夏の遠征を終え、春よりさらに力をつけた早大日本拳法部が迎えた後期最初の団体戦。春に行われた前期トーナメント大会では三位に終わった早大であったが、今大会はさらに上の順位を目指して戦いに挑んだ。しかし初戦、2回戦と勝ち進んだ先で待ち受けていたのは度々早大の前に立ちはだかる中央大学。またしてもこの壁を打ち壊すことはできなかったが、選手たちの実力の底上げがはっきりと感じ取れる大会となった。また同会場では東日本大学女子選手権、東日本大学形選手権が開催された。女子選手権には大石知奈(基理2=広島女学院)が学連選抜の一員として出場したが初戦敗退。形選手権には一人形の部で矢野慶(教4=東京・早実)が準優勝。学生生活最後の大会を華々しく飾った。
「本気で優勝を目指していただけに悔しい」試合後、矢野はまずこうきりだした。ワセダが参加している大会で演武競技があるのは年に一度のこの大会のみ。昨年準決勝で敗れてから、この大会のために1年間自身の拳の研鑽(けんさん)を積み重ねてきた。大会は指定された形を予選で1人ずつ披露し、その評価点を総合し高得点であった上位2名が決勝に駒を進めることができるという方式。予選の演武を終え、決勝進出者として矢野の名前が呼び出されると、早大陣営からは大きな拍手と歓声が響いた。続いて行われた決勝は、会場中が二者の気迫に圧倒されたように息をつめてその演武を見守った。定められた演武を一挙手一投足に至るまで神経を澄ませ、自身の体を操るその姿はまさに圧巻。しかし判定は1-3と矢野に旗は上がらず、悔しい準優勝となった。またこの大会の二人形の部には田部井達也(スポ3=東京・日大二)・毛利公名士(商2=東京・つばさ総合)も出場したが予選落ちとなった。
気迫のこもった演武を披露した矢野
東日本大学選手権大会は7人制団体であり、同じく7人制団体で挑んだ春のトーナメント大会から「チームの実力」の底上げを目標に掲げた早大拳法部にとってはリベンジマッチでもあった。初戦の相手は日本大学。先鋒の森川晋平(スポ2=奈良・青翔)は開始早々胴蹴りを決め幸先の良い一本を奪うと、その後すぐに勝負を決める2本目。試合時間わずか40秒の圧勝であった。次鋒の田中照将(商2=東京・麻布学園)も勢いそのままに2本を奪う。参将こそ敗れはしたものの参峰、中堅、副将と勝利をおさめここまで5-1。大将の小川友太郎(教4=広島・基町)は前半攻めあぐねるも残り30秒という場面で鮮やかな面蹴りを決め6-1で準決勝進出を決めた。しかし、駒を進めた準決勝で拳を交えることになったのは今年度何度も眼前に高い壁として立ちはだかってきた中央大学。春のトーナメントでもその壁を打ち崩すことができなかったこともあり気合十分でのぞんだ。ところが先鋒、次鋒、参峰と黒星を喫しあと1敗でもしてしまえばその時点で早大の負けが決ってしまう、その瀬戸際で中堅・森川が望みを繋げる引き分けに。参将・森裕紀(政4=早稲田渋谷シンガポール)は積極的に攻め意地を見せる二本勝ち、続く副将・小川は得意の投げ込みからの押さえ込み面が決まり勝負は大将戦へ。チームが勝つためには大将戦で勝利するしかなくなり、その重圧を背負ってコートへ上がったのは田島崇行(教4=埼玉・浦和)。だが勝ち切ることはできず準決勝敗退。雪辱を果たすことはならなかった。三位決定戦では国士舘大学との対戦となった。中堅までの試合を終えた時点で1-3と苦しい展開となったが4年生が奮起。茂木蔵人(社4=東京・早実)が積極的に仕掛け自身の得意な投げ技を活かし二本勝ち。チームに良い流れをもたらすと、副将・森は試合開始直後の出バナで一本を奪い、その後にお互いジャブを繰り出す中で二本目も奪取。勝敗は大将戦へ託された。小川は開始早々豪快な蹴りを繰り出し、相手を圧倒するとそのまま投げ技につなげまずは一本。三位入賞を目の前に控え応援もさらに加熱する中、小川は相手を軽々と抱え上げそのまま押さえ込み面の態勢へ。危なげなく二本目を奪い取り、入賞が確定した。
今大会敢闘賞を受賞した主将の森
今大会は形の部での矢野の準優勝、そして主将の森が敢闘賞を受賞するなど、良い結果をつかみ取った。また課題として挙げていたチーム全体の実力の底上げも徐々に形となってきたこともあり、よりチームとしての完成度が高くなってきている。しかし春の順位を上回ることができなかったのもまた事実。2週間後に控える個人戦ではどのような戦いを見せるのか。
(記事、写真 柴田侑佳)
※掲載が遅くなり大変申し訳ございません。
結果
▽東日本大学選手権
1回戦 対日大 6勝1敗
〇先鋒 森川晋平(スポ2=奈良・青翔)
〇次鋒 田中照将(商2=東京・麻布学園)
〇参峰 毛利公名士(商2=東京・つばさ総合)
〇中堅 森裕紀(政経4=早稲田渋谷シンガポール)
●参将 伊東天晴(人4=東京・世田谷学園)
〇副将 小坂怜亜(教3=大阪・関西福祉大高)
〇大将 小川友太郎(商4=広島・基町)
準決勝 対中大 2勝4敗1分け
●先鋒 茂木蔵人
●次鋒 毛利公名士
●参峰 小坂怜亜
△中堅 森川晋平
〇参将 森裕紀
〇副将 小川友太郎
〇大将 田島崇行
三位決定戦 対国士舘大 4勝3敗
●先鋒 森川晋平
〇次鋒 毛利公名士
●参峰 小坂怜亜
●中堅 田中照将
〇参将 茂木蔵人
〇副将 森裕紀
〇大将 小川友太朗
▽東日本大学女子選手権
初戦敗退(学連選抜として出場)
大石知奈(先理=広島女学院)
※学連選抜は早大、関東学院大、慶大、専大で構成
▽東日本大学形選手権
一人形の部
準優勝 矢野慶(教4=東京・早実)
二人形の部
予選敗退
田部井達也(スポ3=東京・日大二)毛利公名士 組
森裕紀(政経4=早稲田渋谷シンガポール)
――きょうの結果を受け止めてチームとしての出来はいかがでしたか
前から課題として掲げていたチームの実力の底上げができて、夏の成果が出たのが嬉しかったです。逆に推薦生であったり上級生達が勝てなかったりだとかしょっぱい試合をしてしまったことは良くなかったので、良いところも悪いところあったというところです。
――森さんご自身もきょうの試合は全勝となりましたが、調子が良かったのでしょうか
相手があまり強くなかったというのと、大会前に少し怪我をしてしまったのですが万全じゃない状態での戦い方を分かってきたのかと思います。
――中大との準決勝はどのような意気込みで臨まれましたか
前期も負けてしまっているので今回こそは勝ちたかったんですけど…厳しかったですね。
――敗因というのはどのように考えていらっしゃいますか
勝ちを取るべき上級生が勝てなかったというのと、純粋にチームとして中央大にはまだまだ及ばないところがあると思うのでその部分だと思います。
――夏に合宿を行ったと伺いましたがチームとして成長したと感じる部分はありますか
1つ目は基本的な攻撃であったり技が前期よりも向上しているところだと思います。もう1つは合宿では無いのですが、関西遠征を行った時に、良くも悪くも向こう(関西)の日本拳法は荒っぽいので洗礼を受けた状態になりました。ただ、自分たちもその荒っぽさの中から攻撃的な拳法を学んだかなと思うので、そこも成長だと考えています。
――2週間後の大会は個人戦となりますが、その中でチームとしての目標、森さんご自身としての目標を教えてください
次の大会ではそれぞれが優勝を目指していくのが目標になるのですが、その中でチームとしては次の府立大会に向けてレベルの高い選手達と名古屋で対戦することが目標になります。名古屋を勝ち抜くことでいろんな選手と対戦できるし、そこから得る経験は府立で活かせると思うのでとにかく勝ち抜いていって欲しいです。自分も勝ち抜いていきたいと思います。
矢野慶(教4=東京・早実)
――昨年度のご自身の成績を上回りましたが、結果をどのように感じていますか
本気で優勝を目指していただけに悔しいなという部分が大きいです。
――普段から形の練習はされているのですか
自分は怪我をしていて防具を着けられないので、全体の練習中はサポート役をしているのですが、自分だけの時間で形を仕上げました。
――やはり演武は自信のある種目になりますか
そうですね。元々は未経験で日本拳法部に入部した身なので素人同然だったんですけど、OBさんや先輩がすごく背中を押してくださったのでここまで来ることができました。
――きょうの大会はどのような思いで臨まれましたか
1年間で僕が出られる唯一の大会なので集大成として全てをぶつけて、絶対に優勝しようと思っていました。
――最後に一言お願いします
自分は形の結果が悔しいもので終わってしまったんですけど、部の中では卒業までサポーターの役割がありますので、最後の府立で優勝できるように自分のできることを明日からまた始めていこうと思います。