8年ぶりの出場となったFINAL4で勝利を収め、創部史上初の全日本大学選手権出場を決めた『柏原組』。今回は主将のG柏原陽菜乃主将(創理4=東京・大妻多摩)と、関東学生リーグ戦でチーム最多得点を挙げたAT西川佳(文構4=東京・東洋英和女学院)に、リーグ戦の振り返りと、来る全国大会に向けての意気込みを伺った。
※この取材は11月6日に行われたものです。
笑顔で質問に答える選手たち
――個人としてどのような目標を持ってリーグ戦に臨んでいましたか
柏原 結果を残すということを何よりもしたくて、それは個人としてもですし、チームとしてもです。学生王者という目標を掲げている中で、早慶戦で結果が出なかったので、ここでしっかり結果を残したいっていうのがまずチームの中でありました。そのために自分がプレーでチームを勝利に導くこともしたかったし、主将として練習を引っ張るとか、自分が得意である声を出すこととか、そういうところは妥協せずに続けていきたいなと思っていました。
西川 リーグ戦は今まで予選で5戦と続いてきた中で自分にとって成長したなとか変化があったなという風に感じていて、リーグの序盤の頃とかは本格的に試合に出させてもらえるようになったのが今シーズンになってからだったのでリーグ序盤は自分が点を取りたいというか自分が活躍したいというのが大きかったです。その先に勝ちがあると思っていました。そのあと試合を重ねていくうちに、自分のプレーや調子も色々あって自分がトップで得点を決めるっていう以外でもチームを勝たせなきゃいけない、勝ちに導かなければならないという気持ちを抱えてベンチに下がっている間も出来ることはないかなと考えていたりとか、何が一番チームが勝ちに行ける方法なんだろうと考えるのをリーグを通して意識していました。
――リーグ戦の予選ブロックを振り返っていかがでしたか。
柏原 チームとして成長し続けた期間だったなとは感じています。これまでの2年間や先輩たちを見ていると、なかなかリーグを通しての急成長が自分が所属している時を通して正直なかったんですけど、試合に勝つごとに修正を繰り返して精度が上がっていったというかチームもそうだし自分たちの技術も上がっていって、リーグを通して成長できたと思います。
西川 リーグを通しての成長というところでいくと、去年の優勝校の日体とか今までFINAL4に進出している強豪と言われている大学たちを見て、リーグの予選ブロックですごい成長していこうという見方をしていたというか、他の大学は止まらずに成長し続けてるよね、という印象を持っていました。自分たちがそれをできたというか、成長し続けられたという実感はあったのでそこができたのはFINAL4とか全国に進出できている要因かなと思います。
――予選の中でキーポイントとなった試合とその理由を教えてください。
柏原 立教戦だなと思っています。自信がなかったとかじゃないんですけどここは勝たないとFINAL4はないよねっていう話もしていました。当たり前にその先もないよねっていう気持ちはあったのでやっぱりそこを勝ち切ることができたのはすごい自信にもなりましたし、そこからグッと進んで優勝にもつながったのかなと思いました。大事な試合でもありチームが急成長できた試合でもあったなと思います。
西川 自分たちの自信になったというか、やっぱり歴史的快挙というか、(昨年)立教相手に勝てたというのがあって、それが今年も勝って2年連続で立教を倒せたことで去年の勝ちがまぐれではなかったのが証明された気がします。でもそこからリーグ予選の勝ち点とかのキーになっていたのはそうなんですけど、自分たちの中での気持ちとしてキーとなった試合が立教だったかなと思います。去年を通してリーグで3戦目は必ず負けてて、そこの3戦目が立教というところがすごく大きかったなと思います。立教に負けてたら、最後に明治に勝つか負けるかで行けるか行けないかが決まっていたので気持ち的にも疲れちゃっていたと思います。
東農大戦でボールを保持する西川
――FINAL4を振り返ってください
西川 予選最終戦の明治戦と中央戦の二戦は、個人としては調子が下がってしまっていたところだったので、自分のプレーで直接勝ちにつなげられなくて悔しい部分はありました。ATが一枚ほとんど使えない状態だったので、試合が崩れてしまったらどうしよう、ATが疲れて点が取れなくなってしまったらどうしようと、気持ちが落ちてしまっていました。なのでFINAL4に関してはみんなありがとうという気持ちでした。本当はベンチメンバーとしてそのスタンスは良くないと思いつつ、そんな気持ちでいっぱいでした。
柏原 全員で戦ったなと思っていて、正直私も調子が良くなかったし、ディフェンス自体も調子が良くなかったんですけど、ATが決めてくれたりとか、ディフェンスもここぞという時には守るというように、すごく支え合った試合だったなと思いました。早稲田はここまで、アタッカーとディフェンスのどちらかが調子が良くて勝てた試合が多かったのですが、今回は両方が頑張って一緒に勝った試合だったなと。個人的にはFINAL4の実感がなくて、リーグの一戦のような感覚で、負けたら引退だけれど、引退したくないから勝つしかないという思いでプレーしていました。全員で戦えた、支え合えたというのはすごくいいことだったし、前回の明治戦では最後に点を決められてしまったという中で、今回は最後1点リードでキープし続けられたというところも良かったなと思いました。また、応援でいつも以上にOGのみなさんもきてくださったり、ベンチと近かったのもあってすごく熱が伝わってきてよかったです。
――FINALを振り返っていかがですか
柏原 これに勝ったら過去一番(の快挙)とかは言ってられなくて、ただ明治にリベンジしたい、1勝1敗の状態で戦いたいという風に考えていて、勝つだけだなと思っていました。でも個人的には2回目の戦いということで緊張していました。相手とも1回試合をしているから私のセーブの得意不得意を知っていたり、ディフェンスの分析も知っていたと思います。そのような弱いところをついてくる大学でもあったので、どのように戦ってくるか不安でした。また、相手がリーグ戦を通して成長しているチームだと感じていたので、どう成長してきたのか、逆に早稲田は成長できていたのかということで緊張が高まった試合でした。始まって最初は負けてしまう雰囲気でしたが、点を決めてくれたり、だんだんディフェンスでみんなでやってきたことを体現できたのでみんなの成長を感じられた試合でした。
西川 対明大というよりは、前回の自分たちを越えるというイメージが個人的には強かったです。自分個人のプレーもそうなのですが、相手のキーマンに同じやり方でターンオーバーを誘われるなど同じ形で失敗することがチームとして多かったです。なのでそのような部分でも前回を生かして同じようなことをされないようにし、むしろそこを誘って勝っていこうと思っていました。その部分で自分たちの成長した姿を相手にも、自分たちにも、見に来てくれる人たちにも見せたいという気持ちが大きかったです。
――この試合に負けても引退が決まるわけではないという中で、どのようにマインドを持っていきましたか
柏原 リベンジという感情が強かったです。前の試合の負け方が相手が圧倒的に強いというよりはこちらのミスで負けたので、次こそは失うものがない立場として前のめりにしっかり実力で勝とうと思っていました。だからリベンジという思いで、負けてもいいやという思いはなかったです。
西川 負けても引退はないという点はもちろんありましたが、勝ったら優勝カップがもらえるというのは大きかったです。ヘッドコーチからも、全国の優勝カップと関東の優勝カップは別物で、仮に全国制覇できてもここで2位通過だと1個しか優勝カップはもらえない。という話をされていて、勝ったらその世界が見えるんだとワクワクしていました。
――ここまでのご自身のプレーを振り返っていかがですか
柏原 もっと安心感のあるゴーリーになりたいなというのは、試合をするごとに感じています。私は緊張しやすくて、ガチガチになってセーブできなかったりすることもあるので、でもそれも含めて実力だと思っています。なので、後ろに私がいれば(大丈夫だ)と思わせられるくらいのゴーリーになれるように成長していきたいと思います。
西川 (柏原は)安心感はあるなと思っていて。もちろんセーブできない時もありますが、大ピンチの時、ここで決められたら負けるというような時にはしっかり止めてくれるというイメージです。
柏原 おぉ(笑)。
西川 自分はリーグ終盤からFINAL4にかけて下がっていた部分がありました。自分が昨年までリーグ戦の出場経験がなかったこともあると思うのですが、不調の時の乗り越え方も、自分の中で消化しきれていないというか、分かっていませんでした。リーグ予選の明治で調子が悪くて、FINAL4まで引きずってしまったのも、その解決策が分かっていなかったからだなと感じています。FINAL4が終わって、ちょっとまずいなと思い、コーチなどと相談させてもらったりして、話す中で整理がついた上でこの前の明治戦に臨みました。明治戦で早稲田の1点目を決めた時は、また安心というか。戦況的に、相手に2点先制されているという状況で、点差を広げられる前に早いうちに点を取っていかなきゃというチームの雰囲気の中で、まず早稲田を勢いづけることができた安心感がありました。あとは、自分の調子が戻ってきたかなと。いつも通りのプレーができた感覚がありました。点を決めて、久しぶりにみんながこっちに来てくれるのが嬉しかったです。あの景色をまた見られて良かったなと思いました。
――シーズンここまででご自身の思うMVPとその理由を教えてください
柏原 2年生の久野陽菜乃(スポ2=奈良・西大和学園)です。まずプレー面に関しては、早慶戦まではサブチームにいた選手で、でもそこから上がってきて、農大戦ではスタメンにもなって。最初はみんな結構ドキドキしながら見守っていたのですが、試合でしっかり結果を残して、今では本当に安定感がある存在になっています。性格面でもすごくいいなと思っていて。ディフェンスは、点を入れられたら誰のミスだ、などといったことでギスギスしがちなポジションなのですが、いる(久野)の楽観的なところが、チームの雰囲気を和ませてくれています。また、3、4年生になるとチームを良くするために言い合ってしまうこともあるのですが、2年生だからこそ、純粋な疑問を投げかけてくれたりするところがチームの雰囲気を良くしてくれています。プレーだけじゃなくて、そういった部分も変えてくれる選手だなと、今後の活躍にも期待したい選手です。
西川 取られた(笑)。(久野は)練習中や日常のふとした瞬間でも、結構いいことを言っているイメージがあります。
柏原 トップチームとサブチームでは、出ている試合も違いますし、分裂してしまうことも多いのですが、いるは2年生ということで、2年生はサブチームの選手も多かったりするので、トップとサブとの架け橋になってくれたりしていて。チーム全体のコミュニケーションの架け橋になっています。
西川 性格にプラスして、頑張っているんだろうなというのが伝わる選手です。
柏原 二人でいるでいきます(笑)。
西川 最初の農大戦の時は、いるがボールを持ったり、ボールマンについたりしていると、みんな祈るような目で見ていたのですが、今となってはいるだから大丈夫だと思えるような、安心感まで生まれてきていて。本当に有望株だなと思っています。
FINALでセーブに臨む柏原主将
――昨季FINAL4を逃した中で、今季学生日本一を目標に掲げた理由を教えてください
柏原 結構揉めたんですけど(笑)、現実主義の人達は、遠い目標よりも、まずはFINAL4を目指そう、という意見だったんですが、一方で、FINAL4を目標にしていてはそこにすら到達できないのではと言う意見もありました。そんな話し合いの中で、昨年出場していたメンバーが結構残っていることもありますし、しっかり自分達のチームを作っていけば、FINAL4の先も達成できるのではないか、ということになって、決まりました。
西川 目標は高い方がいい、というか高くて損はない(笑)。
――実際ここまで目標に向かって突き進むことが出来ていますが、自信はありましたか
柏原 早慶戦ぐらいまでは、やっちゃっているなという感じで、目標を掲げたくせに結果を残せないし、早慶戦勝つと思ったら勝たないし、本当にやばいという感じでした。早慶戦も、自分たちがチャレンジャーみたいな感じで、うちら勝てるし、みたいなマインドだったし、自分たちの事を低く見ていたわけではなかったので、このチームにとっては大きな挫折でした。そこからは、みんなあんな経験は二度としたくない、という気持ちになって。その後、学習院、農大と勝っていく中で自信がついていって、立教戦勝てて、いけるかもとなりました。
西川 シーズンの初めの六大戦も酷い結果で、(リーグ戦)2部の東大にも僅差でしか勝てなかったりして、とても焦りました。そんな結果しか残していないのに、ラクロス界では、早稲田強いみたいな噂があって。
――それはリーグ戦の前からですか
西川 そうなんです。早慶戦の前あたりです。そのような話を耳にしていた中で早慶戦負けてしまいましたが、通用する部分もあることが確認でき、収穫もありました。その後、リーグが始まり、OGの方や、見に来て下さった方々から、「今シーズンの早稲田は体づくり頑張っているね」と言ってもらえたのも大きかったです。走り切れているし、対峙(たいじ)でも負けてなくて体も大きくなった、みたいなことを、早稲田が今年トレーニングに注力していることを何も知らない人達から言ってもらえたのが、自信につながっていきました。
――全国大会に向けて今はどのような練習をしているのですか
柏原 全国というよりは学生日本一に向けた練習をしていて、基礎力やチーム力を上げることや、細かいところの修正をしています。
西川 決勝に向けて、これまで早稲田が通用してきた部分で、同じことをやっても絶対通用しないと思うので、細かいところの修正することもそうだし、あとは、新たに、個々の対峙力だけでなくチームの対峙力を向上させて、チームで崩すというところを意識して高めていこうという話はしています。
――今のチームの雰囲気はどうですか
柏原 チャンピオンになったから浮かれるということも一切なく、学生王者を見据えているなという感じです。自信を持ちつつも次に向かって引き締まっていると感じました。
西川 チームは今とてもいい状態なのですが、チームとして最高の状態っていうのは、優勝した時にベンチメンバー外の子からおめでとう、って言われるのではなく、ベンチメンバー外の子も、何かしらこの勝ちに対して一緒に頑張ったよねって言えるのがベストだと思っています。全国で優勝できた時にそういう状態に持っていけたらいいなと思っています。
――全国でキーマンになる選手は誰だと思いますか
柏原 ATの八澤百子(スポ3=東京女学館)です。超主要メンバーではないのですが、ショット練などを一緒にしていく中で、確実に上手くなっているし、実力がついてきているなと感じているので、私達が引退する前に大爆発をしてくれたら嬉しいです。
西川 私は、DFの2年生の西川海真(社2=東京・早実)ですね。みまは、ラグビー出身なので体が大きくて、その体の大きさと、冷静で淡々としている感じが、1on1でも簡単には勝てそうにない感じがします。仮にディフェンスをかわして抜けたとしても、何も動じない様子が、何も食らってない感じがして、もし試合相手にこういう子がいたらと考えると、どうしたらいいんだ、となりそうですごいと思います。いるとみまの二人とも2年生でどちらもディフェンスですが、全然違うキャラで、それぞれ活躍しているなと思っています。これからに期待です。
――ご自身はどのような活躍を見せたいですか
西川 学生王者まで残り3戦しかないので、調子を落としている暇はないですし、どんどん難しい試合になっていくことを考えると、より安定感のあるプレーをしたいと思います。誰が見ていても、佳が持っていれば大丈夫と思ってもらえるように頑張りたいです。
柏原 中1からラクロスをやっていて、最後は楽しみたいと思います。でも楽しむというのもなかなか難しくて。ラクロスで楽しい時ってやっぱり上手くいった時やセーブできた時なので、楽しむために成長し続けたいと思います。
――最後に全国に向けて意気込みを1人ずつお願いします
柏原 何点とっても決まる試合にはならないと思うので、できることは何も妥協せずにやりたいと思っています。自分自身の個人の技術を伸ばすことももちろんですが、幹部としてチームを引っ張っていくところは、最後の最後まで妥協せずにやっていきたいと思っています。
西川 今まで1試合あたり3得点の壁を超えられていないです。明学戦では3点決めましたが、それ以外の試合では2点以下です。なので、個人的な部分としては、全国では3得点以上を目指したいです。また、70人近く部員がいる中でフィールドに立てる人数は限られていて、全員が出場出来るかも分かりません。もちろん自分がメンバーに入って貢献することも大事です。ただ以前、後輩が「佳さんが諦めずに成長し続ける姿を見て、私も頑張らないとって思います」と言ってくれたことがあります。それが自分の成長のきっかけにもなりました。なので、70人分の思いを強く持ちながら全国のフィールドに立って、勝ちに導けたらいいなと思っています。
――ありがとうございました!
(取材 長屋咲希 編集 長屋咲希、石澤直幸、野崎真由季、林朋亜)
◆西川佳(にしかわ・けい)(※写真左)
東京・東洋英和女学院高出身。文化構想学部4年。コートネームは「けい」。MBTIはエンターテイナー。実家が日本舞踊の教室で、2歳半から日本舞踊を習っている西川選手。将来は家業を継ぐつもりだそうです!
◆柏原陽菜乃(かしはら・ひなの)
東京・大妻多摩高出身。創造理工学部4年。コートネームは「かっしー」。MBTIは西川選手と同じくエンターテイナー。引退後にはヨーロッパや東南アジアに旅行したいそうです!