大本命の夏を前に厳しい練習に励む早大漕艇部が梅雨空の下、戸田ボートレース場で行われた第66回東日本選手権に挑んだ。各地の強豪がしのぎを削る中、早大からは男女5艇ずつの計10艇が出場。そのうち6艇があす行われる決勝へと駒を進めた。
女子部でまず登場したのはシングルスカルの波多野響子(教4=福岡・東筑)。序盤に付けられた差を埋めようと懸命に漕ぐも、最後まで差を詰め切れず順位決定戦へ回る。続いて登場したダブルスカルの早大Aは、一橋大との接戦を制し1着でゴール。あす行われる決勝へ駒を進めた。2人共がケガからのリハビリ明け最初のレースだったという早大Bも、終盤に猛追を見せた新潟大を強みであるスパートで振り切りトップフィニッシュ。ストロークの渡邉楓(文2=新潟南)が「実際にタイムを見て、決勝でもいけるかなというタイムだった」と語ったように、あすの決勝に向け大きな手ごたえを感じたレースとなった。また、舵手なしクォドルプルは土屋愛前女子主将(平28スポ卒=現明治安田生命)を有する強豪・明治安田生命に食らいつき決勝進出を決めた早大Aと、予選3着で決勝進出を逃した早大Bで明暗が分かれた。
盤石の漕ぎで決勝へと駒を進めた舵手なしクォドルプル早大A
一方の男子部で先陣を切ったのはダブルスカル。予選を2着で通過し、タイム順により準決勝進出を果たす。しかし迎えた準決勝ではスタートで出遅れた差を最後まで詰め切れず、惜しくも決勝進出は果たせなかった。続く舵手付きフォアは漕手全員が早大学院出身というクルーで登場。息の合った漕ぎでトップフィニッシュを果たし準決勝進出を決めると、続く準決勝でも安定したレース運びで2位争いを制し決勝への切符をつかんだ。舵手なしクォドルプルも、スタートでは東工大に一歩出遅れるも、ラストで順位を上げ見事決勝進出を決める。一方の舵手なしフォアはスタートから出遅れ無念の4着。男子エイトは予選3着となるも、タイム順によりあすの決勝へ進出が決まった。
好タイムを出し、決勝進出を果たした舵手付きフォア
あすは決勝レースが立て続けに行われる。男子の舵手つきフォアでバウを務める川田悠太郎(国教4=東京・早大学院)は「メダルが欲しい」と力強く語った。他の選手たちも、「自分たちがどこまでいけるかを是非試してみたい」(渡邉)と気合は十分だ。きょうのレースで得た自信と反省を胸に、あすはそれぞれが頂点を目指す。各種目での戦いとなるが、『One WASEDA』のスローガンの下、勝利へかける思いはひとつ。各所で早大の名をとどろかせたい。
(記事 久野映、写真 三佐川唯)
結果
▽男子部
予選
【ダブルスカル】
S:飯尾健太郎(教2=愛媛・今治西)
B:有田光佑(創理4=東京・早大学院)
7分21秒87 【2着】 タイム順により準決勝進出
【舵手なしクォドルプル】
S:正木丈治(商2=米国・ウッドブリッジ高)
3:寺田圭希(人4=滋賀・膳所)
2:杉田陸弥(人4=栃木)
B:伊藤光(文構2=東京・神代)
6分51秒84 【2着】 決勝進出
【舵手なしフォア】
S:富田剣志(スポ3=愛媛・今治西)
3:尾崎光(スポ2=愛媛・今治西)
2:金子怜生(社2=東京・早大学院)
B:石阪友貴(政経4=東京・早実)
6分54秒37 【4着】 順位決定戦へ
【舵手付きフォア】
C:山口幹太(法2=青森)
S:井踏直隆(文構2=東京・早大学院)
3:得居亮太(法3=東京・早大学院)
2:菅原拓磨(国教4=東京・早大学院)
B:川田悠太郎(国教4=東京・早大学院)
7分07秒01 【1着】 準決勝進出
【エイト】
C:藤川和暉(法4=東京・早稲田)
S:石田良知(スポ3=滋賀・彦根東)
7:石橋広陸(スポ3=愛知・豊田北)
6:鈴木大雅(スポ2=埼玉・浦和)
5:伊藤大生(スポ2=埼玉・南稜)
4:木金孝仁(社4=東京・早実)
3:有田雄太郎(法3=東京・早大学院)
2:東駿佑(政経3=東京・早大学院)
B:内田達大(スポ3=山梨・吉田)
6分08秒46 【3着】 タイム順により決勝進出
準決勝
【ダブルスカル】
S:飯尾
B:有田光
7分30秒12 【6着】 順位決定戦へ
【舵手付きフォア】
C:山口
S:井踏
3:得居
2:菅原拓
B:川田悠
6分58秒58 【2着】 決勝進出
▽女子部
予選
【シングルスカル】
早大A
波多野響子(教4=福岡・東筑)
9分01秒76 【3着】 順位決定戦へ
【ダブルスカル】
早大A
S:木下弥桜(スポ1=和歌山北)
B:土井鈴奈(教4=埼玉・浦和一女)
7分46秒63 【1着】 決勝進出
早大B
S:渡邉楓(文2=新潟南)
B:青木華弥(教2=東京・本所)
7分40秒75 【1着】 決勝進出
【舵手なしクォドルプル】
早大A
S:木野田沙帆子(スポ3=青森)
3:米川志保(スポ2=愛知・旭丘)
2:木下美奈(スポ3=山梨・富士河口湖)
B:佐藤紫生乃(スポ4=宮城・塩釜)
6分55秒24 【2着】 決勝進出
早大B
S:石上璃奈(スポ3=長野・下諏訪向陽)
3:田口えり花(商3=埼玉・浦和一女)
2:南菜月(教1=新潟南)
B:工藤かれん(スポ2=愛媛・松山東)
7分09秒91 【3着】 順位決定戦へ
コメント
B:川田悠太郎(国教4=東京・早大学院)
――本日のレースを振り返って
2本やったのですが(このクルーで)2000メートルを通して漕いだのが実は初めてで。今回のレースの目的が低いレートで1本の伸びをなるべく大きくして、夏につなげるトレーニングのようなイメージのレースでした。ほとんど2000メートルを漕ぐ練習をやっていなかったのでどんな風になるか不安だったんですけど、1レース目では当たりが良くて周りもあまり速くなくて。周りの相手を見ながら落ち着いて漕ぐことができたので、お利口さんぽいというか、安定したレースになりました。2レース目はその反省も生かしてもうちょっと決めるところで決めたいだとか、前半をもうちょっと強気でいけるんじゃないかとした結果、最初の1000メートルをすごく良いタイムで入れたんですけれど、その分後半で疲労もあって伸ばせなかったので、そこがあすの課題です。大会前日に、2000メートルは3本走れるからその3本を通して成長できるようにしようということを言っていたのですが、それはクリアできたかなと。最初の500メートル、1000メートルで強気でいって相手を突き放すことができたので、最終的には割と詰められたんですけど、やっぱりその貯金があったからこそ落ち着いて漕ぐことができました。ただ個人的に予想外だったのが強豪である日大が意外と近くにいたことで「これはいけるんじゃないか」と思ってしまったことでちょっと攻め急いでしまったなと。もうちょっと自分たちの漕ぎに集中してできたらよかったなと思います。
――では先行逃げ切り型のレースプランだったのですか
今回コックスの山口幹太(法2=青森)が前回の軽量級(全日本軽量級選手権)では漕手で、コックスに転向して初めてのレースだったのでレースプラン自体はすごくオーソドックスで、前半思い切って行って中盤・後半でそれを維持あるいはさらに差を開けて最後にもう一度上げるというものでした。
――早大学院出身者が多いクルーでしたが、このクルーの強みは
今回のクルーは早慶レガッタのセカンド(第二エイト)の時からのメンバーで、ちょうど固まっていた4人でしたね。それもあってこのクルーで練習を始めた時から意思疎通がすごく取りやすかったのと、学院時代に習っていたコーチも一緒で漕ぎのイメージがそろっていたことでやりやすかったですね。他のクルーだとそういうところで衝突することもあるのですが、もちろんそれを乗り越えて強くなる場合もありますけど、今回はその手間が省けたというか効率よく練習を進められました。どちらかというと強く、一人一人ががむしゃらに漕ぐというよりも、全員で1本1本の質を上げていくことが大切だと思います。
――あすへの目標をお願いいたします
メダルが欲しいですね。大学に入って僕は1年生のときの新人戦(全日本新人選手権)でメダルを取ったんですけどそれ以降取ったことなくて。それは多分他の3人も一緒で、予選を1位というこんな良いタイムで通過することが久しぶりなので、せっかくのチャンスをものにしてメダルを取りたいですね。
S:渡邉楓(文2=新潟南)
――練習ではどのような点を意識していましたか
部全体で特に大きく長く漕ぐということを意識しているので、それをまず大前提にしていました。私と青木(華弥、教2=東京・本所)はケガからのリハビリ明け最初のレースだったので、とにかくチャレンジャーの気持ちで挑もうと思っていました。
――青木選手と組んでみて、いかがでしたか
1回漕いだことがあるので、漕ぎやすさはあったのですが組み始めたときは私がストロークという珍しいこともあって合わせてもらうのが大変だなと思うこともありました。ですが、練習を重ねるごとに艇の進みを感じられることができて、良いペアと組めたかなと思います。良いところとダメなところを練習ごとに話し合って、一つ一つ直していけたらなと思って練習してきました。
――クルーの強みはどこでしょうか
スタートとスパートの勢いが良い点かなと思っています。スタートで私が速く動くのに青木もついてきてくれて。声をかけて盛り上げてもくれるので、すごく助かります。
――きょうのレースを振り返って
レースプランではスタートでまず出て、コンスタントで大きく長く漕いで、ラストスパートにつなげようということでした。実際、ほとんど予定通りにいって良いレースができたかなと思います。
――タイムについてはいかがでしょうか
もっと遅いと思っていたので、陸に上がってきてからコーチに良いタイムだったよと言われて。ちょっと信じられなかったんですけど、実際にタイムを見て決勝でもいけるかなというタイムだったことが嬉しかったです。
――ラストで新潟大が追い上げてきましたが意識はされましたか
私はすごく意識していて、向こうが上げているからこっちも上げなきゃなという意識が強かったんですけど、青木は漕ぎながらも新潟大を見ている私を見て自艇集中と。自分の漕ぎだけに集中しな、と怒られたので(笑)。あしたもきちんと自分たちの漕ぎを第一に考えていけたらなと思います。
――あすに向けて意気込みをお願いします
あしたは早大同士のクルーで当たっているので、負けたくないなという思いが強いです。あと、リハビリ明け一発目のレースで決勝に進めたことがすごいうれしいので、自分たちがどこまでいけるかを是非試してみたいなと思っています。