第二エイト敗戦…隅田も戸田も制せず

漕艇

 13日に行われた早慶レガッタで艇のトラブルにより試合が取りやめになった両校の第二エイトが、戸田ボートコースで再試合に臨んだ。きょねんに引き続き連覇を狙った早大だったが、スタートから慶大に遅れをとると徐々に差を広げられ、その後も追い付くことはできず敗北。対校エイト同様、『惨敗』という二文字を突き付けられる結果に終わった。

 再試合にも関わらず、戸田ボートコースは応援団をはじめとした多くの人であふれていた。試合前、江原大二朗(商4=埼玉・早大本庄)は、「もう一度正々堂々とやろうと言ってくれた慶大の方にも感謝の気持ち」と、ライバルと競える環境が整ったことへのありがたみを口にした。勝敗だけではない、さまざまな思いを抱えてこの日の一戦へと臨んだ。

慶大にリードを許す展開となった早大第二エイトクルー

 先日、戸田ボートコースにて行われた早慶対校競漕大会観漕会では、慶大の対校エイトをも上回るタイムだっただけに、勝利に期待がかかった。まずは、ポイントとなるスタート。しかし、「風の影響もあって(スタート前に)うまく準備ができなかった。やろうとしたことができなかった」という正垣克敏(スポ4=熊本学園大付)の言葉通り、早大はスタートで慶大に先行を許し、追う展開を強いられる。そのまま徐々に差を広げられ、慶大リードの状態が続く。「とにかく追いつこうと予定より早くラストスパートをしてレートを上げた」(藤川和暉、法2=東京・早稲田)と、攻めの姿勢を見せるもこれがうまくはまらない。結果、最後まで宿敵を捉えることはかなわず、ゴール地点では3艇身の差を付けられ無念の完敗。がっくりと肩を落とした早大クルーの姿が戸田の水面に映っていた。

歓喜の雄たけびを上げる慶大とゴール直前の早大

 対校エイト、第二エイト共に宿敵に敗れ、完全優勝はまたしてもらいねんへと持ち越された。「ゼロから自分を見つめ直していきます。体力面もそうですし、技術も精神も一から見つめ直したいです」(江原)と、今回の敗北から各々が修正を重ねるだろう。「このままふがいない結果で終わるわけにはいかない」。そう語る鈴木朋也(スポ4=東京・早大学院)の言葉には、悔しさと共に、強い決意が垣間見えた。これから夏に向けて、本格的なシーズンが始まる。伝統の一戦での屈辱を晴らすべく、早大漕艇部の日本一への逆襲がいま始まろうとしている。

(記事 久保田有紀、写真 扇山友彰、辛嶋寛文)

結果

早大(C:藤川和暉(法2=東京・早稲田)、S:正垣克敏(スポ4=熊本学園大付)、7:小坂紀夫(商4=東京・本郷)、6:藤井英貴(スポ3=東京・本郷)、5:江原大二朗(商4=埼玉・早大本庄)、4:木金孝仁(社2=東京・早実)、3:菅原拓磨(国教2=東京・早大学院)2:鈴木朋也(スポ4=東京・早大学院)、B:川田悠太郎(国教2=東京・早大学院))6分37秒15【2位、3艇身差】

コメント

5:江原大二朗(商4=埼玉・早大本庄)

――再試合となりましたが、気持ちの切り替えはうまくいっていましたか

切り替えというよりは、試合をしていただけるということへの感謝の気持ちがありましたし、もう一度正々堂々とやろうといってくれた慶大の方にも感謝の気持ちがあって、もう一度勝ってやるぞ、というよりはベストな状態で正々堂々レースをするというのが紳士たる行動だと思いました。13日は絶対に勝ってやるぞという気持ちで臨んだのですが、きょうに至ってはベストな状態でレースをすることを目指していました。

――調整はうまくいっていたのでしょうか

13日での課題がオールを入れるエントリーという動作だったので、そこに重点を置いて克服する練習をしたのでうまくいっていたと思います。

――観漕会では慶大を上回るタイムでしたが

私たちは観漕会で勝利することをすごく目標にしていましたので、勢い自体はすごくついたのですが、そこで少し緩んでしまって、逆に慶大さんは負けたことで引き締まってこられたのでそこはあります。

――始まる前のクルーの雰囲気はいかがでしたか

すごく簡単な言葉なのですが、最高な状態。私自身、このクルーが大好きで、愛すべき後輩と愛すべき同期で。みんな勝つという意思の下、雰囲気自体はすごく最高な状態で臨めました。

――キャプテンとして何と声を掛けましたか

再レースに向けては、再開してくださる運営委員会の皆さまと慶大の皆さまに誠意を見せるためにも、しっかりとベストな状態で臨もうということと、早慶レガッタはワセダとケイオーにしかできない、ボート部に入っていないとできないことなので、すごく幸せなことだと訴えかけていました。

――試合前のレースプランは

あまりうまくいかなかったのですが、スタートでしっかりと相手をリードして見る状態で漕いで、途中からコンスタントという場面があるのですが、足切りというスパートで離していこうというプランでした。でもなかなかうまくはまらず残念な結果になってしまいました。

――実際にレースをして

慶大強かったな、の一言です。

――スタートから差をつけられた要因は

ビデオ等見られていないので詳しい分析の方はまだなのですが個人的な感想としては、緊張するが故にリラックスできず、ガチガチになってしまい、本来ならば9人でまとまるところがバラバラになってしまったので、なかなかスタートでうまくはまらなかったかなと思っています。

――ご自身にとって最後の早慶戦となりましたが、振り返って

早慶戦は大学2、3、4年生と3回出させて頂いたのですが、結果としては1回も勝つことができませんでした。結果だけを見ると悔しいのですがケイオーという最高のライバルと3回も並べられたことがかけがえのない人生最高の瞬間でしたし、ケイオーと正々堂々と並べられたことがワセダの漕艇部に入って良かったなと思える一因なので。早慶レガッタに負けてはしまいましたけど、学生生活全てを掛けてやってきましたので、全てを犠牲にしても懸けて良かったなと思います。

――夏に向けての改善点とは

根本的にゼロベースで、ゼロから自分を見つめ直していきます。体力面もそうですし、技術も精神も一から見つめ直したいです。

S:正垣克敏(スポ4=熊本学園大付)

――きょうの試合を振り返って

逆風というレース環境の中でレートが高くなりすぎてしまったことが一つありますね。レート36くらいで漕ぎ進めようと考えていましたが、逆風にも関わらず38程度出てしまうこともあって、それを修正できないまま終わってしまったレースでしたね。

――予定とは2週間遅れてのレースとなりましたが

この2週間で監督が代わりましたが、すごく親身になって自分たちのクルーに真摯(しんし)に向き合ってくださいました。なのでこの2週間に関してはむしろレベルアップができたのではないかと思います。でもそれだけにレースで全くその成果を出せなかったことがすごく悔しかったですね。

――お花見レガッタからの改善法等は

ちょっとやることを絞るようにはしました。このクルーは野心家が多く個性も強いので、みんな思ったことを言い過ぎてまとまらなくなってしまうんですよね。ここに重点を置くと決めたら、他の悪いところがあってもまずはそこを直していこう、そこから次のことに進もうという方針に変えました。細かいこともちょっとは言うけど、まずは大きな課題から直そうという意識の統一を図ってから良い変化が生まれたかなと感じました。

――主な課題の内容は

まずは上体がつぶれないようにすることですね。それからハンズアウェイとセットポジションをしっかり分けることですね。あとはハイトを高くしたので、抜き上げからエントリーまでブレードを高い位置でキープすることも意識しましたね。結局変えたのは漕いでいないフォワードの部分ですね。漕ぎ自体はパワーのあるメンバーがそろっているので。漕ぐまでの準備をいかにうまくするかということに重点を置いていましたね。

――戸田でのレースになったことによって変えたことは

比較的安定したコンディションになるので、もっと長く漕いで自分たちの漕ぎをしようということは意識していました。でも結局自分たちの漕ぎを見失ったレースになってしまいました。自分たちの漕ぎを確立するということ自体もまだ足りていなかったかなと。もう少し全体で共有できていたら違う結果にもなっていたかもしれませんね。

――観漕会では勝利を収めましたが

あの時と比べてみると、相手が強かったとかそういうことではなくて、きょうは自分たちの自滅という部分が大きかったかなと。もちろんケイオーは速かったですけど、(相手は)やるべきことをやっていただけのことであって、自分たちはそれができなかったですね。観漕会の結果は正直あまり参考にしていませんでした。勝ったには勝ったけどそれをあてにするのではなく、切り替えてやっていこうと。そしてケイオーどうこうではなく、あの時の自分たちのタイムを超える漕ぎをしようと言っていました。でも結局その時のタイムよりも悪い結果になってしまいました。

――苦手意識のあったスタートで出られる展開となってしまいました

苦手だった分普段から重きを置いて練習してきて、確実にいままでよりは速いという認識は持っていましたが、試合ではそれが出せなかったです。手数を多くすることを意識したスタートに変えたのですが、風の影響もあって(スタート前に)うまく準備ができなかったですね。やろうとしたことができなかったので、スタートで崩すかたちにはなってしまいましたね。その後はクルー全体として焦りっぱなしだったのかなと思いますね。自分は全く焦ってなくて、何とかしなきゃと思って水中を押すだけを意識していました。でもレートが下がらなかったのを自分が落としきることができなかったですね。後ろからのリズムが速いのなんて無視して2,3本崩してでもレートを立て直せれば良かったのかなとも思いますけど何が正解なのか分かりませんね。やはりでもスタート500メートルでⅠ艇身以上開けられて、スタートで自信を持ち始めていただけに焦りにつながったのかなとは思いますね。

――夏シーズンに向けて

自分の場合、シーズンの残りはインカレ(全日本学生選手権)、全日本(全日本選手権)だけなので、もうさすがに勝ちたいですね。メダルが欲しいという気持ちはもちろんですし、きょねんインカレで優勝した感覚をもう一度味わいたいと思うのは自然なことだと思うので、絶対に勝ちたいと思います。

2:鈴木朋也(スポ4=東京・早大学院)

――きょうのレースを振り返って

本当に勝ちたかったの一言に尽きますね。

――レース展開は

最初の6本で大きく出られてしまったのが敗因の一つかなと思います。スタートの合図のコールがたぶんみんなが思っていた以上に速くて、それに対応できなかったメンバーも何人かいて、スタートからまとまっていく僕らの持ち味が出せずに最初の6本で崩してしまったのがすごくもったいなかったかなと。いくつか敗因はありますが、その一つだと思います。

――観漕会のタイムでは慶大を上回っていましたが

観漕会の時は春休みの集大成として慶大の対校エイトに勝つという目標を立て、実際に勝ち慶大の第二エイトのタイムも上回ることができました。そこで自分たちは慢心するのではなく自信を得ることができて、それ自体は良かったと思います。きょうのレースも慢心というよりはコースでもタイムが慶大より速いという結果が出ていたので、自信を持って臨めたレースでした。

――レース前のクルーの雰囲気は

多少は緊張していたのですけれど、レース前に監督から、ウォーミングアップ中に一度気持ちを高めて直前はリラクゼーションをして気持ちを落ち着かせようという指示がありましたので、それを実行して良い状態でレースを迎えられたかなと思います。

――戸田で再レースをするにあたり、気持ちの切り替えはできましたか

試合があった日曜日は正直かなりもやもやした気持ちが残りました。レースが隅田川でできないことが決まった後に慶大の4年生数名と話したのですけれど、彼らは自分自身が沈没していないのに僕たちのせいでラストイヤーを隅田川で漕げなかったということなので、彼らの気持ちを考えるともう一回戸田でできることは喜ばしいことだし、切り替えないといけないなと思いました。彼ら慶大に対するリスペクト精神を持ちつつ、気持ちを切り替えることができました。

――第二エイトとしてどこに重きを置いて練習してきましたか

監督が変わって新体制一発目のレースということで、シンプルにボートの基本である、キャッチからレッグドライブをきかせて艇を進めていこうということにフォーカスして10日間ばかり練習してきました。

――見つかった課題は

スタートスパートの精度を高めていかなければいけないというのが一つ。二つ目が、スタートの精度はもちろん高めるんですけれど、今回のようにもしスタートに失敗しても焦ることなく艇を進められる自身のあるコンスタントスピードを求めていく必要があるかなと分析します。

――夏に向けて一言

いま自分は大学4年生で、小学校6年生の頃からここのワセダクラブというところで漕がせてもらい、高校時代は早大学院で漕がせてもらい、10年間やらせてもらいました。ラストイヤー11年目ということでこのままふがいない結果で終わるつもりは全くありません。最後に結果を出して、いままで関わってくださった全ての方に、感謝の気持ちを示したいなと思います。

7:小坂紀夫(商4=東京・本郷)


< p>――きょうの試合を振り返っていかがですか

何を言っても言い訳にしかならないのですが、監督が代わってからエルゴでも軽いものを漕ぐ練習をしていて、風向きが逆風だったということでスタートから重いリズムになってしまいました。いつもやっていないことに対応できず、負けてしまったと思います。

――最初に出られて詰め切れずに負けてしまったということですが、切り替えるシーンもつくれませんでしたか

1000メートル地点で少し詰めることはできたんですが、そこからはあまりつくることができませんでした。最初の3本がこの試合のポイントだったかなと思います。

――隅田川でのレースから戸田に移ってしまいましたが気持ちとしてはいかがでしたか

正直、一回途切れてしまいましたね。自分は先月おばあちゃんが亡くなってしまって、きょねんセカンドで勝ったのですが、入院中でおばあちゃんに見てもらうことができませんでした。ことしこそは隅田川でおばあちゃんに自分が笑ってる姿をどこかで見てて欲しいと思っていたのでそれができず、気持ちが一回は切れてしまいました。ただ、仲間がいたので。大二朗(江原、商4=埼玉・早大本庄)に「俺たちを引っ張っていってくれ」と頼んでもう一度団結することができました。なので最終的には気持ちは変わらず漕げたと思います。

――今回が最後の早慶戦になりましたが早慶戦で心に残ったことや思い出はどんなことですか

全部セカンドでしたが、セカンドの方が対校よりはレースとしては面白くできたと思います。対校は勝ってなんぼですし、何艇身放したというのが重要になります。ただ、セカンドは競り合うレースが多いので、楽しかったですし、全くいつもと違う環境で漕ぐこともできたので本当に良い経験になりました。セカンドでも対校に引けを劣らない充実感がありました。

――戸田でのレースでしたが、今回の敗因だったり後輩にらいねん生かして欲しかったりすることはどんなことですか

隅田川では波よけの張り方ですね。それが悪くて今回沈没してしまったので。コースだったら新監督の指導通りに練習を積んでいけば、いい人ですし、どんどん実力もつくと思います。今回結果を出すことができませんでしたが、勝てるクルーができると思います。

――これからシーズンが始まりますが目標はどんなことですか

注目を浴びたいなと思います。早慶戦はある意味早慶のどちらかを見に来ている大会。ただ、全日本級の大会は日大だったり強い大学がたくさんいます。その中で注目されるクルーになりたいと思います。注目されるためには1位になるしかないので、決勝、順位決定戦関わらずワセダはやっぱり速いなと思ってもらえるクルーの一員になりたいと思います。

――最後に今後に向けての意気込みをお願いします

人間誰しも負けたらその悔しさをバネに次の大会で頑張ろうと思います。ただ、忘れるのも人間なのでそういったことがないように、いまの気持ちをノートのどこかに書き留めておいて、それを繰り返し見て忘れないように。日々努力を重ねて、エルゴもタイムを伸ばして成長していきたいと思います。

C:藤川和暉(法2=東京・早稲田)

――きょうの試合をコックスという立場で振り返るといかがですか

まず最初のスタートが思ったように決まりませんでした。予定では最初のスタートスパート(300メートルあたりまで)で食らいつくか、むしろ離すつもりで力を入れていました。しかしゴタゴタになりオールが高く舞い上がってしまったので思うようにスタートが決まりませんでした。500メートルあたりで1艇身差になってしまい、予定では800メートルで強調を入れるつもりだったのですが、それでは遅いと思ったので500メートルで強調を5本入れて何とか食らいついてから800メートルでもう一度強調を入れようと思いました。それがあまりうまくいかず、レートが上がっただけで艇速に還元されませんでした。それでどんどん差が開いてしまい、中盤以降は相手にずるずる行かれてしまいました。予定通り強調を入れましたが、やはり焦ってしまいました。最後もとにかく追いつこうと予定より早くラストスパートをしてレートを上げましたが、それも決まりませんでした。もともとレート36でもバタバタしていたのに、レートを38にしても決まりませんでした。逆に頑張っているけど進まなくなってしまい、あのような大差での敗戦となってしまいました。

――スタートで差を開かれてしまった原因は何でしょうか

個人的には2本目と3本目のつながり方がずれてしまったのではないかと思います。ブレードが舞い上がって、オールを高いところから落とし、深くオールが入ってしまったと思います。レートをスタートの2本目からとにかく早くしようとしていました。その方針は間違っていなかったと思いますが、その方針に見合うだけの余裕と熟成期間が無かったと思っています。

――隅田川での沈没事故から切り替えてきょうのレースに臨むことはできましたか

切り替えはできたと思います。指導体制も変わって監督に組んでいただいたメニューをやっていくうちに、これははまっているという実感がありました。

――今回のクルーでコックスを経験して、学んだことがあれば教えてください

エイトの難しさです。予想外のことに関しての対応力が自分にはないなということを強く痛感しました。

――今回の経験を糧に今後コックスとしてどのようなことが必要でしょうか

先を読む力を付けていきたいです。水上でも相手がここで強調を入れてくるなというのを読んで自分たちは先に入れようとしたり、今回艇の故障が多かったのですが、それもこれが壊れそうだなというのを先に読むことができたりしたら防げたと思います。なので先を読む力を付けていきたいです。

――同じコックスの中村拓(法3=東京・早大学院)からはどのような指導を受けていますか

艇の上のコール以外にも、日常生活のことについてもいろいろとご教授いただいています。人のまとめ方や艇を移動するときに後輩をどう使うかなどを教えていただいています。

――コックスの経験はまだ1年未満とのことですが、引退するまでの目標を教えてください

まずは早慶レガッタで対校に乗って慶大を倒すというのが一つです。あとは全日本選手権で表彰台に上りたいです。それが目標です。