大学日本一を決める全日本大学選手権(インカレ)が目の前に迫っている。シングルスカルに登場するのは有田光佑(創理4=東京・早大学院)。そしてダブルスカルには菅原諒馬(商1=東京・早大学院)と寺田圭希(人4=滋賀・膳所)の1年生と4年生コンビで臨む。初めてであろうと、最後であろうとクルーはみなインカレに対し強い思いを持ち、それをレースにぶつけてくるだろう。それぞれのクルーの心境に迫った。
※この取材は8月25日に行われたものです。
「やはりいくらでも伸ばせる」(菅原諒)
インカレ初出場となる菅原諒
――きょう対談のメンバーが4年生二人、1年生一人ですが、お互いの他己紹介をお願いします
菅原諒 僕と寺田さんがダブルスカルで出場します。寺田さんは基本的なところからしっかりしていて、クルーの雰囲気もいいです。生活態度はちょっといろいろ僕らに指導をいただくときもあります。本を勧めてくださって、おかげで本を読む機会が増えました。ボートだけじゃなくてそういった生活面の改善もできて、本当に寺田さんには感謝しています。
寺田 後輩の菅原諒くんはちょっとまだ1年生で甘いところもあるんですけど、1年の割にはしっかりしていて吸収はものすごく早くてやりやすいなと思っています。今まで高校生でこういう固まってなかった部分をすぐに吸収してくれるので、仕上がりは良くなってきていています。
――有田光さんの紹介をお願いします
寺田 有田光くんは去年理工学部の漕艇部から入ってきて、情熱を持ったパワフルな人です。毎日遅くまで練習していますね。
菅原諒 トレーニングルームにこもっている姿をよく見かけるので本当に努力家だなと思います。シングルスカルって1人なので、精神的にくることがありますが、そんな中しっかりメニューをこなしていて、ものすごく負けてられないなって思いますし、素直にとても尊敬しています。勉学面で負担が大きいので、理系のボート部員って少ないのですが文武両道できてすごいなと思います。
――いろいろな人が漕艇部にいると思うのですが、今のチームはどんな雰囲気だと感じていますか
寺田 毎年人も、コーチも増えてきて、年々レベルが上がってきていると思います。インカレにすべてのクルーがエントリーするっていうのは僕の4年間では初めてのことなので、非常に強くなり活気にあふれてきているなと感じています。
有田光 外から入ってきて思うのは、理工漕艇部の時より、指導体制がしっかりしていて、チームで漕ぎのサイクルなどがちゃんと決まっていて、しっちゃかめっちゃかな方向に行くことがなく同じところを目指して全員で合わせていくことができるということです。練習でもちゃんと寄りどころがあって、それに向かって練習していけばいいと明確に分かっているので、すごく入ってきて変わったなと感じます。今までと違うなとはとても思います。
菅原諒 僕は早大学院出身なんですけど、日頃から大学生の先輩の練習を見ていて、すごい練習しているなと思っていました。入ってみて確かに練習はきついですが、もちろんしっかりと着実に前に進んでいるなと実感でき、先輩方が僕に優しく接してくださって、充実した生活が送れています。早大学院から大学漕艇部に入る人って1学年2、3人とかであまりいないのですが、思っていたより本当にいい所だっていうのが第一印象です。自分の身になると思います。このチャンスを生かしていきたいです。
――前期を振り返っていかがですか
寺田 全員中日本レガッタに出ていてそこではあまり結果がでなかったので、夏はしっかりと結果を出していきたいです。
菅原諒 僕は運動不足を感じ、最初は苦労したこともありました。しかし、高校の時よりも体力もパフォーマンスもついたように感じます。春の間で順調に実力を伸ばすことができたのでこのままこの流れで進みたいです。
――個人やクルーで感じた収穫や課題はありますか
有田光 練習しすぎて体重が落ちちゃったというのがあります。
寺田 僕らはこのクルーを7月から組んで、しっかり一本で進めていくにはどうしたらいいかということを徹底的に追及していきました。それに対して課題に作ってアプローチしているのですが、しっかり前からというのを中心にやっていてだんだんと良くはなっています。ただ、課題としては前からしっかり掴むということが、まだできていないので、そこを大会に向けてしっかりやっていきたいです。
――この春を振り返って刺激を受けたレースはありましたか
菅原諒 早慶戦の第二エイトのレースを見てすごく刺激を受けました。夏の結果であれば比較的慶大が結果を残しているのですが、第二エイトで早大が慶大を見事に差して勝利していたので、やはりいくらでも伸ばせるんだと感じました。あのレースはすごい刺激になりましたし、また来年早慶戦に出たいなという気持ちは強くなりました。
寺田 僕も早慶戦の第二エイトを見て、(漕艇部が)全体的な下の層から強くなっていると感じましたし、全クルーがつながっていると感じた試合でした。
有田光 自分が思ったのは、結局(早慶戦に)出ていないわけで悔しいと感じました。自分が勝って喜んでいるのを見ていて、うれしい気持ちももちろんあるんですけど悔しいという気持ちもありました。そういう意味でいい刺激にはなったのかなと思います。
「高校全部懸けてやっていたものを最後負けたままで終わるのは悔しい」(有田光)
インカレに向けて闘志を燃やす有田光
――オフの日もあったと思いますが、オフの日は何をされていましたか
寺田 僕は2つあります。1つは外に出て歩いたり、写真を撮ったりすることです。もう1つは部屋でゆっくりしながら本読むことです。
――先ほども寺田選手が本に詳しいというお話が出ていましたが、チームメイトにどういう本を勧めますか
寺田 最近はメジャーな本が多いです。「風が強く吹いている」という駅伝の小説とかですね。
――寺田選手がお勧めされる本はおもしろいですか
菅原諒 僕が今までに読んだ、寺田さんが勧めてくださった本は面白いです。携帯いじっているだけじゃだめだと(笑)。結構空き時間にちょっちょいと読めますね。
――菅原諒選手はいかがですか
菅原諒 僕は、本を読んだり、あとはロードバイクでちょっとでかけたりします。時間があると家に帰ってちょっとゴロゴロしたり、外に食べに行くのが好きで同期で行ったり、先輩に連れて行ってもらったりもします。結構ゆったり過ごしています。
――一番いま食べに行きたいものはありますか
菅原諒 お寿司食べたいです(笑)。もう寮に入ってから食べてないので。
――有田光選手はいかがですか
有田光 近くに安いスーパーがあるので、食材買ってきて今まではとりあえず炒めるみたいなエサみたいなのばかり作っていたんですけど、最近いろいろ親子丼とか餃子とか普通の定番のご飯を作っていろいろ試しています。
菅原諒 1年生とかは一緒に買いに行って一緒に作ります。同期でかなり料理に凝っている人がいるんです。部のご飯を作っていますし、ここに来て自炊のレベルが少し上がりました。
――1年生の雰囲気はどのようなかんじですか
菅原諒 自分で言うのもあれですが、いじられキャラです。同期と遊びに行くのは楽しいです。仲いいと思います。
――4年生の雰囲気はいかがですか
寺田 あまり過度には干渉はしないです。それぞれ何人かで遊びに行きますし、いい関係を保っています。
有田光 それは入る前から聞いていました。僕も早大学院出身で同期とかもいたので前から話を聞いていて、お互い当たり障りなくきていると感じます。いい距離感だと思います。
――1年生からみた4年生はどんな感じですか
菅原諒 平和だなと思います。4年生の先輩は一緒に残って練習してたり、一緒にご飯食べていたりするのもよく見るので、仲いいんだと思います。4年目だとあんなにいい雰囲気なるんだなと思います。
――有田光選手はそもそもなぜ理工漕艇部から漕艇部に入ろうと考えたのですか
有田光 2、3年の時にインカレで付きフォアで出ていたんですけど、そこで全て予選落ちで予選でも結構下の順位で。結局やるからには、結果がほしい気持ちがありました。人数がやっとダブルと付きフォアがぎりぎり組めるほどで、エルゴの競争や選考もなかったです。チーム全員が勝つところに向かって競争が高いレベルであって、自分より強い人たちばかりという中でやれば、自分ももうちょっと上の段階に行けるのかなと思いました。高校全部懸けてやっていたものを最後負けたままで終わるのは悔しいなと思いました。大学生を間近で高校の時も見ていて、かっこいいなというのはずっと思っていて、ホームページや早スポとかも全部毎年誰が入っているのかなというのは見ていました。やっぱり自分もそこには入れたら最後やっぱりどうしてもやりたいなと思い監督(内田大介監督、昭54教卒=長野・岡谷南)にお話ししました。
――みなさん学業も大変だと思いますが、両立はうまくいっていますか
有田光 まだ成績出ていないので…(笑)。
菅原諒 高校の時と違って授業時間は長く、どうしても朝練の疲労も抱えたまま授業に臨むことが多かったです。いろいろ仲間にも協力してもらってテストは乗り越えたんですけど、成績がまだ出ていないので何とも言えないですね。
――4年生のお二人はいつもどのように両立されていますか
寺田 しっかり時間を作ってやればコツコツと大丈夫です。
有田光 表彰されてるから(笑)。僕はどちらかというと建築学科なので課題がやばかったです。3年生の時は3週間くらいこもって課題をやるなど大変でした。
――朝練があると思いますがつらいときもありますか
菅原諒 4時半に起きて、5時に練習を開始します。テスト期間になるとテスト勉強もしながら練習もしなきゃいけなくて。僕はそれが初めてだったのでとてもつらかったです。
有田光 4時代起きは人の生活から外れている感じがしますね(笑)。
寺田 慣れたら大丈夫です。慣れてしっかり休めば大丈夫です。
菅原諒 つくづく正論ですね。
――菅原諒選手は同じ部にお兄さんがいらっしゃいますが
有田光 全然似てないよね(笑)。
――お兄さんとお話しされますか
菅原諒 敬語使う必要があるので寮ではあまり話さないですが、オフの日に結構話します。あとは家だと話しますね。たまにトレーニングルームでエルゴやフォームを見てもらいボートに乗っている先輩として接しています。
――高校にいるときから、漕艇部の話は聞いていましたか
菅原諒 兄もそうですし、学院の先輩に声を掛けていただいていました。大学漕艇部最初は入るのを迷っていたのですが、やっぱり何かに打ち込みたくて、結局何も4年間しなかったなという後悔はしたくなかったので。ここだったらボートだったら間違いないと。高校時代はあまりいい成績残せなかったので、せっかくだしここで4年間ボートをやり切れば絶対に後悔はないと思いました。兄がいたのもそうですが、ちゃんと自分で大学でも漕艇を続けると決めました。
――お二人は菅原選手が入る前に、お兄さんのほうから菅原選手のお話を聞いたことはありましたか
有田光 写真は見せてもらって、全然似てないなと。身長も大きいもんね。
菅原諒 そうですね。10センチくらい違いますね。
――最近部内であったおもしろいエピソードはありますか
菅原諒 木製の2段ベッドで寝ているんですけど、ここ二か月くらい小さい血を吸う虫が大量発生していて。1、2年生の部屋で発生しているんですけど、僕はなぜかかまれていないのですが、同期はたくさんかまれていますね。すごい深刻で、業者さんにも来てもらって、見積もり540万とか言われてこれはちょっと無理だなと(笑)。
――その虫が発生した理由は判明しましたか
寺田 外から誰かがカバンにつけて、野活とかの帰りですかね。
――3、4年生の部屋には現れていないのですか
有田光 自分は入寮したのが去年で、1、2年生と同じ部屋で汚染区域にいます。
寺田 僕らの部屋は幸い無事です。
菅原諒 100パーセント駆除は僕らじゃ無理だと思います。10万円くらいかけていい掃除機とか、熱い空気を吹かせるスチームとか、スプレーとかたくさん買って土日で駆除しようとしているんですが、今日の朝も普通に起きたらかまれたという人がいたので、これどうなるんだろうなと。夏の間は我慢ですね。
「最後はいい終わり方を」(寺田)
後輩と表彰台入りを目指す寺田
――9月の合宿ではどのようなことをしていきたいですか
寺田 水上しかしないので、ボリュームが増えてしっかり追い込んで、特別なことはしないですが、しっかりと相模湖といういい環境で漕いでいくというのが重要だと思います。
有田光 戸田が混雑して自然じゃない小波が発生して、特に小艇はより波の影響を受けて漕ぎづらいこともあります。静かな所に行ってしっかり追い込めて、いい環境で合宿していくつもりです。
――8月にも諏訪湖でも合宿をされたそうですが、そこでは何を重点的に練習されましたか
菅原諒 基本的には水上練習で、ちょっと負荷も高い練習でした。涼しくて過ごしやすかったです。僕はちょっと戻りたいですね(笑)。
有田光 ここに帰ってきたら空気が重い感じが…。息苦しくて、すぐバテてしまいます。
菅原諒 環境って大事ですね。
――そこから良い方向に調整は進んでいるのでしょうか
寺田 そこから良くなって、戸田に戻ってから調子が少し落ちたのですが、いい環境でできるということはなかなかないので合宿の機会を有効有に使っていきたいです。
有田光 ほかの船も少なかったので、監督がモーターで並走してビデオを至近距離から撮ってくれたりとか、その場で指示をくれたりとか、そういうのはコックスがついていない小さい船だとフィードバックがすぐもらえるのはとてもありがたいですし、技術を高める上で有意義だったかなと思います。
――9月の合宿ではどこを重点的に練習していきたいですか
菅原諒 試合と同じペースで漕げるようにしたいです。
寺田 試合が近いので完成度は高めていきたいです。高いレートでも漕ぎ通せるように完成度を上げていきたいです。
有田光 低いピッチでしっかり意識できることを、高いピッチでも追い込まれたり、速くなったりする時も再現できるようにしていきたいです。ピッチを上げてもタイミングはすぐには合わないので、しっかりあげたら上げたら上げた分だけ、質の高い漕ぎができるようにしていきたいです。
――インカレの時期が昨年と少しずれましたが影響はありますか
寺田 漕ぎに関してはインカレまでの期間が長くなれば完成度も上がるので、それは僕らにとっては良かったと思います。調整という点に関しては、夏の時期を終え涼しい時期になるので、それは1つおおきなことですね。
――4年生のお二人にとってインカレは最後となりますが実感はありますか
寺田 実感はあまりないんですけど、これで終わりというのでとにかく毎日無駄にしないようにやっています。
有田光 3年でインカレを終えてやめようと思っていたので、結局戻ってきてしまったので。ここに入ったときからずっと最後の気分で毎日やっていて、今シーズン長いというのも個人的には漕艇部に入ってすぐ引退とならないので、そこはすごくうれしいです。最後だから何かをするというより、結果を出せないで戻ってきてしまったので自分が満足できる結果が出せるところまで頑張りたいなと思います。
――一方で菅原諒選手は初めてのインカレとなりますが
菅原諒 4年生の先輩と乗るというのはプレッシャーもありますし、1年の時からしっかりと結果を残したいという気持ちもあります。このチャンスは絶対にものにしたいと思っています。初めての2000メートルレースなの頑張ります。
――ダブルスカルのお二人はコミュニケーションをこまめに取られているのですか
寺田 陸上ではしっかりとっていると思うのですが、水上では…。
菅原諒 僕がちょっと水上では、コミュニケーションを取れなくなってしまうのでもうちょっとコミュニケーションを取らないといけないと思っています。僕はすごいこのクルーはいいと思います。
有田光 二人でご飯行っているよね。
――インカレではクルーのどういった強みを生かしていきたいですか
寺田 とにかく二人で同じ漕ぎを合わせていくというのをしていきたいです。二人とも力がそんなにあるわけではないので、しっかりときれいに進めていけたら、うまくいくと思います。
有田光 自分も馬力がないのでとにかく早いピッチで漕ぎを壊さないで最後まで漕ぎ通すというのをしていきたいです。日頃から早いピッチで追い込んで追い込んで、最後まで最初のペースを落とさずにそのままで進みたいと思います。
――インカレの目標は
寺田 ひとまずは、優勝です。あわよくばA決勝に行ければいいなと考えています。
有田光 2、3年生のころ、負けてきて結局最後数字がもらえたらいいかなと思います。とにかく最終日に進んで数字をつけたいです。
――一人ずつインカレへの意気込みをお願いします
有田光 最後の年なので、今までの培ってきたものを出し切ってレースに出し切っていきたいです。
菅原諒 寺田さんと勝ちにいきます。
寺田 選手としてはこの夏でもう終わりなので、 最後はいい終わり方をしたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 加藤佑紀乃)
最後のインカレに挑む4年生と初の出場となる1年生。それぞれの思いを胸に頂点を目指します!
◆菅原諒馬(すがわら・りょうま)(※写真左)
1996(平8)年12月11日生まれ。東京・早実高出身。商学部1年。1年生ながらに対談を引っ張ってくれたのは菅原諒選手。一つ一つの質問に丁寧に答えていただきました。お兄さんの菅原拓磨選手とは、トレーニングルームで練習することもあるそうです。素敵な兄弟ですね!
◆寺田圭希(てらだ・よしき)(※写真中央)
1994年(平6)6月2日生まれ。滋賀・膳所高出身。人間科学部4年。様々な質問に対して、自身の考えをはっきりと持っていた寺田選手。昨年に引き続き、カメラを趣味として挙げられていましたが、さらに本にも詳しいとか。寺田選手おすすめの本はおもしろいと評判であり、博識がうかがえました。
◆有田光佑(ありた・こうすけ)(※写真右)
1994(平6)年7月28日生まれ。東京・早実高出身。創造理工学部4年。建築学科に所属する有田光選手。研究とボートとの両立をこなしているそうです。2、3年生で結果を残せなかった分、最後のインカレに向けての思いはとてつもなく強いことが言葉の端々から伝わってきました。