【連載】インカレ直前特集 『Row out!』 第2回 C:佐藤修平×S:高山格×B:堀内一輝

漕艇

 昨年の全日本大学選手権(インカレ)でタイトルを獲得した男子舵手付きペア。ことしもこの種目のコックスを務めるのは佐藤修平(文3=秋田)。ストロークには高山格(スポ1=神奈川・横浜商業)、バウには堀内一輝(スポ1=山梨・富士河口湖)の二人の1年生が乗る。お互いに意見を言いながら築き上げたチームワークで頂点を狙う。「やっぱりインカレは僕らの最終目標」(佐藤修)と語るようインカレはそれぞれにとって大きなものである。そのレースに懸ける思いを伺った。

※この取材は8月30日に行われたものです。

「分からなかった世界が分かるようになってきた」(高山)

長身を生かした漕ぎが強みの高山

――春のシーズンを経て、今はどのようなことを練習されていますか

高山 自分たちは1年生で、今まで2本だったオールが1本になり、そこに慣れることから始まりました。今はレースに向けて動いています。

――今のクルーでいつから練習を始めましたか

佐藤修 7月くらいです。

――1人ずつ前期を振り返っていかがですか

堀内 満員電車には慣れましたね(笑)。練習では、今の練習ほど一回一回の練習で追い込んでなかったのでそこを後悔していますね。

佐藤修 前期は早慶レガッタから始まり早慶レガッタは長い練習期間があり、うまい展開で勝つことができたのですが、それからなかなかあまりうまくいかなくて自分の思いと練習と結果がかみ合わない時がありました。しかし、いま格と一輝と意識からすり合わせてやってきているので、前期の終わりなのですがいい方向に向かっていると思います。

高山 自分が1限を入れまくったせいで、毎朝先輩を5時とかから練習させて…。その練習にも慣れて、今は夏休みで結構いい練習ができすごい充実しています。最初と比べたら分からなかった世界が分かるようになってきたと思います。感覚をつかんできました。

――今までで感じた個人の収穫や課題はありますか

高山 割と一輝とかぶるかもしれませんが、自分も大学入ってきて最初はフワフワしていて身になっていない時がありました。このクルーを組んでからびしっと言ってもらって環境が変わった中で、すごく集中でき意識も高まりました。

佐藤修 やはり先ほども格が言っていたのですが、スイープオールを初めて手にして、さらにその初めてがペアという一番バランスをとるのが難しい種目なんですけど、うまくいかないことの方が多くて、そこでイライラもしちゃうのですが、そこをどうポジティブにしのいで練習するかというのが重要で。自分は感情的になりやすい方だと思うので、いつも「格!一輝!」とか叫んじゃうのですが、そこをどうにかポジティブに伝えることを伝えていい練習にしていくのが僕の課題です。去年もインカレは舵手付きペアで出場していて、ある程度の経験はさせてもらったのでそこをどんどん生かしていきたいです。去年とことしは違うのですが、そういうところを生かせるのが強みかなと思います。

堀内 課題しかないですけど、水上で感情に引っ張られて力やパフォーマンスが落ちるときがあるので、そこがいまのところ一番の課題ですね。

――レースや他の選手から刺激を受けたことはありましたか

高山 一回先輩に「このままじゃ勝てないよ」とびしっと言われて意識が変わりました。大学に入ってからレースをやって、やはり自分が大学の世界でまだまだだなと感じます。

佐藤修 もう一度気合いを入れなおさないといけないなと感じたのは全日本軽量級選手権で、その時僕はエイトに乗ってコックスとして出たのですが、短い準備期間でいまいち目標が明確じゃないままズルズルズルっと終わってしまいました。初めて自分も敗者復活戦で負け、全然上の方に進めませんでした。そのクルーには先輩方も後輩もいろいろな学年が乗っていて、もっともっと巻き込んでポジティブに勝ちに勝ちにつなげられるような、そういう雰囲気作りも必要だなと考えさせられました。それをこのクルーで生かしたいと思っています。

――1年生のお二人はなぜ早大を選んだのですか

高山 自分は大学でやるならスイープのオールで漕ぎたいと思っていて、その中で一番速いのがエイトなのでエイトが速い学校に憧れました。どうせならエイトに乗りたくて、エイトが対校である早大を選びました。

堀内 早慶戦に出たいというのと、早大はトレーニング機器がかなり充実しているのでそこで選びました。

――早慶戦は今までご覧になったことはありますか

堀内 なかったです。一回(隅田川の)荒れている中で漕いでみたいです(笑)。

佐藤修 どういうモチベーションだよ(笑)。

――入る前と入った後で早大漕艇部の印象が変わったことはありますか

高山 人間関係が思ったより厳しくなく、いいかんじにフランクで過ごしやすいです。

堀内  割とメニューの漕ぐ距離が少ないっていうのは感じました。

――最初一番慣れなかったことはありましたか

高山 通学が遠くてすごく苦痛でした。今はもうフラっと何も考えずに行けるようになりました(笑)。

堀内 同部屋ですね。8人部屋というのがちょっと…。あとは初めてゴキブリを見たことくらいです。

――寮のお話が出ましたが、1、2年生の部屋で小さな虫が発生しているそうですね

堀内 ちょっともう痕が残っていて。今はだいぶ良くなりましたね。

佐藤修 トップアスリートだからじゃなくて、虫から防御するために、こういう長袖を着ているんです(笑)。

堀内 虫対策とエアコンの風がきらいなんです。

「持ち上げるようにレベルアップを」(佐藤修)

今年も後輩をまとめあげる佐藤修

――最近はまっていることはありますか

佐藤修 面接みたい(笑)。きのうちょうどはまっていることを1分間で話したんです。きのうは釣りに夢中ですと話しました。じゃあ1分間でどうぞ(笑)!

高山 最近はあまり時間も多いわけではなく、体も疲れているので、同期とご飯に行ったり、先輩にご飯に連れて行ってもらったり、映画を見てゆっくり過ごしています。

――何の映画を見られたのですか

高山 「君の名は。」ですね。すごく面白かったです。絶対見た方がいいです。初日に見に行きました。すごく良かったです。

――堀内さんはいかがですか

堀内 ここ最近は疲れすぎてしまい、ほぼ寝ているか本を読んでいますね(笑)。

――何の本を読まれているのですか

堀内 今読もうとしているのは、さっき格の言っていた「君の名は。」です。

佐藤修 大ブームじゃん(笑)。

堀内 電子書籍で買いました。

――佐藤修さんは釣りによく行かれるのですか

佐藤修 実は最近行ってないんですよね。前ずっと行ってましたよ。

――どこで釣りをされるのですか

佐藤修 荒川か、たまに隅田川に遠征しに行きます(笑)。友達とそこで夕方から合流して夜終電までやって帰ってきます。

堀内 何釣るんですか?

佐藤修 シーバス、スズキ。

堀内 釣れるんですか?

佐藤修 釣れますよ。

――高山さん、堀内さんは釣りをしたいと思いませんか

高山 釣り自体は好きなんですけど、あまりやったことないですね。

佐藤修 初めて聞いた。

堀内 地元が富士河口湖だったので、散々やったのでもういいかなと(笑)。

佐藤修 何釣れるの?富士河口湖。

堀内 ブラックバスとか。でもほとんど釣れないです。1日粘って1匹釣れればいいほうですね。

佐藤修 (写真を見せながら)これが荒川で釣った一番大きな魚で、これが70センチです。こういうのが釣れるんですよ。やっぱり無になれますね。いい気分転換です。

堀内 そうですかね。

佐藤修 やっぱり外に出た方がいいよ!虫に刺されちゃうよ。

堀内 いやー、もう慣れましたね(笑)。

――最近他に寮で流行っていることはありますか

佐藤修 まあ、トコジラミと駆除かな。

一同 (笑)。

佐藤修 他に遊戯王やっている人もいます。大人になれない大人たちみたいな(笑)。

堀内 ロードバイクに乗っている人はいますね。

佐藤修 サイクリングよく行ってるね。俺は行かないけど。

高山 ロード持ってないです。

堀内 フルカーボンを持っています。でも他の人に貸し出していますね。部品で全部一番安く買ったので10万円くらいです。

佐藤修 買い方が通だね。

――堀内さんご自身はロードバイクに乗らないのですか

堀内 最近は全く乗らないですね。

――お互いの印象をお聞きしたいのですが、1年生のお二人にとって佐藤修さんはどのような先輩ですか

高山 第一印象はこの人イケメンだなと。

佐藤修 まじで(笑)?お前もイケメンだよ。

高山 一緒に船に乗っていると熱くて、そういうのもかっこいいなと思います。指導されるときも、ちゃんと指導してくれますし頼りになる先輩です。

堀内 親しみやすい先輩ですね。水上でフィニッシュするたびに頭を背中に乗せても怒らない先輩だなと(笑)。

佐藤修 内輪の話になってしまって申し訳ないですが、トップコックスって頭が出ているんですよ。バウが体の大きい一輝なんですけど、フィニッシュするとき体を後ろに倒すんですよ。その時に毎回頭にバンバン乗せてくるんです。僕は帽子被っているんですけど、帽子ってポコッて出ている部分があって、そこにカンカン当たってシャンプーすると痛いです(笑)。

――高山さんの印象はいかがですか

佐藤修 高山さんって聞いたら誰か分かんなくなっちゃった(笑)。

堀内 高山さんの印象(笑)。寝癖がすごい。まだきょうは序の口ですね。

高山 朝練はぼさぼさで行きますね。最初らへんに寝癖直して行っていたのですが、寝癖直さなくても別に誰にも何にも言われなかったのでいいかなと。

佐藤修 長身のイケメンだなと思いましたね。もうちょっと自分のことを気にしたらもっとイケメンになると思う。以上です(笑)。

一同 (笑)。

高山 頑張ります(笑)。

――堀内さんの印象はいかがですか

高山 高校の時もちょっと絡みはあったのですが、そんなよく分からなくて。今もそんなによく分からないです。基本寝てるかな、イメージとしては熊ですよね。冬眠して、目が覚めて練習して、毎晩冬眠して。

――堀内さんは1日何時間寝られるのですか

堀内 練習か寝てるかどっちかなので。少なくとも横にはなっていますね。ここ最近だと8、9時間くらいは寝ています。一番ひどかった日だと4時間くらいしか起きていないですね。

佐藤修 それは体が大きくなるわ(笑)。

堀内 寝てるというよりか、目をつぶってぼーっとしています。そういう時間ですね。

――お互いのいいところと直してほしいところはありますか

高山 これは三人ともなんですけど、練習していると感情的になりすぎるので冷静にいこうかなと。

堀内 修平さんにはお願いみたいになるんですけど、まだおごってもらっていないです(笑)。

佐藤修 この二人自炊するんですよ。まずお前艇庫から出ないじゃん(笑)。艇庫から出ると思ったらスーパー行って材料買ってきて自炊してるんです。この前誕生日だったのでご飯に連れて行こうかなと思ったけど、そういう雰囲気もないから。

堀内 その日誕生日関係なくたまたま誘われて先輩とご飯に行っていました(笑)。

佐藤修 金メダル取ったらおごってあげよう。朝マック500円くらいね(笑)。いや、全然いいよ。

――高山さんに関してはいかかでしょうか

堀内 特にないですね。イケメン過ぎて嫉妬するくらいがちょっと(笑)。素で気づかない程度にイケメンを出すんですよ。さりげないんです。

高山 周りからあおられます。

堀内 ふとした時にこいつイケメンだわと感じるときがあるんです。無自覚なんですよね。

佐藤修 あとTシャツのセンスはいいよね。これはヨレヨレだ、いつもはスターウォーズ(笑)。アメコミが好きで、アメコミTシャツ着てますね。

――今のクルーの雰囲気はいかがですか

堀内 こんな感じです(笑)。

佐藤修 ちゃんと水の上に行くと真面目にやります。先ほど言っていましたが、みんな感情的になりやすいのでそこを抑えつつ、いい雰囲気でやりたいですね。いい雰囲気ですよ。

――佐藤修さんは去年のインカレでも舵手付きペアのコックスを務め後輩と組まれていました。ことしも後輩と組まれますが意識していることはありますか

佐藤修 意識していることはまずスイープの基本的なところからというのと、あとは押さえつけちゃだめだなと。うまくいかないことは当然で、そこでイライラして上から押さえつけるようなことはなるべくやめようと思っていて、もっとフランクに、持ち上げるようにレベルアップをしていきたいと思っています。

――昨年と変わっているところもありますか

佐藤修 昨年は昨年で、ことしはことしなので。どうしてもOBさんや部内でも比べられるのですが、それはいい指標ではありますがそれに惑わされたり流されすぎたりしたら終わりだと思います。あまり引き続きっていうことはないですね。

――お互い気づいたことは言い合う関係なのでしょうか

佐藤修 そうですね。フィードバックを聞いて、僕も言って、次これやろうというように一つ一つ課題つぶすようにしています。

「チャレンジしながら体を壊さないように死ぬ寸前まで追い込もう」(堀内)

1年生ながら優勝を目指す堀内

――9月に合宿があると思いますが、そこではどのような練習をされていくつもりですか

佐藤修 本当にレース直前の高いレートで一番追い込むことですかね。

――今考えているレースプランはありますか

佐藤修 まだ進捗状況としてそこまでのレベルではないのですが、二人とも体が大きいので一本漕ぐ長さがとても大きいので、それを生かせるようなプランにしたいですね。

――1年生のお二人は初めてのインカレとなりますが、どのような気持ちで臨まれたいですか

高山 僕たちは完全にチャレンジャーなので、どんどん他に食らい付いて食っていきたいです。

堀内 ほぼ格と一緒なのですが、チャレンジしながら体を壊さないように死ぬ寸前まで追い込もうと思います。

――佐藤修さんは3回目のインカレですが、気持ちの面で変化はありますか

佐藤修 ある程度の経験も自分の中では積んできたと思うのでそれを生かしつつ、二人も言ってくれたのですがチャレンジ精神は変わらずにしていきたいです。他の大学より全体で見たら経験がないクルーなので、本当にそういう精神は忘れずに初心に返っていきたいです。

――このクルーの一番の強みは何ですか

堀内 身長が大きい(笑)。

佐藤修 他も大きいよ(笑)。チームワークかなと思いますね。感じない?

堀内 意見を言いやすい関係だと思います。

――インカレの目標は何ですか

高山 優勝です。

佐藤修 声小さい(笑)!

高山 恥ずかしいですね。一番上です。

堀内 優勝です。なんか恥ずかしいですね(笑)。

佐藤修 僕はちょっと声を大きく。優勝したいと思います。

――最後に一人ずつ意気込みをお願いします

高山 完全にチャレンジャーなので、そこで自分をどれだけ出せるかだと思います。

堀内 修平さんを信用して置いていかれないように、しっかり頑張っていきたいです。

佐藤修 部として今シーズン、全部が全部うまく回っていたわけではないのですが、やっぱりインカレは僕らの最終目標なので対校エイトが出る前に僕ら舵手付きペアでまずてっぺんを取りたいなと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 加藤佑紀乃)

コックスの佐藤選手を持ち上げたポーズをしてくださいました

◆佐藤修平(さとう・しゅうへい)(※写真中央)

1995(平7)年8月24日生まれ。秋田高出身。文学部3年。ポジションは男子舵手付きペアのコックス。一年生の二人に突っ込みながら終始対談を盛り上げてくださいました。今は釣りに夢中で、写真で釣った魚を見せていただきましたがとても大きかったです。釣りは無になれる気分転換だそうです。

◆高山格(たかやま・いたる)(※写真右)

1997(平9)年8月28日生まれ。神奈川・横浜商業高出身。スポーツ科学部1年。ポジションは男子舵手付きペアのストローク。さりげない無自覚なイケメンと噂の高山選手。今回の対談ではエピソードは出てきませんでしたがまた是非エピソードを聞いてみたいものです。

◆堀内一輝(ほりうち・かずき)(※写真左)

1998(平10)年2月14日生まれ。山梨・富士河口湖高出身。スポーツ科学部1年。ポジションは男子舵手付きペアのバウ。入学当初は満員電車に慣れず、ようやく人にぶつかることなく歩けるようになったとお話ししてくださいました。また、釣りの経験がたくさんあるのも富士河口湖出身ならではですね。