例年以上に価値ある銅メダル!

漕艇

 まさに激闘という言葉がふさわしいレースとなった。舵手付きペア、舵手なしクォドルプルなど表彰台の期待されたクルーが続々と敗退し、決勝に残ったのはエースクルーのエイトのみ。全部員の期待を背負って挑んだ王座奪還。惜しくも結果は3位となったものの、王者・日大や一橋大を追い詰める姿に観衆からは大歓声が上がった。

 舵手付きペアが5位、舵手なしクォドルプルが8位に終わった順位決定戦。全クルー納得のいく結果を残せない中、運命のラストレース・男子エイト決勝を迎えた。対するは絶対王者・日大、予選で早大を圧倒的大差で破り、かつ日大をも倒す波乱を起こした一橋大、そして早慶レガッタで敗戦を喫した宿敵・慶大だ。整えられた唯一無二の舞台。だが準決勝まで度々不調が見られたためか、観客からは「早大は最も厳しいのではないか」という声が多く上がった。

激戦を繰り広げる男子エイト

 逆境を跳ね返し、悲願の優勝へ。15時、ついに決戦の火ぶたが切られた。スタートから準決勝までには一切見られなかったハイペースで飛び出した4艇。「強い覚悟を持って絶対に頭を取りにいこう」(青松載剛主将、スポ4=京都・東舞鶴)と、早大も攻めの姿勢を見せる。第1クオーター終了時点での順位は4位。だがタイムは1分25秒と理想的なもの。場内速報で1分23秒という首位日大のタイムが告げられた時、観客からはどよめきが起こった。コースレコードペースで試合は進んでいく中、徐々に慶大が離脱していく。他の2艇の姿は目視可能な範囲内。「いけるぞ!」3番の正垣克敏(スポ4=熊本学園大付)は前に乗る選手を鼓舞するように声を掛け続けた。第2クオーターも1分26秒と好タイムを維持。3艇が激しいつばぜり合いを繰り広げながら、勝負は後半へと進む。

 中盤以降も順調に艇を伸ばし続けた早大。若干のミスオールはあったものの、他の2艇に必死に食らいつく。首位との差を約1艇身に抑えたまま、いよいよ勝負のラストクオーターへ。「最後は気持ち」(正垣)。「ここでいかなければ絶対に勝ちはない」(青松主将)。4年生の強い思いに応えるように、早大は予定より300メートル手前からロングスパートを仕掛けた。レース終盤に選手たちを後押しする応援部の『紺碧の空』。会場の雰囲気は最高潮に達し、レースも最後の最後までもつれあう展開に。結果は追い上げむなしく、3年連続の3位。選手たちは悔しさを爆発させたものの、例年以上に敵を追い詰めたその勇姿は多くの観客を魅了した。

悔しさのあまり涙を流す青松主将

 日大は今回、普段とは異なる先行逃げ切りのレースプランで決勝に臨んだ。それは後続の一橋大、そして早大を脅威に感じていた証拠だ。王者の牙城が崩れる日もそう遠くはないのかもしれない。次戦に控えるは漕艇界最高峰の舞台・全日本選手権。非常に若いクルー構成の早大は、まだまだ成長の余地はある。「(今大会で)思いは重なった」(青松主将)。この涙は次戦の笑顔のために。『One WASEDA』の心一つに、エンジ戦士が日本の頂点へ挑む。

(記事 細矢大帆、写真 荒巻美奈、細矢大帆)

結果

▽順位決定戦

【舵手付きペア】

C:藤川和暉(法2=東京・早稲田)S:田﨑佑磨(スポ4=茨城・潮来)B:角南友基(スポ3=岡山・関西)7分46秒75【1位、全体5位】

【舵手なしクォドルプル】

S:東駿佑(政経1=東京・早大学院)3:得居亮太(法1=東京・早大学院)2:杉田陸弥(人2=栃木)B:有田雄太郎(法1=東京・早大学院)6分35秒46【4位、全体8位】

▽決勝

【エイト】

C:中村拓(法3=東京・早大学院)S:長田敦(スポ3=石川・小松明峰)7:青松載剛(スポ4=京都・東舞鶴)6:石田良知(スポ1=滋賀・彦根東)5:是澤祐輔(スポ2=愛媛・宇和島東)4:竹内友哉(スポ2=愛媛・今治西)3:正垣克敏(スポ4=熊本学園大付)2:内田達大(スポ1=山梨・吉田)B:石橋広陸(スポ1=愛知・豊田北)5分49秒89【3位】

コメント

7:青松載剛主将(スポ4=京都・東舞鶴)

――全日本大学選手権(インカレ)最後のレースとなりましたが、終わった直後のお気持ちは

終わった瞬間は自分のインカレ最後のレースが終わったんだな、やっぱりまた3位か…という気持ちが強くて、単純に悔しかったです。

――決勝のレース全体を振り返ってみて

レースプランやタイムカーブを見れば、練習よりも、予選や準決勝よりもすごくいいレースができたと思います。ただそれよりも日大、一橋大が速かったというところですね。

――日大、一橋大と離れたレーン配置となりましたが、影響は特にありませんでしたか

きのうの取材の後にミートを行いましたが、そこでも強い覚悟を持って絶対に頭を取りにいこうとは話していました。なのでケイオーが遅れ始めても特に影響はありませんでしたね。

――今回はケイオーも台頭してきましたね

ケイオーははたから見ていても漕ぎが大きく変わりました。シャカシャカって漕いでいたのが前からつかんで漕ぐようになってきました。まだまだ粗いところも多いですけど。山本(尚典主将、慶大)とも話しましたが、「早慶レガッタとコースでことしは漕ぎを変える」と言っていたので、そこの部分がある程度うまくいったのかなとは思いますね。ただ、ワセダの方が速かったと(笑)。そういう意味では春のリベンジということにはなりましたが、いままで通りコースでは勝って当たり前というように考えています。

――ペース配分自体はかなり理想的なものであったように感じましたが

自分自身も「きのうより100倍漕ぐ」と皆に言って、がっつりスタートから入っていきました。でもやっぱり日大は(第1クオーターを)1分23秒で入っていて見えなくなり始めたのですが、ひたすらクルーを信じて、中村(拓、法3=東京・早大学院)のコールに反応して漕いでいくことができました。でも結果が全てなので、この結果か…という悔しさが強いです。

――終盤の追い上げは見事でしたが

1500メートルくらいからは自分の(7番という)ポジションからは一橋大がちょろっと見えているくらいでした。「もうここでいかなければ絶対に勝ちはない」と考えて、一気に変えていきました。もともとのレースプランは1850メートルからガンガンラストスパートで上げていくというものだったのですが、それでは逆転できないことが確定的だったので、残り500メートルから絶対に逃がさないようにと仕掛けました。

――レース後は青松主将のみならず皆が涙を流されていました

相模湖合宿に入る前に僕が自分の思いを打ち明けました。「どうしても勝ちたい、どうしても金メダルが欲しい」と。きょねん3位で悔しい思いをしました。竹内(友哉、スポ2=愛媛・今治西)や長田(敦、スポ3=石川・小松明峰)も1年の時から対校エイトに乗っていて「もう金取りたいよな!」と語りかける感じで言ってみたことがありました。そこから是澤(祐輔、スポ2=愛媛・宇和島東)とかも水上で声が出るようになってきて、長田もレースの時も引っ張ってくれるような姿が見られるようになりました。僕の過信かどうかは分かりませんが、みんなに思いをぶつけたから、合宿で変わることもできました。その後も常々「勝とうな、金メダル獲ろうな」と言い続けてきたので、みんなきっと応えてくれようとしていたんだなと思います。

――予選から非常に成長したクルーだったように感じられましたが

レースにどのように取り組めばいいかということに対しては成長できたと思いますが、練習からすれば予選は非常に悪いレースでした。レースだけを見れば成長できて非常に良いクルーだったように見えますが、練習から通してみると一気に予選で調子が落ちてしまったので、もっと予選の段階で練習のいいところを出せていれば、もっともっと高いレベルで戦えたのかなとは思いますね。まだまだ若いクルーなので、そういうところが甘いなと。

――いままでの3位と比べてトップクルーと競り合えた価値ある3位だったように見えましたが

きょねんおととし、その前も、置いていかれたらそこで終わりというのがワセダのクルーの特徴でした。ことしに限ってはそういうのが全くなくて、置いていかれても自分たちの漕ぎを続けてスピードを出すということができていました。なので後半でも勝負できるようになってきたかなとは思いますね。きょねんとかは特に1000メートルで一気に出てからの失速がすごくて、練習でも後半は勝負できなそうだなという感じはありました。だからそういうところでも2000メートルを見据えてコンスタントで強く漕ぎ進めようという意識が見られました。例年よりはしっかりと勝負ができたので、その分価値はあるかなと思いますね。

――5分49秒、なかなかの好タイムが出ましたが

いままでのワセダの中では好タイムかもしれません。でも負けは負けというところがどうしても強くて、やはりこれじゃ駄目ですね。

――4年間のインカレを振り返るといかがですか

どの代も自分なりに頑張ってはきましたが、やはり自分が4年の代が一番本気で取り組めたかなと。別に手を抜いていたわけではありませんが、もっともっと頑張れたかなと。そこでもっと頑張っていればいまの結果も多少は変わったかなというのはありますね。

――全日本選手権(全日本)に向けてどのように取り組んでいきたいとお考えですか

期間は全然なくて、やる事は限られています。しっかりとすべき事を決めて全員がそこに向けて取り組めたら、久々の決勝はもちろん、メダル、金も狙えるクルーだと思います。きょうの結果を見ても日大、一橋大、ワセダと(僅差で)続いていて、ミスをなくす部分はたくさんあります。まだまだ伸びしろのあるクルーだと思うので、そこをもっと詰めた上で戦いたいです。間で行われていたオッ盾(オックスフォード盾レガッタ)で優勝した社会人の東レ滋賀のタイムが5分51秒と聞いたので、タイムだけで見れば社会人にも全然引けを取っていないことは確かです。だからそれも加えて全日本での決勝は全然あり得ると思います。

――全日本に向けて抱負を

変わらず、絶対勝つ。それだけ。下手に2位とか3位とか決勝進出とか狙っていたら絶対に(決勝から)落ちるので、絶対に優勝。とにかくそこだけを目指します。きょうの結果を踏まえてクルーのみんなも思いという部分で共有できたところがあって強くなれたと思います。石田(良知、スポ1=滋賀・彦根東)とかもレース中にちょっと腹切ったときがあって、自分に「すいません」とか言ってきて。1年生もそういうふうに感じてくれる部分があるんだなと思って少しうれしかったです。だいぶ思いも重なってきたかなと思いますので、全日本も悔いなく戦っていきたいと思います。

3:正垣克敏(スポ4=熊本学園大付)

――まずは試合を終えて感想をお願いします

自分の位置から相手が見えていたので、3位のうれしさより悔しい気持ちが大きいです。相手が見えているということは、ほぼ被っているということで、自分の後ろに座っていた1年生2人はもどかしかったと思います。今回は大会を通じてレースごとに成長していきました。もう一回レースができればという思いがあります。このモチベーションをオフ明けの練習から全日本につなげていきたいです。

――決勝のレースプランはどのようなものでしたか

相手のスタートがそんなに速いわけではないと分析していました。きのうの準決勝でも一橋大と最初の200メートルまでは競っていました。なので、きょうは最初の500メートルまでを頑張って、そこから伸ばそうとしていました。このクルーはスタートが決まれば第2クオーター以降も調子良くいける特徴があります。きょうは比較的レースプラン通りだったとは思います。

――第1クオーターは速いタイムでしたが、4位という入りでした

日大が予想外に最初から飛ばしてきました。あとから聞いた話ですが、日大は捨て身で前半から飛ばしていってそのまま抜け出したいという一橋大や早大がやるような、日大らしくないレースプランを組んでいたようです。そこは意表を突かれたかたちで、一橋大も驚いたと思います。第1クオーターは早大が悪かったというよりは、日大が飛ばしてきたということです。自分たちは悪くない感覚を持っていました。離されたというよりは実力の差で、いまできる最高に近い漕ぎはできたと思います。

――中盤以降は追い上げを見せた印象がありますが、いかがだったでしょうか

予選からスタートが決まれば第2クオーターがいけていました。また第3クオーターではギアを入れ直さなければいけないという意識をみんなで持っていました。だからきょうは第3クオーター勝負でした。1年生が3人も乗っているので焦りが多少あったと思いますが、中盤でもう一度ギアが上がったのは良かったと思います。相手も同じことを考えていたようで、少し相手との差を詰めましたが、それを見た先を行く二つのクルーが抜けていった感じだと思います。また後ろにいて見えていない慶大はそこで置いていかれたと思います。とても分かりやすい展開で、漕艇という競技の先に行ったクルーが相手のクルーのことを見ることができるという特性が働いて、相手に落ち着いて対処された感じがします。

――レース中、艇上ではどのようなやり取りがありましたか

第2クオーターが終わるまで日大も見えていました。日大についていっているぞという感覚がありました。慶大が離れた時に、自分たちがコンスタントをよく伸ばせていると思い、「いけるぞ!」という声を何度か掛けました。前で漕いでいる漕手たちには先を走る相手が見えていないだろうと思い、「いけるぞ」という声を掛けることでまだ競っていることを伝えたかったです。実はそこで気合を入れすぎたのか、1年生が軽く腹切りをしてしまいました。気持ちを高ぶらせすぎてしまったかとも考えましたが、必要なコールだったと思っています。艇は止まることもなく、艇速もそこまで落ちませんでしたが、少しバタバタしてしまったのは事実です。

――第4クオーターでは猛烈な追い上げが見られました

第3クオーターまでは意識がありましたが、最後は気持ちでした。自分の中では第3クオーターで出し切った感じがありました。それでも第4クオーターで応援部の『紺碧の空』が流れていて、また自分の名前がたくさん聞こえて、そこでもう一度奮起することができました。応援団のおかげで自分にもう一度力がわきました。最後乗っている時はとにかくがむしゃらで周りも見ず、がむしゃらとはまさにこのことを言うと思います。

――スパートのタイミングなどはいかがでしたか

中盤で慶大が足蹴りを入れてきたタイミングで早大も足蹴りを入れたことで慶大を完全に置いていくことに成功しました。結果論ですが、コックスの中村拓(法3=東京・早大学院)の勝負勘が光ったということでしょう。第4クオーターに入った直後からスパートをかけ、そこで格段に変わった印象を持ちました。そのあとラスト150メートルからもう一度スパートをかけて、ダブルスパートのような形になりました。

――結果は3位で昨年同様の順位ですが、日大に近づくことができたという考えはありますか

自分は昨年対校エイトに乗ってないのであまり言えませんが、客観的な目を向けるのであればことしの3位は同じ3位でも可能性が見いだせるものだと思います。これが最後でなくて良かったと思います。全日本までたった3週間しかありませんが、この短い期間で一番伸び幅があるのは間違いなく早大です。下級生が5人も乗る非常に若いクルーです。自分は持っているものを全て置いて卒業するのが役目だと思います。全日本では最後の一漕ぎまで冗談ではなく死ぬ気で、最後はレース中に疲労骨折をしてもいいぐらい必死に漕ぐつもりです。昨年よりも懸ける思いは強いです。

――昨年は舵手付きペアでインカレ優勝、全日本では4位入賞を果たしました

昨年は田﨑(佑磨、スポ4=茨城・潮来)と中村が自分を育ててくれました。昨年の本番では報いるという気持ちで漕ぎました。一度勝つというのは大きな自信になりますし、根拠のない自信はとても強いという実感があります。後輩に自信をつけされるために、また優勝するとそれ以降の成長にも良い影響を与えるはずなので勝たせてあげたいと思っていました。

――きょうのレース後はクルーにどのような言葉を掛けましたか

「ありがとう」しか言っていません。サポート陣も含めてですが、昨年同様感謝の気持ちしか出てきませんでした。今回は後輩が多く乗っているとはいえ、後輩からもたくさんのアドバイスをもらって、この2カ月弱でものすごく成長させてもらいました。なのでありがとうという気持ちしか出てきませんでした。それ以外本当に何も言っていません。また実はとても悔しいと思っていることがあって、このクルーで成長させてもらいましたが、それを自分が1年生の段階でやれていればもっと高いレベルに行けたのではないかと思うとそれも悔しいと思っています。まだ3週間ある段階で気が付けたのは良かったのかもしれませんが、なんでこの成長をもっと早く見せられなかったのかという自責の念を最近思っています。だからこそ悔いのない3週間にしたいと思います。

――いまはやはり悔しい気持ちでしょうか

めちゃめちゃ悔しいです。それと同時に自分は申し訳ないという気持ちがあります。もっと後輩を育てることができたのではないかとか、腕引っ張ってでも自主練習に付き合わせたり、もっと的確なアドバイスをすることができたりしたのではないかという後悔も大きかったです。今大会では4回のレースの度に良くなっていくのを全員が感じていました。決勝のレースを最初の予選でできていれば、もっと自信がついたり(敗復に回らず)休めたりとメリットがあったと思います。そうしたらもしかしたら決勝では1位か2位だったかもしれないと考えると、そのような指導面でも緩めずにやらなければいかないと思います。

――全日本への意気込みをお願いします

昨年は自分たち舵手付きペアのみが全日本の決勝に進出しました。ことしは対校エイトでまずは決勝に進出したいです。決勝に出ればテレビでも放映されます。伸び幅がある若いクルーで、この大会だけで一橋大とのタイム差を10秒も縮めました。4日で10秒です。しかもきょうは腹切れもしました。また稲門会の漕艇部OBが「男子対校エイトの優勝が我々の目標」と話してくださいました。OBが『我々の目標』と言ってくれたのが素直にうれしく感じました。OB、監督・コーチ、サポート陣、そして漕手の全員が同じ目標にベクトルを向けている強固な組織があり、またらいねんにもつながるクルーができています。まずはことし、結果を出せるように頑張りたいと思います。

C:中村拓(法3=東京・早大学院)

――きょうのレースを振り返って

予選、敗者復活、準決勝、と順調にタイムが伸びていって、そこで出た反省を生かしてきょうのスタートから先手を取られないようにアグレッシブに挑もうということで、狙った通りにはできたと思います。でも後半にかけて力の差が出て捕まえきれなかったことが結果に表れて、率直に悔しいです。

――日大、一橋大、慶大が同組のレースでしたが何か意識したことはありましたか

優勝しか見ていなかったので自分たちがアグレッシブに飛び出る、もし出られてしまったら粘ってついていく、というようにイメージしてレースに挑みました。

――レースプランは

準決勝のときに一橋大にいい感じに食らいついていたのですが、後半ちょっと離されすぎちゃったかな、というのがあったので最初に出るか、もっと差を縮めた状態で後半に入っていきたいな、というイメージで前半から積極的に仕掛けていくことを狙っていました。しかし、意識はできていたものの実際のレースになると何か少し欠けてしまったのでやはり力の差だったのかな、と思います。

――この間、目標タイムについておっしゃっていましたがきょうのレースではいかがでしたか

結果的には自分たちが目標としていたタイムを達成できなかったので残念だし、それがやっぱり結果に表れてしまったと思います。ただ、若い選手もたくさん出ていて、予選タイムから見ても10秒以上伸ばせましたし、最後に自分たちの力が出せたのでその部分がタイムに残せたのではないかと思います。

――ことしの全日本大学選手権(インカレ)全体を振り返っていかがですか

予選からタイムを上げていけたのでそういう意味ではクルーとして成長できて良かったのかな、と思います。ただ、最後勝つためにはもっとやっぱり安定した同じような漕ぎ、同じようなレース、予選1位、準決勝1位、決勝1位、という感じでいかないと勝てるクルーにはなれてないと思うので、そういう意味ではもっと練習からしっかりまとまってやる必要があったな、と感じます。結果も3位だったので、素直に悔しいです。

――次の大会である全日本選手権に向けての意気込みをお願いします

今大会中も、レースごとによくなりましたし、若い選手が多いのでまだまだ伸びるクルーだと思うのでその要素をこの3週間に集約してできることを全てやって、安定した強いクルーになってレースに臨みたいです。まだ不安定な部分があるので強いクルーになって優勝狙っていきたいです。

S:田﨑佑磨(スポ4=茨城・潮来)

――きょうのレースを振り返って

あまり良くないというのが正直なところです。ことしのインカレは3本レースがあったんですけど、その3本を通して課題が全て同じで、課題が明確になったという意味では良かったのですが、このレース単体で考えると、非常に欠点の多いレースだったと思います。

――課題とは具体的にどのような部分ですか

3本レースを漕いでみて、スタートとスパートのキレは非常に良くて、タイムも申し分ありませんでした。ですが、1000メートルや1200メートルといったコンスタントの中盤から後半にかけて、クルーの調和のずれが起きてしまい、艇速が一気に落ちてしまいました。燃料タンクに穴を開けたまま船を走らせている感じで、ぐっと回転数が落ちてしまったところが欠点だったと思います。

――クルーの調和のずれは練習の段階でも生じていたのですか

やはり練習と試合とでは気の持ちようが違って、いくら本番を想定していようと練習は練習で。練習の中であれば3人でまとまるんだぞという思いの下でできるんですけど、いざ本番のレースになると、自分の中に入ってしまったり、きつくなってきたところで自分のやりやすい漕ぎになってしまったりして、本当に3人であの船を走らせるんだぞというところにフォーカスがいかずに分散してしまいました。これが間違いなく今回の敗因だったと思います。

――試合への対応力が不十分だったということでしょうか

そうですね。単純に今回は自分たちが未熟だったと思います。しかし、体力がないわけでもテクニカルがないわけでもないので、あと3週間でこの課題をつぶせれば、(全日本の)優勝は見えてくると思います。

――優勝を狙っていただけに、きのうの敗戦からきょうの順位決定戦への気持ちの切り替えは難しかったのでは

きのうは本当にへこんでいました。ですが、もうきょうからは全日本に向けた試合をしようという気持ちでいました。

――きょうのレースプランについて、クルーの方々とは試合前にどのような話をされましたか

まず勝つ船というのは、これは自分たちのレースだ、俺たちが支配するんだと思って漕いでいるんですよ。そういう考えの元で、今回は自分たちのレースプランでレースを支配しようと。相手を型にはめてやろうというような気持ちでいました。

――きょうのレースだけを見れば1着でゴールしましたが、レースを支配できたという感覚はありましたか

いえ、全然駄目ですね。謙遜でも何でもなく。きょうの1位は当たり前で、本当はもっともっと前に出ていなければならなかったですし、全然納得はできないですね。

――田﨑選手にとっては今回が最後のインカレでした。これまでの4年間を振り返って、インカレというのはどんな舞台だったと思いますか

どうなんですかね。何か早慶戦のような特別な思いがあるかというとそうではなくて、1年間の集大成を見せる大会なんだという位置づけです。でもことしに限っては、10年間ボートをやってきた上でのラストのインカレで、どう頑張っても二度と戻って来ないインカレなので、最後だからという意味で思い入れはありましたね。

――インカレを終えて、気持ちの整理はついていますか

はい、もうつきました。課題が明確になって、その課題をつぶせば全日本で必ず金取れると思いますし、気持ちは切り替わっています。インカレで勝とうが全日本で勝てなければ日本一ではありません。昨年はインカレで勝って全日本で負けたので、ことしは逆にインカレで課題を明確にして全日本で勝つという心持ちです。

――全日本にはどんな気持ちで臨みますか

正真正銘ラストレースです。僕は本当にボートが好きで。エントリーの瞬間手に水が触ってくる感覚って全部同じように見えて全然違うんですよ。水っていろいろな性質があって、いろいろなことを感じられるんです。それを競技レベルでもう感じられなくなるのが本当に悲しくて。その悲しさを糧に残り3週間。あと3週間は、どんな(練習)メニューも怖くないです。

3:得居亮太(法1=東京・早大学院)

――きょうのレースを振り返っていかがでしたか

スタートで3艇から出遅れて、そこからクルー全体で焦りみたいなものが生じてしまいました。そのまま中盤にスパートを入れたんですけど、それも空回り気味になってしまって、結果は最下位ということで非常に悔しいレース展開でした。

――レースプランはどのようなものでしたか

スタートで出て、自分たちは第2クオーターが落ちてしまうという弱点があったので、第2クオーターの後半でもう1回レートを2枚くらい上げて、相手に近づかせないという。それでそのまま第3クオーターは粘って、第4クオーターはもう一度スパートを入れて逃げ切るレースプランでした。ですが、最初のところでレースプランが崩れてしまって、そこでうまくいかなかったという部分があります。

――きょうのタイムと結果についてどのように受け止めていますか

きょう1位だった岐阜経済大と15秒くらい離れてしまって、やはりきょう自分たちの状態が悪かったというのもあるんですけど、実力の差というものを感じざるを得なかったです。

――インカレ全体を通して見つかった課題はありますか

自分たちは4人中3人が1年生で、あと1人も2年生という若いクルーで。準決勝の時は、その若さがうまく働いて、勢いに乗って龍谷大に競り勝つことができたんですけど、きょうのレースはその若さとか荒さというのがあだとなって、どんどん悪い方向にいって、立て直すことができなかったです。自分たちのメンタルの弱さなどが見つかった大会でした。

――初めてのインカレを終えていかがでしたか

初めてのインカレということだったので、プレッシャーも全くなくて、本当に気楽にというか楽に挑めた大会でした。結果も1年目なのに順位をつけることができて、その結果には満足してますけど、やはりきょうの順位決定戦の漕ぎはクルー全員納得いかないものがあったので、3週間後に全日本選手権があるので、それまでにもう一度まとめてメンタル的な部分をしっかり固めて全日本選手権に臨んで、インカレよりも良い結果を得られればいいかなと思います。

――全日本のクルーは決まってるのですか

いや。でも基本的には同じと言われているんですけど。決定ではないので、どうなるかはわからないです。

――今後の目標をお聞かせください

インカレの目標が最初はメダルで、それを達成することはできなかったんですけど、でも順位はつけることはできて。一定の結果を得られたことには満足してます。全日本ではさらに良い結果に結び付けば良いかなと思います。