【連載】インカレ直前特集『Challenge』 第5回 S:東駿佑×3:石橋広陸×2:木金孝仁×B:石阪友貴

漕艇

 大学一位の座を懸ける熱き戦い、全日本大学選手権(インカレ)が幕を開ける。全国の精鋭たちが集う中、男子舵手なしフォアで頂点を目指すのは石阪友貴(政経3=東京・早実)、木金孝仁(社3=東京・早実)、東駿佑(政経2=東京・早大学院)、石橋広陸(スポ2=愛知・豊田北)だ。早慶レガッタを経験した四人はインカレを前に何を思うのか。いまの心境を伺った。

※この取材は7月30日に行われたものです。

「早慶戦はターニングポイント」

常に冷静な受け答えをしてくれた石阪

――今季に向けて冬場はどのような練習をされていましたか

木金 1年生と2年生までは大学から始めたスポーツだったので、何をしたらいいか分からずにフィジカルもテクニックも両方できたのですが、2年生になってある程度かたちができてきたので、とにかく冬はテクニカルを重視しました。あとは他人に合わせるということです。昨シーズンはそれができていなくて負けた試合があったので今シーズンではそのようなことがなくなるように、合わせてテクニカルを高めるということを重視してやっていました。

石阪 年明けからは早慶戦があって全員エイトに乗ったので、エイトに向けてのトレーニングをしていました。

石橋 きょねんは対校のエイトに乗らせてもらっていて、とにかく対校エイトが3連敗していたので勝つことだけを目標にやっていました。僕は7番に乗らせてもらっていたのでストロークの長田主将(敦、スポ4=石川・小松明峰)に合わせるためにもひたすら冬は漕ぎこんで、合わせるというところとしっかり自分のフィジカルをアップさせることを意識していました。とにかく冬は早慶戦に勝つことだけを目標にやっていました。

 自分もフィジカルをとにかく向上させるということを考えながら練習していました。とにかく早慶戦で勝ちたくて、自分も7番で角南さん(友基、スポ4=岡山・関西)に付いていくことを考えていました。そうすれば自然と技術も上がっていくのかなと思ってやっていました。

――具体的にはどのような練習をされていたのですか

木金 冬練習になると小さい船よりも大きい船でみんなで漕ぐという練習が多いのですが、そういう練習で他人がどういうリズムで漕いでいるのかを観察しながら自分の漕ぎとマッチさせるようにということを意識しながらやっていました。

――学年が上がって変化はありましたか

木金 2年生まではプライベートも練習も好き勝手にやっていた部分もあったと思うのですが、7月になって残り1カ月と10日くらいで自分たちが最上級生になるということで、自分だけじゃなくて少しずつ全体を見渡すという癖がついたと思います。特に学年ミーティングを開く機会が増えたんですけど、部の改善点とかを考えるようになって意識的に上級生として責任を持たなければならないという実感が湧いてきているところです。

石阪 僕らは結構学年ミーティングを開いていて、そのたびに3年生としてどうとか、次の4年生としてどうとかを話していく中で部全体を見る目が大切だよねっていう話は結構しますね。僕らが個人的に1年生の時は3年生とか4年生になったら門限とか適当に、守んなくていいのかなって思っていたのですが(笑)。1年生の時は破ったらめちゃくちゃ怒られそうだな、怖いなと思っていましたが、いまは逆に破ったら示しがつかないなっていう思いがあります。頑張って駅から走ってくることが多いです。そういうところも結構変わってきたかなと思います。

石橋 門限は守っています(笑)。2年になって1年生が入ってきたのはすごく大きいですね。いままでは1年生で僕はとにかく4年生とか3年生の足を引っ張りたくないってことばかり考えていて、きょねんもインカレや全日本(選手権)でとにかく足を引っ張らないようにということを考えていました。今後は2年生で今度の新人(全日本新人選手権)でも一番上の学年になりますし、僕たちがワセダを引っ張っていかないとなと思っています。いまもそのことに向けて行動でも示さないといけないし、成績とか技術でもこれだけ戦えるのだということを示して、ワセダを引っ張っていくのは僕たちの代なのかなっていうのを1年生と違って思っています。

 この1年間はとにかく1年生として突っ走ってきて、周りはあんまり見ていなくて自分のために漕いできました。2年生になって1年生にスイープを教えたりしていると、だんだん自分も上級生になったなと。もっと責任感を持って、もっと周りを見るようにして、クルーづくりも自分からやっていかないといけないのかなと思い始めて、いまやっと自覚が芽生えてきたところです。

――前期を振り返ってみていかがですか

石阪 僕は早慶戦のときに第二(エイト)で負けて、でも5月の軽量級(全日本軽量級選手権)で東と(舵手なし)ペアで結果が残ったんで良い流れでここまでこられたかなと。負けた早慶戦も無駄じゃなかったかなっていうのは思っています。

 自分もそうですね。早慶戦に負けて本当に悔しくて何が何だかよく分からない状況で、抜け殻みたいな状況でした。でも、軽量級で結果が出たことでいままでやってきたことは間違いじゃなかったのかなっていうのを自覚できたし、正直1年の時の新人のスイープに比べたら自分も変わっていたのだなあと。前期を振り返るとなかなか成長したと思います。

木金 早慶戦負けたってことで冬の成果が見られなくて、どうだったのだろうと疑問に感じた部分もありました。それでも、そのあとにあった軽量級と同じ日にあったオープントライアル(小艇タイムトライアル)で結果は良くなかったのですが、内容としては同期の是澤(祐輔、スポ3=愛媛・宇和島東)と初めて一緒に組んでレースに出て、レースまでの1カ月間でだいぶ成長したと思います。結局レースを終えて、いままでやってきたことは間違いじゃなかったし、しっかりステップアップを重ねてこられたと感じました。

石橋 僕も早慶戦が一番でかかったかなと思っています。結果はご存じのとおり、失格で。勝ったのですがあの結果ということにみんなやるせない気持ちになって、その状態で軽量級に入ってしまい、ずるずるとうまくいかなくて失敗したというのが反省点です。そのあと、対校エイトの選考もあったのですが、自分はそれにも負けてしまって。ずっと1年生のころから対校エイト乗っていたのでそれに過信している部分があったのかなと。でも対校エイトの失格、軽量級で結果が出なかったこと、選考に外れてしまったこと、全てが今後に生かせる良いことだなと思っています。切り替えて、このいまのメンバーで優勝することを目指しているので、前期は失敗ばかりだったけどいまは成功に向けてすごく良い流れができているなと捉えています。

――早慶レガッタを経て、気持ちの変化などはありましたか

木金ちょっと待ってください(笑)。難しいですね。

石橋 早慶レガッタでは失格でしたが、結果としては慶大に勝っていたので自分としては何か満足してしまう部分というのがありました。いままでは慶大に3連敗で、そのような状況下で勝てたということに満足してしまいました。早慶戦の時も長田さんのリズムをつなぐということだけを目標にやっていて、それも結果的にはつなぐことができて勝てたので、自己満足してしまったことが伸び悩みにつながったのかなと思っています。やはり早慶レガッタは良いところもあり、悪いところもあるのでターニングポイントとして自分の中で重要な出来事だと思っています。

木金 きょねん全日本で6位という結果を得て自分で満足して足場となるものができたのですが、全日本新人の決勝と早慶戦という大事な部分を落としたので、何だかんだ自分は進歩していないのではないかという不安ではないですけど、負けたことによって自分に対して疑心暗鬼に思うことがありました。でも、自分がてんぐにならないということもありましたし、負けたことによって冷静に自分を分析する機会をもらったと思っています。軽量級のオープントライアルでしっかり良い結果を出せたので、夏に向け良いステップづくりになったと思います。

石阪 僕はやはり技術的なことでもっと練習しなきゃなと。早慶戦は(川が)荒れているので、コースでできないことがたくさんありました。川で辛うじてできていても、レースになるとできないことをビデオとかを見ていて浮き彫りになって。それからは荒れているレースまで想定してというのを意識づけるようになりました。その結果からか早慶戦の時よりも漕ぎが結構変わったなと思っています。気付けたのは良いことでした。

 自分も技術に関してなんですけど、早慶戦も、コースでのレースも自分たちがいかに意識高く追い込んできて練習してきたかというのが重要になります。ずっと同じ漕ぎを早慶戦でも続けてこられれば早慶戦でも勝てるし、結果的に自分たちがそれをできなかったから勝てなかったわけで。やるべきことをやり切るということの大切さですかね。レースで緊張しても、いかに自分でそれをほぐしてやれるかということが大切だと思いましたし、そこが大事だと思います。

「言いたいことが言える環境」

明るくクルーを引っ張る木金

――学年の仲はいかがですか

石阪 学年の仲は良いよね。良いというか、何もない(笑)。

一同 (笑)。

木金 実は同期とは仲良いですけど、どちらかというと上級生と仲良い方で、下級生とはあまり向き合ってきませんでした。早慶戦を通じて初めて下級生と同じクルーだったので、そこで関われるようになって僕的には仲良くやっているつもりなんですけど(笑)。

石橋 はい、良くしてもらっています(笑)。

 2年生は同期飯行こうとかそういう話にはならないですけど、学年ミーティングとかになったら真面目に話し合えるので団結力はあるのではないかなと思います。

石橋 あと誕生日会が毎月続いておりまして、いまのところ7月現在まで続いております(笑)。

木金 3年生同士だったら、男子部と女子部で比率が男子部のほうが多くて、男くさいところがあるので男子はすごい仲が良いと思います。

――4人の仲の良さはいかがですか

木金 石阪と僕は中高一緒だったのですが、そこであうんの呼吸というか(笑)。たまに僕にもビシバシ言ってくるのですが、僕はザック(石阪)を信頼しているので、すごくいま楽しいです。小艇で同じクルーになるのは初めてですけど。

石阪 彼らのやりたいこと見守っています。

木金 親的な感じでね。

 水上だと言いたいことを言える環境を3年生がつくってくれているので、それがすごく助かります。自分たちが縮こまってしまうと良い関係も築けないと思うのでやりやすいです。助かっています。

石橋 僕も1番年下なのに、たまに言い過ぎちゃったかなと心配になるくらい。けどそれくらいしっかり言える環境はクルーにとっても良いことだと思います。遠慮なしに技術的なところも水上で言ってしまうのですが、みんなで良くしようっていう意識があってこそできることだと思いますね。(現在は)同期の東ともストペア(ストロークペア)でリズムをつくる役目なのですが、そこでしっかりコミュニケーションを取りながら(リズムを)つくれているので、前の良い流れを後ろの先輩につなぐことができているのではないかなと捉えています。

――お互いの印象はいかがでしょうか

木金 石阪は一定して冷静さを保っていて、自分がどうしようってなったときに心の置き場としていてくれるのが助かっていますね。東に関しては、入ってきた時の印象と違ってガッツがある方だなと思います。テクニックで冷静に漕いでいく感じなのかなと思っていたのですが、同じクルーを組んでみて気持ちを前面に押し出して漕いでくれるので頼もしいなという感じです。石橋はとにかく真面目で(笑)。練習が終わって携帯とか見ているとだいたい石橋から長文のフィードバックとかがグループLINEに送られてきていて。それがすごく良いところで自分たちの練習に対して何がいけなくて何が悪いのかっていうのを模索しようとしているその姿勢が素晴らしいなと思います。

 石阪さんは頭が良いです。クルー全体を見られているし、頼りがいがあるなと。しっかりしていますね。木金さんはすごく優しいです。乗艇中も何でも耳を傾けてくれて、それがやりやすいと思います。たまに遅刻してきたりするんですけど(笑)。それでもちゃんと立て直してやってくれるので。石橋はたまに真面目なんですけどちょっと抜けていて、ばかなところもあるのですが、それも含めて良いところです。乗艇中はとにかく真面目だし抜けながらも良いやつだなと。

石阪 石橋は真面目なやつですね。

石橋 それしか言われないですね(笑)。

石阪 木金は水上で頼りがいがありますね。悪いときは木金をあおって水中出せばどうにかなるかなと。ちょっと甘えちゃっているところもありますが。東も彼に任せておけば悪い方にはいかないなって思いますね。信頼感があります。

石橋 僕はいまのクルーが前から座っているポジションってそれぞれの性格に一致しているなって思います。ストロークって後ろの3人がへばっても死ぬ気で引っ張っていく必要があるんですけど東はどんな状況でも『引っ張ってやるから付いてこい』みたいな感じで、普段はなよなよしてそうなんですけどそれを水上で俺に合わせてこいぐらいの気持ちで引っ張ってくれるので後ろ3人が合わせてついていくことができますね。2番っていうポジションは一番水中を出して船を安定させないといけないところで、かつ真ん中なので前後の動きを見極める必要があるのでそこはクルーリーダーの木金さんが適切なポジションで力も後ろからバックアップしてくれますし適宜クルーリーダーとして必要なことをフィードバックしてくれていいなと思います。バウはクルーの頭脳で状況を把握して声掛けする必要があるので石阪さんは頭が良いし周りが見えていて、適切なコメントをくれるのでそれぞれが良い化学反応を起こしてくれているのかなあと思います。3番の僕は、どうなんですかね(笑)。まあ、適宜頑張っています(笑)。

――オフの日は後のように過ごされていますか

石阪 寝てる?

木金 お金使うことはだいたい飯ですけど、友達とご飯に行きますね。オフだったらとりあえず誰かしらを探します。それで本当に誰もいなくなったら同期の是澤を呼び出して(笑)。部屋にいきなり入って是澤で空いた隙間を埋めさせてもらっています。

 実家に帰るか、地元の友達と遊んだり同期と遊んだり大学の友達と遊んだりって感じですかね。疲れたときはだいたい寝ています。

石橋 趣味がロードバイクで、みんなと乗りにいっていますね。実はワセダのボート部にサイクリングクラブが立ち上がったんですよ。10人ぐらいで。ロードバイク持っている人たちで、荒川のサイクリングコースが直線で走りやすいのでみんなでいっています。

石阪 何の解説だよ(笑)。

一同(笑)。

石橋 ボート部じゃなくて自転車競技部みたいになっちゃいましたね(笑)。でもボート以外にも自転車使ったりして体を動かしています。

石阪 僕は音楽聞いていますね。音楽聞いてギター弾いて時間があればライブに行って。音楽が好きです。

――先日テストがありましたが、勉強との両立は

木金 結構このクルーは良い方で、ボート部の中では成績がトップクラスなので。政経も2人いますし(笑)。僕は3年生で社会科学部なのでいろいろな学部の授業を取れるのですが、マーケティングの授業が好きだなと自分で思ったので、意識が高ぶってしまったということもあってすごく難しい授業を取ってしまって。それで7月の前半くらいは本当に大変で寝坊とかもしてしまったのですが、何とか乗り越えられて、おそらくフル単だと思います(笑)。そのため、心置きなくボートに打ち込めることはすごく良かったなと思います。

石阪 みんな余裕?俺は余裕だよ(笑)。

 石阪さんは余裕って言うのですが、俺は結構つらくて。石阪さんは同じ政治学科なのですが、全然つらさが違うから、自分は苦しみながらやっていました。石橋が所沢キャンパスの1限なのでどうしても(練習開始が)5時とかで、死にたくなるような感じで(笑)。徹夜はできないので、いかにどう睡眠時間を取るかでしたね。きつかったです。本当に死ぬかと思いました(笑)。

石橋 正直この中で僕が1番楽で、僕だけスポ科で、ほとんど今回は実習ばかりでテストとかがなかったのですが、ただ授業が1限なので他の3人を振り回すだけ振り回して(笑)。あと僕は、実習でバスケやったりバレーやったりとかであまりテストというテストはなくて。でもその分、所沢キャンパスということで、電車とかバスとかですごく長い時間があるのですが、その中でしっかり勉強して両立はさせました。

石阪 本当にしてるの?(笑)

石橋 僕はわりかし真面目ですよ。自分で言うのもあれですけど(笑)。何とかなりました。

――漕艇部の中でご自身のポジションはどこだとお考えですか

木金 自分の強みは柔軟性とかそういうところだと思っているので、僕は結構、普段はふざけるというか堅くなるのが好きではないのでへらへら口を出しているのですが、大学から未経験で入ったということもあって、推薦組や一般入試で入ってきた人とは違う視点を持っていると思います。自分が普段ふざけている分、同期とかこのフォアは特に深く話せていると思うので、その分みんなの議論が熱くなってきたときに、しっかりと「ここは対立しているけど、こういう意見を持っている人もいるから、ここを妥協するしかないんじゃないの?」というような、うまく折り合いをつけるというような…。すみません、まとまっていなくて。何て言うんですかね(笑)。すみません。先に東(笑)!

 そうですね。漕艇部としてのポジションは正直まだあまりつかめないのですが、同期の中であったら、基本的に分け隔てなくみんなと仲が良いので、誰かとけんかをするわけでもなくみんなと深く話ができます。そういうところは自分の長所なのかなと思ったりもしているので、それをこれから漕艇部に還元できたらいいのではないかなと思います。

石阪 僕も未経験で入って、そんなにエルゴをぶん回すわけでも、まあ回せないのですが、それなりに常にボートを漕いで結果もまあまあなので、そういう意味では未経験で入ってくるやつらに勇気を与えてやりたい。しっかりやっていけるのだということを教えてやりたいですね。あとは、学年の中で話していてもちょっと一歩引いて見たくなっちゃうので、みんながガーッと話しているところに途中で入ってまとめたいというような、格好よく持っていきたいというような。まあ願望ですけど、そういうポジションにいたいです。

木金 石阪の話を聞いていま思ったのですが、逆に僕は、議題が少し複雑なものでみんなの意見が出ないときに、ポンと意見を出せるということが強みかなと思うので、切り込み隊長でありたいと思います(笑)。

石橋 ちょっと難しいですね。2年生なのでいまはごますりですかね(笑)ひたすら先輩にごまをすって、上級生がやりやすい環境をつくってあげることが下級生の仕事だと思うので、やりやすいようにやってもらおうかなと。陸の上ではそのようにしたいのですが、水上ではどんどん存在感を出していきたいなと思うので、水上では妥協したくないですね。自分が思っていることを素直に言って、僕はみんなと違ってスポーツ推薦というかたちでワセダに入れてもらっているので、しっかり存在感を出してワセダを引っ張っていけるような存在になりたいです。そこを技術面でも体力面でも精神面でも、とにかくどれをとっても信頼して大丈夫だなと思ってもらえるようなポジションを確立していきたいなと思います。

――寮暮らしということですが、部屋割りはどのようにして決めるのでしょうか

木金 最上級生が、適当にくじ引き?ドラフト制(笑)?

石阪 結構話しているらしいよ、誰と誰がいいとか駄目とか。

木金 最上級生になったらこういう感じだったんだみたいになると思うのですが、いまは分からないです。すみません。

――部活の中で流行していることなどはありますか

石橋 自炊とかじゃないでしょうか。自炊家が急に増えましたね。きょねんの春休みくらいまでは石阪さんくらいしかやっていなくて、ちょっと僕が始めて、そしたらいまになってほぼみんなが厨房で何かしらを作っているという感じですね。自炊家が急増しましたね。

石阪 最近厨房が開いたんですよ。前までは業者が入っていてロックされていたのですが、最近解放されたので。僕が最初でしたね(笑)。

木金 でもささみをゆでていたのは俺だぞ(笑)。みんなが自炊する前からずっと、鍋でひたすらささみをゆでていました。自炊ではないですけどね。

石阪 あとチャリ。

石橋 ロード(バイク)も流行していますね。

木金 何かすごいんですよね。僕はびっくりしたのですが、ボートって機材スポーツなのでお金持ちが自然と集まるのかもしれないのですが、みんな10万、20万のバイクをごろごろ持ってきて、ちょっと怖いわっていう感じです(笑)。

――最近、何か面白かったことなどありますか

石阪 これは担当の木金が(笑)。

石橋 木金さんを探したら寮のどこにもいなかったっていう話です。

 木金さんが考えるまでに石橋がそれを話しておこう(笑)。

石橋 木金さんが勉強で忙しくて、朝の5時から練習がスタートするのですが5時になっても木金さんがいなくて。講義室で勉強しているのかと思ったらいなくて、部屋に戻ったのかなと思ったら部屋にもいなくて、寮のどこを探してもどこにもいなくて、どうしようと思って1回トレルー(トレーニングルーム)に行こうとしたら木金さんがひょこっと玄関から現れて…、みたいな感じです(笑)。

木金 その実情を言いますと。本当はこんな話ではなくてもっと面白い話をしたいのですが(笑)。それについてまず解説させていただきます。すごく難しい試験で簿記の内容がそのまま出てくるという科目があって、どうしてもその日中に終わらせなくてはいけなかったのですが、石橋の授業の関係で5時なので。4時くらいまで勉強していて、このままでは絶対に寝過ごすし練習は死ぬだろうと思いまして、とりあえず絶対に寝過ごさないようにということで、トレーニングルームというアップする場所で寝ていたんですよ。そしたら、4時半オンという時間があって入ってくる人がいるので、それのドアの音で僕は目覚めまして、これは成功したなと思って一度部屋に戻りベッドに入ったら記憶がなくなっていて、気付いたら5時になっていました。そしてこれはまずいと思い、冷静を装ってちゃんと5時に着いたぞ感を出して下に行ったのですが、みんなは察しているみたいな感じで、それは良くなかったですね、はい。あと、そうですね。本当に事前に言っていただければ準備できたのですが(笑)、ちょっと待ってくださいね。本当は面白い部活なんですよ!

石橋 何か東ないの?

 難しいですよね。日々面白い部活なので。

木金 ちょっと一回温めておきます(笑)。最後に回してください。

「絶対に優勝」

笑顔で取材に応じる東

――いまのクルーはいつごろから組まれたのでしょうか

木金 6月の中旬。おそらく13日くらいが選考の最終日だったので、6月15日とかだったと思います。

――雰囲気はいかがですか

木金 きょねんは2年生、3年生、4年生といろいろな学年がいて、僕は3つ学年が混ざっている中で一番下だったので、最終的には良かったものの途中でうまくいかないことがあって、一番下の学年の僕からしたらすごく息が詰まるような感じだったのですが、ことしはそのようなことはなく、とにかくみんなに言いたいことを言わせようと思っていました。そしたら(みんなが)思ったよりも言ってきてくれるので、すごく良い感じだなと感じています。

石阪 別に僕らが何もしなくても(2年生の2人は)言ってくれますし僕らが言いづらくなる理由もないので、言うべきことは言い合って、別に決まって何かをしようというような堅苦しいこともないですし、自由にやっていますね。

 全員それぞれ優勝したいという気持ちがあるので、それに向けて全員が一つにまとまって突っ走っている感じがあります。しかも、雰囲気も良いですし、あとは練習して勝つだけかなと。

石橋 変な上下関係がないですし、「俺の言うことは絶対ね」というような先輩風を吹かすようなこともなく、うまく後輩たちを引っ張っていってくれるような言動が多いので、後輩も気兼ねなくやれていますし、それで先輩は先輩らしくバックアップしてくれるというようなかたちなので良いと思います。

――普段の練習ではどのようなことをされていますか

木金 とりあえず大会を迎える前にどのように詰めていくかというと、まず1回クルーの漕ぎを統一するために合わせの練習をすることと、そのあとに、レースペースに近いスピードに入っていって体を追い込むのと、しっかり最後レースペースで2000メートルで自分たちのレースプランを何回も再現できるようにという練習をして、全て終えて大会を迎えるので、いまはクルーの漕ぎを合わせるという、まだ基本づくりの時期なので、長い距離を練習で繰り返しています。

石阪 合わせ中心です。

石橋 基本をやってレースに変える。来週から相模湖合宿が始まるので、徐々に心肺的に追い込んでスピードを出していきたいなという感じです。とりあえずいまは、基礎中の基礎です。

――普段の練習を通して見つかった課題などはありますか

木金 ボートって水中にブレードがあるときに、前から合わせるか後ろから合わせるかというのがあるのですが、僕の基本的な考え方としては前も後ろもなくて、入れたらとにかくかけて、かけたものを最後まで持っていくというのが自分の考え方なのですが、いまは水中に入れてから動き出しの速度がすごく遅いというのが自分たち(の課題)にあるので、水中へのエントリーの無駄のない動きと、そこからとにかく船をすばやく動かすということを主体にやっていきます。その動きを合わせようという練習を最近はずっとやっています。

 レッグドライブの強さと、やはりボートを漕ぐオールのレンジ、全員のレンジをまず合わせるということがまだ改善する余地があると思います。とりあえずいまは、無駄を省いていくというか、全部の無駄を省いていくという練習をしています。

――優勝をつかみ取るために皆さんにいま必要なものとは何でしょうか

木金 僕は、一人一人は高いポテンシャルを持っていると思うのですが、一人一人が良いものを持っていても結局合わせることができなければ勝つことはできないと思うので、しっかり、まずは自分たちの漕ぎを統一するということがすごく大切だと思います。逆にそこが徹底的にできれば、絶対に優勝できると確信しています。

石阪 僕も合わせることがまず一番大事で、ストロークの漕ぎに後ろ3人が合わせるのは当たり前なのですが、それプラス、艇に合った動き、動かし方を。僕らが乗るナッシュは軽い船なので、軽いリズムでポンポンと速く進めるでしょうし、そういった動きも練習して合わせつつ。それが一番大切なことなので、それが必要だと思います。

 やはり、自分はストロークなのでみんなが付いてきやすいようなリズムをまずつくるということが大前提です。あと、信頼されるストロークになる。そのために、まず自分を追い込み抜いて、それでみんなで追い込んで、練習しながら全員で、どんなレースでも絶対に負けない、どんな相手でも絶対に負けないという信頼を得られるようなクルーになると絶対に優勝できると思います。

石橋 個人的には、3番というポジションは、リズムをつながなくてはいけなくて、かつその水中も1番出さなくてはいけないポジションなので、誰よりも水中、そのレッグドライブを強く出して、それをしっかり後ろにつなぐのが僕個人の役割であり、今後の目標なのかなと思っています。クルーの目標としては、とにかく4人の動きを合わせるということで、やはり1人がいい動きをしても他の3人がだれてしまっては船というのは動かず、一つの船に4人の動きが合ってこそ初めて出るスピードだと思うので、そこをしっかりクルーで表現していきたいなと思います。

――いま考えていらっしゃるレースプランはありますか

木金 まだそこに関しては全然何も話していないというのが正直なところです。でも、真ん中の1000メートルでしっかり勝負したいです。それから、僕たちがいま取り組んでいることとして、スタート練習をこの時期から始めているのですが、普通のクルーだと、スタート練習を始めるのはさっき僕たちが言った、合わせ、追い込み、レースプランの繰り返し、の追い込みのところでレースプランを入れ始めるのですが、僕たちはその前の段階のいまの段階から、もうすでに練習を取り入れています。スタートはやればやるほど速くなると僕は考えているので、スタートの段階でいかに先に出てしまうかということが勝負の分かれ目だと思うので、そこで少し差をつけてやろうかとたくらんでいます。

 あとはコンスタントで淡々と刻み続けるということを練習でもやっているので、そこも大事なところかなと思います。

真剣なまなざしで優勝を目指す石橋

――先ほど合宿の話がありましたが、合宿で取り組みたいことなどはありますか

木金 合宿に入ったら、とにかく距離ですね。きょねんの例を出すと、いまは朝に漕いだらだいたい午後はウエイトやクロストレーニングなのですが、合宿に入ったら朝漕いで夜漕いでと、とにかく長い距離を何度も漕がされるので、それをケガなくしっかりこなして追い込んで、技術も体もレベルアップさせたいなと思っています。

石橋 きょねんの相模湖合宿では、2000メートルという実際のレースの距離を本番想定でやるメニューが多かったので、2000メートルのどこを取っても日本一のスピードを出せるようになりたいと思っています。いま東が、コンスタントをしっかり強く維持するということを言っていたのですが、やはりワセダの特徴はスタートは速いけれど、コンスタントが弱くて日大や一橋大に離されてしまって負けてしまうということが多いですね。そのためスタートで僕たちは出られると思うので、そこからコンスタントでどこを取ってもどの大学にも負けないということを、相模湖でしっかり習得して帰ってきたいなと思います。

石阪 僕も結構コンスタントを重視していて、練習であれば、最初から出し続けてずっとコンスタントで漕げば良い練習だったねと終わるので、コンスタントで刻めて速く漕げると余裕のあるレースが絶対にできてくると思います。コンスタントが速ければ絶対に勝てると思いますし、スタートもやっているので自信にもなりますね。

 技術面はそういう感じで。あとは、全員で追い込むということ。それぞれ考えながら意見と漕ぎをすり合わせていけばいいのではないかと思います。

――きょねんのインカレで印象的だった出来事などはありますか

木金 僕はきょねんのインカレも(舵手)なしフォアだったのですが、きょねんはいきなり予選で全体3位のタイムが出て、間違いなく優勝狙えるなと思って舞い上がってしまって、次の日のレースで、予選の日に10秒くらいつけていたクルーにあっさりと負けてしまったという、悔しいとかいうことよりもこんなことがあるのだというレースがあったので、一発勝負の怖さではないですけどそういったものが分かったような気がします。自分たちが一瞬でも気を抜いてしまうと、クルーは全国から集まってきていることもあって、こっちが速いと分かると相手もスタートからどんどん食いにかかってくるので、そこで気を抜かないようにしたいですね。

石阪 僕は、インカレ1番最初のレースで、隣にいた明大に500メートルくらいからするする抜かれてしまったということを鮮明に覚えています。やはりレースになると、気持ちも少しいつもと違うから体も思うように動かないときもあって、自分の漕ぎができなくて徐々に抜かれてしまったということをはっきり覚えているので、あれから1年くらいたって、レースもしてきたので、あのようなことはもうないように。レースにも慣れてきたと思うので、もうそういったことはないと思います。

 自分はきょねん、1年生3人と2年生1人で出て、下級生主体のクルーでやってきて結果として見れば8位という順位ではあったのですが、準決勝で1年生4人の日大と当たった時に結果20秒くらい離されて、その時に自分の実力のなさに絶望したというか、同じ1年生なのにどうしてこんなに違うのだろうと思って、そこがすごく悔しくて。それを埋めるために冬も練習してきたし、この夏に帰ってきたので、そこは絶対に埋めたいと思います。

石橋 きょねんは対校エイトに乗らせてもらって3位で、一橋大と2秒で日大とも4秒とかで、優勝まで近かったと言われたのですが、実際優勝まで近かったと言われても、3位という結果には変わりはないので、やはり優勝はたとえ0.01秒差で勝ったとしても優勝ですし、優勝は優勝だと思うので、ことしはコンマ差でもトップポール差でもいいので、とにかく一番にこの2000メートルを駆け抜けたいなというのがあります。そして、それをやるためには先ほども言ったように、コンスタントなのかなと思っています。スタートはきょねんの感じでも、日大にも一橋大にも負けていなかったので、スタートをコンスタントまでそのままつなげられればしっかり優勝できるのかなと思います。とにかくもうどんな汚いかたちでもいいので、優勝したいなと思っています。

――レースを迎えるにあたって、意識している大学などはありますか

木金 僕は、やはり明大ですね。いま連覇しているというのもありますし、きょねんの全日本新人でも明大にやられたので、ここで一発やり返してやりたいなと思っています。

石阪 同じく明大です。

 自分は、明大、日大、立大かなと。この3つを倒さない限り絶対に勝てないので、他にもいるのですが、僕はそこにとりあえず勝ちたいですね。

石橋 たぶん、僕もそこが対抗馬になってくるのかなと。しかし、そこも意識するのですが、とにかくそれよりも自分たちのタイムを大事にしたいなと思います。ボートの面白いところは、球技と違って自分たちのタイムが分かるので、優勝タイムと照らし合わせて、あとこれくらいで優勝できるなと分かるところなので、もちろん他大を意識するのも大事なのですが、それよりもタイムを出すことを意識してやった方が良いのかなと思っています。

――それでは最後に、インカレに向けて意気込みをお願いします

木金 絶対に優勝します。それ以外にないです。

石阪 もう、そうですね。僕は個人的に、高校の時にスポーツは違ったのですがメイジにずっと負けていて、一番大事なところでメイジに負けて、きょねんも全日本新人で負けて。彼らをこの大会では抑えれば必ず上にいけるだろうと思っているので、自分のチャンスと捉えてやっていきたいです。

 最終日に、表彰台の一番上に上って、全員でつらかった練習も良かったねと言い合えるように、笑顔になって終わりたいということが一番強い思いです。まあ、優勝したいです。

石橋 優勝ですね。いまのところずっと、対校エイトくらいしかメダルを取っていないと思うので、対校エイトだけではないぞというところを、みんなに見てもらいたいなと思います。それを示すためには、金メダルを取るのが一番いいのかなと思うので、金メダルをつかみ取りたいです。

木金 面白い話はすみません。またインカレの当日に話します(笑)。

――ありがとうございました!

(取材・編集 黒田菜々子、深瀬真由、写真 加藤佑紀乃、須藤絵莉)

◆東駿佑(あずま・しゅんすけ)(※写真左)

1995年(平7)12月28日生まれ。東京・早大学院高出身。政治経済学部2年。ポジションは男子舵手なしフォアのストローク。誰とでも分け隔てなく仲が良いところを長所に挙げ、楽しそうに取材に対応してくださった東選手。しかしボートのことになると一転、真剣なまなざしで話をする姿が印象的でした。ボートに全てを懸ける、熱い男の雄姿に期待が高まります!

◆石阪友貴(いしざか・ともき)(※写真中央左)

1994年(平6)9月8日生まれ。東京・早実高出身。政治経済学部3年。ポジションは男子舵手なしフォアのバウ。頭が良く、一歩引いて全体を見守るタイプだという石阪選手。取材中も冷静に見極めたツッコミが光っていました。インカレでもその冷静さを武器にクルーを勝利に導くことでしょう!

◆木金孝仁(きがね・たかひと)(※写真中央右)

1994年(平6)5月14日生まれ。東京・早実高出身。社会科学部3年。ポジションは男子舵手なしフォアの2番。部内であった面白い話を誰よりも真剣に考えてくださった木金選手。クルーリーダーとして信頼も厚く、時折笑いを交えながらも丁寧に質問に答えてくださいました。「絶対に優勝する」という熱き思いを胸に、頂点へと突き進みます!

◆石橋広陸(いしばし・ひろむ)(※写真右)

1995年(平7)4月25日生まれ。愛知・豊田北高出身。スポーツ科学部2年。ポジションは男子舵手なしフォアの3番。取材中お互いの印象を尋ねるととにかく『真面目』と評された石橋選手。部内で流行していることや面白かった話に関しても『真面目』に考えてくださいました。部活にも趣味にも『真面目』に取り組む石橋選手から目が離せません!