屈辱の3連敗を喫した早慶レガッタから1か月。対校エイトのメンバーはすでに次のレースへむけて新たなスタートを切っている。2年生ながらストロークという重要なポジションを任された竹内友哉(スポ2=愛媛・今治西)。大勢の観客に見守られながら漕ぎ進んだ隅田川の3750メートルは、竹内に、早大漕艇部に、いったい何をもたらしたのだろうか。
※この取材は5月1日に行われたものです。
伝統の重み
ストロークとしてクルーをけん引した竹内
――レースに対する率直な感想を聞かせてください
悔しいっていうのもあるんですけど、その当時は何で負けたのかよく分からなかったです。
――どういったレースプランを立てていたのでしょうか
相手に(前に)出られた状態のインコースからのスタートだったので、スタートで追い付けばこっちのものかなって思っていて。スタートから700メートル地点まで攻めてそれで追い付いて…って感じだったんですけど、追い付けなかったです。
――スタートから慶大に差をつけられる苦しいレース展開でした
相手が見えていない、自分たちが負けている状況で冷静に漕ぐっていうのがみんな慣れていないかなって。まあ(レースが)終わってから気付いたことなんですけど、全部。それでもう焦っちゃって、みんな声の掛け合いもできなくなっていました。
――レース前は緊張されていたのでしょうか
そうですね。緊張があったかといえば、ありました。
――最も離された時には3艇身近い差をつけられてしまいました
自分たちのいまの技術と体力を持ってすれば、一人一人が焦らずにどっしり構えていけたら(差を)ひっくり返せたかなと自分は思っています。
――実際に慶大と対戦してみていかがでしたか
やっぱり自分たちよりも相手の方が早慶戦に掛けている(気持ちの)度合いがかなり大きいかなって。そういう点では甘かったかなと思いますね。
見えたワセダの弱点
――ストロークとして漕いでみていかがでしたか
高校のときとかも国体とかのクォド(クォドルプル)で(ストロークとして)漕いだりしてましたけど、やっぱり4人をまとめることはできても8人いる状態で全員をまとめるっていうのは難しかったですね。
――レース前はキャッチの遅いリズムを変えたいとおっしゃっていましたが
練習では意識していたんですけど、本番では考えてなかったです。
――ではレース本番ではどのようなリズムを刻むことを意識されたのでしょうか
あまりレースの記憶がないんです(笑)。リズム自体はちょっと重たかった、キレがなかったかなって思います。
――第二エイトのレース中止で、対校エイトのクルーの皆さんは動揺されましたか
動揺してはいなかったです。「まあそういうこともあるかな」って感じですかね。
――大歓声のなかで漕いでみていかがでしたか
結構パワーもらえますね。
――早慶レガッタは普段より長い距離を漕ぎますが、レース終盤に疲れはありましたか
自分たちが勝負をかけても相手が見えてこないっていうのはきつかったですね。相手がずっと僕たちを見て漕いでいる状態で、自分たちが勝負をかけたら、相手も「むこうが来たからこっちもペースを上げよう」ってなることの繰り返しだったんですけど、それがなかなかきつかったです。
――レース直後のクルーの皆さんの様子はどうだったのでしょうか
あまり(レース後に)話し合ってないので分からないですけど、たぶんみんなどうして負けたのかよく分かっていなかったんじゃないですかね。
――「どうして負けたのか分かっていない」というのは
普通に漕げば勝つかなと。(隅田川ではなく)コースなら100回やったら100回ワセダが勝つと思いますし。
――勝敗を分けたのはどういったポイントだと思いますか
自分たちが勝負して、それに合わせて相手も逃げていくじゃないですか。そのときに追い付けなくて舞い上がっちゃって、自分たちのことに集中できなかったのが敗因かなと思います。
――レース中の皆さんのまとまりはどうだったのでしょうか
漕ぎ自体はバラバラだったのかどうか分からないですけど、声の掛け合いっていう部分では0点ですね。コックスのコールに対して誰も反応しなくてシーンってなってしまって。一度、青松さん(載剛主将、スポ4=京都・東舞鶴)が「これで終わるわけにはいかないぞ」って怒ったんです。それでちょっとは持ち直したんですけど、まあレース中にそういうことを言っている時点でダメかなと。
――青松主将の声掛けから立て直しはできたのでしょうか
立て直しも微妙でしたね。
――レース後にあらためてクルーの皆さんで話し合う機会はありましたか
新体制になってリスタートのミーティングがまだなので…。いつも大会後にその大会の反省をして次の大会にむけてリスタートミーティングっていうのをやるんですけど。今回はまだしてないですね。たぶんそろそろやると思います。
――レースを通して見えてきた課題はありますか
全体的にレース慣れしていないのかなって。一番勝負で力を出すのはできていないかなと思います。相手に(前に)出られてしまったら声も出なくなって、まとまらなくなって…っていう。一人一人のポテンシャルもそうかもしれないですけど、もうちょっとどっしりと構えられたらと思いますね。
――慶大と技術的な差はあると思いますか
川で思い切って漕げていない、川に慣れていないっていうのはあるかもしれません。コースでやった観漕会では1000メートルで10秒くらいの差をつけたので、コースではたぶん負けないと思います。
――竹内選手個人の課題は
全部になってしまうんですけど、フィジカルも体力もないですし。いまは全日本軽量級選手権にむけてフォアやペアに乗っているんですけど、バランスが悪い船でマックスのパワーが出せない部分があるので、社会人の選手はペアとかでもすいすい漕ぐんですけど、社会人みたいにバランスの悪い船でもがっつり漕ぎたいですね。
――実際に隅田川を漕いでみて、勝利のカギはつかめましたか
個人的に一番の問題だと思っているのが、頭の中に「ケイオーは川に強い、ワセダは3連敗している」っていうイメージが植え付けられていることで、それが一番怖いと思うんですよね。そこをなくしたいです。
――隅田川での練習はどれくらいされたのでしょうか
毎週末、だいたい行っていましたね。
――練習で波の感覚はつかめましたか
個人的にはまだまだという感じですね。何回漕いでも自分がうまく波に対応できているのか分からなかったです。
――当日の波の様子は
そんなに漕ぎにくいコンディションではなかったような気がします。
悔しさを乗り越えて
身振り手振りを交え、レースの状況を説明してくださった
――今後もストロークを務められるのですか
ストロークに乗りたいっていう気持ちはありますね。目標は長田さん(敦、スポ3=石川・小松明峰)なので。
――もうすぐ後輩が入部します
後輩に負けないっていうのもありますけど、それだとレベルが低いと思うので、一緒に強くなりたいですね。
――今後のレースに今回の反省は生かされると思いますか
「スタートで出ればワセダは諦めて追い付いてこない」っていうのを青松さんが他大の人から言われたらしくて。たしかにワセダはスタートはいいんですけど、スタートで出られなかったり、今回の早慶戦みたいに自分たちが勝負をかけたときに出られなかったりしたらシュンってなっちゃうところがあるので、レース後半に負けている状況でも自分たちのトップスピードを出せるように…精神面の問題なんですかね。
――相手に迫っても再度差をつけられてしまうのはどういった部分が足りないのだと思いますか
一段階スピードを上げてもそれが継続できないのと、トップスピードが遅い、出し切れていないっていうところですかね。
――今後のレースでの目標は
体制が変わって、みんなどんどん「勝つぞ」っていう気持ちが盛り上がっていると思うんですよね。半年とか一年間で結果が出るほど甘くないし、全日本大学選手権(インカレ)優勝、全日本選手権(全日本)優勝って言うのは言えるんですけど、個人的には全日本で決勝に行きたいっていうのはあって。十何年か前に全日本で決勝に進めた翌年にインカレ優勝できたっていうことがあるので、とりあえず、そこが第一段階かなと思います。
――今後に向けて意気込みをお願いします
チーム全体が強くなるのもそうですけど、まず自分が強くならないとダメだと思うので、長田さんを目標に頑張ります。
――ありがとうございました!
(取材・編集 土屋佳織、写真 細矢大帆)
◆竹内友哉(たけうち・ともや)
1994(平6)年7月20日生まれのA型。172センチ、69キロ。スポーツ科学部2年。愛媛・今治西高出身。2013年成績:第35回全日本軽量級選手権M8+5位、第40回全日本大学選手権M8+3位、第54回全日本新人選手権優勝