【連載】早慶レガッタ直前特集『起死回生』 【第6回】S:東駿佑副将

漕艇

  ストローク。クルーのリズムをつくり出す、重要かつ責任あるポジションだ。今回その役目を任されたのは副将でもある東駿佑(政経4=東京・早大学院)。昨年の思いや現在の状況まで、本番まで2週間を切ったこの日その胸の内を伺った。

※この取材は4月4日に行われたものです。

「かなり一つになってきた」

2回目の対校エイト選出ながら、ストロークの大役を任された

――現在のご自身の調子はいかがですか

 いい感じに仕上がってきているなと思います。体のキレも出てきて練習できているかなという感じです。

――副将に就任されて約半年経ちますが、ご自身ではいかがですか

 高校の時も副将を経験して、大学も副将になって、やはりこのポジションってすごく難しいなと。時間が経てば経つほど思うようになりました。

――具体的には

 自分の中の考えとして、キャプテンを常に支えたいなと、一人にしたくないなという思いでやってきているのですが、やはりどこかそれができなくなるときもあるのかなと思ったり、できてないんじゃないかなと思うときもあったり…。そこがすごく難しいところですね。

――副将は二人いらっしゃいますが、ご自身の役割は

 石田良知(スポ4=滋賀・彦根東)という副将がいて、あいつは実力もポテンシャルもかなりあって、スポーツ推薦でもありますし、実力でもどんどん引っ張ってほしいなと思いはあります。自分はだからこそ逆に下級生や同期、みんなを見て悩んでる人とかいたら話せるポジションになりたいなと思っています。

――同じ副将の石田さんについての印象は

 超変わり者っていうのはあるんですが(笑)、でも変わり者って本当にいい意味で変わっているなと思っていて。自分にないものがありますし、超面白いですし、追い込む時はめちゃめちゃ追い込んでますし、そういうところは尊敬していますし、超いいやつですね。変わり者ですけど。

――内田達大主将(スポ4=山梨・吉田)についてはいかがですか

 うっちー(内田)に関しては本当にストイックだなと。本当にその一言に尽きる。超ストイックで、絶対練習で手を抜くことはないですし、背中で引っ張ってくタイプだなと。見てて、最近よく強くまた感じますね。

――部の雰囲気はいかがですか

 新チーム発足当時に比べて、かなり一つになってきたんじゃないかなというところはあります。今早慶レガッタに向かってやっていますが、対校、セカンド(第二エイト)、女子、それに出る人だけではなくて、サードのメンバーもそうですし、1年生も入ってきて新しい風も入ってきて、かなり良い方向に進んでいるんじゃないかなというふうに思います。

――昨年のチームと違うところは

  違うところ?どこなんだろうな…。去年は去年で(特徴が)あったかなと思いますし、どこが違うって言われると難しいなと思うんですけど…。変わったところはもしかしたらないかもですね。外から見ないと、中でやってたらちょっとあんまり分からないかもです。自分がいざこう幹部になってみて、何か変わったかと言われるとどうなのかなという感じです。ちょっと難しいですね。

――ご自身では変わったと思いますか

 そうですね。自分自身はやはり3年生の時と比べて、最上級生になって下級生の時とは全く意識は変わっています。やはり人に見られているということを強く感じます。そこは自分が見られているという思いでずっと練習して、日々の生活もそうですし、練習もそうですし、全てやっているので。

――普段仲のいい方は

 やはりもう得居(亮太、法4=東京・早大学院)じゃないですかね。学院(早大学院)で一緒だったのもそうですし、今となっては対校に乗って一緒にやっていますし。なんだかんだいってすごくずっと一緒にいますね。4年生は就活がもう始まっていて、その話も結構しますし。本当にいろんな話をして、かなり信頼していますね。

――クルーの話に話題を移します。最近の練習はどんなことをされていますか

 本当に基礎基本を徹底するという。あとはレースに向けて、メンタルもそうですし、テクニカルもレースでいいレースができるように、自分たちの実力を発揮できるような練習をしています。

――去年の冬にクロアチアに遠征に行かれましたが、そこで学んだことは何かありますか

 かなりトップレベルの方と話したのですがやはりデータを使ってとにかく緻密に準備と練習をしているんだなと思いましたね。それが強い要因なのかなと思いました。

――個人としてクロアチアに行く前と行った後で変わったことはありますか

 大まかのことはちゃんとやっていたんだなと、今までボートを漕いできて何か変わったかなと言われるとそうじゃないかなと思うのですが、もっと自分もボートに対して緻密に準備できるのかなということを強く感じましたね。

――クルーを組んでから克服した課題はありますか

 クルーは今も課題と向き合っている最中なので、課題解決できたかというのは大会で分かると思います。個人的には身長が低くて体格的に不利なところはあり、フィジカル的には他大や他のメンバーに比べても足りないところがあるので、そこをどういうふうに埋めるかというのは常に考えながらやってきて、こう4年生になってやっとかたちになってきたのかなというところはあります。

――どういうところで実感されますか

 普通に漕いでいてもそうですし、エルゴのスコア見てもそうですし、本当に1年生や2年生と比べたら一歩ずつ成長しているのかなと思います。

――クルーの強みはなんでしょうか

 強み。まとまったらはんぱじゃない団結力があるというところですかね。その1点に限りますね。一人一人の個性が相当強いので、うまくいかなければバラバラになってしまう可能性もあるのですが、今の状態ならかなりまとまってますし、本当にいろいろなことがありましたけど、今すごくまとまっているんじゃないかなと思います。

――逆に弱みや課題は

 弱みか…個性が強いからこそぶつかり合うことが多いのは確かですね。そこは上手く回るときはまとまれますし、ぶつかり合いすぎると…個性の強さというのはある意味強みであり弱みでもありますね。二つが一緒になっているという。

「自分のためにも、みんなのためにも、ワセダに関わる人のために」

昨年は全日本大学選手権(インカレ)で2位に輝いた

――本番に向けて伺います。まず昨年の早慶レガッタからのシーズンを振り返っていかがですか

 早慶レガッタから言うと、結果沈没となって…本当に悔しいというかどこに思いをぶつければいいのか分からない。悔しさなのか、何なのか。自分の気持ちの整理もつかなくて、なんか何やってきたんだろうなという感じで、本当に抜け殻みたいな状態でした。その後軽量級(全日本軽量級選手権)も結局敗者復活で落ちて、やばいなと思って。このボート人生このままじゃまずいなと思って、インカレに臨みました。石阪さん(友貴、平29政経卒)とペアになって、石阪さんとは本当に相性も良かったですし、そんな中でも本当に苦労があったのですが、結果自分たちが積み上げてきて話し合ってきて優勝はできなかったけれど2位という、かたちある結果は残りました。でも優勝できなかったその悔しさを全日本(全日本)でぶつけようとなって、でも全日本はどこか難しくて勝てなかったという。どうなんだろうな…でも悔しさだな、全体的に。インカレで表彰台に上れたのは良かったけれど、結局優勝もできなかったし、どれも取り切れなかったという印象が強いシーズンだったと思います。

――去年の早慶レガッタ以後サイクルがあまり良くないまま進んでしまったと思いますが、どのようにチームとして立て直してきましたか

 しっかり何が良くて何が良くなかったのかというのを分析するというのと、あとはその分析のもとしっかり練習するしかなかったので、何を変えるかではなくて、やはり自分たちの課題を明確にして、それに向けて練習することしか解決する道はないと思い、それをとにかくやっていました。

――ことしの話に話題を移します。隅田川でも何回か練習されていると思いますが、チームの隅田川での漕ぎはいかがですか

 やはり隅田は難しいなと思いますね。高校でも漕いで、大学でももうことしで3回目になるのですが、やはり戸田のコースとは違うなという印象は強いですね。

――漕げている、漕げていないという手応えはいかがですか

 いい感じになってきていると思います。一回一回練習を積み重ねるごとに、自分たちの課題が分かってそれを解決していくという流れはできているので、だいぶ良くなってきているんじゃないかなと。自分が漕いでいていい方に進んでいるなという印象があります。

――慶大の印象は

 いつもより増して強いんじゃないかなと思います。高校の時から続けている同期も確実に成長していますし、さらに未経験者の人たちもポテンシャルの高い人たちで、一生懸命練習してここまで対校に乗ってきていて、(慶大は)6連覇も懸っていますし、相当まとまりがあって脅威になると思っています。

――昨年漕ぎ切れなかった3750メートルへの挑戦となります

 いやもう勝つしかない。勝つ。そこ一点です。それしか考えないで今練習していますし、3750メートルで1本も慶大に負けない気持ちです。

――現在対校エイトは5連敗中ですが

 結局対校に乗ったのがこれで2回目で、去年負けという結果になりましたが、6連敗とか5連敗がどうとかではなく自分が勝ちたいし、このチームで勝ちたいし、その思いしかないです。連敗とか考えずにとにかく勝つと。それだけです。連敗とかは全然気にしていないです。

――ことしのクルーは4年生が多いですが、何か話し合われることはありますか

 本当にいろいろ話し合いました。いろんなことですね、いいところもそうですし、指摘し合うべきところもそうですし。個性も強いですし、だからこそまとまれれば強いです。まとまるために、勝つために、常に話し合っていました。

――上級生と下級生で温度差があった時に配慮などはされていましたか

 上級生と下級生であまり温度差を感じなくて、みんな勝ちたいと思ってやっていてその思いはみんな一緒なので、配慮とかも特になくて本当に一緒にやっています。当然ながら最上級生は引っ張る、それに対して何かあれば意見もしてもらう。一緒に課題をつぶしていっていいところをつくっていくというのは変わらないです。みんな高い意識を持ってやっているんじゃないかなと思います。

――クルーをまとめる秘訣(ひけつ)は

 まずクルーキャプテンが内田なので、その方針に自分がストロークとしてどういう風に考えているのかというのを付け加えていくという。基本的には(内田に)ついていき、何かあれば自分がどんどん意見を言っていくスタイルです。自分の意見をしっかり言うことかな。漕いでいるときも我慢しない、言いたいことは言う。その結果クルーがまとまるんじゃないかなと思いますね。

――早慶レガッタに向けての意気込みをお願いします

 勝ちますということですね。勝つしかない。もう最後だし、今思うと自分のためにも漕ぐんですけど、主務の山崎(直、商4=東京・早大学院)もそうですし、稲門の森内(龍、商4=東京・早実)もそうですし、OBの人たちもそうですし、最上級生になっていろんな人に支えられているんだなと本当に強く感じます。だからこそ、その人たちのためにも勝たないといけないという思いは強いです。自分のためにも、みんなのためにも、早大に関わる人のために勝ちたいなと思います。

――ありがとうございました!

(取材 喜田村廉人、編集 加藤佑紀乃)

◆東駿佑(あずま・しゅんすけ)

1995(平7)年12月28日生まれ。171センチ、68キロ。東京・早大学院出身。政治経済学部4年。ポジションは対校エイトのストローク。「難しいな」と時に質問に悩みながらも真摯(しんし)に応えてくださった東選手。ラストの早慶レガッタに懸ける思いの強さが言葉の端々から表れていました!