ラスト1分の逆転劇! 強豪・立大からFINAL4に向けて大きな一勝をつかみ取る/リーグ戦 立大戦

女子ラクロス
1Q 2Q 3Q 4Q
早大
立大
▽得点者
横幕3、拝原2、星川1、脇田1、水野1

 早大ラクロス部女子は、関東学生リーグ戦の第二戦で強豪・立大と対戦。初戦の日体大戦で敗れた早大にとって、FINAL4進出に向けては絶対に落とすわけにはいかない試合であった。1Qからテンポ良く点を重ねて4点をリードすると、2Qで差を縮められるもリードを保って試合を進める。迎えた4Q、勝利目前で4連続失点を喫し逆転されてしまう。それでも残り時間1分からフリーシュートを2本成功させ土壇場で大逆転。死闘を制してFINAL4進出に大きく前進した。

 「1Qに全てをかけよう」(G金井美穂主将、教4=東京・神田女学園)。この言葉を胸に選手たちは戦いに臨んだ。『金井組』にとって試合の鍵を握る立ち上がり。今季は1Qで流れを掴めず、リードを許してそのまま敗れる試合が印象的だったが、この日の早大は、いつもとは違う姿を見せた。まずは開始3分にAT拝原花歩(政経4=東京・早実)がゴール前でフリーシュートを獲得。これを確実に決めて待望の先制点をもたらした。流れに乗りたい早大は続く7分、AT横幕円香(文構3=神奈川・公文国際学園)が自らゴールへ斬り込み、貴重な追加点を挙げる。次第に雨が降り始める天候となったが、早大はなおも攻撃の手を緩めない。MF星川陽恵(スポ3=埼玉・浦和一女)とMF水野文萌(創理2=埼玉・早大本庄)もゴールを決め4-0に。課題の1Qを4点リードで終え、最高のスタートを切った。

得点を決め喜ぶ選手たち

 勝利に向けてさらにリードを広げたい展開だったが、相手はFINAL4常連の立大。2Qの開始早々に1点を返し、さらにゴール前でパスをつないで早大ディフェンス陣を揺さぶる。すると早大は立大のパス回しに翻弄(ほんろう)され追撃の2点目を許してしまう。2Qは全体的に立大がボールを所持する時間が長くなり、早大にとっては我慢の展開が続いた。それでもG金井、DF片岡咲季(文構4=埼玉・早大本庄)らを中心に必死のディフェンスでこれ以上の追撃は許さない。追加点を取ることはできなかったものの、2Qを2失点で抑え4-2とリードして試合を折り返した。

雨が降る中プレーするMF脇田萌衣(教3=東京・白百合学園)

 立大に握られた流れを取り戻したい3Qだったが、3分に自陣でまさかのクリアミス。ゴール前でボールを失い痛恨のゴールを許す。ついに1点差にまで詰め寄られてしまった。立大が展開するライドの前に思うようにパスがつなげず、早大に重い空気が漂い始める。しかしAT拝原が、自陣でのクリアから速攻を仕掛けて敵陣ゴールまで運ぶ。放たれたシュートは相手ゴーリーも防げずゴールへと吸い込まれた。欲しかった追加点を奪い、再び2点差とした。ここで思わぬアクシデントが起きる。会場の近くで雷が鳴り始めたため、試合が一時中断されたのだ。雷が治まるまでおよそ15分間、待機を余儀なくされた。それでも選手たちは、試合が再開した後も集中を切らすことなく5-3で3Qを終えた。

立大の選手を追うAT拝原。3Qでは貴重な追加点を挙げた

 念願の立大撃破まであと15分。全てが決まる最終4Qで先手を取ったのは早大。開始直後にAT横幕がこの試合2得点目となるゴールを挙げてリードは3点差に。このゴールによって勝利が大きく近づいた。その後はお互い譲らず、試合終了まで5分を切り早大の勝利が確実になったかに思われた。ただここから立大が意地を見せる。残り4分に1点を返し2点差に詰め寄ると、その後のドローでボールを奪取。そのまま速攻でゴールを決め、ついに1点差に。実はこの試合では、得点後の試合再開時に行われるドローで立大に幾度となくボールを奪われていた。それでも3Qまでは堅いディフェンスを中心に立大の攻撃を防いでいたのだ。早大もタイムアウトをとって立て直しを図るが、勢いづいた立大の攻撃は止められない。ドローからまたもパスをつながれ同点のゴールを許してしまった。1Qから保ち続けていたリードは、勝利まで残り2分というところでついに消えた。さらにその後のドローも奪われてボールを運ばれる。そしてG金井も止めることができずに無念の7点目を許し逆転されてしまった。この時点で早大に残された時間はわずか1分。ここで負ければ、FINAL4進出の夢は限りなく不可能に近いものになってしまう。早大の選手たちは一瞬にして窮地に追い込まれた。

タイムアウト中にコーチの話を聞く選手たち

 しかしまだまだ試合は終わらない。そして『金井組』の選手たちも諦めてはいなかった。ドローで溢れたボールを田中が奪取して自陣に運びパスを出す。脇田がゴール前まで仕掛けると相手選手の反則を誘ってフリーシュートを獲得する。ベンチ、スタンドから部員たちが祈るような思いで見つめる中、脇田はフリーシュートに臨んだ。そしてホイッスルが鳴ると脇田はゴールの正面まで運んでからシュートを放つ。放たれたボールはゴーリーの脇をかすめてゴールに入った。土壇場でチームを救う起死回生の同点弾。ゴールの瞬間、早大側応援席は歓喜の声に包まれた。

MF脇田のゴールで同点に追いつき喜ぶ選手たち

 残り時間は30秒。再びドローで弾かれたボールを田中が拾いパスを出し、ボールはAT横幕へ。「自分で行ってやれ」と自ら果敢に攻め込むと、相手が反則を犯してまたもフリーシュートの機会を得た。早大の運命がかかったフリーシュートにAT横幕が臨む。プレー開始と同時にゴールに駆け寄り、バウンドシュートを放った。相手ゴーリーが反応するも止めることはできず逆転のゴールに。そして直後に試合終了のホイッスルが鳴り、これが値千金の決勝点となった。激闘の末、強豪・立大に対して劇的な逆転劇で悲願の勝利。試合終了後のあいさつを終えると、ベンチで選手とスタッフが駆け寄り抱き合って、喜びを分かち合った。その後、スタンドで応援していた部員たちとともに「紺碧の空」を高らかに歌い、チーム全員で勝利の余韻に浸った。

あいさつを終えお互いに駆け寄る選手たち

 今季『金井組』が掲げたFINAL4進出。そのためにはリーグ戦でFINAL4常連校の日体大、立大のいずれかを倒さなければ厳しい条件下にあった。FINAL4の壁は厚く、早大の前には毎年4強(慶大、明大、立大、日体大)が立ちはだかり、苦い思いをしてきた。今季も7月の初戦で日体大に競り負け、もう後がない状況で臨んだ立大戦。一人一人のFINAL4への強い思いが重なったからこそ、苦手な1Qから早稲田に流れに持ち込むことができた。どんなに強い相手でも、鍛錬を積み、全員の思いを重ね合わせれば敵わないことはないと、この試合で『金井組』は証明してみせた。一方で、ドローやクリアでは立大との差を感じさせられる場面もあった。全員で掴み取ったこの勝利をFINAL4へつなげていくために、試合で見つかった課題を今後の練習で克服することが求められる。次戦以降も決して簡単にはいかない試合が続いていくが、立大戦で見せたチーム力を再び発揮できれば、不可能なことは何もないはずだ。大一番で偉業を成し遂げた『金井組』はこれからどんな夢舞台を見せてくれるのか、楽しみでならない。

(記事 廣野一眞、写真 飯田諒、近藤翔太、長屋咲希)

 

コメント

G金井美穂主将(教4=東京・神田女学園)

――立大に勝った今の気持ちはいかがですか

 すごいうれしいです。

――立大戦に向けてどういった準備をしてきましたか

 相手を知ることが一番大事なので、相手が何をしてくるか分析してそれに対応する練習をしてきました。立大が強いというのは分かっていたので、それに対する準備がすごいしてきました。

――1Qは先制点も取れてリードして終えることができました

 1Qが弱いということで、1Qに全てをかけようという話は昨日のミーティングでもしていました。(試合の)入りの時もこの1Qが全てが決まってくるからということで、全員が準備してできました。

――2Qからディフェンスの時間が長くなりましたが

 確かにディフェンスの時間は長かったですが、粘って負けてはいなかったし相手のミスも誘えていたので、そこはあまり弱気にならずに今の戦術はハマっているからこのままで、という感じでした。

――4Qで逆転を許した際はどういった気持ちでしたか

 同点になった後に自分が(ゴーリーに)入って、自分の時に逆転されてしまったということで、やはり個人的にはすごい悔しかったですし焦りもありました。でも最後まで「自分たちは強い」と信じようということはずっと話していたので、自分も一人でゴール前で「自分たちは強い」という風に考えていました。

――土壇場で逆転した時の気持ちはいかがでしたか

 すごいうれしかったです。いくらあと4秒というところでも、(立大の)逆転があると思っていたので、ずっと「守れ守れ」と思っていました。

――これからに向けて意気込みをお願いします

 立大戦と同じく一試合一試合しっかり準備して、自分たちの目標であるFINAL4進出に向けて一勝一勝して進んでいこうと思います。

AT横幕円香(文構3=神奈川・公文国際学園)

――立大に勝った今の気持ちはいかがですか

 勝つために日体大戦から長い時間準備してきて、みんなの努力が実を結び、とりあえずほっとしたといいますか、良かったという気持ちが一番です。

――最後のフリーシュートを振り返って

 (フリーシュートの前は)自分で行ってやれと思って(笑)。フリーシュートになってすごい緊張はしましたが、一学年下の後輩に「大丈夫」みたいに肩を叩かれたので、決めなきゃと思って頑張りました。

――ゴールが決まったときは

 決めた瞬間、もう覚えてないくらいみんながわーっときて(笑)。うれしかったです。

――1Qのゴールを振り返って

 早大の戦略として1Qで点を決めて流れをつくりたいというのがありました。その中でばら(拝原)さんが決めてくれた後に、もう1点決められて早大に流れを持ってこれたのは良かったなと思います。

――これからの意気込みをお願いします

 大一番だった立大戦が終わりましたが、ここからもまた負けられない試合が続きます。FINAL4に向けてまた人一倍努力して頑張っていきたいと思うので、応援よろしくお願いします。

AT拝原花歩(政経4=東京・早実)

――試合を終えて率直な気持ちを教えて下さい

 早慶戦(早慶定期戦)ではぎりぎりで勝つことができなかったので、今までの人生で一番うれしい瞬間でした。

――本日の立大戦に向けてどういった準備をしてきましたか

 オフェンスはあまり練習していなくて、ディフェンス重視でやってきました。ドローの時に6枚置いてくるなど、立大は結構特殊な攻め方をしてくるのでそれに対応できるような練習をしました。

――続いて試合について伺います。1Qは攻撃がうまくはまっていた印象でしたが、何か工夫されていたことはありますか

 早大は今まで早慶戦も含めて、1Qの入りがうまくいかなくて4Qは追い上げたけれども結局追いつくことができないという展開が多かったです。ですので、1Qから全部出し切る気持ちでやろうという話は皆でしていましたし、私自身も序盤に点を決めることができたら調子が上がるなということがわかっていました。一人一人が、それを意識してやることができたのかなと思います。

――先行する展開はこれまで少なかったと思います。何か、変化はありましたか

 先行していると心に余裕ができて、自分でいろいろなことを試すことができました。

――3Qの追加点のシーンを振り返っていかがですか

 ああいう場面は緊張するのが普通なのかなと思います。ただゾーンに入っていたというわけではないですが、緊張せずに振り切ったらいつのまにか点数が入っていたという感じです。

――最後に次戦以降の意気込みをお願いします

 この試合に勝ったのはファイナル4に近づく大きな一歩だと思うので、さらに気を引き締めて練習をしていきたいです。