早大漕艇部が最高のかたちでシーズン最終戦を締めくくった。大会史上初の男女アベック3連覇。「しっかり全員でつかみ取れた試合」(中村拓、法2=東京・早大学院)と、1人の力では決して獲得し得ないタイトルだ。輝きを放った仲間たちへの感謝の気持ちと共に、選手たちからは笑顔と歓喜の涙が溢れた。
終盤他艇を突き放した女子クォドクルー
女王ワセダを証明すべく、11連覇に挑んだ女子舵手付きクォドルプル。準決勝では「750メートルまで本気で漕ごう」とクルーキャップの土屋愛(スポ2=新潟・阿賀黎明)が考えるように、決勝を見据えたレース展開を披露する。最後は余力を残してフィニッシュし、決勝へ駒を進めた。迎えた決勝、最大の敵は昨年の予選で敗北を喫している明大。ただならぬ緊張感が漂う中、絶対に譲れない戦いが幕を開けた。得意のスタートで一気に後続を突き放したい早大であったが、「イメージと違って食いつかれました」(榊原春奈、スポ2=愛知・旭ヶ丘)と、宿敵も行かせまいと必死の粘りを見せる。勝負の分かれ目となったのは1300メートル地点。迫りつつある明大の影を振り払うべく、早大が大胆な仕掛けを見せる。「絶対に相手に頭を取らせない」(榊原)。王者の誇りを懸けて挑んだ攻めのロングスパート。それに対応して明大の姿は徐々に小さくなっていく。最後は約1艇身の差をつけ、悲願の11連覇を達成。強く美しい女王の姿を、大観衆の前で見せつけた。
ゴール後喜びを爆発させた対校エイトクルー
危なげなく準決勝を突破し、男女アベック3連覇の夢を託された男子対校エイトクルー。「しっかりみんな集中している」(中村)。大舞台にも動じない漕手たちに、司令塔のコックス中村は頼もしささえ感じていた。そしていよいよ、シーズン最後のレースの火ぶたが切られた。前評判の良い4艇が決勝に残っただけに、500メートル地点まではほぼ横並びの展開が続く。「相手が落ちてきたところをうまく伸ばしていこう」とクルーキャップ長田敦(スポ2=石川・小松明峰)がもくろんでいたように、自慢の中盤の伸びで少しずつライバルたちとの差を広げていく。飛び出しに成功し精神的優位に立った早大。「心強い同期と、夏を共に戦った後輩たちも多く乗っていた」(長田)。絶対的な信頼をおける仲間たちと栄冠へ。他艇の追い上げにも必死のスパートで寄せ付けず、そのまま飛び込むようにフィニッシュ。紺ぺきの空の下、大会史上初の偉業を達成したエンジの精鋭たちは勝利の雄叫びを上げた。
「すごくいい流れが来ている」(中村)。新体制になって早々、この上なく良い記録をたたき出した早大。しかし「ワセダに入ってから全日本新人しか勝てていない」と長田は全く満足した様子を見せなかった。既に視線は来季の戦いへと向いている。最初に迎えるは春の伝統の一戦・早慶レガッタ。いまの勢いそのままに、確実に勝利をつかみたいところだ。より強く、より大胆に。先に見える栄光のために、選手たちはきょうもまたエンジに輝くオールを握り続ける。
(記事 細矢大帆、写真 土屋佳織)
結果
▽女子舵手付きクォドルプル(C:亀本、S:榊原、3:土屋、2:佐藤紫、B:土井)…1着【優勝、11連覇】
▽男子対校エイト(C:中村、S:長田、7:角南、6:竹内、5:是澤、4:藤井、3:川田、2:丹下、B:和田)…1着【優勝、3連覇】
コメント
3番:土屋愛(スポ2=新潟・阿賀黎明)
――レースを振り返って感想をお願いします
予選と準決勝ではあまりいいイメージを持つことができなかったんですが、決勝ではスタートからバンと出て最後までそのまま行けました。ですが、途中でスピードが落ちてしまって、相手に差を詰められてしまうという場面があったので、少しハラハラしました。
――11連覇を成し遂げたお気持ちは
実は、大会が始まる前からかなりプレッシャーを感じていました。私たちが上の学年でもあったので、どうしたら優勝できるのかを常に意識して練習していたんですが、結果的に優勝することができてとても安心しています。
――クルーキャップということでしたが、責任は感じましたか
そんなに気を負わずにやることができました。責任感は持たないといけないなとは思っていましたが、緊張はあまりなかったですね。同期の榊原(春奈、スポ2=愛知・旭丘)が上手に支えてくれて、助けられました。< /p>
――今回のレースプランを教えてください
準決勝は750メートルまで本気で漕ごうという感じでした。明大も最初から最後まで高い強度でやっていたと思うんですが、最初の500メートルのタイムが同じくらいだったので、私たちは最初に出ないといけないと考えていましたね。相手を追うレース展開ではなく、最初にバンと出てそのまま差を広げていこうというプランでした。
――見つかった課題は何かありますか
クルー内での漕力の差が目立ったと思います。榊原はオリンピックにも出場している選手ですし、1年生はまだまだ伸びしろがあるなと感じましたね。みんなで底上げをして行って、もっと成長していきたいです。
――新体制になって2週間が経ちましたがいかがですか
やっぱり4年生がいないと静かですし寂しいです。新しい代になって、最高学年の1つ下ということなので、私たち2年生もこれからはチームのことを考えてやっていかなくてはいけないなとミーティングなどでも話しています。
――来季に向けての意気込み
今シーズは終わっていしまいましたが、個人的には冬の間にU23日本代表になるための選考があるのでそれに向けて頑張りたいです。そして来シーズンは全日本大学選手権、全日本選手権での優勝を目指していきたいです。
ストローク: 榊原春奈(スポ2=愛知・旭丘)
――レースを振り返っていかがですか
スタートで出ることは出たんですけど、そのあと差がひらかなくて明大にずっとつかれていたので、苦しいレースでした。
――レースプランはどのように考えていましたか
スタートで出ればその分楽になるだろうということで、レースプラン通りにいったんですけど、なかなかそこから差が広がらないというのがイメージとは違って、食いつかれましたね。でも落ち着いて全員でゴールまでいけたので、自信を持っていいレースだと思います。
――明大を意識はあったのでしょうか
正直もっと離したいと思っていました。地力は負けていないと思っていたので、どれだけ相手が来ても、こちらも反応して絶対に相手に頭をとられないように頑張りました。それはよくできたと思います。
――ラストスパートで明大をつき離したのでしょうか
1300メートル地点で勝負かけて、そこからうまくラストスパートまで段々伸ばしていけました。ラストスパートでいったというよりは、その前の段階で、ある程度みんなのなかで準備をしていたので、それがうまくはまったなという感じがありました。
――来シーズンはどのように活躍していきたいですか
今季も世界大会に出場したいなと思っていたんですけど、選考で落ちてしまいました。その分チームに貢献できたいい1年だったのですが、わたしの目標は世界で戦うことなので、来季は代表の座をまた勝ち取って世界で戦いたいと思います。
――冬にはどのようなところを強化したいですか
若いうちほど体幹をつけておきたいなと思うので、腹筋・背筋ですね。水上のテクニックなどはシーズン中でもできるので、それよりも体作りを行っていきたいと思います。
――来季に向けて意気込みをお願いします
次のオリンピック、その次の東京オリンピックに向けて、もう始まってますけどさらに弾みをつけられるような1年にしたいと思います。それをうまく部に還元して大学ボート界だけじゃなくてボート界全体の中心選手になれるように頑張ります。応援よろしくお願いします。
ストローク:長田敦(スポ2=石川・小松明峰)
――優勝おめでとうございます
ありがとうございます!
――アベック3連覇という結果について
やはり戦う前はプレッシャー等ありましたが、それより自分たちが強く戦えたということですね。
――ご自身にとっても2連覇ということになりましたが
きょねん優勝の経験があったので、2年生の(きょねんの)優勝クルーに乗っていたメンバーを中心に初めて乗るメンバーを引っ張っていこうという感じでした。その分他校よりは経験という面で強みを持っていたので、それをうまく生かせたかなと思います。
――敵視していた大学は
今回自分たちは2週間しか練習する期間がなくて、普通は1週間前から疲れを取るような練習になります。そこで他校に並べの申し込みをしてもなかなか承諾してもらえず、どこが強いとかは予想しか立てられませんでした。きょう決勝に残ったワセダを含む4艇は前評判も良かったので、試してない分不安もありましたが、楽しみな感じもありました。
――初のクルーキャップとして臨んだ大会でしたが
心強い同期と、夏共に戦った後輩たちも多く乗っていたので、気負うことなくのびのびと言いたいことを言うことができました。みんながついてきてくれたかはわかりませんが(笑)、結果を残すことはできたので、クルーキャップとしての責務は果たせたかなと思います。
――何か合言葉のようなものはありましたか
合言葉ではありませんが、やはりアベック3連覇が大会史上初だったので、それを目標にやってきました。3連覇ということでWBCの連覇も越えてやったという感じですね(笑)。
――きょうのレースを振り返って
順風でしたが予選とは打って変わってコースが荒れていたので、自分たちの漕ぎができなくなるという場面はありました。でも通してみれば、いつも通り漕げたことが大きかったかなと思います。
――レースプランは
まずスタートは出ようと。スタートで出られれば自分たちの強みは中盤の伸びなので。スタートから出てそこから引き離すレースをしようと思っていて、きょうはプラン通りできたので、作戦勝ちかなと思います。
――勝負の分かれ目は
1000メートルまではどこも元気なので、少し自分たちが出たときにどれだけ短い距離で突き放せるかということが大事になってきます。1000メートルを過ぎて相手が落ちてきたところをうまく伸ばしていこうとコックスの中村(拓、法1=東京・早大学院)と話していたので、その作戦通りにいけたのが良かったと思います。
――来季に向けて
自分はすごく負けず嫌いなんですけど、正直ワセダに入ってから全日本新人しか勝てていないんですよ。なのでまず早慶レガッタでワセダとしての初陣を飾って、夏以降はいままで勝てなかったワセダを勝利に導いてやりたいと思います
中村拓(法2=東京・早大学院)
――今日のレースの感想をお願いします
準決勝は2位までなら上がれるので、そんなに思いっきり最初から攻めるというのは、まあ、相手を見ながら余裕のあるレースができたかなと思います。準決勝は最初はアクシデントがあったのですが、うまくリカバリーして、いい感じで相手を見ながら最後終われたので、準決勝はいい戦いができたと思います。決勝は自分たちのプランというか、ずっと練習してきたプランがあって、まあ600…スタートから出たいというプランはあったんですけど、そこまでこう焦ることなく、並んでるか、少し出てればいいかなという感じで。本当にスタートのスタートはちょっと出られたんですけど、そこで焦ることなく、スタートスパートでどんどんつめていって、少し出た状態で、いいかたちでスタートがよく入れて。で、600は自分たちの強みというか、しっかり勝負するポイントでしっかり決められて、ぱっと他艇より出ることができたので。そこで結構みんな余裕ができて、そこで出たらあとはもう離すというのをプラスにプラスに、みんな疲れることなくできたので、最初が出られたのが大きかったのかなと思います。終盤もそうですね、みんな結構しっかり余裕があったというか、気持ちを冷静にしっかり勝負どころでまとまって、きついところもしっかり全員で進められたので、そこがよかったかなと。しっかり全員で掴みとれた試合でした。
――決勝での一番の勝負どころはどこでしたか
そうですね、早めに出て、勝負を決めたいというのがあったので、600で決める…あんまり600でっていうのはないんですけど、スタートスパートのあとちょっと他の艇も落ち着いたところで、自分たちは逆にそこで出るっていう、ある意味逆を突くというか、それが自分たちのプランで。そこをしっかり決められたのが大きかったかなと思います。
――決勝前でのクルーの雰囲気や気の持ちようはどうでしたか
若干緊張というか、かたい感じはあったんですけど、しっかりみんな集中しているというかんじがあったので、僕としてはあんまり心配なくここを出ていくことができました。
――去年からの2連覇など、勝ち運があると思うのですが、自分ではどう思っていますか
僕は漕いでいるわけではないので、個人的にはあんまり勝ち運というか、漕手が頑張ってくれていると思うので。気付いたらまあ結構勝ってはいるんですけど、漕手が頑張ってくれている結果かなと思います。
――来シーズンに向けての意気込みをお願いします
早慶戦、来年のインカレ、エイト、というのが今年のシーズンでは勝てていない部分なので、そこをしっかりまずこえて。早慶戦対抗エイト優勝からの、インカレ8+優勝というのがまずすごい大きな目標なんですけど、今新人2連覇して、まあ3連覇なんですけど、僕らも待望の2連覇をして、すごいいい流れがきてると思うので、ここでしっかり一気に勝負を決めて早慶戦とインカレ、しっかり勝っていきたいと思います。