【連載】早慶レガッタ直前特集『逆襲』 第4回 5:是澤祐輔×2:竹内友哉

漕艇

 ことしも隅田川で100年以上の歴史を持つ早慶レガッタが幕を開けようとしている。対校エイトには3年生から是澤祐輔(スポ3=愛媛・宇和島東)、竹内友哉(スポ3=愛媛・今治西)が選出された。二人は2度目の出場となる。昨年の雪辱を果たすべく、早慶レガッタへの闘志を燃やす二人の現在の心境を伺った。

※この取材は3月5日に行われたものです。

「勝つところまでが自分の仕事」

早慶レガッタに対する熱い思いを語る是澤

――現時点での練習での調子はいかがですか

是澤 監督も変わり、指導してもらえるようになったのでみんなで同じことができるようになりました。例えば、ブレードをしっかり上げるなどと、全員でしっかり意識できています。きょねんも出させていただきましたが、きょねんと比べるとすごく状態はいいと思います。

竹内 自分も同じです。細かいところまで(監督に)言ってもらえるので8人で同じ漕ぎを目指してできています。あとは、きょねんだと良い日と悪い日で(差が)激しかったのですが、いまは一日一日前回よりも良くなっているという実感があります。少しずつ良くなってきていると思います。

――対校エイトに選ばれた感想は

是澤 選ばれて当然というかそれだけのことはやってきているので、選ばれてケイオーに勝つところまでが自分の仕事だと思っています。よりいっそう気を引き締めていこうと思いました。

竹内 選ばれることは目標ではなくて、選ばれるのは通過点であって、勝つことを目標にやっていきたいと思っています。責任はあると思っています。

――オフシーズンはどのような練習をされていましたか

是澤 いつも本番で漕ぐようなすごいスピードで漕ぐのではなくて、ゆっくりとしたリズムで力強く長い距離を漕ぐという練習をずっとしていました。あとはことしから新しく自転車トレーニングを取り入れて、筋持久力アップを目的とした練習をやっていきましたね。

竹内 チームとしては低いピッチの中で長い距離、長い時間練習してきました。それにプラスして、自分は周りの選手と比べてインボディ(の結果)で筋肉量が劣っていたので、筋肉量アップを目的としてウエートトレーニングを頑張っていきました。

――自主的に何かトレーニングをされていたのですか

竹内 自主的にというよりはみんなとやる毎回のトレーニングの中でセット数を増やしたり、重量を増やせるようにしたりという感じです。

――昨シーズンはどのようなシーズンでしたか

是澤 狙っていたインカレ(全日本大学選手権)優勝であったり、全日本(全日本選手権)の表彰台が取れていないので、力が出し切れなったわけではないですけど、自分の実力不足でタイトルが取れなかったというとても悔しいシーズンでした。

竹内 早慶レガッタの記憶があまりないのですが、新人戦の連覇を止めてしまったというのが自分の中ですごい悔しかったです。インカレ、全日本は表彰台に行けず、勝てなかったですけど、新体制になって監督とコーチも変わってスピードもきょねんよりも出ていて、ゴールした後、これは来年いけるなと手応えはありました。

――新主将の長田敦主将(スポ4=石川・小松明峰)はどのような方ですか

是澤  船の上以外ではすごくおちゃめですてきなのですが、いったん船に乗ると鬼のように何があっても漕ぎ続けて、すごいスピードで漕ぎ続けているので、やはりすごいなと思います。

竹内  一緒に遊びに行ったりしているわけではないですけど、見ていて思うのは自分のコンディションを言い訳にせずに常にストイックです。

――青松載剛前主将(平27スポ卒=現東レ滋賀)との違いは何ですか

是澤  違いというより、似たところはあります。練習している姿であったり、普段の行動で僕たちに示して引っ張っていくところは似ているかなと思います。

――部全体の雰囲気で昨年と違う部分はありますか

是澤  きょねんよりは(男子部員が)少ないので、少ない分一人一人の責任感が強くなりました。練習もきょねんは休んでいる人も多かったのですが、ことしはみんな常に練習し続けていて全体的にレベルアップしているので、すごく勢いを感じます。

竹内  ケガ人がちょっと減って、みんなで練習できているのかなというふうに思います。ちょっとでも休むとすぐに追い抜かれてしまうという雰囲気で、良い感じで競争ができていると思います。

――いまはどのようなことに重点を置いて練習していますか

是澤  早慶戦は(戸田の)コースと違って、波がすごかったり、風が強かったりと、コンディションがその日によって全然違います。適当に力任せで漕いでも通用しないので、みんなでオールをそろえることが一番の早く進む秘訣(ひけつ)です。まずはオールを返すところを高くということと、オールを返すタイミングをそろえるということを徹底してやっています。

竹内  そうですね。

チームとして戦いに挑む

冷静にレース分析をする竹内

――お互いの尊敬できる部分は

是澤  竹内は試合に向けて必ず調子を整えてくるので、調整の仕方とか気持ちの持っていき方がすごくうまいと思います。

竹内  是澤は長田さんに似ていて、ストイックでエイトの100キロくらいある船を一人で動かしちゃったりするので、その勢いとかパワーとか僕も欲しいですね(笑)。

――逆に直してほしい部分は

是澤  難しいですね(笑)。特にないと思います。

竹内  多分、二人ともなのですが、同じ愛媛県出身で方言がなくなってきちゃったのが少し寂しいですね(笑)。

――先輩になり、心境の変化は

是澤  いまの一年生は競技力の高い子たちが多いので、少しでも練習サボるとすぐに追い抜かれてしまうような勢いがあります。そこで僕たちが引っ張っていけるような気迫を見せたり、最後の追い込みだったりを絶対に一年生に負けないという気持ちでやっています。

竹内  自分はあまり気持ちが強い人間ではないのですが、下級生に見られているので、もう一歩のところを頑張れたらいいかなと思います。普段の生活とかでも適当にやっていたら後輩もまねしてしまうのでそういうところはなくしていきたいです。

――後輩との関係を築くために意識していることは

是澤 特別なことではないのですが、見掛けたらあいさつをしたり、練習後に「今日はここが良かったよ」など声を掛けてコミュニケーションをとるようにしています。あとは一緒に出掛けたりもたまにしますね。

竹内 自分もボートのことで「ここがいいよ」などと声を掛けてコミュニケーションをとることですね。

――オフの過ごし方やリフレッシュ方法は

是澤 やっぱりご飯ですね(笑)。おいしいものを食べて、いっぱい寝ることです。

竹内 月曜日は練習がないので、お昼くらいまで寝て、朝昼兼用のおいしいご飯を食べます(笑)。

――部員のみなさんが好きな食べ物は

是澤 朝ごはんかな。あとはカレー。

竹内 ちょっと味の薄いカレーね(笑)。

――寮で過ごしている中で、練習中と練習中以外でのオンとオフの切り替えは意識していますか

是澤 艇庫にずっといるとあまりオンとオフの切り替えというのがよくわからなくなるので、艇庫から出るとオフの感じがします。

竹内 住んでいるけど、目の前にコースあると落ち着かないです(笑)。部屋はわりと頑張っておしゃれにしたりしています。部屋の中だけでもせめて落ち着けるようにしようかなと思って。

――レースが近づくにつれて、何か普段と違う特別なことをしたりしますか

是澤 僕は自分が出た試合の良い時のレースビデオを見て、自分の中でイメージを作っていって気持ちを高めていきます。

竹内 自分は世界選手権のDVDを見たりします。

「絶対に勝って来年につなげたい」

桜橋で笑顔の凱旋(がいせん)を果たしたい二人

――早慶レガッタについて伺っていきたいと思います。2年目の出場となりますが、早慶レガッタにはどうような印象を抱かれていますか

是澤 早慶レガッタはやっぱり特別なレースで、日本で一番有名なレースで伝統もあります。普段のレースでは起こらないことが普通に起きてしまうので、魔物が住んでいると思います。きょねんは慶大に敗れたということでリベンジの気持ちが大きいですね。

竹内 あれだけサポーターの方がお金出してくれて何千万か掛かって隅田川で漕げるので、まずはきょねんみたいに記憶ないくらいに一瞬で終わらないように楽しみたいなというのが一つです。あと、負けが続いているので次こそは勝ちたいなという思いがあります。ラストイヤーの気持ちでことしは頑張りたいと思います。

――注目度が非常に高い試合だと思いますが、プレッシャーはありますか

是澤 ありますね(笑)。過去の早慶戦のレースを毎日二回くらい見ているのですが、見るたびに手汗とか出て緊張するので、すごいなと思います。

竹内 隅田川に行くことも戸田のコースに比べたら少ないというのもあるのですが、この間コース見聞に行った時に桜橋を見たら涙が出そうになりました(笑)。さすがにもう負けられないというプレッシャーがありますね。

――昨年の早慶レガッタを振り返っていかがですか

是澤 僕が考えた早慶戦の必勝法というのは8人でいかにしてオールと体、船の泳ぎをシンクロさせるかということだと思っています。きょねんの僕たちは慶大に比べると個人個人で頑張っていた傾向にあったので、中盤から後半にかけて向こうに出られっぱなしで負けたのかなと思いますね。

――ことしのクルーの特徴は

是澤 近年の中で一番体力もあって技術もあって一番速いのではないかと思います。

竹内 ことしは良い意味で第二エイトっぽいって言われたのですが、それが自分はうれしくて、すごい褒め言葉だと思っています。例年、対校クルーは自分たちで速いと思っているので格好つけて漕ぐんですよ(笑)。第二エイトは失うものがなくてワーワー盛り上がって漕ぐので、かなりその二つは対照的です。でもことしは自分たち対校クルーも盛り上がって結構勢いもあるので、そこがことしの良いところだと思っています。

――クルーのなかでの役割は

是澤 5番というポジションなのですが、一番水圧が掛かって重いところなので、船でいうとエンジンみたいな役割で、どんどん強く漕いで船を加速させていく役割です。

竹内 自分は2番で、進行方向に近い側でそっちの方は船を進ませる方向に力が加わるというか、曲がる方向に力が加わってしまいます。なのでエンジンというわけにはいかないのですが、後ろの方が揺れが大きくてバランスも悪いのでそこでしっかり船を安定させられたらいいなと思います。あと、みんなの背中を見て漕いでいるのでその分自分の声が一番通りやすいです。声をしっかり掛けて静かにならないようにしたいです。

――自身の選手としての強みは

是澤 強みとしては、最近漕ぎ方を考えています。昨年とかの自分が漕いでいる姿と比べると、漕ぐ長さ自体が長くなっていて漕いでオールが入ったところから力を掛けられるようになっているので、長さと力が増したところが強みだと思います。

竹内 リズム感と長い距離を一定の強さで持ち幅少なく漕げることかなと思っています。

――ケイオーの印象は

是澤 ことしはまだ見ていないのですが、きょねんとかおととしとか見ていたのは、個人個人であまり目立った人はいないのですが、試合になると8人全員がぴたりとオールを合わせて漕いでいるので、ユニホーミティーというまとまる部分は僕たちよりもうまいと思います。

竹内 自分もまとまってくるところと、早慶戦に懸けてくる思いが、ワセダが足りないわけではないと思うのですがケイオーは半端なくて本当に命を懸けてくるぐらいにきます。いつもその勢いで負けていると思うので、ことしはこっちも死に物狂いでいきたいと思います。

――ケイオーの選手との交流は

是澤 一回交流を図ろうとしたのですが、ちょっといざこざがあって、多分、交流ないですね(笑)。何人か知り合いはいるのですが全体としては失敗に終わりました(笑)。

――目標とするレースプランは

是澤 まだ明確な目標はないのですが、僕たちはことし1艇身リードしているところからスタートできるので、中盤から後半にかけてその1艇身をどんどん離して、3、4艇身くらい離して勝ちたいですね。

竹内 1艇身やっぱり出ているので、ボートって進む方向と逆に向いていて相手が見えないとモチベーションも上がらないので、相手に自分たちの背中を見られないように、相手を常に見続けてゴールまでいけたらいいなと思いますね。

――勝敗を分けるポイントは

是澤 過去10年間のレースを見て、中間地点の蔵前橋でワセダが出ているとだいたい勝っているよね?

竹内 後半、川幅が広くなっていて荒れにくくなっていて。

是澤 落ち着くところで出ているとワセダが勝っているので、おそらく蔵前橋までの地点で僕たちが1艇身以上出ていたら勝てるのではないかと思います。

――大勢の観客が詰め掛けると思いますが、注目してほしいポイントは

竹内 ゴール後のガッツポーズです(笑)。

――ズバリ、キーマンは

是澤 1年生3人(石田良知、石橋広陸、内田達大)じゃないですかね。

――ことしのチームとしての目標は

竹内 『早慶戦完全優勝』と、男子はインカレ優勝と全日本は表彰台という目標を掲げています。

――個人としてはいかがですか

竹内 一つは3月9日くらいにU-23の選考があるのですが、そこで日本代表になりたいです。あとはチームの目標とほぼ一緒です。

是澤 ことしはそういう日本代表には挑戦せずに早慶戦絶対優勝するために一本に絞ってきたので、必ず早慶戦優勝を果たしたいです。

――最後に早慶レガッタへの意気込みをお願いします

竹内 きょねんまでは早慶戦の重さを分からずになんとなく漕いで終わってしまっていたのですが、ことしは絶対に長田さんを負けさせるわけにはいかないです。ワセダとしてもさすがに4連敗というのはあり得ないので絶対に勝って、来年につなげたいです。

是澤 何としてでも勝って、きょねんはケイオーの『若き血』を聞いたのですが、ことしは僕たちが『紺碧の空』を勝って歌いたいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 寒竹咲月、笹澤桜、写真 須藤絵莉)

◆是澤祐輔(これさわ・ゆうすけ)(※写真左)

1994(平6)年9月5日生まれのA型。183センチ、78キロ。スポーツ科学部3年。愛媛・宇和島東高出身。ポジションは対校エイトの5番。ことしの目標を「早慶戦絶対優勝するために一本に絞ってきた」と力強く語った是澤選手。色紙にも『臙脂魂』と書いてくれたように早慶戦に懸ける思いは人一倍。熱き思いを胸に、チームを勝利へ導いてくれることに違いありません!

◆竹内友哉(たけうち・ともや)(※写真右)

1994(平6)年7月20日生まれのA型。172センチ、69キロ。スポーツ科学部3年。愛媛・今治西高出身。ポジションは対校エイトの2番。早慶戦出場は2年目となる。竹内選手の注目してほしいところはズバリ!レース後のガッツポーズ。必ずや隅田川での完全優勝を果たし、桜橋で待つ観衆に力強いガッツポーズを見せてくれることでしょう!