【連載】早慶レガッタ直前特集『起死回生』 第4回 5:飯尾健太郎 × B:得居亮太

漕艇

 今回登場していただくのは、得居亮太(法4=東京・早大学院)と飯尾健太郎(教3=愛媛・今治西)だ。得居は対校エイトに、飯尾は第二エイトに初出場だとなる。それぞれの早慶レガッタに対する思い入れを伺った。

※この取材は3月1日に行われたものです。

「1ランク2ランク、ステップアップできた」(飯尾)

初出場の早慶レガッタに意気込む飯尾

――早慶レガッタの独特の雰囲気についてはどのように思っていますか

飯尾 僕は得居さんとは違って早慶レガッタ自体が初めての出場で、1年生の時は新歓で、2年生の時は桜橋の上から見るだけでした。隅田川でどれだけ船が揺れるのかも分からないですし、そういう点では不安もあります。逆にそれを武器にして、怖いもの知らずというか、思い切ってぶつかるだけだと思うので、楽しんでいきたいとは思います。

得居 早慶レガッタは隅田川でやる分、コースも波もいつもと違い、風も強い時期なので、もはや別物という感じですね。僕らのために何万人ものお客さんが見に来てくれるという独特の雰囲気の中でやれるのはやはり光栄なことですし、楽しみたいかなと思います。

――去年の早慶レガッタはどのような思いでご覧になっていましたか

得居 僕は早大学院時代に早慶レガッタに出場して、僕のミスが原因で負けてしまって。大学に入ってからも普通に負けてしまったので、正直勝つイメージが湧かないというか、どうすれば勝てるんだろうと思いながら去年のレガッタを迎えました。とにかくついていくだけでしたね。

飯尾 1年生の時の対校エイトは失格負けで、去年は沈没という結果を僕は橋の上からビジョンで見ていました。僕自身も悔しかったんですが、乗っている先輩方が一番悔しかったんだろうなと思って。僕が言える立場じゃないかもしれないんですけど、去年までの早慶レガッタは悔しさしか残っていないんじゃないかなと思います。

――沈没という結果について

飯尾 まさか、という思いでした。前例はあるらしいんですけど、まさかあんなことが本当に起こるとは思ってなかったので、その時は言葉が出ませんでした。

得居 僕も一緒でことしこそは勝つという先輩たちの思いを知っていた分、どんどん船が沈んでいくのを見るのはつらかったですし、悔しかったです。今でも結構思い出します。

――得居さんは去年の早慶レガッタでは、第二エイトで3年ぶりの勝利を収めました

得居 当時の4年生が3人乗っていて、学院(早大学院)の直属の先輩も2人いたので、その先輩たちを勝たせたいという思いがとても強かったです。隅田川ではできなかったですけど、戸田での再レースで勝ってめちゃくちゃうれしかったですし、レースに勝って泣いたのはあの時が初めてですね。

――昨シーズンを全体的に振り返って

飯尾 チームとしては、男子部はなかなか良い結果が出ず、悔しい思いをし続けたと思います。その中でも僕はつかめたものが多かったかなと思います。初めての全日本大学選手権(インカレ)出場もありましたし、全日本選手権(全日本)にも初めて出場することができました。僕個人としてはボート競技に関して1ランク2ランク、ステップアップできたかなと思います。

得居 チームとしては、おととし男子がエイトでインカレ優勝して、去年はそのプレッシャーに押し負けてしまって本来の力が発揮できなかったレースが多かったという印象です。個人としても、1、2年時ではインカレで良い順位を残せていたんですけど、去年は初めて順位を残せずどうしたら勝てるんだろうと分からなくなった時期もありました。でもなんとか全日本で順位を残せて立て直せたというのは良かったかなと思います。

――昨シーズンを通して見つかった課題はありますか

飯尾 僕はテクニックの面ですかね。ただエルゴをガンガン回したら速いっていうわけじゃなくて、その力をいかに水上でボートに伝えるかっていうところで苦労したので、これからはフィジカル面だけでなくテクニック面での(先輩たちとの)差を詰めていかないといけないと思います。

得居 僕は勝負弱さですかね。これまではとにかく上のクルーに食らい付いていこうとしか考えてなかったんですけど、3年生になって速い船に乗るようになってからは、ハイレベルな相手とのレースが増えました。それにまだ慣れていなくて、ここぞという場面で前に出られて負けるというレースが何度もありました。でもこれを3年生で経験できたというのは非常に大きいことだと思うので、これを今シーズン、まずは早慶レガッタで勝負勘を生かせればいいかなと思います。

――昨シーズンを通して得た収穫はありますか

飯尾 やっとボート競技が分かってきたと思います。これまではただ船に乗って、漕いで、動かしているだけって感じだったんですけど、昨シーズンを通してちょっとボートについて分かってきました。感覚的な部分や、自分がどう体を動かせばどうオールが動くかを考えるようになったのは良かったと思います。

得居 下級生の頃は下級生同士で組むことが多かったので、4年生のラストレースというものをあまり経験したことがなかったのですが、昨シーズンは4年生と乗る機会が多く4年生の思いを近くで感じ取ることができました。これまでは、言い方は悪いですが自分が良ければいいという部分も少しあったんですけど、4年生のために勝ちたい、勝たせてあげたいと思うようになりました。他人のために勝つことの大切さに気付くことができて良かったです。

――オフシーズンはどんな練習をしましたか

飯尾 オフシーズン…

得居 オフ短かったもんな、ことし。

飯尾 そうですね。上級生は初めて海外遠征に行って、そこで学んだ技術を部に還元してもらったので、それを取り入れていくって感じでしたね。

得居 僕はクロアチアに行ったんですけど、そこで僕たちの漕ぎの課題点を指摘していただいて、今は現地のコーチの方に教えていただいたことを全員でやっている途中段階ですね。オフシーズンは教えてもらった漕ぎに近づこうって感じです。

――具体的に海外の練習はどのように違いましたか

得居 これまでは強く漕げばいいという考えだったんですけど、それはそうじゃないよと言われました。練習メニューも理論的というか、科学的根拠の基づいたメニューが多かったです。そういう意味でも海外遠征は意義のあるものだったかなと思います。

――早慶レガッタにむけて特別な練習はしていますか

飯尾 特別なことはしてないですね。とにかく基本を徹底しています。

得居 強いて言うなら、ことしは小艇も使って、みんなが船の進む繊細な感覚とかバランスを感じられるような練習を取り入れています。

――内田達大主将(スポ4=山梨・吉田)の印象はいかがですか

飯尾 やはり内田さんは主将になる前からなのですが、誰よりも練習する人で、チームで一番、極端に言ったら戸田で一番練習していると言っても間違いではないくらいです。下級生の時に僕は本当に内田さんには結構怒られたのですが、本当に内田さんの言っていることは間違いないなと一緒にいる時間が長くなるにつれてそう感じます。

得居 背中で見せるという部分もあるのですが、しっかりみんなを引っ張ってくれている姿勢を持っていて、キャプテンらしいキャプテンという感じです。

――4年生の代はどんなカラーを持っていますか

飯尾 下級生の目から見ると、全体を見ている印象です。自分が頑張るだけではなく、他人を巻き込んで、下級生、同期みんなを巻き込んでみんなで頑張ろう、みんなで練習しようという雰囲気がありますね。

得居 個性的ですね。個性的な人が多くて、自分をしっかり持っている人が集まった代なので、いろんな方向を向いてしまったらやはりうまくいかないのですが、一つの方向に向いた時にはとてつもないパワーが発揮されるのではないかなと思います。

――ことし得居さんは最上級生に、飯尾さんも上級生になりますが意識の変化はありますか

得居 1、2年生の時は自分が強くなることに必死で、自分が頑張らないとこの部に置いていかれるという強迫観念があり、自分のことをやるので精一杯でした。最上級生になって周りを見る余裕が出て、後輩と一緒に練習したり、ご飯を食べたり、周りを巻き込んで全員で強くなっていこうという思いがあります。

飯尾 僕は性格がマイペースで、1、2年生の時はすごく自分勝手で…。4月から3年生になって、下級生も増えてくるので自分の気分だけではやったら駄目だなと思います。練習がしんどくても自分がしんどそうにせずに頑張ろう、特に下級生と同じクルーになった時にはその下級生を盛り上げていこうと、そういう上級生になろうと意識していますね。

――下級生を巻き込んでというお話がありましたが、プライベートも含めて、どのように下級生と関わっていきたいですか

飯尾 僕が下級生の時に上級生からいろんな声をかけてもらってのびのび練習や生活させてもらいました。新しく1年生が入ってきたら、僕が下級生の時にしてもらったように居心地の良くて上級生と練習しやすい環境を作りたいです。一緒にいて萎縮してしまうのではなくて、いい意味で先輩に付いていこうと思わせられる上級生になりたいと思います。

得居 合宿中にご飯に一緒に行くなど、自分から積極的にやろうかなと思います。

「今自分がやってきたことが正しいと確信を持っている」(得居)

最上級生になって心持ちが変わったという得居

――今回の対校エイトにはどんなメンバーが集まっていますか

得居 僕よりエルゴも速くて、水上も速くて、実績もある人が多く乗っていて学ぶところは多いです。非常に自分が成長できるエイトだなと思います。

――ことしの対抗エイトの強みは何だと思いますか

得居 4年生が9人中6人乗っていて上級生中心のクルーです。僕を含めいろいろな経験をしていますし、同期の石田(良知、スポ4=滋賀・彦根東)と内田はエイトでインカレ優勝も経験していますし、佐藤(修平、文4=秋田)は付きペアでインカレ優勝をしています。勝ちの経験をしっかり持ったクルーなので、そこは強みかなと思います。

――早慶レガッタはご自身の中でどのような大会ですか

飯尾 僕は1年生の時の新歓で見た早慶戦がきっかけでボートを始めました。ナチュラルにすごいな、自分ができるのではあればこの場で戦いいたいなと。僕の中ではインカレ、全日本に並ぶくらいすごく大きな大会です。

得居 チームとしても目標として早慶戦完全優勝を掲げていて、やはりその中でもキーになるのは対校エイトだと思います。ここずっと負け続けていますし、勝たないといけないなと思っています。個人的には学院の時に自分が腹切りをして慶大に負けてしまって、その悔しさが1年経っても癒えず大学でも続けることにしたのですが、最後の早慶戦で対校借りを返す最大のチャンスだと思うので、隅田川で借りを返したいと思います。

――早慶戦への意気込みをお願いします

飯尾 『耐えて勝つ』ですね。僕は意気込みになったらこの言葉しか言わないのですが、僕が高校時代に野球部の監督から言われ続けてきた言葉です。「しんどい時にやめてしまったら絶対勝てないよ、しんどい時に我慢しなければ勝てないよ」と言われました。それは本当にボートにも通ずるものがあるので、早慶戦も『耐えて勝つ』でいこうかなと思います。

得居 僕は『集大成』で。実際にはインカレや全日本は残っているのですが、ここまでボートを6年近くやってその集大成が早慶戦で出るかなと思います。勝つか負けるかで、今まで自分がやってきたことが正しいのか間違っているのか確認したいですし、今自分がやってきたことが正しいと確信を持っているので絶対勝てるかなと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 加藤佑紀乃、松澤勇人)

◆飯尾健太郎(いいお・けんたろう)(※写真左)

1995(平7)年4月28日生まれ。176センチ、71キロ愛媛・今治西高出身。教育学部3年。同期が大好きだと語る飯尾選手。「僕の一方的な片思いかもしれないですけど」と笑いながらも、同期愛の強さを語ってくださいました。同期会をするときも幹事を務めることが多く、学年のムードメーカー的存在だそうです。

◆得居亮太(とくい・りょうた)(※写真右)

1995(平7)年10月12日生まれ。175センチ、70キロ。東京・早大学院高出身。法学部4年。ポジションは対校エイトのバウ。入部当初タイムが一番遅かったと語る得居選手。「それでも対校エイトになれるということを後輩は僕の背中から感じ取ってほしい」と後輩への思いを語っていました!