【連載】インカレ直前特集 『Row out!』 第1回 C:片所宏之×S:有田雄太郎×3:金子怜生×2:得居亮太×B:菅原拓磨

漕艇

 男子舵手付きフォアに出場するのは、菅原拓磨(国教4=東京・早大学院)、有田雄太郎(法3=東京・早大学院)、得居亮太(法3=東京・早大学院)、片所宏介(社3=東京・早大学院)、金子怜生(社2=東京・早大学院)。五人の共通点は、早大学院高出身ということ。このクルーの最大の強みである団結力は、勝負どころで必ず強力な武器となるだろう。全日本大学選手権(インカレ)を前に、プライベートなことからその熱い意気込みまでを伺った。

※この取材は8月25日に行われたものです。

「長い付き合い」

丁寧に質問に答える有田雄

――最近はどのようにお過ごしですか

有田雄 就活とかもあったりしたんですけど、全員の予定も落ち着いてきて、徐々にボートというかインカレを意識した生活になっています。ですがいかんせん暇なので、練習して、ご飯を食べて、寝て、練習して、という感じですかね。

菅原拓 学校がないから(笑)。

――オリンピックなどはご覧になりましたか

菅原拓 見ました。

――特に印象に残った競技はありますか

菅原拓 僕は、ボートで男子のシングルスカルが史上最僅差で勝ったという試合があって、それがすごく印象的でしたね。コンマゼロゼロまで一緒で。

有田雄 写真判定ですか?

菅原拓 そうそう、写真判定で。終わった後、船台で二人ともぶっ倒れるという(笑)。

有田雄 すごいですね。

菅原拓 夏、それぐらいのレースをしたいなと(笑)。

有田雄 競らずに勝ちたいですけどね(笑)。

――他の皆さんはいかがですか

菅原拓 怜生(金子)見てた?

金子 印象に残ったって言ったらあれですけど、吉田さん(沙保里)が銀メダルを取って「申し訳ない」と言っている姿が、今まで他の人にはないものだったかなと印象には残っています。

片所 男子陸上のリレーで日本人が銀メダルを取ったというのが自分の中ではびっくりで、個人ではメダルが取れなくても団体だとリレーのつなぎとかで銀メダルを取れるんだというのが結構大きかったです。

――オフの日はどのように過ごされていますか

得居  僕は基本的に何もしないので、他の方の充実したオフを聞いたほうがいいです(笑)。

一同 (笑)。

菅原拓 お酒を飲めるのが週に一回だけなので。そういう明確なルールはないんですが、僕は外に同期とよく飲みに行ったりします。

――よく飲みに行く同期の方はいらっしゃいますか

菅原拓 川田(悠太郎、国教4=東京・早大学院)や石阪(友貴、政経4=東京・早実)、あと竹内(友哉副将、スポ4=愛媛・今治西)と最近よく飲んでいます。

有田雄 僕は、他大の人や仲のいい同期とできるだけ外に行って飲みたいかなと思っていて。この前の日曜日は花火大会を見たりして。少しでも艇庫から離れようとしているんですけど、艇庫で飲むのも楽しいです(笑)。でもやっぱりお酒ですね。週一で1週間分ためて、練習に打ち込めるようにリフレッシュしています。

得居 片所は何やっているの?

片所 僕はこの二人とは対照的で、基本的に一人でいるのが好きです。映画を見たりDVDを見たりして過ごしているんですけど、艇庫で集団生活している中では一人の時間も大切かなと思います。

――最近見た映画などはありますか

片所 一番最近見たのは『ワンピース』です。

一同 (笑)。

菅原拓  そういう感じのなの(笑)。

――金子選手はいかがですか

金子 僕は趣味が多いんですが、登山が好きで。オフの日に体を休めないでどうするんだ、って怒られるんですけど、山に行って心を休めています。現実逃避をしています(笑)。

――去年の対談でロードバイクが部内ではやっていると聞きましたが、ことしはどうですか

菅原拓 1年生が結構(ロードバイクを)持っていて、乗りに行くよね。去年、自分と有田で相模湖合宿に持っていって富士山に登りました。

有田雄 2時間ひたすら登るという苦行(笑)。

菅原拓 きのうも行ったよね。

――最近は『ポケモンGO』が配信されて世界的に話題になっていますが、漕艇部内ではいかがですか

菅原拓 うちポケストップなんですよ。

有田雄 でも誰も来ませんね(笑)。

菅原拓 来ないね(笑)。リリースされた時は、4年生の就活が終わってきて暇だから皆やっていて。自分は同期と対岸に行って、川岸の原っぱを二、三時間歩いてヒトカゲを捕まえたりしました。

有田雄 皆やっていましたよね(笑)。

菅原拓 もうやってないけど(笑)。

――皆さんは全員が早大学院高出身で長い付き合いだと思うのですが、お互いの印象などはありますか

菅原拓・有田雄 片所、一人一人の印象言ってよ(笑)。

片所 じゃあ怜生から。怜生は早大学院時代、入部したときは礼儀正しかったんですけど、だんだん生意気さが出てきて(笑)。ただ、生意気さの中にも最低限の礼儀正しさがある謙虚なやつです。 得居は一番長い付き合いで、クルーの中の縁の下の力持ちです。有田は叱咤(しった)激励がちゃんとあって、学院時代も僕らの代の中でキャプテンだったので、頼れるキャプテン肌だと思います。菅原さんは、理論派のところもあるし、熱いところも兼ね備えた頼れるクルーリーダーです。

菅原拓 ありがとう(笑)。

――片所選手は自身のことはどう思われますか

片所 社交的ではないと思うんですけど、打たれ強さはあると思うので、これから先に生かしていきたいと思います。

菅原拓 僕と有田は中学が一緒で。

有田雄 一応小学校もですよね。

菅原拓 そうだね。10年くらいの長い付き合いで、最後のインカレで一緒に乗れることがすごくうれしくて。

有田雄 ボートを始めたきっかけも菅原さんがやっていたということでした。金子と得居とは高校生の国体や対校でずっと一緒に乗っていて、お互いの信頼感は結構あると思っています。自分は水上では熱くなって言葉を飛ばしたりするんですけど、それもスムーズに受け入れたり受け流したりでやってくれてクルーづくりには助けられています。だからこそ、お互い信用し合ってしっかりやっていければなと。最初はコックスが違う子だったんですけど、いろいろあって片所になって。片所も高校3年間ずっとコックスをやって見ているので、そこは信じて学院の底力を見せつけたいです。もちろん部のためなんですけど、母校である学院のボート部に、大学でも学院生だけでもここまでできるんだということを証明できればいいかなという気持ちで毎日やっています。

菅原拓 そこは大事だよね。有田たちの代は結構入ってくれたんですけど、下の代の入りが減ってきていて。いい刺激になってくれればと思います。

                 

――先日交流会も行われたとお聞きしましたが、たくさん入ってほしいという思いがあるのですね

菅原拓 そうですね。ずっと早稲田で育った人たちがコーチをやっていて一貫した教え方があるから、学院生が入って学院生同士が組むと結構進んで、戦力にはなる。スポーツ推薦もいるけど、俺たちっていう存在も価値があるというのを知ってもらいたいというのはあります。

「あくまで通過点」

初のインカレ出場となる金子

――それではここから前期の振り返りに移りたいと思います。早慶レガッタでは第二エイトで3年ぶりに慶大を撃破しましたが、振り返っていかがですか

菅原拓 気持ち良かったかな(笑)。

有田雄 もうちょっとなんか言いましょうよ(笑)。

菅原拓 隅田川で漕ぎたかったっていうのはあるけど、このメンバーで勝てたのはうれしかった。3年ぶりの勝利というよりはね。彼らは去年出ているから、俺は出てないけど。

有田雄 金子と得居と自分は、高校の早慶戦から一緒に出ていて、その時からずっと勝ててなかったので、4年生を勝たせたいという気持ちと、沈没してしまった対校の分もワセダの力を示したいという気持ちと、自分たちのリベンジがしたかったというところがあります。隅田川ではなかったんですけど、ここで優勝できたのは大きかったですね。ことし勝てなかったら来年も勝てないんじゃないかという気持ちで取り組めたので、勝つべくして勝った感じはしました。

菅原拓 一回もリードを取られなかったのは大きかったね。

得居 有田も言ったんですけど、僕も高校生の時に特に僕のミスで早慶戦に負けて。漕艇部に入った一つの動機として早慶戦でリベンジするというのが大きくて、戸田でのレースだったんですけど、早慶戦で勝つことができて本当に良かったし、大きな意味があったかなと思います。

金子 似たようなことになるんですけど、僕は高校2年生で有田さんと得居さんと出て勝てず、その次の年も早慶戦に出たんですけど、それを見ていた一つ上の先輩たちが泣いて喜んでくれて。今度はこの先輩たちと勝ちたいなという思いからことし臨んで勝つことができたので、そういう面では特別うれしいですね。先輩たちと乗った時のクルーは一人いなかったですけど、もう一人は対校に出ていて。四人で、というのはできなかったですけど、そのうちの三人で勝てたので、うれしいです。

――片所選手は中日本レガッタに出場されました。こちらは惜しくも慶大に敗れるかたちになりましたね

片所 初めてエイトで出たレースで1回戦負けしてしまって、敗者復活戦で慶大と当たることになりました。1000メートルレースで最初は差が開いてしまって、ラスト250メートルくらいでイージー捨てて結構迫っていったんですけど、あと一歩届かなかったという悔しい思いがあって。その思いを払拭(ふっしょく)するためにも、今回のインカレでその勢いでやっていきたいと思います。

――6月には東日本選手権(東日本)がありました。金子選手は舵手なしフォアで出場して全体10位という結果でしたが、振り返っていかがですか

金子 コックスなしフォアという種目に乗るのが初めてでした。僕らの中の東日本の位置づけとしては、一つの目標ではなくてステップとして積み上げていくものという感じで。インカレで何の種目に乗るにしても、まずはいろいろな種目に乗って、ある程度船に合わせて漕ぎを自分で再現できるようにするというのは糧になることだと思っていました。今はフォアですけど、コックスがいないだけでだいぶ違う感覚になりますし、スピードも違うし、どういう点を意識していくかということも違うので、僕がこの先戦っていく上での一つの糧になったと思います。

――舵手付きフォアには得居選手と菅原選手が出場し、決勝6位という結果に終わりました。振り返っていかがでしょうか

得居 決勝に行ったのは高校時代以来くらいだったので、決勝のレースとなった時に普段と違う心理状態になって。決勝慣れしていないために全然力を出し切れなかったというか、自分たちの甘さが出てしまいました。それを東日本で経験できたので、これがインカレだったらというのを考えると6月のこの大会で痛感できたということは自分にとって大きな経験になりました。

菅原拓 冬に一緒に漕いでいたメンバーだったので、パッと組んでレースに出て決勝に行けるまでのベースがあるんだなというのを確認できて。冬の練習が身になっているなというのを感じるレースでした。

――最後にエイトで有田選手が出場され、予選・決勝共に3位でした。振り返っていかがですか

有田雄 レースの時は、優勝を狙うというよりも今まで積み重ねてきたものを慌てることなく出そうという感じでした。普段レート36とかのピッチで漕ぐんですけど、レート32で漕ごうと全員で統一して。1500メートルしっかり漕いでラスト500(メートル)はどこまでも上げていいよというボーダーがあったので、その通り上げていって3位という結果で。しっかりと一本一本進められれば、ピッチを回さなくてもレートを上げなくてもいけるということに気付けたのかなと思っています。順位というよりも、何より自分が対校クラスの選手と乗ることがあまりなくて。その中に入れたのはチャンスだと思っていろいろやったんですけど、結果から言って他の7人に乗せてもらっていたなという気持ちがありました。練習に対する意識だったり、船の押し方だったり。船はオールを入れて押すだけじゃなくて、船の動きに合わせて進むのも大事なんですけど、そういうところをいろいろ気付かされて、今までの練習をしていたら一生彼らには追い付かないなということを自覚させられました。それから意識をまた変えて、いかに対校クラスの選手に追い付いて追い抜くかという意識を持つことが大事か、ということに気付かされたことが一番の収穫だったと思います。それをクルーに還元したいんですけど、思うように言葉が出なかったり、伝えられなかったりするのでまだまだそこは未熟で。でもその時の感覚は今の練習でも生きていると思うので、還元できたらと思っています。

――皆さんにとって東日本は考え方や意識を変える分岐点となったのでしょうか

菅原拓 分岐点というよりはあくまで通過点で、結果にこだわり過ぎずに練習したものをそのままレースで出せるかなということを確認しました。

有田雄 今まで自分たちのやってきた練習が間違ってなかったということの確認と、それを糧と信じてインカレまでやるための踏み台だったのかなと思います。

菅原拓 正直、レートを落として出ると言われて意味あるのかなと思ったけど、終わってみたら気付ける点はあったから意味はあった、そういうレースでした。

「目標は表彰台」

落ち着いた印象の得居

――それではインカレについて伺いたいと思います。全員が早大学院高出身のメンバーとなりましたが、今回のクルーメンバーを聞いたときの印象はいかがでしたか

得居 僕は去年も結構そうで。早慶戦も総員の8分の6が学院出身で、学院生と組むことが多いので、まあそうなるよねという感じでした(笑)。漕いでいる期間が長いので、合わせやすいというのはありますね。

菅原拓  僕は得居とは早慶戦から一緒に乗っているから、組み始めから考えたらラストシーズンは半年くらいずっと一緒に乗っていて、部屋まで一緒なので(笑)。なんとなく予感はしていて、やっぱりなという感じです。

――今はどこに重点を置いて練習していますか

菅原拓 あまり難しいことはやっていないね。

有田雄 基本を徹底して全員のイメージを共有する段階だと思っています。勝負はやはり、相模湖合宿の一週間でいかに高いレートで合わせられるかの準備という感じです。

菅原拓 今は低いレートで合わせて素人が見てもきれいだと分かる感じをイメージして、動きを合わせて低いレートでやって、そして相模湖では思う存分漕げるので高いレートでレースに向けたリハーサルができればいいと思っていて。帰ってきてからは疲労を取ったり、技術的に調整できる部分を調整したりしてレースに出るというのが今のプランです。

――例年とは時期がずれての開催になりますが、何か影響はありますか

有田雄 自分と得居は法学部なんですけど、テスト前は寝られない日々が一週間、二週間続くんです。例年だと8月の終わりに急いで急いでという感じだったんですけど、1か月ずれたことでテストが終わった後に一息ついて基本をじっくり固めてという期間があったので、自分は9月開催で良かったと思っています。来年は8月にまた戻ってしまうらしいですけど、自分は1か月遅れてよかったなと思っています。

――皆さん学年がバラバラですが、それぞれ役割を意識されていることはありますか。菅原選手は唯一の4年生となりますね

菅原拓 引っ張るのは性に合わないから、皆でやっていこうみたいな感じでやっていて。グイグイ引っ張るよりは、目標は絶対達成したいからそれを達成できるなら何やってもいいよって感じで、淡々と結果論でゆるくやっています。彼(有田)がストイックにやるので(笑)。

――有田選手は結構引っ張るタイプなのでしょうか

有田雄 菅原さんはこうは言っていますけど、陸上や出艇前、練習中つらいときとかは絶対に声を出して引っ張ってくれていて。逆に自分は好き勝手言わせてもらって自由にやらせてもらっているんですけど、そこら辺を菅原さんがうまく利用して「有田がまたなんか言ってるぞ、みんな頑張るぞ」という感じです(笑)。金子も一番下ですけど言うときは言えるやつだし、かといって自分がなんか言ったら文句を言わずにしっかりやってくれるので、さっき片所も言っていたんですけど礼儀正しいというのはそこから出てくるのかなと思っています。得居も後ろから指摘してくれる結構大人しいタイプではあるんですけど、声出すときは声を出してみんなの起爆剤みたいな感じで、それぞれの役割がちゃんとできているかなと感じます。

菅原拓 あんま普段声出さないやつが出すと、おっ、て感じだよね。

得居 片所はコックスの経験が浅いというかあまり慣れていないところもあってピシッてされることがあるんですけど(笑)、そういったことがあったときのアフターケアというか、彼が思い切り頑張れるように話を聞いてあげるというカウンセラーみたいなことをやっています(笑)。怜生は2年生一人で普段なかなか思っていることを言えないような場面も多いと思うので、何か感じたときは話を聞きに行ったりして。空中分解じゃないですけど、できるだけクルー全員で同じ方向を向いていけるようなことをしていこうと意識はしています。

有田雄 俺らのカウンセラーですね(笑)。

金子 あまり僕はそういうことを意識してなくて、高校の時からずっと乗っているメンバーなので、失礼ですけどほぼ同期なんじゃないかなと思うくらいで(笑)。僕としてはこの人たちと漕ぐ船が一番やりやすいので、2年生として何をやるというのはないんですけど。自分は結構指摘されるので、それをこなして足を引っ張らずに2年生らしく元気を出してやっていこうと意識しています。

片所 僕はマネジャーを4月までやっていて、7月終わりからこのクルーでコックスになったんですけど、最初のほうは結構萎縮しちゃう部分があって。徐々に得居のアフターフォローや菅原さんのアドバイスがあって、少しずつ自分の意見を出せるようになっていきました。まだ自分の意見を固めていく必要があるんですけど、自分の意見をガンガン言っていけるくらい堂々とやっていきたいと思います。

マネジャーからコックスに転向した片所

――片所選手から見て、コックスとしてはどのようなクルーだと感じますか

片所 全員学院出身ということで、偏差値は高いので。

菅原拓 あおっているなあ(笑)。

片所 理論派というか頭で考えて漕ぐ面もありつつ、お互いを鼓舞し合っていく、水中でドライブを出していく。爆発力とは違うんですけど、内で高め合える団結力のあるクルーだなと始めた時から思っていました。あとはインカレの時期まで、僕を含めて団結力を高めていけたら表彰台を狙えるくらいだと思うので、自分はコックスとしてちゃんとやっていけたらと思っています。

――片所選手はムードメーカーのような存在ですか

菅原拓 クラッシャーというかブレイカーというか(笑)。

有田雄 気を抜くとすぐに間違えるんですけど、最初に比べたら相当良くなりました(笑)。最初は滑舌が相当悪くて、練習が終わった後15分くらい滑舌の練習をして。徐々に良くなったんですけど、今も5本中1本コールは何を言っているか分からない(笑)。上唇が絶対動かないので、割り箸とかを乗せてトレーニングしているんですけどね、一人で。勝負どころでは信じてはいるのですが、真剣に片所の滑舌改善やコールのように、普段の練習はまだまだ改善しないといけないなと思いますね。

――このクルーの強みは何でしょうか

菅原拓 ずっと一緒に漕いできているのでテクニックのベースがそこそこあるということと、考えていることが似ていたり半年間同じことをやっていたりするので、その積み上げというのは確実に強みかなと思っています。あとは出身校が一緒だし、クルーの団結力は他の部員をパッと組み合わせたクルーよりは確実にあると思うので、そういうところは武器になる。問題はそこをどう生かすかっていうところですかね。

金子 言わなくても伝わることだと思います。

一同 (笑)。

金子 この人こんなこと考えながら漕いでいるんだろうなって。言葉がいらないというわけではないんですけど。さっきアフターフォローという言葉がありましたけど、お互いを感じ取ってうまくバランスを図ることができるというのは練習をやりやすい要素ですし、それはやはり強みにもなってくるんじゃないかと思います。

――では逆に課題は何でしょうか

菅原拓 目標に対する個人の漕力は確実に足りていないのですが、今から頑張っても体力的な数値は上がりにくいので、四人で漕いだ時にカチッとはまるかだったり、片所がレースでどう勝負を仕掛けて相手より1センチでも速くゴールするかだったりを詰めていかないと、というのはあります。挙げていくとキリがないですね。技術的なところも課題はまだいっぱいあります。

最後のインカレに挑む菅原拓

――インカレで勝利するためのカギはどこだと思いますか

得居 一番高くて175センチくらいなので身長があまり高くなくて、エルゴがグーンと回る人はそんなにいないので、そこで大事なのは団結力ですね。あとは技術的なところなどを1カ月で強化しないと勝てないかなと、そこがポイントかなと思ってます。

金子 得居さんの言った通りだなと思います。

有田雄 自分も得居の言った通りだなと(笑)。

菅原拓 そこに尽きるよね。

有田雄 小さいんですよね、特に彼(金子)とか。でもウエイトリフティング部に行ったら絶対活躍できる体なんですけどね(笑)、一番部内でウエート上げるので。

――ちなみにどのくらい上げるのですか

金子 スクワットは170キロで、デッドリフトは190キロくらいですね。

有田雄 ウエイトリフティング部にも入ったほうがいいんじゃないかなと(笑)。でも、パワーはそんなにないので他の部分でカバーしていくことが勝利のポイントだと思います。

――意識している大学などはありますか

菅原拓 僕たちは目標が表彰台で、そこに毎年食い込んでいるのは日大、一橋大、明大、あとは仙大ですね。あと去年全日本選手権2位の大阪市立大が速い。あとは、ここで毎年優勝争っている大学に一回勝てば表彰台にいけるので。

――9月の合宿で意識して取り組みたいことはありますか

菅原拓 新しいことをやるつもりはなくて。さっきも言ったんですけどレースのリハーサルができるレベルまでは仕上げていきたいとは思っています。

有田雄 新しいことはしないので、後退することなく常に前進していきたいです。時間的にもう後退は許されないので、集中して、練習が終わったら寝るなりストレッチするなりして次に意識を切り替えていきます。例えうまくいかなかったとしても、いいところを出し合って次はどこを直すか、とポジティブに1週間通せれば絶対変わると思うので、そこは意識していきたいです。

菅原拓  完成させるって感じかな。

得居 精度を上げるというか、いかにいい感覚で漕げている期間を長くするか、駄目だなという時間を短くするかですね。もうインカレ20日前くらいでそんなに速くなったり、急に漕ぎがうまくなったりということはないので、基本的なところをもっとやっていく感じです。

菅原拓 すごくきついんですよ、合宿。

有田雄 富士山も登る予定なので(笑)、去年とは違うルートで。それもやっぱ心の準備が必要ですね。

菅原拓 ケガしたらごめん(笑)。

有田雄 菅原さんは下り70キロ越えとかで行くんですよ。どうするんだろう、吹っ飛んだら。 高校の時から乗っているんですけど、一回後ろを見たら一回転していて。でも無傷でした、自転車も傷なしです(笑)。

――最後にインカレへ向けて目標と意気込みをお願いします

金子 目標はこのクルーで表彰台ということで。意気込みとしては、ボートに乗ってそれぞれポジションごとに役割があると思うんですけど、それぞれ個性があって自分の役割が5人の中であるので、しっかり自分の味を出して表彰台に上がれればと思っています。

片所 目標は表彰台。意気込みとしては、コックスの経験は大学では浅いんですけど、最後までしっかり日々勉強、努力していってレースではクルーのみんなが信頼して勝負どころを任せることができるコックスになっていきたいと思います。

得居 僕も目標は同じで表彰台ということでもっとやっていきたいなと思っています。意気込みに関しては、1年生の時は8位で2年生は7位で、3年生になってインカレも残り二回となってゆっくりやっている余裕はないので。自分がここまで続けてきた意義じゃないですけど、今までやってきたことが結果として残るようにそういうかたちにいければいいかなと思っています。

有田雄 目標としては表彰台なんですけど、自分は何よりも表彰台に上って写真が撮りたいっていうのがあって。菅原さんはラストシーズンですし、自分たちもあと2回しかないインカレで表彰台に上がって写真を撮って笑いたいというのがあるので、それを絶対実現するようにしていきたいです。意気込みとしてはみんなも言ったんですけど、このクルー全員でしっかりと最後笑えるように毎日の練習をやっていきたいです。

菅原拓 僕は最後でもう失うものはないから、目標に向かって水上と陸上でできることを全力でやるということ。僕はもう最後だけど、彼ら(4人)は今セカンド、サードクラスの船に乗っているということは、来年は多分大綱に乗って部を引っ張っていくような選手たちだと思うので、このクルーで少しでもレベルアップして、ステップアップしてほしいです。Aファイナルという、全国トップ4とはちょっとカベがあって、来年Aファイナルに関わってくるメンバーだからそこを越えるとインカレでエイトを組んでも早慶戦でエイトを組んでも勝ってくれると思うので。そういうふうになってほしいなと思いながら、俺も勝ちたいという思いはあるから今やれることは全力でやるけど、もうちょっと長い目で見て頑張って成長してほしいな。彼らは高校の時にすごい結果を残したりしてるので、そういうポテンシャルはあります、もっといけそうというのが僕はありますね。

――ありがとうございました!

(取材・編集 寒竹咲月、新開滉倫)

学院パワーで必ず表彰台に上ります!

◆菅原拓磨(すがわら・たくま)(※写真中央)

1994(平6)年10月7日生まれ。東京・早大学院高出身。国際教養学部4年。ポジションは舵手付きフォアのバウ。自身を引っ張るタイプではないと語る菅原拓選手でしたが、頼りがいのある先輩として後輩から慕われている姿は非常に印象的でした。唯一の4年生として、クルーをまとめ勝利に導きます!

◆有田雄太郎(ありた・ゆうたろう)(※写真中央右)

1995(平7)年8月26日生まれ。東京・早大学院高出身。法学部3年。ポジションは舵手付きフォアのストローク。ハキハキとした明るい雰囲気の有田選手。早大学院高時代のキャプテン経験を生かし、クルーの中でも引っ張る存在だといいます。インカレではクルーを盛り上げてくれる姿に期待です!

◆得居亮太(とくい・りょうた)(※写真中央左)

1995(平7)年10月12日生まれ。東京・早大学院高出身。法学部3年。ポジションは舵手付きフォアの2番。その温厚な性格から選手のカウンセラーをしているという、縁の下の力持ちの一面も。一つ一つの質問に丁寧に答えてくださいました。静かな闘志を燃やし、クルーの起爆剤となってくれるでしょう!

◆片所宏之(かたしょ・ひろゆき)(※写真右)

1995(平7)年6月30日生まれ。東京・早大学院高出身。社会科学部3年。ポジションは舵手付きフォアのコックス。4月にマネジャーから転向し、コックスを務めることになったという片所選手。「勝負所を任せられるコックスになりたい」という熱き思いを語ってくださいました。インカレでは持ち前の打たれ強さを武器に、必ず活躍してくれるでしょう!

◆金子怜生(かねこ・れお)(※写真左)

1996(平8)年9月26日生まれ。東京・早大学院高出身。社会科学部2年。ポジションは舵手付きフォアの3番。一番年下ながら、リラックスした環境の中でボートを漕げているという金子選手。スクワットでは170キロを上げるそう。若いパワーで、クルーに勢いをもたらします!