昨年に引き続き、ことしも対校エイトのバウを任された和田優希(教4=滋賀・膳所)。チームをけん引する存在として、ラストイヤーに並々ならぬ思いで挑んだ。しかしその前に突き付けられた残酷な結果。その内容にどのような光明を見出し、次につなげるのか。今回はそのお話を伺った。
※この取材は5月3日に行われたものです。
「自分たちの力は出せた」
自身最後の早慶レガッタについて語った和田
――早慶レガッタから2週間がたちましたが、振り返ってみていまのお気持ちは
結構自分としては結果には納得いっていないのですが、いま振り返ってみてもやはりやってきたことはちゃんとやり切れましたし、それが結果に結びついていたかなと思うので、しっかり練習が実を結ぶ感じだったと思います。展開的にはすごく良かったので、レース自体に不満はなくて。目標にしていた『圧倒的勝利』という部分も、ちょっとケイオーに出ていて、ついてこられてはいたのですが、できていたので。いま振り返ってみてもいいレースができたなというのが一番ありますね。レース展開は完璧だったのではと思います。
――当日のレースプランは
ケイオーが頭を押さえに来るのは分かっていたのですが、そこをこっちではハイレートでシャカシャカあげるのではなくて、しっかり早めで大きく伸ばして漕いで安定させていこうというところからでした。こっちが少し落として長く漕ぐ中で、ケイオーの、多分ハイレートで頭を取りに来るのを抑えていければ、勝てるなというのがあったので。しっかり伸ばすところをまとめて、いい艇速でケイオーを常に見ながら、というのをやろうとしていました。それができたので、それが良かったかなと思います。
――当日のレースの中で、ご自身としては何パーセントくらいの力が出せましたか
もう完璧に出していけたと思いますね。
――当日の試合後のミーティングではどのようなやり取りが行われていたのですか
結果は結果だなというのが結構あったので。自分たちはラストイヤーということもあって、主将の長田(敦、スポ4=石川・小松明峰)も副将(藤井英貴、スポ4=東京・本郷)もコックス(中村拓、法4=東京・早大学院)もみんな泣いていたんですけど自分も悔しくて。結果が結果になってしまったというのがどうしても理解というか、自分の中で(ふに)落ちなかった部分があるので。話としてはもう完全に負けたという話が中心になっていました。でも監督とかはできたことを評価して、その部分を今度夏にどうつなげていくかというのを、次の一手を常に考えて今後行動していくようにという話をしていたので。その早慶戦でやろうとしていたことができたということを次夏に向けてやっていければいいかなと、つなげていけたらいいかなと思います。
「勝てるイメージは頭の中にあった」
――今回、初めて隅田川に臨む選手たちにどう対策を練らせていましたか
実際、本番は独特な荒れ方をするので。一応モーターで荒らしたりはしていたのですが、実際の本番はそういうものではなくて。一方向の波ではなくて、水面というか川自体が揺れているくらいすごいうねり方をするというのを常に言っていました。その中で波にオールを取られないようにしっかりファイナルの抜き上げを高く抜き上げること。それから変に艇を揺らさずに全員でその高さをそろえて一番前で首尾よく水をつかむというのを徹底してやり切るというところで、うねりに対してどれだけ耐性を付けるかというところと、あとはもうどれだけ波が来ても焦らずに、こういうものだとちゃんと割り切って漕ぐということも、日ごろの練習から常に徹底してやっていましたね。
――当日の隅田川のコンディションは
最悪ですね。流れは強いし、ちょうど対校の時間を狙って観光船みたいなのがバンバン出てくるので、その波の影響もすごくて。ことしはいままでの中でも一番流れがすごかったみたいな感じでした。ステッキボート(スタート前に艇を固定させるためのボート)につけるのもケイオーはすごく時間が掛かっていましたし。やはりその流れの影響というのもあって、結果いろいろあってしまったというのがあるので、コンディションとしてはすさまじかったですね。
――昨年より悪かったですか
うねり自体はきょねんもすごかったのですが、ことしはそのような中で艇は安定していたかなというのがありました。その分はいくらかきょねんほどでもないのかなという感じがちょっとする部分もあるのですが、多分そんなに変わらなかったかなと思います。
――当日までの調整や経過は
主には疲労を抜いて、体のキレを上げていくということを1週間半前くらいから徐々にやっていきました。ずっと調子が悪かったのですが、ちょっと疲れを抜いていくところで、本当に細かいノーワーク(力をほとんど入れないで漕ぐこと)の部分や細かい技術の部分で集中して全員で合わせるというのを心掛けながら疲労を抜いて、体のキレを上げていくというのをずっと試合まで続けていました。その中でやはり急激に、上り調子にやってきたことが実を結び出したなっていうのを感じられましたね。それはコーチに言われて、ずっとみんなで集中してやっていたのですが、最後の1週間で本当に完成に持っていけたなと。うまく調整してこられたのではと思います。
――前日は緊張しましたか
いままではあまり緊張しなかったのですが、最後ということで、2日前くらいにちょうど緊張のピークがきました(笑)。そこからちょっとずつ調整の中で自信が大きかった部分があって、もう本番のその日は緊張はほとんどしていない状態になりましたね。
――レース本番でも緊張しなかったのですか
そうですね。勝てるイメージは頭の中にあったので、もう全然緊張するような要因もなかったかなと。ただちょっと心配だったのが、波がある中で本当にまとまりきれるかなということでした。でもアップから良いのが出ていたので、きっと大丈夫だなという確信があって。スタートの時は全く緊張しなかったですね。
――試合の前のみなさんの様子は
正直あまり見られなかったのですが、控えていた場所だとことし初めての隅田川での早慶戦を経験する下級生とかは少し緊張している人もいたのですが、比較的みんなポジティブに考えてそんなに不安をよぎらせるような感じではなくて。本当に本番楽しんでいこうというような感じで、適度なリラックス感が見られたのではないかなと思います。
――レース中、クルーにどのような声掛けをしましたか
多分しているのですが、あまり覚えていないです(笑)。ただ、やはりいかにまとまり続けられるかというのがラフコンディションの中ですごくポイントなので、そこは常に熱くなり過ぎずに冷静に、というのは声を掛け続けていたと思います。とにかく冷静に合わせるというのは常に入れ替えだったり、サイドごとの強調だったり、艇を曲げるときでもそれは常に後ろからは言ってはいたのですが、でも滑舌が悪いので前の方は聞こえていなかったりすると思います(笑)。
確かな次への一歩
一つ一つの質問に丁寧に答えてくださった
――練習していく中で部員たちの成長は感じましたか
そうですね。やっぱり最初に大きい波を受けるともう全体的にバラバラになってしまうのですが、それはそういう練習を繰り返し強い意識の中でやっていました。いままでそういうのは意識していたのですが、結果に結びついていなくて。結局練習でバタバタしていたのが本番でも出た、みたいな感じでした。ですが、今回はだんだん練習ごとに落ち着いてまとまれるようになっていって、本番ではいままでにない最高のまとまりが出ていたので、常に最後まで成長し続けていました。
――バウというポジションは本番中にクルーのみなさんが見られると思いますが、レース中はどのような雰囲気でしたか
一応スタートはケイオーよりこっちの方が出ているので、全体的に見られるのですが、このコンディションの中ではずいぶん安定しているなというか、本当にそこまでできるのかっていうくらいきれいに漕げていました。見てどう思うというか、みんなすごいなと。ここにきてここまでできるのだなと思いました。そこまで本当に出せたのが初めてだったので、もうそれでテンションがかなり上がって。自分だけではなくて、みんなもそうだったのですが、結構いけいけというムードでクルー全体が本当に進められたなというのは見ていて感じました。
――今回見えてきた個人的な課題はありますか
いま持っているものは本当にその時は出せたかなと思うのですが、決していま調子がいいかと言われれば、そういうわけでもないので。課題は本当に山積みです。まずはやはりエントリーからもっと調子よく水をつかみたいなというのが、艇のバランスにも大きく影響すると思うので。ブレードでしっかり水をつかんで固定するというところは、きっと引退するまでずっと課題だなというのは身に染みて感じました。
――今後の目標と意気込みをお願いします
いまワセダの方針として、正しいことを尋常じゃない努力でやり続けて勝つというのがいま目標になっています。とにかく基本に忠実な漕ぎをやりたいなと。いままでは結構、個人的には自分の漕ぎやすいように勝手に漕いでしまっていたので、いま結構人に合わせるという部分では苦労しているのですが、本当に基本に忠実にやることをやって勝つということで、内田監督(大介、昭54教卒=長野・岡谷南)の方針に従った上で信じてついていく。そして最後は全員で笑えればなと思っています。
――ありがとうございました!
(取材・編集 伊能由佳、写真 井上陽介)
◆和田優希(わだ・ゆうき)
1993(平5)7月24日生まれのA型。170センチ、70キロ。滋賀・膳所高出身。教育学部理学科生物学専修4年。2014年度成績:第83回早慶レガッタ対校エイト2位、第36回全日本軽量級選手権M4-5位、第92回全日本選手権M4-6位