【連載】早慶レガッタ直前特集『逆襲』 第7回 S:長田敦主将

漕艇

  『早慶レガッタ完全優勝』という目標を見据え、日に日に団結力を増しているワセダ。その中心にいるのが、長田敦主将(スポ4=石川・小松明峰)だ。エースとして部内でも屈指の実績と実力を誇る長田だが、早慶レガッタの花形種目・対校エイトでの勝利の喜びはいまだ味わったことがない。3年ぶりの対校エイト優勝に向け、一人の選手として、主将として、胸の内に秘める熱い思いを語っていただいた。

※この取材は3月5日に行われたものです。

「背中で引っ張っていく主将に」

一度も早慶レガッタでの勝利を経験していない長田主将

――主将に就任してからおよそ半年がたちましたが

 4年生が引退してしばらくの間はやることも手探りの状態で、忙しい日々を過ごしていたと思います。いまは落ち着いて、仕事も何をすればいいのか分かってきました。まだまだ足りないところはありますけど、就任当初に比べたらだいぶ落ち着きましたね。

――主将という役職に就くのは初めてですか

 そうですね。

――主将になるにあたって、青松載剛前主将(平27スポ卒=現東レ滋賀)から何かアドバイスなどはありましたか

 「すごく責任を感じるポジションだけど、伸び伸びやれ」と言っていただきました。

――目指す主将像は

 主将としても、最上級生としても背中で引っ張っていく主将になりたいです。だけど孤立しないというか、チームで自分だけ浮いてしまわないように、まとまりのある楽しい部にしていきたいです。

――主将に就任してから変わったことは

 話し掛けられたり、OBの方と関わることが増えました。(応援の言葉を)直接言ってくださる方もいるのですが、遠回しに伝えてくださる方もいます(笑)。OBの方が実際にはどういう人なのか、分かってきました。

――主将の仕事は大変ですか

 忙しくなった分、自分のスケジュールをコントロールするのが(就任した)最初のころは全然できませんでした。やっぱり(ことしは)最後のシーズンで残り1年もないし、自分自身結果を出したいという気持ちもあって、焦ってしまっていましたね。

――内田大介監督(昭54教卒=長野・岡谷南)はどのような方ですか

 僕から見て、内田監督自身も部に慣れたのかなと思います。就任されたきょねんの春ごろはすごい先を行っているような存在だったのですが、いまは一緒になってどうすれば良くなるか考える機会が多いので、話しやすいです。

――歴代の監督との違いはありますか

 内田監督は監督とコーチを兼任しているような状態です。どちらが主流なのかは分からないのですが。内田監督になってから監督とメールのやりとりをする機会が多くなって、気楽に相談できるのでそれが支えになっています。

――部をまとめるために気を付けていることはありますか

 (部員全員が)同じ種目に出るわけではないので練習内容はそれぞれ違いますが、代替わりしてから部で1つの目標を立てました。迷ったらそれに向かって進もう、と。いまは『早慶戦完全優勝』という言葉を目標に女子も男子も、あとはサポートしてくれる選考に落ちてしまった選手も選ばれたメンバーがケガをしてしまったら代わりに(艇に)乗る立場なので、一つになって頑張れていると思います。

――今季のチームの目標は何でしょうか

 春は対校エイト、第二エイト、女子も含めた『早慶戦完全優勝』を、夏は全日本大学選手権でエイト優勝、全日本選手権ではエイト入賞、メダル獲得を目標にしています。

――今季のチームの特徴は

 僕たちの学年は人数が少ないので、下の学年には自立してというか、盛り上げてもらわないといいチームにならないと思っています。いまはそれができていて、というのも1、2年生がすごく元気で、それに負けず僕たちの代もやれているので、いまのところすごくいい雰囲気でまとまっていると思います。

――同期の皆さんについて、どのような学年だと思いますか

 青松さんの代が真面目な代だったと思うので、それに比べたら客観的に見てもギャップがあるかもしれません(笑)。でも僕は同期のそういう雰囲気が嫌いではなくて、ばかなこともしますけど、やることはやっているので、頼れる人が集まっていると思います。

――性格などの面はいかがでしょうか

 感情を抑え切れないというか(笑)、(思っていることを)すぐ口に出します。大学生くらいになってくると自分で考えるような大人な雰囲気になると思うのですが、それがまあ、あんまりないかなと(笑)。逆にそれがいままでのワセダに足りなかったのかなと思っています。やっぱり言いたいことを言った方が、言われた人も言った人も変なモヤモヤが残らないと思いますし。きょねんよりも個性豊かなメンバーだと思います。

――後輩の皆さんを見ていて思うことは

 僕たちの学年より人数も多いので、いろいろな人がいるのですが、1年生は元気がありますし、2年生は賢いというか落ち着いていて、でも僕たちに匹敵するくらいクルーを引っ張ってくれます。本当に頼れる部員が多いと思います。

――後輩の皆さんとも仲は良いのでしょうか

 そうですね。漕艇部の男子は寮生活をしているので一緒に食事しますし、毎日一緒にお風呂にも入りますし、上下関係も他の部に比べたらそれほどピリピリしてないと思います。

――オフの日を一緒に遊んで過ごされることはあるのですか

 一緒に出掛けますし、艇庫にいるメンバーで映画を見たりご飯を食べたりします。同期といる時間と同じくらい後輩ともぷらっと出掛けたりします。

――最近はまっていることは何かありますか

 最近ようやく本を読みはじめました。いま就活の時期なのですが、就活の本を読んでいたら普通に本を読みたくなってしまって。そんな暇はないのですが、読んでしまいますね。小説とか、就活に関係ない本も読んでいます。

――読書以外にリラックス方法はありますか

 読書するのもマッサージチェアに座っている間とか、お風呂に長く漬かっていたいときやストレッチしたいときとかが多いです。本当にリラックスしたいときはバラエティ番組を見たりすることが多いです。

「挑戦者として」

――最近はどういった練習をされているのですか

 とりあえず距離を漕ごうと。1カ月ほど前にクルー決定したのですが、クルーでまとまって練習できる期間がケイオーより長いのはメリットだと思うので、いまは漕ぎ込んでいます。あとは戸田のボートコースではなくて、荒川まで船を運んで隅田川を想定した環境で練習しています。

――どういうクルーを目指しているのでしょうか

 ことしは例年に比べてパワーがある選手がそろっているので、そのパワーをいかにオールに伝えるかがカギだと思います。1年生が多くてまだまだ若いクルーなので雑にならないように一つ一つ丁寧に課題をつぶしてまとまりのあるクルーに仕上がればいいなと思います。

――長田選手にとって初めての早慶レガッタだった2年前のレースの時と同じストロークというポジションに就くことになりました

 一番冷静に試合を分析しなければいけないと思っています。ストロークが落ち着かないといくらクルーで作戦を立てても僕がぶれてしまえばクルー全員に迷惑が掛かるので。なおかつ作戦を遂行できる力がないと務まらないポジションだと思うので、任されたからには必ずやり遂げないといけないと思います。

――昨年は4番で早慶レガッタに出場されましたが、その経験は今回のレースに生きてくると思いますか

 4番とストロークでは役割が全然違うのですが、きょねん後ろ(のシート)で漕いで「もっとこうしたら良かった」と感じたことがいくつかあるので、そういうことが今回ないように自分自身ストロークとしてクルーに伝えていきたいです。

――前回の反省点は

 レース内容はそんなに悪くなかったのですが、スタートで思うように漕げず、後半しか思うように漕げなかったのだと思います。あとは気持ちが緩んでいたというか、「ことしは勝てる」と過信していたので、今回はそういう気持ちをなくしてゼロスタートで、挑戦者としてケイオーに臨みたいと思います。

――前回の反省を受けて、今回はどのように漕ぐべきだと思いますか

 ことしはまたレーンが変わって、ケイオーより少し(スタート地点が)出ているアウトカーブのレーンで、ケイオーの背中が見えている状態でスタートします。その状態ってボートだと落ち着いてレースできる状態なので、その差を絶対に詰められないようにするという気持ちを持ちたいです。

――いまのクルーに足りない部分はどこだと思いますか

 (隅田川は)コースと違ってすごく波があるので、コースのときのような漕ぎ方では絶対に勝てないということは全員に話しています。具体的にはオールを水にすらないとか。ケイオーは楽にリズムよく漕いでいて、ワセダは力があってもうまく推進力に変えられていないのが映像でも分かるので、漕いだ分進めるというか、しっかりブレードを素早く入れるとか、押し切ったときに浮き上げを高くして水をつなげるなど、改善すべきところはすぐ全員で言い合って次同じことで反省しないように練習しています。

――荒川の状態は隅田川と比べていかがですか

 やっぱり隅田川は特別なので、荒川と近いかと言われればめちゃくちゃ遠いです。ただ戸田のコースだと直線2キロメートルしか漕げないので、荒川に行けば(船を)止めるまでは漕げます。あと隅田川は真っすぐなコースではないので、そういう点では荒川と隅田川は近いです。波に関しては気にならないです、隅田川は。本番は緊張もあって波が高く感じるので、いつもの心境で臨めば大丈夫だと思うのですが。やっぱりいかに冷静に漕げるかが波対策になるかなと。

「流れを変える」

狙うのは王座奪還のみ

――大観衆に見守られているのは緊張しますか

 緊張はしますが、レースが始まればそれまでですね。アップしている時やレースが始まる直前とかはすごく緊張しますね。

――長田選手はまだ隅田川での勝利を経験されていません

 早慶レガッタは特に会場が荒れているので、負けているときはどこに相手がいるか分からないくらい周りが見えなくなってしまいますね。

――早慶レガッタという大会についてどのような思いがありますか

 僕自身、早慶レガッタに出るためにワセダに入学したというのが大きいです。まだ一度も勝てていないし、1年生のころもワセダの勝利を見られていないので、最後だけは勝ちたいです。

――ケイオーに対する印象は

 きょねんからケイオーはすごく(実力が)伸びている印象があるので、僕たちが100パーセントのパフォーマンスを発揮しないと勝てない相手だと思っています。

――どのようなレースプランを考えていますか

 ケイオーに先行されたら取り返すのってすごく大変だと思うので、どうしても先行逃げ切りでケイオーに勝ちたいですね。

――3750メートルのコースでどこがポイントになると思いますか

 スタートはすごく荒れているし、例年ワセダが良くないって言われるのですが、隅田川の3750メートルって後半にかけて波が収まるというか。スタートに比べたら全然波がないので、(ケイオーを)離して前半を乗り切りたいです。

――コース前半を想定した練習はされていますか

 圧倒的な体力をつける、後半も絶対にばてないように漕ぎ込むことを大事にしています。前半にある大きなカーブをケイオーよりコンパクトに回って差を広げられればいいかなと思います。

――レースまで残り1か月ですが、ご自身の調子は

 調子の良しあしは自分ではよく分からないので、いつも通りって感じですかね(笑)。

――早慶レガッタに向けた意気込みをお願いします

 まだ早慶レガッタでの勝利を経験していないので、僕自身勝ちたいです。あとはやっぱり主将として、ワセダは隅田川では4年勝利していないので、流れを変えるという気持ちで戦っていきます!

――ありがとうございました!

(取材・編集 土屋佳織、写真 須藤絵莉)

◆長田敦(ながた・あつし)

1993年(平5)5月9日生まれのO型。身長182センチ、体重70キロ。石川・小松明峰高出身。スポーツ科学部4年。ポジションは対校エイトのストローク。レース当日の朝はお菓子など好きなものを食べるという長田選手。早慶レガッタ当日の朝もしっかりと糖分を補給して、万全の体調で必ずや勝利を収めてくれることでしょう!