【連載】早慶レガッタ直前特集『逆襲』 第3回 6:石田良知×7:石橋広陸×3:内田達大

漕艇

 3年連続でケイオーに敗れ王座奪還を目指す早大。ことしの対校エイトクルーに、2年生からは石田良知(スポ2=滋賀・彦根東)、石橋広陸(スポ2=愛知・豊田北)、内田達大(スポ2=山梨・吉田)が選ばれた。早大漕艇部に入ってから1年。昨シーズンを振り返るとともに、三人の現在の心境などについてお話を伺った。

※この取材は3月5日に行われたものです。

初めて挑む大舞台

初の早慶戦への思いを語る石田

――対校エイトに選ばれたときのお気持ちは

内田 選考で勝ち抜いて選ばれたのでうれしかったです。

石橋 ワセダの志望理由も早慶戦(早慶レガッタ)に対校(エイト)で出たいというのが志望理由だったので、うれしかったです。

石田 僕もうれしかったですね。

――ご自身の役割は

内田 3番目で士気を高めます。

石橋 後ろから7番目です。コックス、ストロークの次のポジションで、僕の役割はストロークのリードをつなげる役割です。

石田 エイトで言うエンジンにあたるので、一番声も出して船のペースをどんどん上げていくっていうのが僕の役割です。石橋のリズムを伝えながら艇を進めていきます。

――不安はありますか

内田 隅田川の波というのが分からないので不安です。

石橋 自分だけ不安になってしまうとクルーの皆さんに迷惑を掛けてしまうので、どんな状況でも長田さん(敦主将、スポ4=石川・小松明峰)のリズムをつなぐっていうのが僕の役割なので、それを隅田川でもやり通せたらいいなと思います。

石田 僕はきょねんの早慶戦で船を押さえる役割をしたので、その船に乗っている選手とはまた違う船でステッキボートの役割をやっている時から、隅田川の波はすごいのが分かっていました。それを踏まえてことしエイトに乗るというのは想像以上に恐ろしいことだと思うので不安でいっぱいですね。

――普段のレースよりも長距離(3750メートル)となりますがいかがですか

内田 それが他のレースと早慶レガッタの違いであって、早慶レガッタに対しての懸ける思いがありますね。ケイオーと長く戦えるという意味では楽しみです。

石橋 距離が伸びれば仕掛けるところとかを2000メートルよりもより綿密に考えないと、3000メートルという長い距離はやっていけないので、そういうレースプランとかは普段のレースよりも綿密なものになりますね。絶対に入れ替えどころでスピードを上げるとかが早慶レガッタならではの見どころではないかなと思います。

石田 3750メートルをちょっと漕ぎ切れるか心配というのが一番にありますね。

――冬場は具体的にどのようなトレーニングをしましたか

石田 冬場は体力を付けるという点で、最近ではワットバイクという競輪選手が使うトレーニング器具をワセダは新しく何台か買いそろえて、エルゴマシンも2台か3台増えました。最近ではそういう心拍的な機能を鍛えるトレーニングをやってきていますね。

内田 レース自体は3750メートルと長いので、隣の荒川で長い距離の練習をしています。

――課題は見つかりましたか

内田 はい。部の良いところとして、一つずつ課題をつぶしていってどんどんステップアップできるという点がこのクルーの良いところかなと思います。

石橋 最近では荒川の方で長い距離を漕ぐ練習をしていて、その練習をすることでコースの練習とは違って川での新たな課題が見つかってくるので、それをいま克服してやっています。

――本番での理想のレースプランは

石田 僕が思うレースプランは、スタートからワセダが出て、スタートからすぐに仕掛けてケイオーに1艇身ぐらい(差を)つけたまま、ケイオーに抜かれることなくワセダがリードした状態で引っ張っていくという感じです。やっぱりリードしていると相手が出てきても自分たちでペース配分を考えることができるので、ケイオーに出られたら僕たちは抜かれると思っているので、ケイオーに絶対出られないようにワセダがスタートしてすぐ出て、そのまま3750メートルを思い切って行きたいなと思っています。

石橋 ことしはワセダがアウトレーンになっているので、スタート時にケイオーに外のアドバンテージとしてワセダが1艇身出ている状態でスタートできるので、最初の艇身差をどんどん引き離せていけたらケイオーに勝てるかなというふうに思います。

内田 目標が『圧倒的勝利』なので、できればスタートから出てケイオーをたたきのめしたいです。

――長田主将の印象と新体制になってからのチーム状態についてはいかがですか

内田 長田さんは日本代表レベルの選手で、頼りがいがあります。人間性としてはみんなを引っ張っていってくれるので心強いです。新体制になって漕ぎの目指すところが明確になりました。OBの方にも支援していただいていて、早慶戦に向けての準備ができているのかなと思います。

石橋 長田さんはすごく厳しいところがありますが、絶対に勝ちたいという明確な意思があるからこそ、そういう厳しさがあるのかなと思います。僕は水上では怖いなと思ってしまうこともあるのですが、やっぱり長田さんにそういうふうにいろいろ教えてもらっているからこそステップアップできているので、その長田さんを隅田川で絶対勝たせたいなというのが一番僕の強い気持ちです。新体制になって思ったこととしては、絶対強いチームにしたいというのがいまの長田主将であり、そういう望みがすごいチームに伝わっているなと。そういう明確な望みがはっきりしているのが新体制ですね。

――お互いの印象はいかがですか

石田 内田はすごく真面目で、高校の時からも日本代表で努力家で、僕がふざけているときも内田は真面目に練習していて、たびたび内田に怒られるのが僕でした(笑)。石橋は大学で初めて知り合って、石橋も内田以上に努力家で学校の授業面でも石橋は真面目です。二人の性格に相反するのが僕かなと。あと石橋はいっぱいおごってくれます(笑)。

石橋 石田も言っていたように内田はすごい努力家で、僕は尊敬できる選手は誰かって聞かれたら内田って答えますね。内田が一生懸命頑張っていたら、僕も負けられないなと思えるくらい良い意味で刺激をもらっています。良知は、やる時はやる男で、そういうところが格好いいなあと。エルゴのパフォーマンスや水上のパフォーマンスもすごいです。この同期がいるおかげで僕も対校で頑張れているので、僕もこの二人に負けないように頑張っていきたいなと思います。

内田 良知は普段の性格はうるさいのですが(笑)。水上に出たら人が変わるというか、漕ぎやトレーニングに対して思ったことを素直に言ってくれるので、そういう意味では頼りがいのある存在ですね。力がすごいのでそういう面でも頼りになります。良知が大ざっぱだとしたら、石橋はすごく繊細というか、考えが論理的でまとめるのがうまくて、たまに話長いなって思うのですが(笑)。漕ぎに対して細かいところまで考えていたり、考えるのがうまいですね。

――お互いは授業で同じになることは多いのですか

石橋 僕と内田は教職を取っているので、そういう関係で一緒になることが多いです。あとまだ僕たち1年生なので基礎科目が多いのでかぶることが多いですね。授業中にあまりボート部でべたべた固まっていることはなくて、他の部活の子と一緒にいたり。他の部のつながりも大事なので。授業の時でもボート部だけで固まるというのはたまにはありますが、そんなにはないです。

石田 朝も夜もほとんど一緒にいるので学校はまた別の部活の子と仲良くしていますね。

――寮ではどのようなことをされていますか

石田 基本、部屋で歌って、騒いでいます(笑)。

石橋 この二人が部屋一緒で、僕だけ部屋が違ったので、僕は一人静かに本を読んだり、動画を見たり。

石田 8人部屋が2つあって、こっち(石橋)の部屋は本当に静かでみんな好きなことやっていたり。僕らの部屋は常に騒いでいましたね。けんかして、暴れて、たまに脱いで(笑)。

――一人の時間が欲しいときはありますか

石田 俺らの部屋は一人の時間はなかったなあ。消灯してもまだみんなでゲームしたり(笑)。

石橋 僕たちの部屋は真面目な人が多かったです(笑)。僕はあまり一人の時間が欲しいなとは思ったことはなくて、普通に楽にやらせてもらっていました。ただこっち(石田)の部屋がうるさくて、たまに迷惑だなと思うことは多々ありましたが、それぞれ部屋で好きなことやって、練習とそういうオンとオフのメリハリができているのかなあというふうに思います。

「ここまで成長できるとは思わなかった」

一つ一つの質問に丁寧に答える石橋

――ワセダのこの一年で成長や感じたことは

石田 正直言うとこの一年きつかったですね。洗濯物も何もかも自分でするので、自分自身オカンに頼っていたのでそういう面ではオカンがありがたかったなというふうに思いますね。

石橋 本当に僕もことしの一年でまさかここまで成長できるとは思わなかったです。もちろん1年目から対校に乗りたいという目標はありましたが、まさか本当に乗れるとは思っていませんでしたし。この二人は国体や全国大会で優勝経験があるのですが、僕だけそういうのがなくて。入部当初もそういう中で自分がやっていけるのかなって。不安な面がすごく大きかったのですが、ことし一年、親であったりマネジャーさんであったり、監督やコーチであったり、同期であったり、いろいろな人に支えてもらったおかげで対校に選んでいただいて、技術面でも体力面でも精神面でも成長させてもらえたかなと思っています。ことしはすごく良い一年でした。

内田 僕は高校の時すごく少人数での活動が多かったので、これだけの大集団で部活を頑張るということで、みんながいる心強さを学んで、みんなで頑張るという面では成長できたと思います。

――春からは後輩が入りますがどういう先輩になりたいですか

石田 優しい先輩になりたいですね。石橋はいま、後輩が入ってくるためにいっぱいお金を貯めているので、いっぱいおごってあげると思いますよ。

石橋 いっぱいおごってあげような(笑)。

内田 自転車も売るしな。

石橋 いや売らない、売らない(笑)。最近買ったばっかり(笑)。お金で頼られるのはごめんですけど、ボートに関しても授業に関してもどんどん頼られる先輩になれたらなと思います。

内田 僕自身が先輩と適度な距離がいいなと思っているので、適度な距離感を保てる先輩になりたいです。

――昨シーズンの成績を振り返ってみていかがですか

石田 インカレ(全日本大学選手権)が一橋大に1秒差というところまで迫ることができたのですが、正直優勝って言ってきたので悔しかったです。ですが、おととし一橋大との差があった中、ことし1秒差まで迫ることができたというのは少なからずの進歩だと思うので、ことしのインカレこそはこのメンバーで優勝したいなと思います。

石橋 昨シーズン、僕は1年生で対校に乗らせてもらって、本当に先輩について行くので必死で、それだけで頭いっぱいで周りのことが見えなかったりしたので、ことしは良い意味で自分が引っ張るくらいに貢献できたらいいなと。きょねん、一橋大や日大と差を詰められた部分があるので、このままインカレ行ったら絶対優勝狙っていけるメンバーだと思うので、どんどん成長してインカレで優勝を取れたらなと思います。あと個人的には全日本新人(選手権)を奪還したいなという気持ちが強くて、きょねんの全日本新人でワセダの4連覇が僕たちで止まってしまい、それの重圧というか責任というかそれが本当に申し訳ないという気持ちでいっぱいだったので、僕たちが(全日本)新人の最上級生となるので、ことしこそは僕たちが奪還してワセダを優勝させたいなと思います。

内田 勝つレースというものがなく、めちゃめちゃ悔しい思いを正直したので、いま練習していても、なぜこれを夏に気付かなかったのだろうと気付かされることが多いので、そういった意味でもいま自分たちが気付いたり学んだりしていることを来シーズンに生かしていけたらと思います。

――いままでで印象に残っている試合は

内田 インカレです。

石橋 全日本(選手権)の順位決定戦の最終日が印象に残っていて、その日の全日本選手権の準決勝で絶対決勝に上がろうとクルーで見通して思っていたのですが、逆にそれが空回りしてしまって、いままで一番悪いパフォーマンスが出てしまいました。そこからもう一回切り直して頑張ろうという中で一番良いパフォーマンスを発揮してみんなで満足して終われたっていうそういう良い気持ちがあったので、印象に残っています。

石田 僕は全日本新人ですね。ワセダの4冠を狙っていたのですが、メイジとケイオーに負けてしまい悔しかったので記憶に残っていますね。

「完全優勝、圧倒的勝利」

昨シーズンの悔しさを晴らしたい内田

――今シーズンの目標は

石田 インカレ優勝と、早慶戦完全優勝と、全日本メダル獲得です。そこは個人的に決勝に行ったのなら優勝を狙いたいなと思っています。

石橋 出る大会は全て優勝を勝ち取りにいきたいなと思っています。

――勝負どころとなるポイントはありますか

石田 長いレースなので、後半の粘りもどれだけリードできるか、そういうところが重要になってくると思います。やっぱりいま練習しているのも後半にどれだけ勝負できるかです。後半過ぎての吾妻(あづま)橋辺りが勝負なのではないかなと。

石橋 まず前半で頭を取りたいので、スタートからの両国橋の前にすごい大きなカーブがあるのですが、そこで僕たちはアウトレーンで不利なのですが負けることなくしっかりケイオーと差をつけられたらなと。もちろん後半も大事ですが、前半でしっかりケイオーと差をつけていきたいなと。

内田 前半でワセダが出て、そのまま逃げ切りたいなと思います。

――注目して欲しいポイントは

石田 ことしのワセダは橋下で水流が変わるので、そこで足蹴りと声出しを同時にやります。その声が橋の下で響くというのもあり、そこで負けずに船を進ませるというのがあるので橋下の10本は見どころだと思います。そこで一気にケイオーと差をつけるくらい船を進めたいと思います。

石橋 漕ぎを統一しているので、一糸乱れない漕ぎを早慶戦本番前に完成すればきょねんよりも綺麗なフォームで漕いでいる姿をいろいろ見てもらえるかなと思います。

内田 桜橋でどれだけケイオーを離せるか。絶対に勝ちたいです。

――キーマンは誰になるでしょうか

石田 長田さんですね。

石橋 長田さんのリズムをいかに8人で統一できるか。そして長田さんを起点に爆発できたら勝てるのではないかなと思います。

内田 キーマンは司令塔のコックスの中村さん(拓、法4=東京・早大学院)だと思っていて、中村さんのペース配分の指示、レースの状況判断で戦況も変わってくると思います。

――最後に早慶レガッタへの意気込みをお願いします

内田 これだけ冬に厳しいトレーニングをやってきたので、3連敗中で長田さんはワセダに入ってから一回も勝っていないので絶対に勝ちたいです。

石橋 僕が(知っている人で)最後に勝ったのが僕の出身の豊田北高校の本田さん(敏裕、平23スポ卒=愛知・豊田北)がいた時で、何か縁を感じます。これは神様が勝てって言っているのではないかなと思っているので、もう勝つしかないです。

石田 ことしは『完全優勝、圧倒的勝利』なんですけど、ケイオーを圧倒して勝ちたいですね。

――ありがとうございました!

(取材・編集 石川諒、寺脇知佳、写真 須藤絵莉)

◆石田良知(いしだ・りょうち)(※写真左)

1995年10月26日生まれのO型。185センチ、85キロ。滋賀・彦根東高出身。スポーツ科学部2年。ポジションは対校エイトの6番。寮の部屋での生活について、歌って騒いでいると語った石田選手。日常生活の中から培った声量で早大クルーを盛り上げます。早慶レガッタではレース中の橋下での声出しは必見です!

◆内田達大(うちだ・たつひろ)(※写真中央)

1996年1月7日生まれのO型。173センチ、72キロ。山梨・吉田高出身。スポーツ科学部2年。ポジションは対校エイトの3番。「真面目」、「努力家」と評された内田選手。対談中も真摯(しんし)な受け答えが印象的でした。「絶対に勝ちたい」という言葉からは大舞台に対する思いの強さが伝わってきました。隅田川での勇姿に期待です!

◆石橋広陸(いしばし・ひろむ)(※写真右)

1995年4月25日生まれのA型。180センチ、72キロ。愛知・豊田北高出身。スポーツ科学部2年。ポジションは対校エイトの7番。石田選手に「いっぱいおごってくれます」と暴露された石橋選手。お金で頼られるのはごめんだそうですが、そのあふれる男気は同期だけでなく後輩からも、きっと信頼されることでしょう!