【連載】インカレ直前特集 『Row out!』 第4回 3:伊藤大生×6:鈴木大雅

漕艇

 昨年度、舵手付きペアでルーキーながら全日本大学選手権(インカレ)と全日本選手権(全日本)で表彰台の頂点へと上り詰めた伊藤大生(スポ2=埼玉・南稜)と鈴木大雅(スポ2=埼玉・浦和)。学年が上がったことし、二人は花形種目である対校エイトのメンバーに選出された。そのお二人に連覇を狙う対校エイトのクルーとして挑む2度目のインカレへの思いを伺った。 

※この取材は8月30日に行われたものです。

「寮をうちと呼ぶようになった」(伊藤大)

早慶戦に引き続き対校エイトクルーに選ばれた伊藤大

――お忙しい中だとは思いますが、オフの日は何をされていますか

鈴木 練習が疲れるので、あまりアクティブに動こうとは思わなくて。静かに本読むことが多いです。少し気が向くと、カメラが趣味なのでカメラを片手にふらっと出歩きます。最近は戸田で花火大会があったのですが、そんなにいいものは撮れなかったです(笑)。

伊藤大 僕も疲れているのであまり動かないですね。自宅が近いので、自宅に戻って飼っているインコと遊んで、夜になったら帰ってくるという感じです。

――ことしはオリンピックイヤーでしたが、リオ五輪は見られましたか

伊藤大 昔やっていたこともあって、水泳を見ましたね。僕が授業を受けているときにTAをしていた方がオリンピックに出ていたので、こんな身近な人がオリンピックで銀メダルか、とびっくりしました。

鈴木 ボートの会場が荒れていて、何艇か沈していたのは印象的です。

――学年で最近遊びに行かれましたか

伊藤大 きのう国際教養学部の人が海外に行って、その前に2年生全員で集まってお別れ会をしたのが最後ですかね。

――学年カラーはどういったものでしょうか

伊藤大 キャラの薄い人間が集まってるよね?

鈴木 キャラが薄いですね。周りの学年にかすんでます。

――その中でご自身の役割は何だと思われますか

鈴木 役割というか、周りに部屋を散らかす人が多くて(笑)。

一同 (笑)。

鈴木 たまに掃除をします。「お前ら片せよ!」って。

伊藤大 自然とね、部屋のリーダーになっちゃうよね。

鈴木 たいていどの部屋にもいるんですよ、部屋散らかす人が。

伊藤大 部屋の中だとリーダーみたいになって、掃除しろだったり、だらしがなかったらそこを正しにいったりしていると思います。

――1年生が入部してから、何か変化したことなどございますか

伊藤大 後輩と乗ってないので、あまり変わったなという感じはないです。生活面だと後輩がしなければならないことがあるので、それをしていなかったらきちんと言うし、僕たちがしていた仕事をきちんと引き継げているかを見ています。あまり大きくは変わってないですね。

鈴木 自分もそこまで大きくは変わってないですね。 印象的なのが、ことしの新入生で学院(早大学院)から入ってきた川田翔悟(基理1=東京・早大学院)が最初に部屋に入ってきたときに「大雅さんのことめっちゃ怖い人だと思っていました」って言われたことです(笑)。今は違うはず。

伊藤大 もう怖くないかな。

鈴木 そんな風に見られてたのか、と思いました。

伊藤大 よくあるんじゃないの?

鈴木 そんなことないと思ってた(笑)。

――改めて、お互いの印象はいかがでしょうか

鈴木 伊藤ちゃんは小動物みたいな(笑)。天然が入っていますね。最近やらないですけど、走り方がおかしいんですよ。ぴょこぴょこ走るんです。またあの走り方してる、って思います。

――伊藤大選手の走り方は漕艇部内でも有名なのでしょうか

鈴木 知っている人は知っています。同期は全員知っていると思います。

伊藤大 変なところ言われてもしょうがないですね(笑)。いつも一緒にいるので。

――伊藤選手はいかがでしょうか

伊藤大 何だろうな。 

鈴木 もっとこいよ! 

一同 (笑)。 

伊藤大 多趣味なやつなんです。カメラやって旅して。北海道まで行ったもんね?

鈴木 行ったね。 

伊藤大1人でずっと旅して、「どこ行ってたの?」って聞くと「北海道」って。どこまで行くんだこいつは、と思いました。自分では全然動かないって言っていましたが、僕の中では結構アウトドアというか旅好きなやつだなと。面白いなと思います。 

――鈴木選手は1人で出かけることが多いのでしょうか

鈴木 カメラを持っていこうとなるとどうしても人に迷惑をかけちゃうかなって思って(笑)。納得するまでのめり込んで撮るので、人を連れていくと付き合わせてしまうので。それ以外にも理由はあるのですが、一人旅は好きですね。

――同じ学部ということで、授業は一緒に取られることが多いのですか

伊藤大 一緒の授業は一緒に受けていますが、合わせにはいかないですね。 

鈴木 1年生の時は(笑)。

伊藤大 1年生の時は、毎日一緒に行って一緒に帰るくらいの勢いでしたね(笑)。  

鈴木 一緒にどうやって組むか考えて。 

伊藤大 どうやったら(単位を)取れるのか考えて。1年生は取れるものが少なかったので、どうせ取るなら一緒の方がいいなと思って。特に1年生の春だね。 

鈴木 春はすごかったね。 

――1年間寮生活をしてきて、寮生活の中で大変なことはありますか

伊藤大 1年経って、とうとう寮をうちって言うようになってしまった自分が嫌で(笑)。自分は15分くらいの所に自宅があるのに寮のことをうちと言うようになって、ああ~家になってきたのかと思います。

鈴木 住めば都ですね。自分も家は近いのですが、あんまりうちって言わないかも。艇庫って言うわ。 

伊藤大 艇庫って言ってたんだよ、1年間。寮か艇庫って。最近うちって言っちゃうときがある。 

鈴木 俺ももうちょっとしたらくるかもしれない(笑)。ふとした時に。 

伊藤大 ふとした時にくるよ(笑)。でも大変なことはないですね、後輩も入ってきてくれたので。大変なことは、ないよね? 

鈴木 そうだね。 

――生活していて、直してほしい部分がある人などはいますか

伊藤大 部屋にいる人で、夜12時過ぎてくると急にうめき出す人がいて(笑)。結構長い時間うめくんですよ、調子悪いのかなと思うくらい。でも結局何もなくて、寝言みたいです。でもうめき声なんです。部屋中に響いて、それで12時くらいに起こされます。

鈴木 伊藤光(文構2=東京・神代)に学校に行けと言いたいです(笑)。特に金曜日が危ういですね。あと雨の日。 

がむしゃらの昨年

冷静に答える鈴木

――改めて、早慶レガッタを振り返っていかがでしょうか

伊藤大 これが落ちるんだという感じでした。どんどんシャワーのように水が入ってきて、気付いたら沈んでいて。これが沈む感じか、って思いました。結局、やっぱりゴールしたかったなというところに行き着いてしまいますね。早慶レガッタは自分の中で沈んだ思い出しかないので、あまり良い思い出ではないです。 

鈴木 自分はセカンド(第二エイト)だったのですが、レースをすることなく隅田川を去って、あの(隅田川の)荒れ具合は今でも思い出します。何回か隅田川に練習しに行くのですが、その比じゃなくて。 

伊藤大 本当にひどかったです。 

――先輩とエイトに乗って、学んだことや成長したと感じられる部分はありますか

伊藤大 単純にスイープが結構うまくなったかなと思います。僕らはずっとスカルで、1年の夏は舵手付きペアっていう(スピードが)遅い船だったので、冬にエイトに乗ることになって速いスピードのスイープ種目で全然うまく漕げませんでした。でも隅田に向けて30キロくらい漕ぐ練習をして、それで体力もついたしスイープ自体の漕ぎもうまくなったなと思います。 

鈴木 クルーのつくり方や運営の仕方を学びました。9人もいるとなかなか意思疎通が取れないんですけど、そのまとめ方を学べたかなと思います。 

――前期を振り返って、どのような印象を持ちますか

伊藤大 良い結果が残せていないなと思います。東日本選手権はタイムトライアル的な勢いで出たのでいいのですが、軽量級(全日本軽量級選手権)ではシングル(シングルスカル)で出場して、勝負で出ていたので、そこで順位もつかないような結果になってしまったのは悔しかったですね。インカレも全日本も前期ではないので、その分軽量級に懸けていた部分もありました。結果が残せなかったというのは、本当に悔しいですね。 

鈴木 今もそうなのですが、僕は自分よりうまい先輩と組ませてもらって練習していました。なので、ずっと勉強というか、いろいろ学ぶことが多かったです。 

――前期に点数をつけるならどのくらいの点数をつけますか

伊藤大 難しいね。 

鈴木 低いなあ(笑)。100点中…55点くらい。 

伊藤大 ああ~そうそう、半分くらい。50か45点くらい。やっぱり順位を残さないと。他の大学で順位を残していた方はいたし、順位を残して学生トップを狙っていかないといけないなと思ったので、45点で。 

鈴木 さっき自分よりうまい先輩と組ませてもらったといったのですが、それでまだまだ吸収できる部分があるってことは自分がまだまだ未熟だということなので、その点数を付けました。 

――昨年とことしで、成長を感じられる部分はありますか

鈴木 去年はがむしゃらだったね。 

伊藤大 そう。がむしゃらから、がむしゃらじゃなくなった。 

鈴木 それはあるね。 

伊藤大 船の上に出たらがむしゃらに練習するだけというところから、自分で考えて練習に対しての目標をもって挑めるようになったかなと思います。去年は、修平さん(佐藤、文3=秋田)の言ったことに対して、がむしゃらに頑張るだけだったんですけど(笑)。今は自分で考えて、自分から声出して課題を1つクリアしていくというサイクルができるようになったかなと思います。 

鈴木 去年は、がむしゃらで基礎基本が精いっぱいでした。今も基礎基本ができているかと言われたら、分からないですけどそこがだいたい固まってきたかなと。それによって違うところに意識を向けられるかなと思います。 

後輩や同期に伝えるインカレに

昨年同様、表彰台の頂点を目指す

――お二人は昨年度のインカレでは舵手付きペアで優勝されました。改めて昨年のインカレを振り返っていかがでしょうか

伊藤大 インカレに対しては勝てるんだという感じでした。ずっとチャレンジャーと言って頑張っていて、最初の1本目のレースでがむしゃらにいって何とか食い切れたという感じだったので2000メートルのレースのすごさというのもあったし、決勝できちんと戦える力がついていたんだといううれしさがありました。 

鈴木 優勝を目指していた訳ではあるんですけど、漕いでいる間は優勝ではなくて、自分たちが持っている力を出し切ることだけだったので、それで優勝という結果がついてきてくれたのはうれしかったです。今は優勝するという目標に向かってという感じなのですが、去年は持っているものを出し切れることが目標だった感じがあります。そこがことしとは違うと思います。 

――ことしは対校エイトでの出場となります。プレッシャーは感じますか

伊藤大 感じます。それはもう、早慶戦の時からずっと感じています(笑)。 

――先輩と対校エイトに乗ることにあたって意識している部分はありますか

伊藤大 迷惑かけるのはしょうがないので、自分が持っているものを全て出すというのを毎回意識して頑張っています。よくもっと声を出せとか出力を出せと言われるのですが、それを毎回の練習で自分の持っているものを全て出せるように意識しています。「自分はこの練習で100パーセント出せました!」と自信をもって言えるようにしています。

鈴木 いろいろ先輩に言ってもらえるので、それだけ気にかけてもらえていると思っています。時間はかかるかもしれないですが、その期待に応えられるようにと思いながらです。自分たちに興味がなかったら先輩たちは何も言わないと思うので、それはありがたいなと思いながら言われたことは自分の中で解釈しています。 

――昨年とことしと、インカレに対しての思いは変化しましたか

鈴木 去年勝てて、その味を知ってしまったので(笑)。甘い味を知ってしまったので、ことしもその思いができたらなと思います。 

伊藤大 エイトというメインの種目で勝つのと、(舵手)付きペアで勝つのとは味が違うんだろうな、と。 

鈴木 度合いがね。 

伊藤大 度合いがもっとくるんだろうなっていう。さらにおいしい味があるんだろうなと(笑)。(優勝を)狙うしかないですね。 

鈴木 去年優勝してもね、かすんだからね。 

伊藤大 優勝した!と思ったら、女子の全種目優勝とエイトの優勝で(笑)。かすんでしまったので、ことしは「よっ!エイト優勝!」って言ってもらえるように狙っていきたいですね。 

――表彰台の一番上から見る景色はいかがでしたか

伊藤大・鈴木 最高ですね。 

――クルーの中でのご自身の役割は何だと思われますか

伊藤大 クルーを微力ながら盛り上げることと、自分が出力を出して艇を進めていくことだと思っています。 

鈴木 自分は出力を出して、リズムをつないでという位置にいます。ですが、まだまだ出力不足なところがあるので、その役割を果たせるようにしていきたいです。 

伊藤大 まだまだだよね。55点だもんね。 

鈴木 そうだね。 

――鈴木選手は早慶レガッタからシートが変更しましたが大変だと思われる部分はございますか

鈴木 早慶戦ではストロークで漕いで、その後も割とストロークで漕いでいたので、人に合わせることが半年近くしていなくて、その部分は苦労しているところですね。 

――クルーの中でのご自身の強みはどの部分でしょうか

鈴木 まだ自信ない(笑)。 

伊藤大 自信をもって強みといえるところがない(笑)。 やっぱりエイトに乗ってしまうと先輩がすごいので、自分がこれは勝っているなと思うところがなくなっちゃって。強みと言える強みがないです。

鈴木 強みと言えるところはないですね。あのクルーに乗ると、かすむというか。

伊藤大 (舵手)付きペア乗っているときは二人で「自信あります!」と言っていたんですけど、エイトに乗っていると体力ないな、もっと鍛えなきゃと思ってしまうし、技術面でも先輩がうまいから自分も頑張らないと、と思うので、強みと言える部分がなくなっちゃったなって(笑)。 

――どのようなアドバイスをいただくことが多いですか

伊藤大 技術面のことだと後ろから見えるので、技術面について言っていただいたり、クルーの盛り上げが足りなかったらもっと言っていいよと言ってもらったり。いろんなことを教えてもらいます。 

鈴木 自分もそうですね。つらくなってきたときに周りをあおれるくらいの先輩みたいな余裕があればいいのかなという感じはしますね。  

――9月には合宿があると伺っています。合宿ではどういった部分を強化していきたいですか

伊藤大 合宿でも先輩に言われた自分の役割というのを完璧に果たせるようにしたいなというのがあります。あとは漕ぎに関してです。先輩に比べてレベルが低いと思うので、そのレベルをしっかり上げてインカレに臨みたいです。 

鈴木 合宿は仕上げだと思うので、そこで自分の役割を果たせるところまでいきたいです。できればそれ以上というか、合宿でひとまわり大きくなって帰ってきたいです。 

――ライバルである日大に勝つためのカギはどの部分にあると思われますか

伊藤大 勢いですかね。クルーの勢いっていうのがエイトのスピードに関わってくると思うので、勢いが大事だと思います。去年も勢いで勝ったと言っていたので、ことしもその勢いがあれば結果が変わってくるのかなと思います。 

鈴木 レース展開的にきちんと頭を取って、少しでもいいからその差を後半まで維持できれば最後爆発して勝てると思います。 

――最後に、インカレに向けての意気込みをお願いします

鈴木 優勝しますというのは一つなんですけど、その過程の中で先輩たちが自分に教えてくれたことを後輩や同期に伝えられるようにしたいです。 

伊藤大 大雅の言う通りで、後輩に伝えていくことがこれからなのでインカレや全日本で勝つというのと周りに伝えられるまでのレベルになりたいです。自分一人だけのレベルが上がってもしょうがないし、エイトで勝つには8人の漕手と1人のコックスが強くなければいけないので、周りに伝えられるレベルになりたいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 黒田菜々子)

簡単に肩車を組まれていらっしゃいました!

◆伊藤大生(いとう・だいき)(※写真上)

1996(平8)年9月13日生まれ。埼玉・南稜高出身。スポーツ科学部2年。ポジションは対校エイトの3番。「最近、寮をうちと呼んでしまう」と頭を抱えて悩んでいた伊藤大選手。練習に関して真面目に応えてくださる姿が印象的で、謙虚な姿勢ながらも勝利に向けて熱い思いが感じられました!インカレでは必ず早慶レガッタの雪辱を果たしてくれることでしょう!

◆鈴木大雅(すずき・たいが)(※写真下)

1997(平9)年3月13日生まれ。埼玉・浦和高出身。スポーツ科学部2年。ポジションは対校エイトの6番。伊藤大選手からは料理上手だと称されていた鈴木選手。落ち着いた印象とは違い、趣味であるカメラを片手に一人で北海道まで行ってしまうほどアクティブな一面も。インカレでの勝利を後輩につなげたいとおっしゃる姿が印象的でした!