますか

内田 おっしゃる通り(笑)。

石田 僕は日大を意識していれば他にも勝てるので、やっぱり日大を意識していますね。僕らが優勝した2年前もずっと日大って言っていたよな。練習中もずっと「日大!」って言っていたので日大を意識すれば慶大、中大、明大、仙台大にも勝てると思うので日大ですかね。どう?

 まさに。

内田 油断も隙も作らず。準備の力ってすごく大事で、レースに勝つための準備が僕は重要だと思うので、トレーニングも栄養も休息もメンタルも何もかもレースに向けて準備する。あとはそれを全部出すだけって感じですかね。

――最後のインカレになりますが、どのような大会にしたいと思っていますか

石田 僕は本気でやり切って悔いが残らなかったらいいかな、と。最後なのでらいねんがないので悔いだけは残したくないなと思っていますね。僕はそれだけですね。なんとしても優勝はしたいんですけどね。

 2000メートルで鬼のように出し切る。その時は周りを見られないから自分たちのことだけに集中して、勝つことだけを考える。本当に悔いは残したくない。

石田 2000メートルを漕いでいるとちょっと途中で一瞬「休もうかな」っていうか、前も後ろもいるから「ちょっと自分が抜いても大丈夫かも」と思う瞬間があるんですよ。

内田 400(メートル)くらいね。

 すげー分かる。

石田 サボるではなくて、ちょっと水中抜いて…。抜くというのは、(その先が)キツイので、「このままいったら死ぬ」ってなって、一瞬「後から頑張るから…」っていう気持ちが来るの分かる?
 そこで2年前はコックスのコールで「ヤバい」って目覚めて勝ったんですよ。ことしはヤバいって思ったら負けだと思うので、スタートからそう思わずに攻めようかなと思っていますね。本当に(抜こうと思う瞬間が)来るんですよね。

内田 「守りに入れ」みたいな感じの。そこで攻めないとなのにね(笑)。

 辛いからな、やっぱり。

石田 そんなこと思っている瞬間にエイトの2000メートルならゴールして終わってるからね…。うっちーはどうなの?

内田 インカレかー…。2年前も言っていたんですけど、世界で一番きついレースができれば良い。一番苦しい、息ができないくらいのレースができたら良くて、望んでそのきつさに飛び込んでやるくらいの、「それで勝てるんだったらいくらでもやってやるよ」って感じですかね。死んでもいいって感じ。

――最後に一言意気込みをお願いします

石田 意気込みというか僕毎回なんですけど、このインタビューの時は(Tシャツを指して)これを着ているんですよ。全部さかのぼってみてください。全部これで来てるんですよ。

 (笑)。

内田 結構インタビュー一緒にしているけど毎回これ(笑)。

石田 「きょうも笑顔で臨んでくれた石田さん。6番として艇を進める。」みたいなプロフィールがあるじゃないですか。絶対このTシャツについて書いているんですよ。「きょうも着てくれました。トンカツ君Tシャツ。」みたいな。これは1年生から着ているんですけど、最初3枚あったのが残りがこいつだけになって、きょうのインタビューに臨んだので、これを載せてもらっていいですか(笑)。僕はもう一言はそれだけでいいです、一言。

 逆にやりにくいな(笑)。悔いなく集大成を見せられればいいかなと思います。

内田 僕はいつも目標とか意気込みを言うとコケるので、こっち(石田)が大口叩いているときに僕も大口叩くとロクな結果にならないのでこっちがガツガツいく分僕は繊細に(笑)。こっち(東)が準備して、俺は前を行くという感じですね。意気込みは言わないです(笑)。

――ありがとうございました!

(取材・編集 喜田村廉人、茂呂紗英香)

苦悩を共有してきた三人の、貴重な一枚を頂きました!

◆内田達大(うちだ・たつひろ)(※写真中央)

1996(平8)年1月7日生まれ。173センチ、71キロ。山梨・吉田高出身。スポーツ科学部4年。ポジションは対校エイトのストローク。海外から帰ってきたその日もトレーニングに励むというストイックさを持つ内田選手。セルフカットから、就活を経て床屋で髪を切るようになり、その仕上がりには本人も満足な様子でした。ストイックな姿勢で男子部を率いる傍ら、格好良くなった髪型にも注目です!

◆石田良知(いしだ・りょうち)(※写真左)

1995(平7)年10月26日生まれ。185センチ、88キロ。滋賀・彦根東高出身。スポーツ科学部4年。ポジションは対校エイトの6番。最後の対談にも恒例のトンカツ君Tシャツを着て臨んでくださった石田選手。意気込みの代わりにこのTシャツをアピールする様子からとても気に入っていることが伝わりました。思い入れのある6番で今までの経験をいかんなく発揮し、『ワセダの6番 石田良知』の名を戸田の地で轟かせることでしょう!

◆東駿佑(あずま・しゅんすけ)(※写真右)

1995(平7)年12月28日生まれ。171センチ、68キロ。東京・早大学院高出身。政治経済学部4年。ポジションは対校エイトの2番。後輩との付き合い方が上手いという東選手。石田選手に引きずられながらもついて行ってしまうというエピソードや、取材中常に笑顔の絶えない様子からその人柄の良さが伺えました。「鬼のように出し切る」という言葉の通り、最後のインカレに思いを全てぶつけます。