【特集】女子ラクロスリーグ戦前特集『NO LIMIT!』【第1回】4年生対談 G金井美穂主将×DF片岡咲季×AS竹内涼花

女子ラクロス

 第1回に迎えるのはG金井美穂主将(教4=東京・神田女学園)、DF片岡咲季(文構4=埼玉・早大本庄)、AS竹内涼花(文構4=神奈川・桐蔭学園)の3人。最上級生として戦術幹部としてチームを引っ張る3人にチームへの思い、リーグ戦にかける意気込みなどを伺った。

※この取材は6月20日に行われたものです。

目標に向かって本気でやる経験をしたい(片岡)

対談に臨む3人

――まずはお互いに他己紹介をお願いします

金井 彼女の名前は片岡咲季です。人に対して妬みとか一切なく、いいものはいいと本気で言うし、自分の軸に合わなかったら、それは違うとはっきり言えるところを尊敬しています。戦術幹部のディフェンスリーダーとして、チームを引っ張ってくれて頼りになります。

片岡 彼女の名前は竹内涼花です。選手ではなくて、AS(アナライジングスタッフ)というスタッフと戦術幹部を務めてます。視野も広くて分析力も高く、ミーティングの場ではいつも的確で、斬新なアイデアを言ってくれるので、話していて楽しいですし一緒に戦術幹部をやれてうれしいです。あとラクロスへの思いも熱く、みんなにいい影響を与えていると思います。

竹内 金井美穂です。彼女は普段の練習以外のところでも、嫌われることを恐れずにチームに対して厳しい言葉をかけてくれる、そんな存在です。だけど実は誰よりも一番仲間のことを思っているし、チームのことも大好きで私たち一人一人のこともすごい理解してくれます。おそらく高学年のみんなは、誰にも言えないことでも美穂にだけなら言えるという感じで、相談してる子も結構多いのではないかと思ってます。

――他己紹介した人の第一印象と今の印象を教えてください

金井 少し変わってる子だなと思って(笑)。朝来る時の格好が、ヘアバンドにサンダルみたいなのを履いて、そして誰よりも堂々と歩いて来たり、あと道路を歩いているところで、電柱を見つけてラクロスで使うダッチのステップをやってたり、本当にちょっと変わった子だなというのが第一印象です。今となっては彼女のおかげで、普通なんかないなと思って。みんな個性があって違うということを教えてもらいました。

片岡 ギャルが来た、という感じでした(笑)。髪も一つにくくって、練習とかでも声をよく出して、みんなとも話していて、明るいギャルだなと思っちゃいました。でもだんだん関わっていくうちに、明るさだけではなく、どんな人でも寄り添える優しさもあります。あと先程も話しましたが、頭が良くて分析力とか、みんなとは違う視点を持っていてすごいなと思います。

竹内 印象的だったのが、入部した頃に体力トレーニングを結構やっていて。美穂はめちゃくちゃ負けず嫌いで「絶対に負けないんだ」という気力で走っていて、めっちゃ負けず嫌いな子なんだろうなと思いました。今でもそういう負けず嫌いなところは変わらないです。あと高校時代に他の人が経験しないようなゴリゴリの体育会を経験してきて、私たちの学年にも出してくれていい存在になっていると思います。

――ラクロス部に入った経緯を教えてください

金井 中学、高校とソフトボールをやってきて高校の時に自分の目標も達成でき「もうやりきったな」と思いました。1年間浪人をしたことにより、ソフトボールを辞めたので自分にはもう何も残らないという恐怖感の中、次何かでトップレベルを目指さなければならないと思うようになり勉強に切り替えました。勉強して早稲田に入れてうれしかったのですが、2カ月間自宅でオンラインで作業していることに、嫌気がさしてしまって。その中でもともとラクロスに興味があったので、新歓の活動に行って同期とも話しました。当時は体験入部をやっていなくて「ラクロス部を見たかったら、入るしかないよ」と言われて、「じゃあ明日から入ります」と言って入部しました。

片岡 中学、高校と部活に入ってましたが、ちゃんと目標に向かってやったことが一度もなくて。どうせなら目標に向かって本気でやる経験をしたいと思って、本気で取り組める環境をいろいろ探して体験入部していくうちに、朝活もかっこいいなと思ってラクロス部に入りました。

竹内 私は中学、高校とラクロスをやってきて高校でやりきった気持ちもあって、(大学では)やらないという風に決めていました。ですがコロナで考える期間が長くて、他の体育会も見てる中で中学から知り合いの上野美桜(国教4=東京・立川国際中教校)に「悩んでる」と相談したら「一緒にできると思っていたのに。絶対に女子ラクロスでしょ」みたいな感じで言われて。あと高校の同期で、慶大に進学した子にも相談したときに「一緒に早慶戦でやるのが夢なんだよね」という風に言われて気づいたら入ってました。

――今のポジションになった理由を教えてください

金井 中高のソフトボールではキャッチャーをやっていて、ずっと防具をつけるポジションだったのでラクロスでは絶対にゴーリーはやりたくないと思っていて(笑)。もっと華やかなポジションをやりたいと思っていました。ただゴーリーは痛くて怖いので誰もやりたがらなくて、みんなでゴーリー体験をした時に、ボールを止める際にキャッチャーの動きが自然と出てしまって、コーチに「(ゴーリーに)向いている」と言われました。自分でもやっぱ体を張って止める方が向いているんだと思ったのと、ソフトボールで鍛えたスローイングを生かせるのはゴーリーだと思ってゴーリーになりました。

片岡 私は性格的にいろいろなことをするオールラウンダーよりかは、何かに絞って追求する性格だなと思って、MFではなくDFかATがいいなと思いました。その中でもDFは試合の流れが悪い時に流れを変えられるのがかっこいいと思って、DFになりました。

竹内 最初は選手として入ったのですが、7月末にケガをして、全治4カ月と言われていたのが7カ月かかっても治らないとか、復帰したら別の部位が痛くなるという状況でした。いつ復帰できるか分からない中で、そのときのチームに対して、練習メニューや戦術の部分で思っていることが結構あり、一人のプレーヤーとしてチームを引っ張るよりかはチーム全体の総力を上げることにシフトしてみようと思いました。

――ASとはどのような役職ですか

竹内 分析スタッフという感じです。選手は感覚的にプレーを捉えたり修正したりしますが、それを数値で出して明らかにします。例えばシュート決定率がこのくらいだから、ここまで上げていこうというのを試合中に言うなど、選手が見えていない客観的な数字を与えるのが仕事です。

選手やチームを客観的に分析する竹内は『金井組』に不可欠な存在だ

(4年生は)目的意識を持っている人が多い(竹内)

――今の4年生はどういう学年ですか

金井 私たちの代から変えたことも結構あって例えば、いつものルーティンとかも長かったので簡略化したり、部則を変えたりとか今まで当たり前だったものを疑う人が多いかなと思います。いい意味で体育会に染まりすぎていないです。みんなでより良いチームを作っていくためにというのを考えている代だと思います。

竹内 一つ一つの行動とかルールとか物事に対して、目的意識を持っている人が多いです。今まで受け継がれてきたからやろう、ということではなく何のためにやるのか、どういう意味があるのかをしっかり考えて意味付けをしていくことによって、いいチームにしていこうという考えがあります。

片岡 トータルすると、考えることが好きな人が多いのかなと思います。

――主将はどのようにして決定しましたか

金井 他の幹部を決めるのに結構時間がかかったよね

片岡 主将に求めることをいろいろリストアップして、それに当てはまる人を基準で考えました。一番は1年生から4年生までみんなが信頼できて、70人の顔になれる人は誰だろうと考えた時に美穂しかいないね、てなりました。

竹内 主将はチームの象徴として位置付けていたので、信頼できて任せたいと思える人を選ぼうということで選びました。

――金井選手は実際に主将を経験していかがですか

金井 今年は今までと違って、主将がラクロス部の組織面と戦術面の両方を統括することになりました。ですので主将としていろいろなグループに入ってますが、どこのグループでも特に発言はしないで、常にどのグループが何を動かしているかを見ています。動くのも他の幹部であったり、下級生だったりして実際に私の仕事はあまりないです。対外的なところは私がやりますが、みんな動いてくれて私は本当に何もしてないです。それこそ戦術幹部は、すごい苦労しながら試行錯誤して動いてくれて、組織面も組織幹部が全部やってくれて。私自身が仕事できるタイプじゃないからこそ、自分を生かせる環境をみんなが作ってくれてるなと感じます。

六大戦の東大戦で戦況を見つめる金井。プレーでもプレー以外でも主将としてチームを支える

――片岡さん、竹内さんから見て金井主将の印象は

竹内 戦術幹部の中での話だったり、コーチと連携したりしてるのも全部見てくれてます。だからこそ、私たちが少し方向を間違えているとか、こういう風にした方がいいんじゃない、みたいなこともさっと言ってくれて。新しい気づきや視点を与えてくれてすごいありがたいです。加えて、見て
くれているからこそ私たちだけでは解決できないことを、美穂も入れて一緒に話すとか、チームづくりのことになったら美穂の視点が不可欠なので相談してます。

片岡 (主将が)教育実習で1カ月くらいいなかった期間もあって、やはり美穂がいると練習の雰囲気も締まるし練習の質も変わるんだなというのは感じました。

最後は勝ちたいという気持ちと貪欲さ(金井)

――ここまでのシーズンを振り返っていかがですか

金井 最初の六大戦(六大学交流戦)のときは本当に勝てなくて。それまで新チームに対していろいろなことを考えて組織づくりをして、結構ワクワク感もみんなあったと思いますが出鼻をくじかれた形でショックでした。ですが、そのあと早慶戦に向けてチームづくりをしていく中で、2、3年生の力が上がってきてチームを引っ張ってくれているのをすごい感じました。最近のことで言うと、雨でオフの日が続いたときがあって、5連続オフの最後の日が月曜日で、4年生は「もう月曜日だからみんな予定入ってると思うしオフだよね」みたいな感じでしたが、2、3年生から「え、やらないんですか?3年生全員来るから、4年生来ますよね」というやりとりがあったんです。4年生は最終学年だから、最後に向けてほっといても頑張ると思うんですよ。でも2、3年生がチームを押し上げて勝たせたいと思ってくれることによって、みんなが勝ちたいと思えるチームになったのかなと思います。

片岡 ディフェンスでは一人一人の1on1の力は上がったと思います。ただ早慶戦は結局負けてしまって、個人の課題がすごく明確になった試合でした。1点差で惜しかったというよりは、自分の課題が明確になって危機感を抱いている人が多いと思います。リーグ戦まであと1カ月ほどあるので、そこの部分を改善していきたいです。

早慶戦でボールを運ぶ片岡。女子戦の優秀選手に輝く活躍を見せた

竹内 金井が言っていたことと矛盾してしまうかもしれないですが、戦術面では六大戦で手応えをつかめたと思っていて。というのも、リーグ戦を控える中で、そこに最高の状態を持っていくための曲線を描いて計画を組んでいました。六大戦は決して満足のいく結果ではありませんでしたが、昨年は大敗していた強豪校に引き分け、ないしは1点差負けくらいの結果で、しっかり計画通りにこのレベルまで成長できているという実感が私としてはありました。早慶戦ももちろん勝つべき試合で負けてしまいましたが、着実にチームの力はついてきてるのではないかという実感はあります。あとは美穂も言ってましたが、六大戦、早慶戦を振り返ったときに、試合を通じて後輩が活躍してる場面が増えたと思います。2、3年生が強いチームは強いとスポーツで言われるように、そういう風に自分たちのチームの強さも作り上げられてるのかなと思います。

――目標であるFINAL4に向けて必要なことは何ですか

金井 技術もそうですが、最後は勝ちたいという気持ちと貪欲さだと思います。相手よりも1個でも多くゴールを決めなければいけないということは、相手よりボールを取らないといけないということです。そのボールへの食らいつきや、勝ちたいという思いが相手より勝らないと、最後4Qまで踏ん張れないと思います。なのでFINAL4に行けるかどうかは、全員が勝ちたいと相手よりも思うことができるかが決め手になると思います。

片岡 一人一人が、このチームを引っ張るんだと思うことが大事かなと。試合の流れが悪い時とかでも「自分が声を出してこのチームを引っ張ろう」という思いを、1年生、2年生、3年生、4年生の一人一人が持っていることが大事だと思います。

竹内 プレーヤーではなくてサポートに回っているスタッフが、本気でこのチームのために頑張りたい、勝つために仕事を全うしたい、と思えるチームって強いんだなというのを最近思うようになりました。というのも、スタッフだけど1回1回の勝敗に対して、勝ってめっちゃうれしい、負けてめっちゃ悔しいと全員が表現してるのが今年のチームです。そういうのは今まで私が所属している中ではなかったと思ってます。チームが勝つためには何が必要なんだろうというのを各ポジションで考えて新しい取り組みもして、選手とコミュニケーションをとり、マネジャーとしてASとして何をすれば良いのかというのを考えている年だと思います。一番近くにいる私もその思いをすごく感じてます。この気持ちをリーグ戦向けてさらに強くして、スタッフ一丸となってやっていけたらチームも強くなるかなと思います。

――3人が考える攻撃陣のキーマンは誰ですか

金井 MFに神谷彩乃(文構1=神奈川・桐蔭学園)という1年生で一人早慶戦のメンバーにも入った選手がいるのですが、私的にはその子がキーマンになるかなと思います。まだ彼女自身の実力を隠しているというか、遠慮して出せていないと思っていますが、練習中とか勢いよくゴールに向かって強く来るのですが、試合になると遠慮してる部分があります。でも彼女にはFINAL4のレベルでもゴールを奪える力が絶対にあるので、きっと彼女が1点決めたら一気に流れがこちら側にくると思います。1年生が応援の中では人数が一番多いと思うので、1年生が一気に盛り上がることは応援的にもいいことですし、チームにも流れを持ってきてくれる場面が浮かんでいます。

早稲田の流れをつくれるように(片岡)

最後は絶対にFINAL4に行きたい(竹内)

恩返し=FINAL4(金井)

――リーグ戦ではどのようなかたちでチームに貢献したいですか

金井 小中高とキャプテンをやらせてもらって、その頃はキャプテンの責任を感じながら動いていたので、キャプテンなのにこんなミスしていいのかみたいな思いでずっとやっていました。早慶戦前のミーティングで、私はキャプテンとしての責任でやるのではなく、自分が勝ちたいとか一人のプレーヤーとしてラクロスを楽しむと言って早慶戦に臨みました。実際に早慶戦を通して、いい意味で自分のことしかやってなかったなと思っていて。もちろんチアとか円陣の時に盛り上がる声をどうしようとか思いましたが、フィールドに立ったら自分の仕事を全うしようと。私は最後に花形になるタイプではないと自分で思っているので、つくりあげていく過程に自分が入れるようにしたいです。自分が活躍することもそうですが、最後に点を決めてくれないと勝てない競技なので、セーブとか正確なパスで点につながるようなプレーをしたいと思います。

片岡 私は早稲田の流れを作りたいです。外から見てどんなに「今、早稲田の流れ悪いな」って思われても、中にいる私たちが「大丈夫、大丈夫」という風にプラスに捉えて雰囲気を良くすれば、絶対に自分たちの流れにすることができると思います。それをまずリーダーである私が、失点しても落ち込まず、諦めずにそういう態度を見せることでディフェンス陣からいい流れを作りたいです。

竹内 試合中はみんな上がっちゃって、冷静に物事が見れなくなってしまうけど、スタッフは常に試合の流れとか、選手たちのプレーを客観的に見れるポジションです。だからこそ、私は常に冷静さを保ってコーチや選手たちとコミュニケーションを取りながら、今どうするべきなのか、どういう状況なのかというところを選手に与えて勝利に導けるような存在になりたいです。あとはドローの幹部として、咲季が言っていたディフェンス陣が守らなければならない負の局面をなるべく少なくできるように、早稲田の流れをつくれるドローをつくりあげていきたいです。

――リーグ戦への意気込みをお願いします

片岡 試合が長くて長期戦になると思いますが、1試合1試合の良い点と反省点を振り返って次の試合できちんと修正していきたいです。試合ではしっかり早稲田の流れをつくるために、リーダーの仕事をしつつも自分の特徴も出せるようにしたいです。

竹内 この4年間負け続けて、みんなの努力が報われなくて悔し涙も流してきた中で、最後は絶対にFINAL4に行きたいです。リーグ戦でFINAL4の常連校(慶大、明大、立大、日体大)がずっと変わってないことが、本当に悔しすぎるので絶対にここを壊して倒したいです。あと個人的な話ですが10年間のラクロス生活の集大成になるので、もちろんラクロスは好きですがリーグ戦が終わった後には「もう十分やり切ったから、ラクロスいいや」と思えるくらい全部やり切ってリーグ戦を終えたいです。だからそれまでにできることは全てみんなでやり切りたいです。

金井 教育実習で1カ月ほど離れている期間がありましたが、その期間を通してチームへの愛がさらに深まったと自分でも思います。早慶戦が終わってこのチームで絶対にFINAL4に行きたいとさらに強く思うようになりました。今年はヘッドコーチ、サブコーチに新しい方に入っていただきました。忙しい中、チームを勝たせるために時間を割いてくださるコーチ陣と、早慶戦で応援してくださったOGの方々に今までの恩返しをしたいです。自分の中では「恩返し=FINAL4」だと思っているので、自分をキャプテンに選んでくれた同期、信じてついてきてくれた下級生も含めてみんなに恩返しするためにも、FINAL4に行きたいと思います。

――ありがとうございました!

 

(取材・編集 廣野一眞 写真 飯田諒、廣野一眞)

 

リーグ戦に向けて意気込みを書いていただきました!

◆G金井美穂(かない・みほ)(※写真中央)

2001(平13)年1月20日生まれ。東京・神田女学園高出身。教育学部4年。みんなから信頼されて頼りになる金井主将ですが、同期に対しては自分から絡みにいく、かまちょな一面を持っていたり、後輩からいじられたりすることもあるそうです!

◆DF片岡咲季(かたおか・さき)(※写真右)

2002(平14)年3月25日生まれ。埼玉・早大本庄高出身。文化構想学部4年。『シンポテト』というポテトチップスが好きな片岡選手。多いときは一日5袋食べることもあるとか。リーグ戦を控えた今は、我慢して食べる量を制限しているそうです!

◆AS竹内涼花(たけうち・すずか)

2001(平13)年12月27日生まれ。神奈川・桐蔭学園高出身。文化構想学部4年。 竹内さんの弟は慶大野球部に所属しており、今春の早慶戦でも登板しました。そんな弟のことが大好きだという竹内さん。弟が一人暮らしを始めた際には、家で落ち込むほど普段から溺愛しているそうです!