【連載】インカレ直前特集『One for Oar』 第8回 8+7:伊藤大生 × 8+4:鈴木大雅 × 8+3:堀内一輝

漕艇

 6年ぶりに対校エイトが勝利を収め、完全優勝を果たした早慶レガッタから3カ月。3年生からは伊藤大生(スポ3=埼玉・南陵)、鈴木大雅(スポ3=埼玉・県浦和)の二人が、2年生からは堀内一輝(スポ2=山梨・富士河口湖)が、早慶戦に引き続き全日本大学選手権(インカレ)の対校エイトのメンバーに選出された。最高の幕開けをを振り返るとともに、インカレへの意気込みを聞いた。

※この取材は7月30日に行われたものです。

「記憶がないほど頑張りました」(鈴木大)

鈴木大は、対校エイトでのインカレ出場は2回目となる

――春のシーズンを終えて、最近はどのような練習をしていますか

伊藤大 春が終わってからも全日本軽量級選手権(軽量級)は挟みましたが、結局インカレのエイトのスイープの練習がメインで行われていて、先週あたりからエイトの本格的な練習が始まりましたが、ほとんどがスイープの練習でした。

鈴木大 早慶戦が終わってからは上手な人と、技術的に劣っている人を組み合わせたりして底上げを図っていた時期でした。

――皆さんそれぞれ今の調子はいかがですか

伊藤大 個々の調子はみんなまずまずでしょうけど、まだエイトを組み始めたばかりなので完全に調子がいいとは言えないですね。

鈴木大 だんだん練習もハードになってくる時期なので疲れは溜まってるかなと思うんですけど、そこは割り切って考えています。

――早慶レガッタでは完全優勝を飾りましたが、前期を振り返っていかがでしたか

鈴木大 記憶がないほど頑張りました。

伊藤大 競技面だと早慶戦で総合優勝ができたことで今シーズンの勢いというものがついて、ここまでいい練習ができたかなと感じます。

堀内 早慶戦は見ていただいた通り、対校エイトは命からがら勝ったので、勝てたのはよかったんですけれど同時に課題も見えてきて、ここに至るまでその課題を潰すという練習ができたかなと思います。

――前期で印象に残ったレースはありましたか

伊藤大 レース自体は早慶戦と軽量級しかなかったので、やっぱり早慶戦が印象に残りました。

鈴木大 そうですね、早慶戦ですね。

堀内 同じですね。自分は早慶戦しか出ていないので。軽量級っていう体重じゃないですし(笑)。

「僕は褒めれば育つタイプ」(堀内)

2年生から唯一対校エイトに乗る堀内

――今回2年生1人、3年生2人での対談となりましたが、まず堀内選手の他己紹介をお願いします

伊藤大 力はあるやつで、エイトの中でもそういうポジションになっていて、毎回勝負どころでのレックという部分ではすごい期待できるものを持っています。あとはそれを自分からできればいいかな。

鈴木大 最近、(堀内選手が)練習に持ってくる水の話になったことがあって、その時、彼(堀内選手)は富士河口湖出身で水がきれいなところから来ているので、「水道水飲めねえ」って言って(笑)。これは泥水だって。ブルジョワな生活を送っていますね。

一同 (笑)。

堀内 泥水ですね。

鈴木大 なので彼のベッドにはクリスタルガイザーが常備されていますね。

堀内 最近は違いますよ!最近は富士の水です。

――それしか飲まれないんですか

堀内 それしか飲まないです。でもちょっと高いんですよね。

――続いて、伊藤選手の他己紹介をお願いします

堀内 正直、水上に出ると存在が軽くなりますよね(笑)。スーッと消える感じがします。

――それはどういう意味ですか

堀内 影が薄いんです。陸の上だと優しい先輩なんですけれども、水上だと何も言わないんです(笑)。

鈴木大 これは昔から言っているんですけれど、結構優しいみたいな評価が多いんですけれども、彼(伊藤大)は掃除の分担を割り振る役割があって、その時に気に入らないやつを一番辛いところに割り振っているんじゃないかって俺は思っています(笑)。

伊藤大 やってないから大丈夫(笑)。

堀内 それは勘弁してください。

伊藤大 あれ結構苦労してつくってるんだよ。一番辛いところは1年生に基本回せって言われてるから、やったことがない人をちゃんと割り当ててる。

――最後に、鈴木選手の他己紹介をお願いします

堀内 かなりしっかりされています。しっかりしすぎて固いイメージがありますね(笑)。例えば何か役割があったとするじゃないですか。その時に黙々と一人でやられていて、手伝ったほうがいいのか悪いのかがわからないぐらい黙々とやっています。

伊藤大 その感はある(笑)。

堀内 なので(鈴木大の)周りをうろうろして様子を見ながら、結局何も手伝わず部屋に戻るんですけど(笑)。

伊藤大 すごく真面目で、競技面でも向上心があって、練習でもすごい辛くなるように厳しいメニューを行なっています。この前「それはどうなの?」と思ったのは、ウエイトで重い重量をやりすぎで腰を壊したことですね。

一同  (笑)。

伊藤大 ケガをしないためにウエイトをやっているのに、「そんな重さでやる?」と思いましたね。みんなの視線を集めていました。

――お互いに尊敬している点や、逆に直して欲しい点はありますか

堀内 大生さん(伊藤大)の直して欲しい部分としては、怒っているかどうかわからない点ですね。ちょっとわかりづらいので、「私は怒ってます」という声が欲しいですね(笑)。大雅さん(鈴木大)にはもうちょっと優しくして欲しいですね。

伊藤大 無理無理(笑)。

堀内 僕は褒めれば育つタイプなんで。

鈴木大 そういう奴は褒めたらただ図に乗るだけだよ(笑)。

堀内 尊敬している点は、大雅さんは先ほどおっしゃった通り、しっかり者で、仕事を黙々とやって積み上げていくところが尊敬できます。大生さんは柔らかい方なんですけど、頭の中ではしっかり考えて回してくれている点がかなり尊敬できますね。

伊藤大 (堀内は)打たれ強くなって欲しいですね。少し打たれ弱い部分があるので。

鈴木大 伊藤ちゃんはエルゴ(ローイングマシン)がめっちゃ回るんですよね。大体体重が重いほうが(エルゴの数値が)出るんですけど、彼のほうが軽いのに俺より10秒近く早いんでやべーって思いますね。

伊藤大 (鈴木大は)さっき話した通り、何に対しても真面目に取り組むところですね、尊敬できるところとしては。

鈴木大 (伊藤大は)そろそろ猫の皮を被るのはやめろということですね(笑)。この柔らかいつかみどころの無い感じも多分計算だと思うんですよね。

一同 (笑)。

伊藤大 (鈴木大は)もう少しオンオフがあってもいいのかなと思います。ずっとオンで頑張っているので。

鈴木大 いやいやそんなことはない。オフはオフだから。オフも全力だから。

伊藤大 たまにギターとか弾いてるけど(笑)。

――オフの日もあったと思いますが、オフの日や練習の息抜きには何をされますか

伊藤大 オフの日は、僕は家が近いので家に帰ってのんびりするか、誰かに誘われたら、夜にご飯を食べに行ったりしますね。

――どなたと行かれるんですか

伊藤大 結構バラバラですね。漕艇部の暇な人たちで「どっか行く?」ってなって行くことが多いですね。

堀内 一日のオフだったら(普段)この二人にしごかれていて、精神的にも疲れているので寝ているか読書をしながらのんびりした1日を過ごしています。長期オフだと実家に帰って、きれいな水を飲みながら(笑)、バカンスを楽しんでいます。

――どのような本を読まれるのですか

堀内 最近は『ザ・ゴール』ですね。小説です。企業の成功を説明する内容ですね。

鈴木大 普段は映画を見たりとか、趣味で写真をやってるんで、気が向いたらカメラ片手にどこか出かけたり、この間の軽量級の(オフの)ときは能登半島をぐるり一人旅してました。ただただ日本海を眺める旅でしたね(笑)。

「1日も止まることなく成長したい」(伊藤大)

伊藤大は2年春から対校エイトに乗り続けている

――ここからはインカレに向けてお伺いします。先ほどまだエイトで練習ができていないとおっしゃっていましたが練習はこれからということですか

鈴木大 先週まで、ストロークに乗っている内田さん(達大主将、スポ4=山梨・吉田)がU23世界選手権に出ていたので、それでちょっとクルーが組めなくて、それ以外のエイトのメンバーは4人乗りとかで違う艇に分割してって感じで。今週ようやく乗り始めました。

――伊藤選手はポジションが7番に変更になりましたが、それについて思うことや必要だと思うことはありますか

伊藤大 7番になったことでパワーというよりもストロークの漕ぎをまねして後ろにつなげるということがメインの役割なので、そこが今までと違う点で、自分は漕ぎがあまりうまくないのでそこが今上手くしなければならないという課題がより大事になりましたね。

――鈴木選手は対校に乗ることに慣れてきたのではないかと思いますが、対校に乗るということに何か思いはありますか

鈴木大 慣れてはいないですけど、まあ女子がたとえ完全優勝しても、男子の他の種目が勝っても、最後の種目が勝たないと水の泡というか、歓喜の渦の中には入れないので、エイトが勝つか否かというのはそれぐらい大事なことだと思っています。

――堀内選手は今回対校に乗る唯一の2年生ですが、ご自身の長所はどのように考えていらっしゃいますか

堀内 一応パワーを評価されて対校に乗っているので、そこを伸ばしながら、技術面が今のところ周りの皆さんから劣っているのでそこを徐々に伸ばしながらダイナミックなパワーを出せるようにしたいと思います。

――クルーとして、また個人としてこの夏に強化したいポイントは何ですか

伊藤大 僕はやっぱりとにかく漕ぎの技術をさらに向上させたいですね。あと1ヵ月くらいなんですけど、それまで1日も止まることなく成長したいですね。

鈴木大 レースの後半までばてない体力をつけたいなと思います。

堀内 パワーです。

伊藤大・鈴木大 お前は技術だろ(笑)。

堀内 技術もですけど、やっぱりパワーを…あの、夢はオールを思いっきり折ることなんで(笑)。折ることに意義があるんですよ(笑)。

鈴木大 折ったら元も子もないだろ(笑)。

堀内 大会ではやらないですよ。練習でですよ(笑)。

鈴木大 その分のお金はお前が払えよ(笑)?

――そのためにどのような練習をしていくか、具体的な考えなどはありますか

伊藤大 僕に関しては技術なので毎回の練習に目的をもってその目的を達成するためにまずアップからしっかり意識して練習していく感じですかね。

鈴木大 エルゴの数値が(2000メートルで7分)30秒を切れている人と切れていない人がいて、自分は切れていない人なので、他の切れていない先輩と一緒に追い込みまくってみたいなのをやったりしていますね。

堀内 パワーについてはこの部割とメニューがきつくて、そのまま真面目にやったら潰れるレベルできついので、それを真面目にやっているというのと、技術の面に関しては先輩方を巻き込みながら陸上で考えを聞いたりとかイメージを聞いたりとかしながら向上させていっています。

――特にアドバイスを受けている先輩はいらっしゃいますか

堀内 東さん(駿佑副将、政経4=東京・早大学院)、得居さん(亮太、法4=東京・早大学院)に最近一番アドバイスを頂いています。水上では大雅さんにもよくアドバイスを頂いています。

――インカレでの目標は

伊藤大 個人としては2000メートル通して最後まで漕ぎやリズムを後ろまでつなげるというのが個人としての目標です。全体としては部の掲げる目標通りインカレでのエイト優勝ですね。

鈴木大 全体としては優勝なんですけど、このシーズンが終わると自分たちの代がメインなので、個人としては先輩たちの運営する姿を見て、いいところは奪い、自分が来年最上級生で引っ張っていくときにどうするかを考えながらやっていきたいと思います。

堀内 個人としては1回燃え尽きてみたら面白いかなと思います。なのでまあ、頑張ります(笑)。全体としては(お二人が)先ほどおっしゃっていた通りですね。

――意識している大学や他大の選手はいらっしゃいますか

伊藤大 やっぱり意識するとしたら日大、エイトだと仙台大あたりがライバルになってくるのかなと思っていますし、個人の選手だと明大の古田(直輝)選手、菊池(渉太)選手とかですかね。

鈴木大 やっぱり日大は毎回すごい完成度で来るので、それ以上の完成度を出さないとというのは常に意識しないといけないかなと思っています。

堀内 エイトがインカレで2000メートル通すのが初めてになるので、ほぼすべてが敵で自分よりうまい存在ですね。

――最後にお一人ずつ意気込みをお願いします

伊藤大 常に最大努力でやり抜きます。

鈴木大 ここで頑張って寿命が30年くらい縮まっても構わないぐらいのつもりで頑張ります。

堀内 即死しないように頑張ります。

――ありがとうございました!

(取材・編集 石塚ひなの、林大貴)

力強い表情の三人ですね!

◆伊藤大生(いとう・だいき)(※写真中央)

1996(平8)年9月13日生まれ。180センチ、72キロ。埼玉・南陵高出身。スポーツ科学部3年。ポジションは対校エイトの7番。鈴木大選手に「柔らかいつかみどころの無い感じも多分計算だと思う」と言われ否定も肯定もしなかった伊藤大選手ですが、真相はいかに…?インカレでは日々磨きをかけているという技術力でクルーを優勝へと押し上げてくれるでしょう!

◆鈴木大雅(すずき・たいが)(※写真右)

1997(平9)年3月13日生まれ。177センチ、77キロ。埼玉・県浦和高出身。スポーツ科学部3年。ポジションは対校エイトの4番。何事にも真面目で、オンもオフも全力という鈴木大選手。「寿命が30年くらい縮まっても構わない」というほどの熱い思いが、対校クルーだけでなくワセダ全体の力強いエンジンとなるに違いありません!

◆堀内一輝(ほりうち・かずき)(※写真左)

1998(平10)年2月14日生まれ。185センチ、85キロ。山梨・富士河口湖高出身。スポーツ科学部2年。ポジションは対校エイトの3番。水のきれいな富士河口湖出身で水道水は全く飲まないといった徹底ぶり。対談中は終始絶えない笑顔が印象的でした。対校クルー唯一の2年生が、ダイナミックなパワーを武器にクルーを底上げする姿に注目です!