【連載】インカレ直前特集『Challenge』 第4回 B:北村綾香×米川志保

漕艇

 学生の頂点を目指して全国から実力者が集う全日本大学選手権(インカレ)。1年生ながらこの大舞台への切符を獲得したのは北村綾香(スポ1=滋賀・膳所)、米川志保(スポ1=愛知・旭丘)の二人だ。早大漕艇部の門をたたいてから早4カ月。新しい環境の中で二人が得たものとは。

※この取材は7月31日に行われたものです。

「気が合う仲間ばかり」

終始落ち着いた様子で取材に応じる北村

――大学に入って約4カ月たちましたが、環境の変化には慣れましたか

北村 だいぶ慣れました。一人暮らしが初めてだったので、一人でいろいろ自炊したり、家事したりするのが大変ですね。あと朝練が結構早くて、それに慣れるまでが大変でした。

米川 学校が遠いので、朝練の時間を早くしないと、そこから電車乗るまでバタバタしていたし、艇庫を走り回っていたし…。

――朝練は1限に間に合うようにされるのですか

米川 授業がある日は最初の授業に間に合うようにします。ほぼ1限なんですけど。

――1年生だと1限の授業が多いと思いますが、それに間に合うようにすると、朝練開始は何時ごろになるのでしょうか

北村 大体5時ですね。

――その場合、朝は何時に起きられるのでしょうか

北村 4時に起きて、ちょっと準備して、4時半には艇庫に来ています。

――4月ごろなど、視界は暗くなかったですか

北村 暗かったですね。

米川 暗いし、寒いし…(笑)。暗い時は涼しくていいですね。日中よりはだいぶましですね。

――暗い時もコースに出るのですか

北村 ライトをつけています。

米川 艇の先端に付けるのと、自分の帽子に引っ掛けて。自転車のライトのような、100円均一にあるようなものを付けています。

――テスト期間がありましたが、大学生活はいかがですか

北村 正直、思い描いていた女子大生像とは程遠いのですが(笑)、毎日充実しています。楽しいです。

――どういうキャンパスライフを思い描いていたのですか

北村 勉強もですけど、友達とお茶したり、買い物行ったり(笑)。おしゃれな服着て大学行くのが(笑)。

米川  行けばいいじゃん(笑)。

北村 普段バタバタしちゃってジャージーが多いので…。

米川 いや、私は頑張っています(笑)。ほぼ毎日ジャージーではない。おしゃれとはいかなくても私服を持ってきて着替えて…ジャージー(笑)。

北村 だってスポ科やもん(笑)。

米川 私はボートをしたくてワセダに入ったので、こんな感じかなと…(笑)。

――テスト期間中は、授業やテストと部活動との両立はどうされているのですか

北村 ちょっとだけ練習の量が減ったので、普段していなかった勉強を頑張ってやりました。

――大学での勉強はどうですか

米川 テストの形式とかも授業によって違うので、どんな勉強をしていけばいいのかなと。高校時代とかに比べたら楽なものもあるし、レポートをその場で書かないといけないのは大変ですね。

北村 やっぱり高校と違ってどんな感じかなと、最初は戸惑いながら勉強していた感じがあります。

――一人暮らしはいかがですか

北村 やっぱり料理を作るのが大変です。

――毎日自炊しているのですか

北村 はい。

米川 割と料理が好きなので自分の実家にいる時からやってはいたのですが、片付けとかがめんどくさい(笑)。ただ作るだけじゃないから、片付けとかまでしないといけないのは…。

――得意料理はありますか

北村 そんなにちゃんとした料理は作ってないです…。

米川 やっぱり部活のある日は作ったりする時間がないので。

北村 ポテトサラダとかは作り置きしたらしばらく保つので、よく作るようになりました。あとは肉じゃがとか。

米川 部活がある日は忙しいので手の込んだものは作れないのですが、午後がオフの日とかは、レシピを見て、何か食べたいものを作ったりします。

――お二人とも仲が良さそうですが、同学年の皆さんとの関係はいかがですか

北村 同期みんな、仲良いです。

米川 先輩方に気持ち悪がられるくらい仲良いです。「なんでお前らそんな仲良いの」って(笑)。

北村 4月の最初とか、まだみんな集まって1週間とかの時でもずっと一緒で、確かに仲良過ぎました。今も仲良いですけど。

――すぐに仲良くなれた理由は何だと思いますか

北村 (性格が)丸い人ばっかやもんな。みんな優しいし、気が合う仲間ばかりなんだと思います。

――同期の皆さんとは遊びに行かれましたか

北村 割と。同期でご飯とか。

米川 18人もいるので予定合わせるのが大変なのですが、集まれるときにみんなで遊びに行ったり。

北村 誕生日にはみんなでお祝いしたりとかしています。

――先輩との関係はいかがですか

北村 上下関係は一応あるんですけど、めちゃくちゃ厳しいとかではなくて、本当に優しい先輩ばかりで、面白い人も多くて、分からないことは優しく教えていただいていて、すごく楽しく部活できているなと思います。

――先輩の方とも冗談を言い合える関係なんですね。上級生との関係性は高校の頃と違いますか

米川 旭丘高校はこんな感じで、結構みんながやがやとしていました。

北村 そこまで厳しくなかったんですけど、ここまで冗談言い合うとかはなかったのですごく楽しいです。

――気分転換には何をされますか

北村 やっぱり毎日部活ばかりなので、たまには大学生らしくパーッと買い物に行くとか、あとは家の掃除で気分をすっきりさせています。

米川 どこかに行くとかより、寝る(笑)。時間を気にせず、アラームもかけずに寝ることもたまにあります。

「この人みたいになれたらと思う人がたくさんいる」

女子部の目標に向かって日々練習に励む米川

――前期を終えたいま、早大漕艇部はどんな部だと感じていますか

米川 高校の時と比べて、目標とする先輩というか、お手本にする先輩、この人みたいになれたらと思う人がたくさんいます。環境が本当に整っています。

北村 漕艇部には「One WASEDA」というスローガンがあります。高校の時はみんなでインターハイ出たいなとかはあったのですが、ワセダは目標をみんなで(達成する)という気持ちが強くて、「One WASEDA」っていう強い思いがいいなと思います。

――高校時代の倍である2000メートルのコースには慣れましたか

米川 最初は3キロメートルを漕ぐ練習とか「いつまで漕げばいいんだ」という感じで長いなと思っていました(笑)。最近はもうそれにも慣れてきて、2000メートルでもやっていけるかなという感じです。

北村 1000メートルだとガッと(力を)出し切ってしまう感じなのですが、2000メートルはいろいろ考えながらできて楽しいので、それもいいかなって思います。

――入学後から振り返ってみて、成長した部分はありますか

北村 考えながら漕ぐことが高校の頃よりできるようになりました。フィジカル面もだいぶ成長したとは思うのですが、やっぱり頭を使うという点で成長できたかなと思います。

米川 昔は長い距離を漕いでいて疲れてくると漕ぎが崩れてくることが多かったです。最近は長距離を漕いでも(漕ぎが)崩れないように練習しています。

――先輩にアドバイスを求めることはありますか

北村 いま(女子舵手なし)ペアに乗っているのですが、大学に入って初めてのスイープオールなんです。スイープの漕ぎ方が全然分からないので、毎日たくさんアドバイスをいただいています。

米川 (練習を撮影した)ビデオを見るのは先輩と一緒のときが多いので、「どう思いますか」とか「ここができないのですが、どうしたらいいですか」とか聞いたりしています。

――もうすぐ合宿が始まりますが、合宿中の目標はありますか

北村 まだ不慣れなスイープなので、合宿の間にしっかり漕ぎを完成させて他大には絶対負けないような力強い漕ぎができるようにしていきたいです。

米川 合宿は相模湖でやるのですが、艇をたくさん並べて競争みたいな感じで漕ぐので、いつもの練習よりもレース形式に近い状態でできると聞いています。レースで他の艇が迫ってきて焦ってしまうこともあるので、相手を意識しつつ、自分の漕ぎがしっかりできるようにしたいです。

――他大とではなく、部内での競争意識はやはりあるのでしょうか

米川 やっぱりインカレメンバーの選抜の前はタイムによって自分がどの船に乗れるか決まるのでみんなの雰囲気は普段と違います。

北村 ピリピリした雰囲気になりますが、普段はそんな感じはないです。ただ先輩に追いつきたいなという気持ちはいつもあります。

――そういったピリピリした雰囲気はどのように感じていますか

米川 私は高校の時から、そういう雰囲気だと楽しくなってきちゃうんですよ(笑)。試合とか、みんなが緊張しているのを見ると楽しくなります(笑)。レース前に緊張するのは船をステッキボードにつけて、レースが始まる2分前からで、(レースが)スタートしたら忘れます。

北村 一瞬やん(笑)。

米川 本当に一瞬。(レース前の)3、4分間しか緊張しないです。

北村 私は最初の頃はすごく緊張していたのですが、高校でレース経験を積むうちにそういう緊張はだいぶ楽しめるようにはなりました。でもピリピリした感じはあまり好きではないです(笑)。

米川 いいじゃん(笑)。

北村 同期内では(選考期間中も)結構楽しくやっていたよね。やってなかったかな?(笑)

――同期や先輩の方から刺激を受けることはありますか

北村 もう毎日です。レベルの高い選手の中で漕いでいるので、自分にないことを見つけられたり、アドバイスをもらったりして刺激を受けている毎日ですね。

米川 私がワセダに入ろうと思ったきっかけは高校の先輩の榊原春奈さん(スポ4=愛知・旭丘)なのですが、やっぱり漕ぎを見ているとうまいなって思うので、その先輩が身近にいるのは本当に刺激になります。

「強くなっている実感がある」

初めてのインカレに全力をささげる

――初めてのインカレを前に、いまどのような心境でいらっしゃいますか

米川 ことしの女子部の目標は『インカレ全種目優勝』です。私が出場するのはシングルスカルで、乗っている人が漕がないと船が進まないし、逆にしっかり漕げば速く進むし、本当に自分一人の戦いです。そのなかで「インカレ全種目優勝」という目標があるので、重圧が大きいです。「お前に懸かっているぞ感」はあるのですが(笑)。だからこそ頑張りたいです。

北村 インカレまであと3週間ちょっとしかないという焦りもあるのですが、ちゃんとした目標があるのと日々練習して強くなっている実感があるので、インカレを楽しみに毎日練習しています。

――インカレではご自身のどういった部分を強みにしていきたいですか

北村 私は米川ほどじゃないですけど身長が高いので(笑)、一本の漕ぎの長さを生かして一漕ぎでしっかり進めるように意識していきたいです。

米川 スタートで出る自信はあるので、コンスタントでしっかり相手を徐々に離していくレースがしたいです。

――ではもっと伸ばしたいと感じるところはありますか

北村 ペアを組んでいる田口えり花(商2=埼玉・浦和一女)さんといつも話しているのは、基礎的な漕ぎ方を意識しないでもできるようにということと、スイープは女子が漕ぐと漕がされている感じが結構あるんですけど、自分たちでしっかり進められる力強さを出していきたいなということを話しています。

米川 後半に漕ぎがブレたり相手が迫ってくると焦って漕ぎが崩れたりするので、最後までフォームを崩さずに漕ぎ通せる力を付けたいです。

――インカレに向けて意気込みをお願いします

北村 目標の『全種目優勝』に向けて、足を引っ張らないようにあと3週間、一生懸命練習していきたいなと思います。

米川 『全種目優勝』ももちろんですし、シングルスカルは自分の力を示す場になると思うので、大学でも一番を取ってやるぞという気持ちで頑張っていきたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 加藤佑紀乃、土屋佳織、写真 渡部歩美)

◆北村綾香(きたむら・あやか)(※写真左)

1996年(平8)11月19日生まれ。滋賀・膳所高出身。スポーツ科学部1年。ポジションは女子舵手なしペアのバウ。オフの日には買い物に出掛けることが多いという北村選手。近場だけでなく新宿や表参道まで行くこともあるとか。アクティブな北村選手の躍進に注目です!

◆米川志保(よねかわ・しほ)(※写真右)

1996年(平8)8月20日生まれ。愛知・旭丘高出身。スポーツ科学部1年。高校の先輩である榊原女子副将に憧れて、なんと高校1年生の頃からワセダを目指していたそう。憧れのエンジ色のユニフォームを身にまとい、インカレの舞台で必ずや活躍してくれることでしょう!