橋本が軽量級で優勝

日本拳法

 第3回となる今大会は昨年までとは異なり、段の部、級の部、女子の部の他に、さらに段の部の中で軽量級、中量級、重量級の3つに分類するという新方式が適用された。前期最後であるこの大会に、ワセダからは13名が出場し、それぞれの部門で躍動。中でも、軽量級に出場した橋本周平(社2=大阪・清風)が気迫あふれる拳法で他を圧倒し悲願の優勝を成し遂げると、女子面ありの部に出場した米田碧(商1=徳島)は運も味方につけ、デビュー戦をベスト4で終えた。

 「勝つことを期待されていたと思うので勝ててほっとしています」。試合後、率直な気持ちを語った。段の部・軽量級に出場した橋本は、1回戦をシードで通過。2、3回戦は打撃・組みといった様々な技がかみ合うバランスのとれた攻めで相手を圧倒し、準決勝に駒を進める。準決勝の相手は、三段の橋本にとって格上となる四段を持つ自衛隊の選手。「勝つためには負けるリスクを背負ってでも取りに行かないといけないなと感じました」と話したように、開始から橋本の猛攻が続く。しかし、果敢に攻めにいったところで隙を突かれ、胴突き一本を取られてしまうことに。だが、橋本は最後まであきらめない。終了間際に組み技からの膝蹴り一本で追いつくと、1分一本勝負の延長戦では、開始9秒で面突き一本を決め見事な逆転劇を見せた。迎えた決勝。軽快なステップと打撃中心の攻めでチャンスをつくる。残り時間が半分となったところで、相手が足を滑らせたところを見逃すことなく面蹴り一本を決めると、その10秒後胴突きで再び一本を取り、1分18秒もの時間を残し、優勝を成し遂げた。「今大会は前期最後の試合であるとともに総合選手権(全・総合選手権大会)の出場権が得られる最後のチャンスということで、一番良い形で締めくくれてよかった」と語った王者・橋本は、9月に行われる全・総合選手権大会へ向け再び動き出す。

胴突きで優勝を決めた橋本

 今大会、ワセダからは、今年の春に卒業した新井咲里(平27国教卒=埼玉・不動岡)以来となる、女子選手2人がデビューした。昨年までマネージャーとして選手を支える立場であった宮重佳奈(政経2=早稲田渋谷シンガポール)は、米田の選手としての入部を機に選手へ転向。4月からこれまで、基礎から練習を積んできた。宮重は残念ながら1回戦負けに終わったものの、米田は1回戦を不戦勝で勝ち上がり、2回戦では格上相手に力闘。日本拳法の魅力を「体格が全てではなく、技を磨くことが勝利につながる点」と米田が語ったように、今後の女子選手の成長に期待が高まる。

デビュー戦に挑む米田

 前期の締めくくりとなった今大会は、優勝、入賞を果たした橋本、米田のように下級生の台頭が見られた。茂木蔵人(社1=東京・早実)などの1年生も着々とデビューを飾り、新たな風を吹かせている。今回、橋本の優勝はワセダに勢いをもたらした。これからオフシーズンを迎える日本拳法部。この勢いに乗って部全体でいかに飛躍していけるか。夏を経てさらに強くなるべく、日本拳法部の新たな戦いが始まる。

(記事 深瀬真由、写真 三佐川唯 黒田菜々子)

優勝した橋本(左)とベスト4に入った米田(右)

結果

▽級の部

3回戦敗退

高根未来(人2=大阪・明星)



2回戦敗退

眞鍋周(教3=香川・大手前)

三橋由吾(文2=北海道・札幌北)

宮脇希(教2=神奈川・山手学院)



1回戦敗退

茂木蔵人(社1=東京・早実)



▽段の部・軽量級

優勝

橋本周平(社2=大阪・清風)



2回戦敗退

高橋世駿(社3=東京・早稲田)



▽段の部・中量級

3回戦敗退

三橋啓吾(スポ4=千葉・成田)

森和将(社3=千葉・東邦大東邦)



2回戦敗退

高橋智之(政経3=神奈川・浅野)



▽段の部・重量級

1回戦敗退

小枝信介(社4=埼玉・西武文理)



▽女子の部

2回戦敗退(ベスト4)

米田碧(商1=徳島)



1回戦敗退

宮重佳奈(政経2=早稲田渋谷シンガポール)

コメント

小枝信介(社4=埼玉・西武文理)

――今大会にかける試合前の意気込みは

今大会は上位入賞者に9月の総合選手権大会(全・総合選手権大会)の出場資格が与えられることになっていたので、優勝、準優勝になんとか入賞しようと考えていました。

――1回戦敗退について率直なお気持ちをお願いします

当初設定していた目標とはあまりにもかけ離れた結果なので、その点については大変悔しいです。一方1回戦の相手は今大会優勝者で、その相手に対して今ある自分の実力は発揮したと思います。

――試合内容を振り返って

距離を潰したときの組みと膝を使った攻撃に関しては上手くいったと思います。しかし、相手は多彩な技を持っていてなかなか接近戦をさせてもらえず時間を使い過ぎてしまったと感じています。

――技をかけられたときに足が滑ってしまったように見受けられましたが

相手は私が組みに行く瞬間を狙って足払いをかけてきました。その私が仕掛けた組み自体も相手のフェイントに引っかかり出したものだったので、完全に相手が数段上だったと思います。

――戦略としてはやはり得意の組み技で攻めて行こうとしていたのでしょうか

はい、そうです。

――これから強化していきたいところは

単純な力技の組みではなく、技術の高さで倒す組みを強化します。

――下級生も多く出られていましたが、なにか言葉をかけられていたのでしょうか

特にこの大会に向けて特別なことを言っていたわけではないです。日頃から、試合はメンタル面・技術面を鍛えるという意味でどんな練習にも勝るので1試合でも多く試合経験を積むことが大事であるということは下級生に対して指導しています。

――次の大会はどの大会になりますか

10月に行われる東日本大会になると思います。

――それに向けて意気込みをお願いします

夏にトレーニングを重ね、優勝します。

森和将(社3=千葉・東邦大東邦)

――今大会の目標は

一つでも多く勝って、名前を売ることです。できれば総合選手権(全・総合選手権大会)へのチケットもほしかったです。

――ご自身の調子はいかがでしたか

微熱がでていたのが、懸念材料でしたが、体の動き自体は悪くはなかったです。

――今回は積極的な攻めが印象的でしたが、戦略は

最近は思い切りの良さがでていなかったので、攻撃するときは積極的に攻撃しようと思い臨みました。1、2、3回戦とそれぞれ違う戦略があったのですが、共通していたのは相手の嫌がる攻撃をしようと思っていたことです。

――反省点や今後に生かしていきたい点を教えてください

(全国学生)選抜(選手権)の時から強く感じているのですが、一本をとりきる力が少ないのでそこを磨いていきたいです。

――夏はどの点を強化していきますか

フィジカル面と胴で一本とりきる力を強化します。

――そのためにどのような練習方法を取り入れますか

フィジカル面ではウエイトトレーニングとランニング、そして一本をとることに関してはサンドバッグを打つのが一番だと思っています。

橋本周平(社2=大阪・清風)

――優勝おめでとうございます。率直なお気持ちをお願いします

今大会は前期最後の試合であるとともに総合選手権(全・総合選手権大会)の出場権が得られる最後のチャンスということで、一番良い形で締めくくれてよかったです。また、勝つことを期待されていたと思うので勝ててほっとしています。

――前回の矢野杯(争奪 東日本学生個人選手権)から今回までどのような取り組みをしたのでしょうか

前回は不用意なことをしたことと数少ない一本のチャンスをものにできなかったために逆転を許してしまったので、今回は技の精度を上げて確実性を高めるということと不用意なことをしないように心がけて練習に取り組みました。

――本日の戦略は

立ち技の上手い人には組技で、組技の上手い人には立ち技で戦っていこうと思っていました。

――積極的な攻めでしたね

あじさい祭り(奉納大会)で負けたときに、勝つためには負けるリスクを背負ってでも(一本を)取りに行かないといけないなと感じました。それが矢野杯を経て今回の結果につながったのかなと思います。

――軽やかなステップが印象的でしたが

自衛隊の選手の方々のフィジカルの強さについては春の合宿でいやというほど思い知ったので、アドバイスを受けながら立ち止まらない拳法を意識しました。

――ご自身の持ち味は

立ち技の上手い人には組技で、組技の上手い人には立ち技でといったように、
相手によって臨機応変に戦い方を変化させられるところだと思います。

――次はどの大会になりますか

おそらくは9月に大阪で開催される(全・)総合(選手権)だと思います。

――それに向けて意気込みをお願いします

一つでも多く経験を積むために勝ちます。

茂木蔵人(社1=東京・早実)

――今大会の目標は

自分がいま持っている力を全て出し切ることを目標としていました。

――公式戦初出場に関してはいかがですか

悔しさは残りますが、いい経験になったと思います。自分の弱点を知ることができました。

――高校では柔道をやっていたそうですが、柔道との共通点はありますか

柔道でも日本拳法でも、上手い人に投げ飛ばされたときは何が起きたのかわからなくなります。

――日本拳法を始めようと思ったきっかけについて教えてください

元々総合格闘技に興味があり、限りなく何でもありに近いルールで戦いたかったので日本拳法を選びました。

――今大会を振り返り、課題は見えてきましたか

試合中にばててしまってはいけないので、スタミナをつけねばならないと思っています。

――一年生の男子選手では唯一の出場となりましたがいかがでしたか

コンディション万全の一年生が男子では自分だけでした。

――夏に向けてどのような練習をしていきたいですか

体力をつけるための走り込み、組んで勝つための筋トレなど、やらなくてはならないことがたくさんあります。

米田碧(商1=徳島)

――初めての大会となりましたがいかがでしたか

やはりとても緊張しましたが、六月末の昇段級よりは落ち着いて臨めました。試合を通して強くなりたいという思いがさらに大きくなりました。

――どのような目標を持って臨んだのでしょうか

試合後の自分が後悔しないよう、格上との勝負でもおじけづかず、今の自分を出しきろうと思って臨みました。

――日本拳法を始めた理由は

元々武道が好きで、日本拳法は大学から始める人が多く今からでも勝てると聞き、勝ちたいと思ったからです。

――ここまで2、3か月やってきて、日本拳法の魅力は何でしょうか

体格が全てではなく、技を磨くことが勝利につながる点です。得物を持たない、至近距離での攻防は圧巻です。

――ワセダ日本拳法部としての生活には慣れましたか

ワセダという名前の重さと自分の未熟さを思い知らされながら、尊敬する先輩方の背中を追いかける日々です。ワセダ日本拳法部の一員となれたことを嬉しく思っています。

――今後の目標は

いち早く堂々とワセダを背負って戦える選手になることです。