【連載】 インカレ直前特集 『Row out!』 第3回 S:米川志保×B:木下弥桜×南菜月

漕艇

 昨年、全日本大学選手権(インカレ)で史上初の全種目優勝という偉業を成し遂げた女子部。当時1年生ながら表彰台の頂点に上り詰め、いまや女子部にとって欠かせない存在である米川志保(スポ2=愛知・旭丘)は舵手付きクォドルプルで再び頂点を目指す。また、1年生からはシングルスカルの南菜月(教1=新潟南)とダブルスカルで出場する木下弥桜(スポ1=和歌山北)の2人が大舞台への切符をつかんだ。下級生3人に、目前に迫る熱き戦いに向けての心境を伺った。

※この取材は8月20日に行われたものです。

次世代を担う

シングルスカルで出場する南

――1年生のお二人にお聞きします。入学してから約4カ月となりますが生活には慣れましたか

木下弥 もうだいぶ慣れてきて、ボート中心の生活で楽しいです。

 最初は朝の練習など慣れなかったのですが、今はリズムをつくれてきておばあちゃん生活みたいな感じです(笑)。

――朝は何時くらいに起きられますか

木下弥 一番早い時だったら4時に起きています。

――米川選手は後輩が入部して、意識の変化はありますか

米川 1年生が入ってきて聞かれることが多くなって、きちんと答えなきゃいけないなと感じます。今まで結構適当な部分があったので(笑)。きちんとしないといけないなと。

――米川選手はどのような先輩ですか

木下弥 優しいし、きちんと言っていただけるところは言ってくださるし、頼りになるいい先輩です。(米川を見ながら)ほんまです!(笑)

 フィジカルもメンタルも強くて尊敬する先輩ですし、練習面でも生活面でもお手本にしたいです。

米川 恥ずかしい!

――聞いてみて、いかがでしょうか

米川 自分自身はまだまだだと思っているんですけど…。見られているんだなって、頑張らないとな、と思います(笑)。

――1年生についてどのような印象を持っていますか

米川 1年生で漕手は3人いるんですけど、性格がみんな違うなと思います。そんな感じじゃない?

 確かに。

木下弥 個性が(笑)。

米川 個性があふれていて。今のところ仲良くやっているんじゃないかと思います(笑)。

――1年生のお二人は一人暮らしを始めてから、大変だと思う部分はどのようなところでしょうか

木下弥 家族と一緒に実家で住んでいたら、洗濯物やご飯はお母さんが全部やってくれていたんですが、それを自分でやらなければならないので、遅い時間まで練習があって、その後にご飯をつくるのが大変やなあって思います。

 自炊が一番大変です。スポーツをしている身なので栄養面を考えなければいけないと思うと、献立作りもきちんとしていなきゃというのが大変で。練習が終わってからつくることが多いんですけど、いかに早く作っていかに早く食べるかっていう自分との戦いみたいな(笑)。

米川 確かにね。

――米川選手は1年たって、いかがでしょうか

米川 大変ではあるのですが、1年たって慣れてきたところはあります。昔は時間をかけて、1食作るのに30分たっているということもあったんですけど、今は慣れてきてパパッとできます。逆に今度はちょっと手の込んだものをつくってみたいなと。今は特に夏休みなので。

――1年生お二人に何かアドバイスはありますか

米川 (二人を見ながら)楽するときは楽してもいいんだよ。

南・木下弥 (笑)。

米川 どうしてもやっぱり疲れているときや練習が遅くなったときには、スーパーで買ってきてもいいと思うんですよね。疲れちゃうから。分かった?

 ありがとうございます(笑)。 

――練習がお忙しい中で、授業について工夫している部分や大変な部分はありますか

米川 スポ科(スポーツ科学部)は所沢なので、ここから遠いんです。4時に起きて5時から練習してっていうハードスケジュールになるので、できるだけ1限は入れないようにはしています。そうすると逆に夜遅くになってしまうんですよね。でも朝は寝たいので(笑)。できるだけ1限は入れないように工夫しています。

木下弥 私はあんまりそこまで苦には思わないです(笑)。

 1年生なので必修の授業が早い時間にあるので、その日は眠気と戦っていますね。常に戦ってる(笑)。

木下弥 自分との戦い(笑)。 

――朝の早起きは大変ではないでしょうか

木下弥 私は元々朝に強い方なので、朝練とかは大丈夫です。

米川 昔はアラームを付けていても、鳴っていても起きなかったんです。今は1人しかいなくて起こしてもらう人がいないので、最近はアラームが鳴っていても起きられるようになりました。

 高校までは親に起こしてもらっていたのですが、最近は勝手に5時に目が覚めます。

――学年の仲はいかがでしょうか

木下弥 そんなに仲良くない…っていうのはうそで(笑)。

一同 (笑)。

木下弥 最近になって結構仲良くなりだして、みんなでごはん行ったりしてます。

米川 1年たって仲は良いんですけど、何でも言えちゃいます。冗談で悪口も言えちゃうぐらいに仲良いです。

――オフの日は何をされていますか

木下弥 私は1人でどっかに行くのが好きで、インターネットで行きたいところを調べて、そこに1人で行くという。それがリフレッシュです。最近は美術館に行きました。

米川 似合わない(笑)。

 私は家でゴロゴロしていたい派なので、結構家にいます。

米川 私も外には出たいのですが1人で外に行くのは…。私にはできないので(笑)。 

一同 (笑)。 

米川 どこか行きたいところがあったら友達と行きますね。ゆっくりしたいときはDVDを見ています。

強さの理由は水準の高い練習

ダブルスカルで頂点を目指す木下弥

――1年生のお二人は入部してから何か変化した点はありますか

木下弥 高校の時はチームではあったのですが、ここまで大きな組織ではなかったので、この組織の中でボートをするという責任感を持たないといけないなと思います。それが半年経って責任とかワセダの自覚を持たなければいけないなというのはすごく感じています。

 1年の最初にお花見レガッタとか中日本レガッタとか出させてもらったのですが、高校までの自分の漕ぎだと社会人や大学生に通用しないんだなということを痛感しました。最近はそれに対抗できるように先輩とかの漕ぎを研究しながらやっています。いろんな人の漕ぎを見て、自分に足りないものとかを分析して、漕ぎを変えるなどして、レベルアップできるようにしています。

――2000メートルのレースはいかがでしょうか

木下弥 私は高校の時は2000メートルより1000メートルの方が得意やったんですけど、練習のメニューで2000メートルに向けてのメニューをやっていて身体も慣れていたのでそこまで苦にならないようになりました。

 私は、割と持久系だったら勝てるんじゃないかなと思っていたんですけど、初めて軽量級(全日本軽量級選手権)で2000メートルのレースで出たときに全然最後まで(体力が)持たなくて。まだ高校生感が抜けていないのかなという感じがあったので、最近は距離長めの練習とかが多くて、きちんと自分のメンタルに負けないように練習するようにしています。

――米川選手は早慶レガッタなどに出場されましたが、前期を振り返っていかがでしょうか

米川 早慶戦に関しては、いろいろな大会があるんですけど、改めて大きな規模で様々な人が関わっていることに気付きました。去年は見ていただけで、レースを見て感動はしたのですが、実際に出てみてさらにその上を感じました。早慶戦で連覇を更新できて、そこに関わることができたというのは自信にもなりましたし4年生まで出たいですね。(木下弥・南を見ながら)一緒に頑張ろうね(笑)。練習では1年生の時は長い距離のメニューだと何でこんなに長いんだろう、と持たなかったのですが1年経って慣れてきました。ずっと同じ力を出せるようになってきたというか、練習の質は少しずつ上がってきたのかなと思います。

――1年生のお二人は入部前と早大に対してのイメージは変わりましたか

木下弥 高校の時は漠然としていました。強くてトップチームで、っていう。入ってみて実力がトップの方もいらっしゃる中で全員の水準が高くて、すごく刺激になります。うーん、何て言うんやろうなあ…。

一同 (笑)。

木下弥 練習が考えられているからこそ、水準が高くなっているんだなと感じます。自分もその練習を意識高く持ってやっていけば、もっと強くなれるかなと思います。

 上下関係が多少はあるのですが、そこまで厳しくないなとは感じます。普段の練習終わった後とか、女子部屋では笑い声がたっていて、朗らかな雰囲気で、それは想像していませんでした。もっと厳しいイメージがあったので。

米川 私が1年生の時は二人と同じような感じでした。もう少し前は結構厳しかったらしいのですが、去年の4年生の土屋さん(愛前女子主将、平28スポ卒=現明治安田生命)と春奈さん(榊原前女子副将、平28スポ卒=愛知・旭丘)の体制になったときに(このままだと)みんなが意見を出せないんじゃないかってなって、それよりかはみんなが(意見を)出せるところにしようということで雰囲気が柔らかくなったのかなと。

連覇への誓い

いまや女子部にとって欠かせない存在である米川

――インカレに向けて、今はどういった練習をしていますか

木下弥 一緒に乗っている先輩は自分よりも強いしうまい先輩です。ダブル(スカル)はひとりひとりじゃなくて二人でやっていかなければならないし、今はまだ自分が先輩についていけてない部分があるので先輩の技術とかフィジカルとかをうまく自分で調整して、もっとついていけたら伸びるかなというところです。

米川 私は今回クォド(舵手付きクォドルプル)に乗るんですけど、高校の時も去年もシングル(スカル)に乗っていてクォドの経験が多い方ではないです。バウに乗っている紫生乃さん(佐藤女子主将、スポ4=宮城・塩釜)とか美奈さん(木下、スポ3=山梨・富士河口湖)とかは去年もクォドに乗っているので、経験もあっていろいろ吸収したいという思いと私はストロークなので吸収しつつも引っ張っていきたいなと思います。

 シングル(スカル)だと自分との戦いになってきて自分の気持ち次第で進み方が変わるので、前半からきちんと飛ばして後半粘り強くいけるように練習メニューにも意識して取り入れるようにしています。

――シングルスカルだとどのようにして精神的に鼓舞されていますか

 自分でできるようになったらいいんですけど、割と他のクルーボートの人たちが声を掛け合ったりするのを聞いて頑張ろうと思って鼓舞できている部分もあるのですが、それこそレース展開とかになると自分でやらなければならないと思うので先輩に聞いたりして研究したいです。

――去年シングルスカルで出場された米川選手からアドバイスなどはございますか

米川 特に合宿では一人でずっと長い距離を漕いでいると結構(精神的に)くるんですけど、私も目標が全種目優勝だったので先輩もシングルの私を気に懸けてくれて声かけてくれて。私もシングルで自分が勝つというのはあったのですが、部のために勝ちたいという思いが強くなっていった思い出があります。(南に向かって)声掛け合おうね!

――初めてのインカレに向けてどのような思いでいらっしゃいますか

木下弥 私は高校で日本一になれなかったので、大学では絶対日本一になると思ってワセダに入りました。今組んでいる先輩とだったら絶対インカレで優勝できると思っていて、自分もワセダの優勝に関わりたいし自分も優勝したいしという気持ちで取り組んでいます。

 監督(内田大介監督、昭54教卒=長野・岡谷南)もおっしゃっているのですが、シングルスカルってレベルが高くて私がどこまでいけるか分からないんですけど、インカレって高校とは違って総合優勝があると聞いたのでそれに貢献できるような結果を残したいとは思っています。

――米川選手はいかがでしょうか

米川 特にクォドは何連覇もしているし、私が見たレースでは負けていないしっていう。プレッシャーはあるんですけど、負ける姿が想像できないので勝つしかないかなと思います(笑)。

――それぞれのクルーの強みはどの部分だと思われますか

 最近はキャッチが良くなったと言われているので、最初の漕ぎ初めからばっちり水をつかめているところとクォドに乗っているコックスの亀本さん(咲季子、人4=埼玉・浦和一女)がよく漕ぎを見てくださっていて、安定してきたとおっしゃってくれたのでそこを自分の強みにしていきたいです。2000メートルの長いレースでもそれを生かせるようにできたらなと思います。

木下弥 私と先輩はローイングスタイルや相性が良くて、それも強みだと思いますしパワーも力強さもあるクルーだと思います。

米川 私が一番前でよく感じるのは、常に水を押す力というか衰えないんです。同じ出力を出し続けることができるので、そこが強みだと思います。今はシートを変えて、そこまで漕ぎこんではいないのですが、合わせていったらそのプラスの出力ですごくいいんじゃないかなと思います。

――ストロークをやっていて大変だと感じる部分はございますか

米川 私のセールスポイントはリズムとかよりも1本の強さだと思うので、正直ストロークよりも3番のが向いているのかなと思うのですが(笑)。今はもうやるしかないので、後ろの先輩が常に出力を出してくれるのでリズムもつくりやすいですし、伸び伸びと漕いでと言われるので伸び伸びと漕ぎたいなと思います。

――今見えている課題はどういった部分でしょうか

米川  さっきも言ったのですが、まだ漕ぎ込んではいないのでいかにあと1か月の間で完成度を高めていくかだと思います。5人が合わさらないと進まないので、漕ぎこんで合わせていくことが大事だと思います。

木下弥 どっちかというとミドルからファイナルっていって前ではなくて後ろで進める感じなので、その良さを保ちつつ、もう一つ前からも押せるようにしたいです。良いところと足していけるようにしたいのと、あとは安定しているときと安定していないときの差があるのでそれを良いイメージで漕げるときの練習の回数を増やしていきたいなと思います。

 私はつかみを伸ばしていって、押し切りの部分はテンポが速くなってくると押し切れずに回転しているだけになってしまうので、きちんと1本1本高いレートでも出し切れるようにしたいです。

――最後にインカレに向けて意気込みをお願いします

木下弥 優勝です!

米川 ワセ女としてのプライドがあるので、絶対に優勝します。

 きちんと最初の方から決勝に残ってチームに勢いをつけられるようにしたいです。優勝ももらいたいですけど、きちんとチームのために個人としてというよりはチームのために頑張れたらいいかなと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 黒田菜々子)

フレッシュな顔ぶれに注目です

◆米川志保(よねかわ・しほ)(※写真中央)

1996(平8)年8月20日生まれ。愛知・旭丘高出身。スポーツ科学部2年。ポジションは女子舵手付きクォドルプルのストローク。記念すべき20歳の誕生日に取材を受けてくださった米川選手。取材前に1年生のお二人に「大きな声で話すんだよ」と優しくアドバイスされていました。ハッピーオーラあふれる米川選手の笑顔は、インカレでも必ず見られることでしょう!

◆木下弥桜(きのした・みお)(※写真右)

1998(平10)年3月12日生まれ。和歌山北高出身。スポーツ科学部1年。ポジションは女子ダブルスカルのバウ。1人で遊びに出掛けることが多いという木下弥選手。美術館に行かれたとおっしゃっていましたが、他のお二人からは意外という声も。日本一になるために早大に入学したと強く語ってくださった姿が印象的でした。

◆南菜月(みなみ・なつき)(※写真左)

1997(平9)年6月10日生まれ。新潟南高出身。教育学部1年。女子シングルスカル。質問に対して冷静に丁寧に答えてくださった南選手。取材では何度も「自分との戦い」とおっしゃる姿からは真面目で研究熱心なことが伺えました。シングルスカルでの南選手の活躍は、女子部に勢いを与えてくださることでしょう!