【連載】インカレ直前特集『One for Oar』 第6回 2+S:金子怜生 × 2+B:土屋夏彦

漕艇

 学生日本一を決める全日本大学選手権(インカレ)がまもなく開催される。男子舵手付きペアで出場するのは、金子怜生(社3=東京・早大学院)、土屋夏彦(スポ2=山梨・吉田)、菱谷泰志(スポ1=鳥取・米子東)の3人だ。今回はストロークの金子とバウの土屋にインカレへ向けての心境を伺った。真逆の性格の2人がペアを組み、大舞台へと挑む。

※この取材は8月2日に行われたものです。

「自分も成長しないと勝ちは見えてこない」

初のインカレ出場となる土屋

――まず昨シーズンの振り返りから伺っていきたいと思います

金子 自分はインカレに舵手付きフォアで出場して準決勝敗退という結果でした。優勝を目指していたので非常に不甲斐ない結果だったと思います。

土屋 僕は去年はインカレには出ていなくて、オックスフォード盾レガッタに出場していました。ことしがインカレ初出場なので、怜生さん(金子)といい成績を目指せたらなと思います。

――やはりインカレ経験者として、先輩として引っ張っていこうというお気持ちはありますか

金子 いや、2人で1つなので。先輩後輩関係なくやっていこうと思っています。

土屋 僕はとても頼りにしているので、ついて行くだけです。

金子 思ってもないこと言うなよ(笑)。

――早慶レガッタではお二人とも第二エイトで出場されていました

金子 早慶レガッタは、ワセダとしてもシーズンインの初めのレースということで、今シーズンでみると完全優勝も達成することができたので、なかなかいい滑り出しだったと思います。ワセダ全体としていいスタートが切れました。

土屋 第二エイトで怜生さんと一緒に乗らせてもらっていました。結果勝つことができて、怜生さんと一緒にいい流れで勝ちにつなげていくことができているので、この勢いでインカレでも結果を出すことができたらと思います。

――ではそれらのレースを踏まえて見えてきた課題などはありますか

金子 とてもたくさんありすぎて…。全体的に何もかもが足りないのではないのかと思っています。自分は秀でたものが何もないというところも弱みだと思うので、そこは底上げしていかなければならないと思います。早慶戦でいくら勝っても相手はケイオーだけで、インカレで全国の大学と戦うとなると、それだけでことしの夏の結果を占うことはできないのかなと。早慶戦は勝ちましたがまだ課題は多いので、あと1ヶ月もありませんがこのまましっかり成長していきたいです。

土屋 早慶戦では8人や9人で漕いでいて、怜生さんの他にも頼りになる先輩方や同期がいて、なんとか勝つことができました。インカレの舵手付きペアは僕と怜生さんと菱谷の3人で漕がなければいけないので、頼りっぱなしにはできないです。やはり自分も成長しないと勝ちは見えてこないと思うので、早慶戦の時よりも一皮も二皮もむけた自分になっていなければならないなというのはひしひしと感じています。

――逆にレースを踏まえて見えてきたご自身の強みや、今回のレースで注目してほしい長所などはありますか

金子 この種目はインカレの数ある種目の中で一番重いオールを引かなければならないので、そういう部分では僕は部内で一番ウエイトを上げることができるので、自分の適正にあった種目であり、そこが強みかなと思っています。それを生かして勝つべきところかなと思います。

土屋 長所…うーん、長所…。

金子 適当に言えばいいんだよ(笑)。

土屋 適当とか言わないでくださいよ(笑)!そうですね、ペアは2人で乗っていてストロークの漕ぎにバウが合わせなければいけないので、その特性上バウが結構色々と言われるシーンが多かったりします。それを我慢できるところですかね。

金子 打たれ強いというか。

土屋 いや、そうでもないですね(笑)。そうでもないです。

金子 いや我慢している方だよ。

――お2人とも3年生と2年生ということで、学年ごとの長所や特徴についてもお伺いしたいです。

金子 そうですね、僕らの学年はプライベートの部分では結構バラバラなことが多いのですが、彼ら(2年生)はまとまって仲が良いという印象があります。まぁ僕が孤立しいてるだけかもしれないですけど(笑)。

――オフの時に学年内で遊びに行かれたりはしますか

土屋 学年内は…派閥というか(笑)。

金子 いや、派閥じゃないですけれど(笑)!僕の場合は高校の時から一緒だったマネージャーがいるので、仲良く映画見たりはしませんけれど(笑)、遊びに行くというよりはちょっと飲みに出かけたりはします。

土屋 僕も同期の山中裕一郎くん(スポ2=埼玉・本庄第一)や川田翔悟くん(基理2=東京・早大学院)とはお昼ご飯を食べたりはしますね。一緒に映画見に行ったりは僕もしませんけれど(笑)、仲はいいと思います。

――自分たちの学年のカラーはどんなものだと考えていますか

金子 結構僕らの学年は我が強い部分が他の学年と比べてあると思います。1つ上の学年と比べると弱いですが、相対的に見たら強い方なのかなと。「自分は自分」という感じですね。彼ら(2年生)は結構「みんなでやろうよ」というのが良くも悪くもあるのかなと思います。

土屋 本当に怜生さんのおっしゃる通りで…。

金子 目を見て話すんだよ(笑)。

土屋 そんな今言わないでくださいよ(笑)!緊張してしまうんです…。おっしゃる通り、2年生は比較的仲良しで3年生は1人1人我が強いというか、しっかりしていらっしゃるという感じですね。

――その中でのご自身のポジションはどのようなものですか

金子 非常によろしくないのですが、僕は結構ガーッと言ってしまう方ですね。「お前違うだろ!」と(笑)。思ったことはしっかりと言っていくタイプですね。女子だろうが男子だろうが、気にくわないことはそう伝えます。大分批判はあるようですが…特に女子から(笑)。

土屋 僕は批判とかは怖いのでなるべく当たり障りなくいく感じですね。ヘラヘラしているというか…どうですか?

金子 え?お前の?まあ敵を作らないようにはしているなという感じですね。非常にうまくやっています。当たり障りなく、自己主張もあんまりしませんね。

土屋 自己主張も怖いので…(笑)。

――では今回は真逆の性格のお2人でペアを組まれたということですね

金子 そうかもしれないですね。

土屋 言われてみれば、という感じです。

金子 僕は乗艇中も結構いろいろと言うので、(土屋は)怒っているとは思うのですが、競技の特性上顔は見えないんです(笑)。僕がガーッと言っても、こいつは「はい!」って返事しか聞こえないので、そこで上手くいっているのかもしれません。

土屋 楽しくやらせてもらっています(笑)。

――まさにこういうところですね

金子 できた後輩を持ちました。

土屋 ありがとうございます。

――お二人はとても仲がいい印象を受けますが、学年を超えて遊んだりすることはありますか

金子 遊ぶというよりは、ここで生活している分にはみんな後輩たちのところへ行ってだらけたりしていますね。だる絡みですか(笑)。まあ向こうはだるがってると思います(笑)。

土屋 楽しいです。構っていただいているだけでも嬉しいです(笑)。

一同 (笑)。

金子 ぶっちゃけどうなの?

土屋 いや本当にだるいとは思っていないですよ僕は(笑)!

金子 あとでこいつ1人にさせて喋らせてください。

土屋 やめてください(笑)!

「自分の頭の中で解決しないで、それをしっかり発信する」(金子)

金子は冷静に現状を分析する

――ではここからまたインカレの方へ話題を移させて頂きます。練習の雰囲気はいかがですか

金子 割といいかたちで来ているかなと思います。毎週毎週課題を見つけてそれを達成していくのを積み重ねていく感じですね。毎回目標設定をして、ロジカルに見立てているつもりです。結構「ここができていなかったね」という反省はありますが、ポジティブなものなので、個人的には上手く練習をつくることができているかなと思います。

土屋 怜生さんやコックスの菱谷は自分の思ったことをすぐにちゃんと言ってくれるので、課題とかもたくさんあげてくれますね。僕は結構自分自身に集中してしまうタイプなので、いい意味で役割担当ができているのかなと思います。実際このクルーで乗っていて、成長しているなという実感もあるので、とても楽しい、いい雰囲気でやれていますね。

――どのような部分で成長を感じましたか

土屋 シンプルに漕ぎの技術ですね。そこが成長したなというのは、コーチ陣にも言われましたし、自分でも実感できています。

――現時点でのお2人の呼吸や調子はいかがですか

金子 やや右肩上がりですかね。急激な右肩上がりではありませんが、組んでから1ヶ月程経っていても落ちることはないですね。衰退することなくずっとこのままで行けばと思います。

土屋 同じでこのまま下がらずに行けるよう頑張ります。す

――1年生の菱谷さんがコックスなど、違う学年で組まれる中で意識していることはありますか

金子 訳あり1年なので(笑)。

土屋 僕と同級生です。それで経験者なので、知っているというか。

――1年生で司令塔というのは少しやりづらいのではないかと思っていました

金子 彼は良くも悪くも無神経に「こう思います」ということを結構言うので、そこは良いところだと思います。1年生のときに上級生が乗っていると、委縮して自分の意見を言えないという部分があるので、僕は発信してくれるように求めるようにはしています。そうしないと三人でつくるクルーなのに、乗っている中で一番上の学年の人の責任になってしまって、そういうことはおもしろくないので、二人には自分の思ったことを言うように、言わなければどう思っているか聞くようにはしています。

土屋 さっきも怜生さんがおっしゃっていたように、菱谷は結構がつがつ言うので、それが僕からすれば意外と気持ち良かったりもするのですが、たまに少し不安になるというか、言い過ぎじゃないかというシーンもあるので、そこは僕がうまい具合にできればいいのかなという感じですかね。

――クルーとしてのお互いの印象はどうですか

金子 土屋は真面目だと思います。愚直にやってくれるんですけど、本人も言っていたように、がーっと視野が狭くなって、自分の中で何か解決しないときは結構一直線になってしまうところがあります。そこも長所であり短所であるところだとは思います。それは悪い意味のほうが少ないですけれど。「これをやろう」、「今日はここを意識しよう」という部分で体現性は高いとは思います。菱谷は幅広くやろうとしてくれています。彼自身高校では漕手をやっていて、高校の最後からコックスに転向したという部分があるので、漕手の気持ちをわかっているコックスという部分ではすごく強みであると思います。今まで1年生が入ってきて、彼自身の評価は自分としては低かったのですが、一緒に乗ってみたら「こういうところは良いところあるな」とかそういうところはすごくありますね。自分が求めているようなことを、心をくみ取って本人が感じているのかわからないですけれど、すぐ言ってくれることは彼の強みだと思います。

土屋 早慶戦の第二エイトのときから乗っていて感じていたのですが、怜生さんは意外とロジカルというか論理的にものを考える人なのかなというのをすごく感じています。怜生さんは自分でもおっしゃっていましたが、僕の印象ではプライベートでは結構がつがつ言うというイメージだったのですが、意外と冷静に「ここがだめ」というのを考えられるところは僕にはない部分なので、シンプルにすごいなというのは感じます。菱谷は高校時代3年間ちゃんと漕手をして、その上で大学にあがってコックスをやっているので、漕ぎ手の気持ちを読み取ってくれて、技術面に関してもわかっているので、そこはワセダの中でも、他の大学の中でも優れた部分じゃないのかなと思います。

――意外とロジカルと言われていましたが、それを受けてみてどうですか

金子 学院なのでやっぱりそこは(笑)。高校のときの監督が情熱派だったので、そういうのも必要だとは思いますが、そこが少し自分では嫌な部分でもあり、自分にあったところでもあります。勢いだけで進んでいくのもたまには必要ですけど、それがマイナスに働くときもあるので、そこは疑問を持たないように、「なんでこうなっているからこうなって」とか「自分はこう考えているからこうしよう」などそういうのは自分の頭の中で解決しないで、それをしっかり発信するようにはしています。そうしないと不満が生まれてしまうかなと。

――こういった先輩の考えを改めて聞いていかがですか

土屋 いや、もう頼りになる先輩なので。

金子 そんなことないです。寝言で悪口言っています(笑)。

土屋 なんでそんなありそうなことを言うんですか!

――このクルーの強みはどのようなところですか

金子 組んだ当初から割と漕げていたということで、これまで大きなケガや休みがなく、ずっと漕いでいけています。例年のかたちだと舵手付きペアは新人が乗るので、しっかりした練習をするまでに時間がかかっていましたが、上級生が乗っているということもあり、練習を積めてきているという点はかなり良いところだと思います。

土屋 早慶戦が終わったあとに、いろんな人と乗ってみる期間があったのですが、怜生さんと乗ってみて意外と合って、舵手付きペアになってから練習していくのも、順調に右肩上がりでいけているというのも楽しいです。

――インカレでの目標は

金子 そこはやはり優勝だと思っていますし、上級生であえてこの種目に出るという意味もしっかり踏まえて、そういう目標設定が必要だと思うので、優勝を狙ってはいます。

土屋 僕も優勝です。

――インカレに向けた思いや意気込みをお願いします

金子 大学生である以上、僕は全日本よりはインカレっていう個人的な部分が多いので、大学生のうちに大学生の大会で優勝するというのが、1番今頑張っている自分を肯定するようなことになりますし、今までやってきたことすべてが肯定される瞬間というのはインカレで勝つことしかないので、そういう部分では勝たなければいけない、勝ちたい、そっちのほうが多いですね。勝って感謝を伝えるというのもあると思いますが、それはもちろん結果論なので、しっかり自分のやってきたことを正当化するために勝ちたいという思いです。

土屋 舵手付きペアは他の種目に比べて漕ぐ時間も長いですし、運ぶ重さもあるので、やはり練習もきついですが、きつい思いをしているのだからこそ勝ちたいなというのはあります。怜生さんと早慶戦のときから一緒に乗ってきて、クルーのつてもいろいろ指導してくださっているので、勝ってほしいなというのもありますし、1年でコックスに乗っている菱谷も勝たせてやりたいなというのはあるので、インカレは勝ちたいなという気持ちがすごく強いです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 吉田安祐香、加藤千咲)

仲良し?な一枚を頂きました!

◆金子怜生(かねこ・れお)(※写真左)

1996(平8)年9月26日生まれ。166センチ。72キロ。東京・早大学院高出身。社会科学部3年。ポジションは舵手付きペアのストローク。対談中、後輩である土屋選手をリードする頼もしい姿が印象的でした。インカレでも後輩2人をリードしてくれることでしょう!少し前までは登山が趣味だったという金子選手。オフの日に日帰りで山に行くほど熱中していたそうです。最近は読書にハマっているらしく、空き時間を見つけては読んでいるのだとか。

◆土屋夏彦(つちや・なつひこ)(※写真右)

1997(平9)年5月26日生まれ。177センチ。75キロ。山梨・吉田高出身。スポーツ科学部2年。ポジションは舵手付きペアのバウ。取材中とても丁寧に受け答えをしてくださった土屋選手。インカレに向けてますます成長していきたいという熱い思いが伝わってきました!そんな真面目な土屋選手ですが、最近は『ポケモン』のゲームにハマっているという可愛らしい一面も。