【連載】第83回早慶レガッタ事後特集 第8回 C:中村拓

漕艇

 歴史的な戦いである早慶レガッタがことしも隅田川で行われた。この大舞台をコックスとしてクルーに指示を出し、激励し続けた中村拓(法3=東京・早大学院)。悔しくも敗北を喫する結果となってしまい、冷静さと的確な判断が必要とされる自らの役割について、もう一度見つめ直す時が来たようだ。漕手一人一人を見つめた中村の目に、ことしの早慶戦はどのように映ったのか。試合後の心境を語っていただいた。

※この取材は5月2日に行われたものです。

「どんな状況でももっと冷静かつ的確なコールができるように」

大学入学後、初の完敗を喫した中村

――ことしの早慶レガッタを振り返っていかがでしたか

しっかり準備して挑んだつもりだったんですけど、結果として負けてしまったので、何か足りなかったのかなと思います。自分としてもまだまだスキルアップして、成長しなければいけないなと痛感しました。

――大会中、意識していたことは

普段通りに準備はできていて、それをあとは出すだけかなというふうに思っていたので、特別な意識というのはあまりなかったですかね。練習中にずっと積み上げていたものを全員で意識してやるっていうだけだったので。早慶戦に向けて準備していたというのはありますけど、特別本番に意識しているというのはなくて。積み上げてきたものを出すというイメージでしたね。

――当日のレース展開は

スタートから750メートルくらいで大きなカーブがあるんですけど、そこまでに出て、有利にレースを運ぶというプランだったのですが、そこがまずはまらずに、相手にリードを許した状態になってしまいました。そこからはリードを保たれて、こっちから仕掛けても向こうも仕掛けるという、あまり良くないレース展開でした。ワセダとしては、やりづらいレースになってしまいました。

――コックスという立場から漕手の方たちを見ていかがでしたか

スタートで出て、もう少し楽に自分たちのペースでいきたかったと思うんですけど、スタートで出られずに焦りとかもあって、ベストのパフォーマンスではなかったかもしれないですね。序盤苦しい展開になってしまったので、自分たちの最大限のスピードが出せなかったのかなとは思います。

――試合中そのようなとき、どのような言葉掛けをしましたか

まずは展開として長い距離なので、常に一本ずつでも詰めていくことですね。離されるとつらいので。一本でも早く近づけるように、というのを意識して自分は声掛けをしてたのですが、やはりもう少し自分ももっと冷静に状況を変えるようなコールができればよかったです。自分としても相手に追い付くことに必死になってて、少し冷静さを欠いてたところもあったので、そこは反省しています。

――敗因は何だったと思いますか

いろいろあると思います。自分たちの中では、いい感じでできていたと思っていたんですけど、本番いつもよりちょっと荒れて。そういう中で、ケイオーの方がまとまって船を動かしてきたというのがあって、そこでワセダは精度の面でケイオーには劣ってしまいました。どういうコンディションでもケイオーよりまとまって、スピードを出して、ということをもっと練習の時から意識したりすることなどが必要でした。やっぱり準備不足ですかね。

――課題は見つかりましたか

もっと個々のスキルアップや悪いコンディションでも全員で進めるようにすることですね。個人としては、どんな状況でももっと冷静かつ的確なコールができるようにしたいです。普段からの意識だと思うんですけど。やはり今回のレースはすごいいい感じできていた分、あまり予想してなかった展開になってしまったので、その中で自分だけでももっと冷静にコントロールできたら良かったのですが…。そこがあまりできなかったので、もっともっと冷静に的確な指示ができるようになりたいと思います。

「負けは負け」

――きょねんの7艇身差という大差と比べて、ことしの差についてはどう思われますか

あまりそこに関しては考えてなくて、7艇身だろうと1艇身だろうと負けは負けなので、きょねんより差が縮まったとは思ってないです。やはり隅田で戦う時に力の差が出てしまっているので、そこはやはり越えなければいけないところだと思います。

――慶大のまとまった漕ぎなどの強みを今後参考にする予定はありますか

ケイオーのまねをしようとは思わないですけど、やっぱりまとまって漕ぐという印象はあるので、いまのワセダの漕ぎを持続した上で、しっかりとプラスアルファできればいいかなと思っています。特別、ケイオーのようにというようにはあまり考えてないです。

――早慶レガッタで最も印象に残っていることは

うーん、勝ったら色々と思い出せたと思うんですけど、負けちゃったので。本当にもう自分たちがゴールする前に相手がゴールするのを見ながら桜橋を迎えるという、すごく嫌なシーンが染み付いています。

――大会までに減量や体調管理などで気を付けていたことは

体重が他のコックスと比べると重いので、長期的にやっていかないと減量は難しいのですが、そこはいつもあまりうまくいかなくて。今回はいままで考えている以上に、長期スパンでちょっとずつ減らしていくという感じでやっていきました。個人的にはいい感じでできていたんですけど、毎回の減量で1回は体調を崩していたので、いかに体調を崩さずにやっていけるかというところを考えてやっていかなければという感じですね。

――試合後のみなさんの様子はいかがでしたか

悔しいというか、申し訳ないというか、そんな感じで何とも言えない表情でした。やはり個人個人悔しい思いとかあったと思うので、あまり声掛けあってというのはなかったんですけど、みんなそれぞれ思うことはあったと思いますね。

「絶対この悔しさを忘れたくない」

クルーのことをよく気にかけていることがうかがえた

――ご自身、早慶戦後はどのように過ごされましたか

その次も大会あるのはわかっていたので、何とも考えないようにはしていました。ですが、その後にオフがあったんですけど、何もする気が起きなくて。結局自分の中で何回も繰り返してしまって、結構応えましたね。もう切り替えてはいるんですけど、オフ期間中は、なかなか切り替えられずにいました。今までそういう経験があまりなかったので、ここからまた一から這い上がる気持ちを持って、絶対この悔しさを忘れたくない。この悔しさをバネに積み重ねていきたいなと思います。

――今シーズンに行われる大会への目標は

いまは軽量級でクルー組んでいるので、まずは決勝進出という目標を達成したいです。そこでうまく乗れれば、部の雰囲気も良くなっていくと思います。最終的にはやはりインカレでエイトで優勝したいという気持ちがあるので、まずインカレで部全員一丸となって優勝を狙いたいなと思っています。

――らいねんの早慶レガッタへの思いをお聞かせください

いまから準備はできないですけど、今回の負けた時の気持ちを忘れずに、絶対勝つっていう気持ちしかないです。それだけですかね。

――ありがとうございました!

(取材・編集 須藤絵莉、写真 田島光一郎)

◆中村拓(なかむら・たく)

1994(平6)年3月28日生まれのO型。175センチ、55キロ。東京・早大学院高出身。法学部3年。2013年度成績:第82回早慶レガッタ第二エイト優勝、第35回全日本軽量級選手権M8+5位、第40回全日本大学選手権M2+優勝、第90回全日本選手権M2+4位、第54回全日本新人選手権M8+優勝