【連載】第83回早慶レガッタ事後特集 第5回 5:是澤祐輔

漕艇

 ルーキーながら、昨季は対校エイトで遺憾なくその実力を発揮し続けてきた是澤祐輔(スポ2=愛媛・宇和島東)。だが、初めて臨んだ伝統の一戦ではまさかの敗戦となった。早慶レガッタについて、また今後についてのお話を伺った。

※この取材は5月1日に行われたものです。

自分に足りなかったもの

初の早慶戦に挑んだ是澤

――早慶レガッタの合間に新歓活動もされていたそうですが、お忙しかったのでは

新歓実行委員がいて、その人たちがメインで新入生を勧誘していくので、自分はそんなに忙しくなかったです。

――新入生が入ってきましたが、感じたことは

がむしゃらに練習に取り組む姿に刺激を受けていますね。

――あらためて、早慶レガッタを振り返っていかがでしたか

正直勝つ自信はあったのですけれども、実際にレースをやってみて、ケイオーのほうが4秒ほど速くて。またレース中も、自分がポイントだと思っていた蔵前橋で逆に(ケイオーに)1艇身出られてしまっていて、その状況を受け入れられなかったというか、信じられなかったです。やはりそこが甘さというか、自分に足りなかったところかなと思います。そこから勝負をひっくり返せるような力がまだなかったのだなというのが一番の感想ですね。

――早慶レガッタまでの1カ月間はどのような練習をされましたか

本番が3750メートルということで、その距離を想定した4000メートルのレースを荒川に行って2本ほど連続でやったり、戸田(ボートコース)では長い距離を漕がなければならないので1000メートルオン、500メートルオフのインターバルをやっていました。

――隅田川での実戦練習は何回ほどされましたか

トータルでだいたい5回くらいやりました。

――隅田川ではどのような練習を行ったのですか

隅田川までトラックなどで艇を運んでもらって現地で(艇を)組み立てて、実際のコースを本番と同じように漕いでイメージづくりを行いました。特にスタートスパートを、自分たちは両国橋までやろうと決めていたので、その練習をやりました。

――両国橋と蔵前橋をポイントとして考えられていたのですか

クルーのポイントとして両国橋までに必ず1艇身差をなくそうというレースプランを決めていました。蔵前橋というのは自分の中で個人的に決めていたポイントでした。

――なぜ是澤選手は3番から5番へシートが変更されたのでしょうか

角南さん(友基、スポ3=岡山・関西)が少し手の調子があまり良くなくて。5番というポジションは結構負荷が高かったので、元気な自分が5番にいって(角南さんが)後ろで冷静に声を掛けて漕ぐということになりました。

――昨季よく乗られていた5番に変更になった際に、どのようなことを思われましたか

自分がどのポジションでも、自分と反対側にいるストロークサイドの人に最大限のパフォーマンスを発揮させるというのが自分の漕ぎの信念なので、特に意識するということはありませんでした。

「一人一人が空回りしてしまった」

――レース当日は緊張されましたか

僕はレース当日には緊張しませんでした。2日前とか3日前とかにだいぶ緊張していましたね。

――それは早慶レガッタという伝統の一戦ならではのプレッシャーからですか

だいたい試合前はどんなレースでも緊張してしまうタイプです。レースのことを考えて「ここで仕掛けよう」とか自分の中でレースをイメージトレーニングのようなものをやっていると緊張してしまうことが多いです。

――レース前にクルー全体で話されたことなどはありますか

陸上でのウォーミングアップでは、あまりよく覚えてないのですが、クルー9人全員の良いところやきょうの役割などを言い合ってモチベーションを高めました。スタートに(艇を)つけてからは、「いつも通りリラックスしていこう」などの声を掛け合っていました。

――あらためてレース展開を振り返っていかがでしたか

練習で何度も隅田川に行っていたのですが、本番の隅田川は練習のときとは全くコンディションが違いました。そこの部分でスタートが思った以上に出ていなくて、追い付けなかったのが一番の敗因かなと思います。

――本番当日は非常に波が高かったですが、その点も苦労なさったのですか

そうですね。ケイオーの艇がまっすぐ進めていましたが、ワセダは蛇行しながら進んでしまっていたので、そこでロスが出てしまったかなと思っています。

――第二エイトも波の影響で結果的に中止になってしまいましたが、それを知って感じられたことはありますか

第二エイトは練習から喫水(艇と水面の高さ)があまりなくて、波がどんどん(艇に)入ってきたので、これぐらい波が荒れていたら沈没してしまうのかなと正直なところ思いました。

――大歓声の中のレースでした

知り合いや家族も見に来てくれていたと思うのですが、レース中はあまり気付きませんでした。ゴール付近の歓声がすごかったです。漕ぎ終わり、負けが決まった後に「よく頑張ったな」などの声を掛けていただいたのですけど、そこで「なぜ勝てなかったのだろう」と感じました。らいねんは絶対に勝ちたいと強く思いました。

――「パワーと勢いで漕ぎ切りたい」とおっしゃっていましたが、実際のレースではその点を生かすことができましたか

勢いは終始あってパワーもあったのですけど、9人でうまくかみ合わなかったり、一人一人が空回りしてしまったりしたかなというのが少しあります。

――レース直後のクルーの様子は

みんな下を向いて、自分の後ろの長田さん(敦、スポ3=石川・小松明峰)がすごく泣かれていて、負けたのだなという実感が押し付けられました。

――対戦相手のケイオーについてレースを通じて感じたことはありますか

自分が思っていたよりも速かったということが一番に感じたことでした。ワセダがケイオーに勝とうとして、同じようにケイオーがワセダに勝とうとして、どんどん競い合っていくので、両校のレベルが次第に高くなって、競ったレースができるのかなと思いました。力の差が歴然だと、(レースでの差も)どんどんどんどん開いていったりして、盛り上がらないというか面白くないと思います。削り合うようなレースが展開できる相手がいるということは非常に素晴らしいと思います。

――ケイオーに敗戦しましたが、その中でワセダに足りなかったものとはどのようなものだと思いますか

9人の力はワセダも全然負けてなかったです。しかしケイオーはしんどいところで非常にまとまって強みを見せていたのですが、ワセダは少しもたついてしまった部分がありました。ケイオーのほうが一体感、まとまりがあったのではないかと思います。

――具体的にどのような部分にケイオーの一体感を感じましたか

メンタル的にも、漕ぎ方でもまとまりがあると思いました。ウォーミングアップなどでもクルーがまとまって全員でジャンプとかを100回くらい声を出しながらやっていたりと、精神的な面でまとまりつつ水上に出て漕ぎでもまとまっているのかなと感じました。日々の生活からケイオーはまとまりを意識しているのだなと思いました。

――早慶レガッタを通して、個人的な課題などは見つかりましたか

早慶レガッタは1位か2位のどちらかしかいないですよね。1位と2位との差がとても大きくて、終わった後にケイオーの応援歌が流れるのを聞いてやりきれない気持ちになったので、早慶戦で大事なことは勝つことで、テクニックなどよりもとにかく何でも良いから勝つことが大事だなと。足りないところは勝ちたいという執念だったのかなと思います。もう少し闘争心を磨いて、らいねんは挑みたいと思います。

――レース後、OBの方からどのような言葉を掛けられましたか

OBの方も色々なお声を掛けてくださって、精神面についてや具体的に漕ぎについてなどのお話をしていただきました。その中でも皆さんが最後に「ピンチはチャンスだ、このピンチをチャンスに変えられるかどうかは自分たち次第だ」とおっしゃっていました。夏に向けてこのままやられっぱなしでは終われないので、もっと力をつけてインカレ(全日本大学選手権)で優勝できるように頑張っていきたいと思います。

「ワセダが一番速いことを証明したい」

思いを率直に話してくださった

――今後のレース予定を教えてください

5月に軽量級(全日本軽量級選手権)があるのですが、自分はそれには出場しません。まずは8月にあるインカレを目標に調整していくつもりです。ことしは国体(国民体育大会)にも出場するので、9月は国体と全日本(全日本選手権)に出場する予定です。

――シートの希望はありますか

対校エイトの5番にしか乗ったことがないので、5番でも良いのですが、(ストロークサイドで)1つ前の7番などにも乗ってみたいと思います。

――今後の目標をお願いします

インカレは最も取りたいですね。一橋大や日大、最近明大なども速いのですが、やはりワセダが一番速いということをインカレで証明したいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 八木瑛莉佳、写真 細矢大帆)

◆是澤祐輔(これさわ・ゆうすけ)

1994(平6)年9月5日生まれのA型。183センチ、74キロ。愛媛・宇和島東出身。スポーツ科学部2年。2013年度成績:第40回全日本大学選手権M8+3位、第54回全日本新人選手権M8+優勝