早慶レガッタから早一カ月。雨風の吹く中、第38回全日本軽量級選手権が開幕した。厳しい組み合わせに入り苦戦を強いられる中、男子シングルスカルで伊藤大生(スポ2=埼玉・南稜)がし烈なデットヒートを制して1位となり、準決勝進出を果たした。その他の艇はあす行われる敗者復活戦へと回る。
先陣を切って登場したのは、男子舵手なしペアの早大Aと早大B。両艇とも前艇に食らいつこうとするも、差を広げられてのフィニッシュとなる。続いて女子シングルスカルに北村綾香(スポ2=滋賀・膳所)が出場。スタートでは2位につくも徐々に突き放され、終盤は残り3艇との2位争いに。ラストは切り替えて追い上げを見せ3位となった。一方、男子シングルスカルでは早大Bの伊藤大が躍動する。序盤から粘り強く漕ぎ進めると、1500メートル地点では前艇を捉える。その後激しいつば競り合いとなるも、スパート勝負を制し1位でゴール。見事と準決勝進出を決めた。また同種目に出場した早大Aの内田達大(スポ3=山梨・吉田)は500メートル地点を1位で通過するものの、中盤以降伸びず順位を落としてしまう。早大Cの井踏直隆(文構2=東京・早大学院)はレートを上げきれず3位でゴールした。
デッドヒートを制し準決勝進出を決めた伊藤大
女子ダブルスカルではスタートはうまくいったものの、やはり波に苦しむこととなった。「波をたたいてバランスを崩してしまうことが多かった」(工藤かれん、スポ2=愛媛・松山東)とうまくリズムをつくり出せない。後半に追い上げようとするも実らず、早大Aは4位、早大Bは5位という結果に終わった。続いて登場したのは1年生同士で組まれた男子ダブルスカル。第2クオーターで首位に立つも、「一本の強さで出られてしまった」(川田諒、社1=愛媛・松山東)とその後相手に先行を許してしまう。惜しくも約1.5秒差での2位となった。男子舵手なしフォアは強豪同士と当たることになる。「思った以上に逆風が強くて、自分たちのレースが出来なかった」(石橋広陸、スポ3=愛知・豊田北)と振り返るよう、先頭から遅れを取ってしまうと最後まで差を詰めることができなかった。男子エイトは、序盤から大きく離されてしまうと、中盤以降もさらに差を広がられてしまい4位でのゴール。明日に向けどのように課題を修正し、調子を持っていけるかがカギとなるだろう。
接戦にもつれ込むが惜しくも及ばなかった男子ダブルスカル
ラフコンディションに多くの選手が苦しんだ初日。あすの敗者復活戦では、ワセダらしさをレースで見せられるだろうか。存分に力を発揮して、準決勝そして決勝への切符をつかみ取ってほしい。
(記事 加藤佑紀乃、写真 黒田菜々子、喜田村廉人)
結果
▽男子部(予選)
【シングルスカル】
早大A 内田達大(スポ3=山梨・吉田)
7分43秒72【2位 敗者復活戦へ】
早大B 伊藤大生(スポ2=埼玉・南稜)
7分58秒53【1位 準決勝進出】
早大C 井踏直隆(文構2=東京・早大学院)
9分07秒50【3位 敗者復活戦へ】
【舵手なしペア】
早大A
S:有田雄太郎(法3=東京・早大学院)
B:金子怜生(社2=東京・早大学院)
7分10秒81【2位 敗者復活戦へ】
早大B
S:得居亮太(法3=東京・早大学院)
B:菅原拓磨(国教4=東京・早大学院)
7分17秒35【4位 敗者復活戦へ】
【ダブルスカル】
S:川田諒(社1=愛媛・松山東)
B:藤井拓弥(社1=山梨・吉田)
7分52秒77【2位 敗者復活戦へ】
【舵手なしフォア】
S:石橋広陸(スポ3=愛知・豊田北)
3:東駿佑(政経3=東京・早大学院)
2:富田剣志(スポ3=愛媛・今治西)
B:石阪友貴(政経4=東京・早実)
7分18秒67【4位 敗者復活戦へ】
【エイト】
C:佐藤修平(文3=秋田)
S:尾崎光(スポ2=愛媛・今治西)
7:川田悠太郎(国教4=東京・早大学院)
6:有田光佑(創理4=東京・早大学院)
5:寺田圭希(人4=滋賀・膳所)
4:杉田陸弥(人4=栃木)
3:山口幹太(法2=青森)
2:正木丈治(商2=米国・ウッドブリッジ高)
B:伊藤光(文構2=東京・神代)
6分54秒81【4位 敗者復活戦へ】
▽女子部(予選)
【シングルスカル】
北村綾香(スポ2=滋賀・膳所)
8分31秒75【3位 敗者復活戦へ】
【ダブルスカル】
早大A
S:佐藤紫生乃(スポ4=宮城・塩釜)
B:田口えり花(商3=埼玉・浦和一女)
8分57秒63【4位 敗者復活戦へ】
早大B
S:工藤かれん(スポ2=愛媛・松山東)
B:南菜月(教1=新潟南)
8分59秒66【5位 敗者復活戦へ】
コメント
S:石橋広陸(スポ3=愛知・豊田北)
――きょうの試合を振り返っていかがですか
思った以上に逆風が強くて、自分たちのレースができなかったのが、次に生かさなければいけない点だと思います。
――東レ滋賀、日大、中部電力と厳しい相手のそろうレースでしたが
僕はそこに対してはあまり何も思っていなくて、正直きょうのタイム差も、この逆風なので、単純に比較することはできないかなと思っています。とりあえずあしたの敗者復活戦で確実に上がることの方が大事かなと思っています。
――今回のクルーのシート順はどのような経緯で決められましたか。
最初はストロークが東(駿佑、政経3=東京・早大学院)だったんですけど、僕がストロークをやりたいということで、僕をストロークにしてもらって、そのままストロークだった東が3番に乗りました。バウペアの冨田(剣志、スポ3=愛媛・今治西)と石阪さん(友貴、政経4=東京・早実)は、石阪さんが早慶戦のときもバウを務めていましたので、そのままの流れで、冨田が2番で石阪さんがバウというように決まりました。個人的な理由として今までずっと(エイトの)7番だったので、竹内さん(友哉副将、スポ4=愛媛・今治西)や、きょねんの長田さん(敦前主将、平28スポ卒=石川・小松明峰)とかの後ろで漕がせてもらっていたので、そこからリズムをつくってこのクルーを勝たせたいという気持ちがあったので、ストロークに志願しました。
――ストロークを志願したのは今回のクルーのためですか
そうですね。今回のクルーを見て、僕がクルーを引っ張っていきたいという気持ちがあったので、監督(内田大介監督、昭54教卒=山梨・岡谷南)とコーチにストロークをやらせてほしいと志願しました。
――クルーの持ち味はどこだとお考えですか
技術的に長けているクルーなのかなと思っております。体力の指標で用いられるエルゴメーターの平均タイムは、東レ滋賀や中部電力や日大に比べれば弱いところはあるんですけど、それを補える技術力は僕たちにはあるのかなと思うので、それは僕たちの持ち味だと思っております。
――早慶戦から1カ月が経ちましたが
早慶戦はああいう結果で、どうしてもなかなか受け入れられなかったという感じはあるんですけど、やはり、あくまで僕たちの目標は秋のインカレ(全日本大学選手権)と全日本(全日本選手権)で優勝するということなので、もうここは切り替えて軽量級に臨んだというかたちですね。
――あしたの試合への意気込みをひとことお願いします
順当にやったら間違いなく勝てる組み合わせだと思いますので、きょうできなかったことをしっかりあしたの敗者復活戦に生かして、確実に勝ちたいと思います。
S:工藤かれん(スポ2=愛媛・松山東)
――早慶戦から調整したところはありますか
スイープ種目からスカル種目に戻ったことと、エイトの大きい艇から小艇に変わったことで感覚的にも艇の動きに敏感になる部分があったので、特にバランスの部分とかは意識していました。自分の漕ぎが艇にどう伝わったかというのがエイトと比べてすごく分かりやすいので、しっかり自分の漕ぎを伝えて良いバランスを取って、良い漕ぎをしようと。繊細なところを意識してやってきました。
――南選手(菜月、教1=新潟南)と組んでみての感触や、先輩として声かけしたことはありますか
私があまりクルーキャップをするようなタイプではなくて、先輩に付いていったり、同期も実力のある人たちが多いのでその人たちに必死で付いていったりという部分が多かったのですが、先輩としてワセダの漕ぎ方を少しでも伝えられればいいかなと思って声をかけました。南もすごく実力があって、水中も押してくれるのでそこまで先輩として引っ張らなきゃというよりは、二人でどうやったら艇が進むかなというのを一緒に考えるという部分が多かったかなと思います。
――意見交換は積極的にされたのでしょうか
そうですね。私も南も軽量級の中では体が小さい方なので、長いレンジがなくてもどうやって他の学校と勝負するかというのを二人で考えながらやっていました。
――スタートは良い位置につけた印象ですが、いかがでしょうか
スタートはなかなか良かったかなと思ったのですが、波風がすごくて、特に波に対応し切れなかったかなと。波をたたいてバランスを崩してしまうということが多かったです。スタートスパートが終わってから、たたき始めで少しリズムが崩れて、後半レートが上がり切らなかったという感じです。でも、スタートは良かったなと思います。
――風や波の影響は感じられましたか
そうですね。波にオールが引っかかってしまってバランスが崩れて艇も少し止まってしまって、というスピードが乗ってきたところで崩れて止まってという感じがありましたね。なかなか気持ち良く漕がせてくれない部分があって、精神的に漕ぎにくいレースでした。
――本来のレースプランは
スタートから高いレートで軽く艇を進めていこうというイメージでやっていました。
――このレースで見つかった課題はありますか
スタートで飛び出したスピードを維持することができなかったことが課題だと思っています。あと、バランスが崩れてきたところで少しレース中にネガティヴになってしまったので、あしたは前半攻めて、後半も攻め続けるレースができればいいかなと思います。
――敗者復活戦に向けて
絶対に最終日につなげるレースにしたいと思います。
川田諒(社1=愛媛・松山東)
――きょうのレースを振り返っていかがですか
コンディションは良くなかったのですが、前半500メートルまでに首位を取るということを目標にしていて、そこは良い感じで出ることができました。第2クオーターと第3クオーターの500メートルから1500メートルにかけて、立命館大とレート自体は変わらなかったのですが、一本の強さで出られてしまって。最後スパートを入れたのですがあまり乗らなくて僅差で負けてしまいました。その1.5秒くらいの差を、どこかで埋められたのではないかなと思います。出し切ったのですが悔しいです。
――きょうのレースプランについて
きのうまでの時点ではどちらかというと後半勝負でした。僕は軽量級(全日本軽量級選手権)の試合に出ている選手の中でも軽量で、2人とも1年生で体が仕上がっておらず、たぶんスタートから攻めても絶対的な速さで足りていないので、粘って粘って最後みんなよりも少し早めにスパートに入って、勝負するつもりでした。しかし、きょうはすごくコンディションが悪かったので、出られたら相手が見えなくて。相手を見ながら漕ぎたいなと思ったので、前半から上げるつもりで、結果見えるかたちで漕げました。レースプラン自体は、前半から相手がはっきりと見える位置につこうというプランでした。
――藤井拓弥選手(社1=山梨・吉田)と一緒に組まれてみていかがでしたか
2人とも1年生で、同じ学部で、自己推薦で入っていて、自己推薦の時からここに稽古に来て小論文や面接の指導を一緒にやっていたので、1年生の中でも近しい人物の1人です。1年生の男子の中で軽量級に出ているのが、僕と藤井だけで、他の1年生は別でトレーニングメニューをしていたのですが、僕らは先輩方と同じレースに向けたメニューをやってきました。今の段階のタイムで8番手ぐらいなのですが、8位以内だと入賞になるので1年生2人だけでも8位以内に入賞しようと話していました。
――中日本レガッタからきょうまでどのように調整をしてきましたか
中日本レガッタでは、藤井はダブル(ダブルスカル)で出ていて、僕はシングル(シングルスカル)で出ていました。高校の時の話になるのですが、僕も藤井もダブルが専門だったのですが、僕はストロークもバウも両方やっていて、藤井はストロークしかやっていなかったんです。今回僕がストロークで、藤井がバウで。藤井がバウ難しいと言っていて、僕もシングルに乗っていて期間が開いてしまったので、力を出し切ってはいますが、手が進んでいないという時期もありました。しかし、先週の土日にお試しで2000メートルのタイムトライアルをやった時、それまでは自分たちのクルーの完成度が高くないかなと思っていたのですが、目標タイムより8秒くらい良いタイムが出て、意外といいんじゃないかと。最後の1週間で何とかかたちになりました。
――大学4年間での目標はありますか
早大に入ったら、早慶戦で対校エイトに乗りたいという目標がずっとありました。ただ今回1年生で入賞を狙えそうな位置にいるので、もし入賞できたらあまり堅実的ではないのですがスカル種目の選手になりたいです。エイトは片手のスイープ種目で、ダブルは両手の種目で、僕は体があまり大きくないのですが、スイープ種目はスカル種目より体が大きい人が有利なので。
――あすの敗者復活戦に向けて
3艇レースで1艇上がりなのですが、今のタイムでいったら1番上がりなので、普段通りやれば勝てると思います。しっかり準備して準決勝進出を決めて、準決勝から決勝に上がるのが一番厳しいので、そこでしっかり勝てるように、次のレースにつながるレースをしていきたいです。