昨年度、見事に全日本大学選手権(インカレ)女子総合6連覇を達成した早大漕艇部女子。今回は、インカレの舞台で女子舵手付きクォドルプル(クォド)のメンバーとして出漕する亀本咲季子(人3=埼玉・浦和一女)、佐藤紫生乃(スポ3=宮城・塩釜)の二人に、春シーズンの振り返りとインカレに向けての意気込みを伺った。
※この取材は8月2日に行われたものです。
春シーズンを振り返って
部員と真剣に向き合う亀本
――最近はどのような練習をしていますか
佐藤紫 先週までは5人でやっていて、いまは分漕というかたちになっているのですが、またすぐにクルーに戻って漕ぎ始められるかなと思います。
亀本 メンバーが1人ケガしてしまっているので、クォドではなくてシングルというかたちでやっています。
――チームの練習の雰囲気はいかがですか
佐藤紫 各クルーで目標を立てているので、それに向かって一日一日大切にやっていけているというのは全体としてあると思います。
亀本 うーん…。良いんじゃないですかね(笑)。
一同 (笑)。
亀本 例年に比べて男女共に目標が明確になっていると思うので、それぞれが良い雰囲気でやれているのではないかと思います。
――力を入れている練習はありますか
佐藤紫 力を入れているというよりは、漕いでいる中でどこを直したいだとか細かい課題が出てくるのですが、それに応じた練習を組み込んだりして、長い距離につなげていくということはやっています。
――具体的にどのような声掛けをしていますか
亀本 クルーの特色に合わせて変えています。クルーの特色や出る前の状態できょうはどこを意識しようとかがあって、あとは水のコンディション等にも合わせて、いろいろ考えながらやっています。
――暑さ対策などはありますか
佐藤紫 熱中症にならないように、ということは気を付けています。
亀本 長くやってしまうとそれだけ外にいることになってしまうので、効率よく練習するようにということは常に意識してやっています。
――本年度のチームの印象はいかがですか
佐藤紫 まとまりはあるよね。
亀本 目標が明確だからかな。あと、ことしの女子の目標は『全種目優勝』と、全日本(全日本選手権)でのエイトとクォド優勝で、その目標を達成するためには部員一人一人の力が絶対に必要なので、個人個人が責任を持ってできているのかなと思います。
――春を振り返っていかがでしょうか
佐藤紫 私は早慶戦(早慶レガッタ)も乗れなかったですし、お花見(レガッタ)もセカンドのクルーだったのでもどかしい気持ちはあるのですが、やはり夏が一番大事なレースなので、そこで乗った艇には責任を持って勝ち切るということは大事にしていきたいと思います。
亀本 私の2つ上が引退してからは私がコックスの中で最上級生だったので、常に責任を持ってやっていて、あとコックスの後輩が何人かいたので、その後輩たちがワセ女のコックスのお手本として私みたいになりたいと思ってもらえるようにということは意識してやっていました。その中で早慶戦の時とかは先輩に引っ張ってもらいながらも、しっかりコックスとして前よりもクルーに貢献できたかなと思います。
――佐藤選手はケガをしていたということですが、動き始めたのはいつごろでしょうか
佐藤 痛みがほとんどなくなって、しっかり漕げるようになったレースは軽量級(全日本軽量級選手権)です。
――いまはケガの不安もなくやれていますか
佐藤紫 トレーナーの方がいるので、付きっきりでサポートもしていただいていて、いろんな角度から腰に対してアプローチをすることで腰の痛みも軽減していて、いまは気にせず練習することができています。
――自分自身の強みはどこだと考えていますか
亀本 時間というのは限られていて、練習できる時間、部活できる時間も限られているので、その中で最大限の効率と質を求めて、コックスとして何ができるかということは常に意識して考えています。強みは、そんなに物おじせずに言わないといけないかなということは言えているかなということと、私が後輩だった時に先輩に対してやりづらいなと思った時もあって、そういうことを後輩には感じさせたくなくて、私はコックスなので勝つためにはみんなの力が必要になってくるので、後輩や先輩、同期に心を開いてもらって全員で頑張れるような雰囲気をつくりたいと思っています。後輩が先輩に対してやりづらいと思うことは私が積極的に解消しようと思っていて、漕手同士だったら言いづらいことでも漕手とコックスなら役割も違うと思うので、みんなで一丸となってやっていけるように、周囲をよく見てやっていきたいと思っています。
佐藤紫 私はいまの立場としては高校からずっと同じなので4年生と一緒にいる期間が長くて、コミュニケーションとかもお互いに取るしみんなより話し掛けていただく機会も多いと思うのですが、意見や考え方を理解しつつ下がどうやったらついてきてくれるかを考えています。私も意見を言うときは言えるのですが、私は漕手なので、練習に臨む姿勢とか漕ぎの面でも引っ張っていけるような、雰囲気みたいなものを出して、まとめてはいないのですが、安定のポジションというか(笑)、そういうところにはいます。
――1年生も入ってきたと思うのですが、動きを見ていかがですか
佐藤紫 うまいよね。
亀本 うん(笑)。仲良いな、と思います。
佐藤紫 仲が良いし、切磋琢磨(せっさたくま)し合えそうだと思います。
――普段はどういった話をされますか
亀本 コックスの後輩とは一緒に作業する時間も多いので、仕事を教えたりしています。
佐藤紫 水から上がってきた時はボートの話とか、暑かったねとか話します(笑)。細かい話だと、3年の女子にスポ科生が一人だけでスポ科ならではの話ができないのですが、後輩にはスポ科生が多いので、先生の話とか、その授業はやばいとか話したりします(笑)。
――ことしから上級生になりましたが、意識の変化もあるのでしょうか
佐藤紫 もっとしっかりしなきゃなと思います。3年生は実力的にもついていきづらいみたいな雰囲気もあると思うのですが、大事なのは勝つことなので、それに向けて実力をもっとつけて、ついていきたいと思われるような先輩になりたいと思っています。
亀本 みんなをまとめるには、コックスとして良いコックスであるだけじゃ駄目だなと思っていて、いまのままでは後輩がついてきてくれないと思って3年生になってからは危機感を覚えて、しっかりするようにしています。
お互いの印象
一つ一つの質問に丁寧に答えてくれる佐藤紫
――漕艇の魅力は
佐藤 シンプルなところです。一番速い人が勝ちという白黒はっきりしているところが、性格的に合っているので、そこだと思います。
亀本 私もシンプルなところが好きです。
――3年目になりますが、お互いの印象は
亀本 私は遅くに入ったのですが、1年生の時の私が最初に参加した全体ミーティングで、当時のコーチが隣にいる人の良いところを言え、というのがあって。隣に紫生乃がいたのですけどまだ全然関わったことなくて、30秒間良いところを言い続けなければいけなくて、私は筋肉がすごいとか言って沈黙しちゃって(笑)。
一同 (笑)。
亀本 紫生乃は頭が良い、とか全然関わったことないのに良いところをずっと言ってきてくれて、心がピュアなのかなと思ったのが印象的です(笑)。
佐藤紫 私は、他に同期が2人いるのですがその2人が仲良くなっちゃっていて、私は遠征にいっていていない時が多くて先輩に甘えていたのですが、亀ちゃんが入ってきて、ラッキーって(笑)。サバサバしてるって聞いたし、合うかもと思いました。
――当時の印象はいまでも変わりませんか
佐藤紫 亀ちゃんはいまでもサバサバしていますね。
亀本 ピュアだとは思っていない(笑)。
――二人では普段はどういった話をされますか
佐藤紫 エイトのこととか結構話すよね。
亀本 2人とも全日本にエイトで出走予定なので。
佐藤紫 あとは、亀ちゃん携帯壊れたとか(笑)。
――オフの日はどうやって過ごしていますか
亀本 地元とか、高校の友達と遊んでいます。浦和に住んでいたので、ここから近いので。
佐藤紫 何もしない日は家にずっといてテレビ見て、寝て、食べて、みたいな(笑)。基本一人で行くのが好きで。服とか見るときは人がいると結構気遣っちゃうのですけど、時間かかるし試着とか結構恥ずかしいので一人で行って何時間もブラブラしますね。
――趣味はありますか
亀本 kirimiちゃんが好きです。
佐藤紫 わたしはロードバイクが好きなので、荒川沿いでサイクリングしに彩湖に行ったりだとか、スカイツリーまで一人で行ったりとかしますね。
――部のムードメーカーは
亀本、佐藤紫 良知(石田、スポ2=滋賀・彦根東)ですね(笑)。
――生活のルーティンはありますか
佐藤紫 基本、節度のある生活を、みたいな感じですね。練習に支障がない程度の生活をしています。
――食事などで気を付けていることは
亀本 わたしは特殊で50キロにならないといけなくて、身長的にも50キロはきついのでレース前は差が激しいですね。
佐藤紫 筋肉がなくて、体重も筋肉で増えないというか増量ができないタイプなので、こまめに食べて栄養のバランスとかも考えつつ、タンパク質とか多く取るようにしています。できるだけ筋肉で増量していけるように頑張っています。
インカレへの思い
上級生としての自覚も芽生え女子部の連覇を狙う
――インカレに対しての思いを教えてください
佐藤紫 ことしは結構はっきりしていて、先輩たちと漕げる本当に最後の最後で、高校1年時からずっと一緒に漕がせてもらっていたので、よく勝たせたいとかいう気持ちもあるんですけど、勝たせたいというよりは一緒に勝ちたいという思いのほうが大きくて。やっぱり先輩たちの力ってすごく大きいし、先輩たちがいらっしゃらないと勝てないので、むしろ盛り上げていけるような漕ぎをしたいと思っています。あとは後輩も一人乗っているので、私がきょねんそういう環境だったんですけど、やっぱり先輩に囲まれて漕ぐっていうのは気を遣うし言いたいこととかもなかなか言えないと思うので、水上じゃなくても上がってきてからとか他愛もない話からいろいろなことを引き出してあげて、できるだけ良い環境で漕がせてあげたいな、というのが一番にありますね。全日本では先輩は乗らないのですが、クォドとエイト優勝というはっきりとした目標があるので、先輩たちも私たちも絶対に勝って送り出すというか、悔いなく漕げるようなシーズンにしたいなと思います。
亀本 自分でもそんな気がしないのですけど、わたしは一応初出場で、来年もクォドのコックスは乗るので、先輩がいなくなってもワセ女が女子クォドで勝つノウハウ的なものをちゃんと来年に引き継げるように先輩の良いところをいっぱい盗んで自分に生かして、来年につなげられるように、まずはことし絶対に勝ちたいです。
――それぞれ個人的にどのようなかたちで貢献していきたいですか
亀本 クォドのコックスとして勝つのはもちろんなのですが、ダブルとかシングルとかフォアとかの小艇を常にコーチングしてくださるコーチが週末しか来られなくて、平日とかあまり後輩を見てあげられないので、個人的にはクォド以外にも、クォドには全力投球した上で少し余裕がある時には小艇のことも気に掛けて、貢献できることがあったら貢献したいです。
佐藤紫 先ほども言いましたが中間の位置にいると思うので、先輩たちも後輩も気を遣う部分があると思うのでそこをお互いに意見を言いやすくするムードだったりとか、お互いに全力でできるような盛り上げ方をしたいです。そんなに盛り上げるタイプではないのですけど(笑)、雰囲気って大事だと思いますし、全力を出す以前の問題で気持ちの問題も大きく関わってくると思うので、良い意味で気を配れるように周りにもっと目を向けられればなお良いのかな、と思います。
――総合7連覇も懸かっていますが最後に意気込みをお願いします
亀本 泣きたくないので(笑)、絶対勝ちます!
佐藤紫 勝つしかないです!
――ありがとうございました!
(取材・編集 角田望、寺脇知佳、写真 喜田村廉人)
◆亀本咲季子(かめもと・さきこ)(※写真左)
1994年(平6)4月11日生まれ。埼玉・浦和第一女高出身。人間科学部3年。ポジションは女子舵手付きクォドルプルのコックス。佐藤選手からサバサバしているイメージを持たれていた亀本選手。受け答えもクールでしっかりしている印象でした。一方でサンリオキャラクターのkirimiちゃんが好き、というかわいらしい一面も。クルーの司令塔として、全力投球の活躍に期待です!
◆佐藤紫生乃(さとう・しおの)(※写真右)
1995年(平7)1月7日生まれ。宮城・塩釜高出身。スポーツ科学部3年。ポジションは女子舵手付きクォドルプルのバウ。ロードバイクというアクティブな趣味を持つ佐藤選手。一人でどこまでも行ってしまうその行動力と受け答えの熱さが印象的でした。縦のつながりや全体の雰囲気づくりを心掛け、チームで優勝を目指します!