手ごたえを感じつつ、ラストレースへ

漕艇

 きのうとはとって代わったような秋晴れの下、全日本選手権3日目が開催された。この日は2艇が敗者復活戦、4艇が準決勝に臨み、決勝進出を懸けて戦った。予選組5着から敗者復活戦で1着と躍進を見せた男子舵手付きペアを含む2艇が決勝進出を決め、残りの艇は惜しくも順位決定戦へと進んだ。

 

 穏やかな波の中、まず出漕したのは女子舵手なしペア。スタートから日体大と横並びの接戦に。ワセダは先頭を保っていたものの、日体大の猛攻を受けリードを許してしまう。ラストスパートをかけ粘りの漕ぎを見せたが、差を最後まで詰めることはかなわず、悔しいレースとなった。女子シングルスカルでは北村綾香(スポ2=滋賀・膳所)が出場。自身が「格上の相手」と評価する大門千紗選手(日田林工高)も出場するハイレベルなレースとなったが、中盤で相手を差すチャンスをつかむ。目標としていた2着でのゴールとなり、あすのレースにつなげた。女子ダブルスカルは前艇を捉えることができなかったものの、終始安定した漕ぎで2着を守り切り決勝進出を決めた。

順当に決勝へと駒を進めた女子ダブルスカル

 熱戦が繰り広げられる中、ひときわ熱い展開を見せたのは男子舵手付きペアだ。「これまでのレースプランだと通用しない」(佐藤修平、文3=秋田)。予選の結果を受けて全日本という大舞台を肌で感じ、全く異なるレースプランで挑んだ今回のレースは勝利への執念を他艇に見せつけた。スタートでは前に出られず、第3クオーターでは一橋大にも先行を許し一時は4着となってしまう。しかしそこからラスト250メートルで怒涛(どとう)の追い上げを見せ、ついには1着でフィニッシュ。「捨て身のプラン」が功を奏し、あすの決勝に駒を進めた。この流れを引き継ぎたいところであったが、男子舵手付きフォアは仙台大に単独リードを許し、大阪市立大と2位争いを展開する。スタートスパートから良いリズムを保ち続けるも、中盤から逆風の影響や大阪市立大の追い上げに対応しきれず硬さがでてしまい、惜しくも3着となった。また関西電力美浜など強豪ひしめく舵手なしペアの準決勝では序盤から積極的にレースを進め、社会人クルー相手に善戦するも一歩及ばず。表彰台を狙っていただけにレース後には悔しさをあらわにした。

激戦を制し、表彰台を狙いに行く男子舵手付きペア

 全日本の舞台はあす終わりを迎える。それは同時に今シーズンが終わることを意味し、同時に4年生のラストレースを意味する。得居亮太(法3=東京・早大学院)は「菅原さん(拓磨、国教4=東京・早大学院)を1位で終わらせてあげたい」と同じクルーの4年生に対して熱い気持ちを述べた。その思いは部員全員同じである。今こそ『One WASEDA』を体現し、笑顔でラストレースを迎えてほしい。 

(記事 茂呂紗英香、写真 石塚ひなの)

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結果

【敗者復活戦】

▽男子部

【舵手付きペア】

C:佐藤修平(文3=秋田)

S:髙山格(スポ1=神奈川・横浜商)

B:堀内一輝(スポ1=山梨・富士河口湖)

7分50秒58【1着 決勝進出】

▽女子部

【舵手なしペア】

S:田口えり花(商3=埼玉・浦和一女)

B:土井鈴奈(教4=埼玉・浦和一女)

8分09秒38 【2着 順位決定戦へ】

【準決勝】

▽男子部

【舵手なしペア】

S:東駿佑(政経3=東京・早大学院)

B:石阪友貴(政経4=東京・早実)

7分19秒33 【3着 順位決定戦へ】

【舵手付きフォア】

C:片所宏介(社3=東京・早大学院)

S:有田雄太郎(法3=東京・早大学院)

3:金子怜生(社2=東京・早大学院)

2:得居亮太(法3=東京・早大学院)

B:菅原拓磨(国教4=東京・早大学院)

7分06秒47 【3着 順位決定戦へ】

▽女子部

【シングルスカル】

北村綾香(スポ2=滋賀・膳所)

8分34秒88【2着 順位決定戦へ】

【ダブルスカル】

S:木下弥桜(スポ1=和歌山北)

B:佐藤紫生乃(スポ4=宮城・塩釜)

7分51秒23【2着 決勝進出】

コメント

C:佐藤修平(文3=秋田)

――予選から修正された点やクルーで話されたことは

これまでのインカレからのレースプランだと通用しないというか、それで挑んでも後悔するかなと思ったのでレースプランをがらっと変えて臨みました。ぶっつけ本番ではあったのですがそれでいくらか攻められたという感じです。

――予選ではスタートで出て敗者復活戦ではラストスパートが決まった印象を受けましたが

本当はきょうも最初の1000メートルで出たかったのですが、そこまで出られなくて。他のクルーもスタートに力を入れるクルーが同じ組みだったので、まず中盤までしっかり付いていけたというのが良かった点かなと思います。それがあったから最後に勝負ができました。

――レース全体をどのように評価されますか

2000メートル全体を通してだとまだ課題があるし、安定感がないと思うのですが何より1年生二人の本当の本気が見られたというか。意地が見られたという点では個人的にうれしいし、頼もしく思います。

――先行を許す展開の中でどのようなコールを意識されましたか

出られていても相手も落ちてくると思っていたので、そこはとにかく冷静に落ち着かせるようなコールを意識してしました。

――あすはインカレ決勝でも当たった日大や慶大がいます。どのように戦っていきたいとお考えですか

実力や経験でも絶対的に相手の方が上なので。きょうやったプランは捨て身のプランというか、それをもう一度ぶつけたいなと思います。それでダメならしょうがないので。引退する気持ちでやりたいと思います。

2:得居亮太(法3=東京・早大学院)

――きょうのレースを振り返っていかがですか

全日本大学選手権(インカレ)から、スタートで出られないという課題があって、この全日本選手権に向けてはとにかくスタートから出るということを課題にしていました。それはきょうのレースが一番できたと思っていて、負けてしまったんですけど、1000メートルまでいいリズムができて、良かったんだけど・・・という感じですね

――スタートスパートからコンスタントの漕ぎにうまく移行したように見えました

きのうのレースで、コンスタントに入るときの艇速の落ちが激しかったので、そこをうまく決められたのは良かったですね。

――第3クオーターで粘りきれませんでしたが、その要因は

大阪市立大を相手に前に出ることをあまり想定していませんでした。出られたときの対策で、何を変えるとか、片所(宏介、社3=東京・早大学院)に艇身差を言わせるとかを考えていたんですけど、いざ自分たちが出て、相手が近づいてくるときの対策をあまりしていなくて、そうなったときに全員が硬くなってしまったところは反省点かなと思います。

――コンスタントの際の漕ぎの長さが課題とおっしゃっていましたが、それについては

1000メートルまではスタートスパートのいい漕ぎを継続できたっていうのもあったんですけど、奥の艇が近づいてきたり、風が途中で逆風になったりということもあって崩れてしまったので、コンスタントは引き続き課題かなと思います。

――最初に崩れてきたのは長さの部分ですか

そうですね。

――最後にあしたへの意気込みを一言お願いします

決勝に行けなくて、5位も8位も変わらないかなっていうのは正直あるんですけど、菅原さん(拓磨、国教4=東京・早大学院)のラストレースなので、菅原さんを1位で終わらせてあげたいなというのは、僕だけでなく他の4人も感じていると思うので、あしたも全力で、予選で負けた東海大もいますけど、ぶっつぶしていく勢いで行きたいと思います。

北村綾香(スポ2=滋賀・膳所)

――きょうのレースを振り返って

きょうのレースは予選のタイムでも今までの実力でも格上の相手がいたんですけど、しっかりそこに食らいつく気持ちで前半挑戦しようという気持ちで臨みました。もともとの目標が順位をつけるということだったので、後半はしっかり着実に2着に上がれるようにという気持ちを持って臨みました。

――全日本級の試合では復帰戦となりましたが、手ごたえはいかがでしたか

しばらく漕げない時期とか大会に出られなくて厳しい時期もあったんですけど、そこでしっかり積み上げてきたものを今回の大会でも発揮できたかなと思っているので復帰戦としてはすごく良い手ごたえでした。

――大門選手についてはどのように感じていらっしゃいますか

まだ私よりも二つ下にもかかわらず、技術もポテンシャルもスタミナも凄くあってこれからボート界を背負っていくような女の子なんですけど、私ももっと上を狙っているので今後はしっかり倒していきたいなと思っています。

――本日のレースプランは

おとといの予選も一緒だったのですが前半スタートの500(メートル)でしっかり出て、そこからもし相手に出られていたらそこで距離を空けずに、逆に自分が出ていたら距離を空けるようにと思って最後まで漕ぎ切るイメージでプランを立てていました。

――途中で追い上げを見せましたがそのときはどのような気持ちだったのでしょうか

前半は相手に出られていたんですけど、まだ(相手が)見えるところにいたので中盤でここで追い上げないとこれ以上チャンスはないなと思って気合いで足蹴りいれて、気持ちで勝ちにいったという感じです。

――予選からきょうまでで意識されたことはありますか

身長が高いため、手足の長さを生かすというのが自分の強みで、特にきょうは手足の長さを意識して漕ぎました。

――あしたの順位決定戦への意気込みをお願いします

あしたは少しでも良い順位でゴールしたいと思います。また、シーズン最後の大会なので、ここでしっかり今シーズンの自分の練習の成果をしっかり出し切ってこれからに向けた良いレースにしたいと思います。

B:堀内一輝(スポ1=山梨・富士河口湖)

――きょうのレースを振り返っていかがでしたか

いつも最初スタートからかなり相手と艇差を広げることができるレースが多かったんですけど、わりと詰まっていて、焦りながらも残り1000メートルでラストようやく上げて勝ったという展開でした。

――きのうのレースを受けてクルーの皆さんとお話しして改善された点はありますか

インカレ(全日本大学選手権)のときのレースプランと同じプランを全部切り捨てて全く新しいレースを今回漕いでみて、やっとちょっと結果が出たという感じでした。少しレートが高くなっているのと、あと気持ちで頑張ろうと話をしました。

――きょうのレースプランを教えてください

一応スタートで出て相手を見ながらという感じだったんですけど、まあ出られなくて少し焦りながら食らいついたという感じです。

――明日の決勝に向けて意気込みをお願いします

インカレのときこんな感じで上がって表彰台にも登れなかったので、せめて表彰台上って、かなり頑張って1位を狙いたいと思います。