終盤に追い上げを見せるも、4年ぶりの悲願達成ならず

女子ラクロス
1Q 2Q 3Q 4Q
早大
慶大 10
▽得点者
上野4、拝原2、片岡、横幕、脇田

 早大にとっては負けられない早慶定期戦(早慶戦)が開催された。今年で31回目を迎えた伝統の一戦。早大は4年ぶりの勝利を目指して試合に臨んだ。1Qから慶大ペースで試合は進み、一時は6点をリードされる。早大は最終4Qに1点差まで追い上げたがあと一歩及ばず敗れた。

試合前に円陣を組む選手たち

 4年ぶりに慶大日吉陸上競技場に観客を入れての開催となった早慶戦。観客席には両校のファンや応援団が多く駆けつけ、試合前から熱い応援合戦が繰り広げられた。小雨が降る中、試合はスタート。スタンドを埋め尽くす観客が、両チームの一つ一つのプレーに歓声を上げ、盛り上がりを見せるなど、他の試合とは異なる独特の雰囲気の中、ゲームは進む。先手を取り、試合を支配したのは慶大だった。1Qの2分にゴール裏からのパスをつなぎ、先制すると6分にも追加点を挙げ早大をリードする。慶大に押される中、反撃したい早大はAT拝原花歩(政経4=東京・早実)、MF水野文萌(創理2=埼玉・早大本庄)を中心に攻撃を展開。そして1Q終盤の14分、AT拝原がゴール前でファールを受け、フリーシュートを獲得する。これを確実に決めて1点を返し1ー2で1Qを終えた。

フリーシュートを放つAT拝原

 1点差に詰め寄った早大だったが、2Qは慶大の連携した攻撃に苦しむ。自陣でのクリアミスもあり、2点を連続して奪われ3点差に。それでも5分にDF片岡咲季(文構4=埼玉・早大本庄)が「自分のせいで1失点してしまったので、その分取り返そう」と自陣から敵陣ゴール前まで自らボールを運ぶと、相手のファールを誘いフリーシュートを獲得。落ち着いてゴールを挙げ2点差に追い上げた。しかし相手は昨年、大学日本一に輝いた慶大。他大学とは異なり、人をマークするのではなく場所を守る「ゾーンディフェンス」に阻まれシュートを打たせてもらえない。逆に少しでも隙を見せると、容赦ない攻撃が早大ディフェンス陣を襲う。「対策はしていたが、慶大のメンバーが思っていたメンバーと違った」(G金井美穂主将、教4=東京・神田女学園)と想定外の事態もあり、その後まさかの3連続失点。2ー7と5点リードされ試合を折り返した。

2Qで追撃のゴールを決めたDF片岡。女子戦の優秀選手に選ばれた。

 なんとか意地を見せたい早大はハーフタイムにG金井主将が「ラクロスの試合は4Qまである」「もう1回全員で楽しもう」と自ら声かけを行った。迎えた3Q、先に慶大が追加点を決め、両チームの得点差はこの日最大の6点に。だが早大も粘りを見せる。オフェンスの要の一人であるAT上野美桜(国教4=東京・立川国際中教校)がこの日初めての得点を奪うと、AT横幕円香(文構3=神奈川・公文国際学園)もフリーシュートを決めて2点を返した。逃げ切りを図る慶大もさらに1点を追加し、4ー9で3Qは終了。早大は差を縮められないまま、勝負は最終4Qへと突入した。

3Qで初得点を挙げたAT上野。続く4Qでは獅子奮迅の活躍を見せることになる

 全てが決まる4Q。序盤に慶大がパスをつないで10点目を奪い、再び6点差に。その時点で早大に残された時間は10分。勝負あったかに見えたが、『金井組』の選手は誰一人として諦めていなかった。AT拝原がゴール前でのパスを弾いてしまうが、これが偶然にもゴールに入り5点目を挙げる。早大にとってはラッキーなかたちでの得点だったが、この得点をきっかけに怒涛(どとう)の反撃がスタートした。直後に自陣でボールを奪うと、パスをつないで最後はMF脇田萌衣(教3=東京・白百合学園)がゴールネットを揺らす。勢いづいた早大の攻撃は慶大も止められない。G金井主将がスーパーセーブでボールを取ると、速攻を仕掛けAT上野が決め3点差に。さらに直後のドローで奪ったボールを、またしてもAT上野が「気づいたら打って、気づいたら打ってで怒涛(どとう)だった」とシュートを放ちゴールに収めた。見かねた慶大がタイムアウトを取るが、AT上野の活躍はまだ終わらない。再びドローでこぼれたボールを、MF水野からもらうと、間髪入れずにシュート。この試合4得点目となるゴールで、ついに1点差に追い詰めた。驚異的な追い上げに観客席も盛り上がっていき、9点目のゴールが決まった瞬間、早大応援席のボルテージは最高潮に達した。試合終了が近づく中、早大はさらに畳み掛ける。するとフリーシュートを獲得し、同点のチャンスが訪れた。しかしAT拝原が放ったシュートは相手ゴーリーに弾かれる。その後も最後の最後まで、攻撃を仕掛けるもゴールポストに弾かれるなど、得点を奪えずに無念の試合終了。一年に一度の早慶戦を勝利で飾ることはできなかった。しかし試合後のスタンドに向けたあいさつでは、追い上げを見せた選手たちに観客から惜しみない拍手が贈られた。

試合後、応援席にあいさつをする選手たち

 昨年の大学王者に善戦するも、わずかに及ばず早慶戦3連敗となってしまった早大。前半にミスもあり流れを作れず、失点を重ねてしまったことが、結果的に黒星につながるかたちとなった。4年生にとっては最後の早慶戦が終わり、残すは7月から始まる関東学生ラクロスリーグ戦(リーグ戦)。金井主将は「早慶戦で1点差までいけて良かった、ではなく課題として捉えて、チームとしてもう一回引き締め直していく」とリーグ戦に向けて意気込みを語った。今回の試合で見えた収穫と課題を今後に生かすことができれば、目標であるFINAL4(決勝トーナメント)進出は近づくはずだ。2016年以来のブロック突破を目指して『金井組』の挑戦はまだまだ続く。

(記事 廣野一眞、写真 飯田諒)

コメント

G金井美穂主将(教4=東京・神田女学園)

――試合を振り返っていかがですか

 一言で言ったら、やはり悔しい気持ちがあります。4Qのような戦い方ができるのならば、点差が開く前に1、2Qからもっとできていればという悔しい思いです。

――早慶戦に向けてチームでどのような準備をしてきましたか

 私たちはリーグ戦でFINAL4を目指すということを一番に置いていたので、早慶戦だけに向けた練習というのは、ここ2週間くらいしかやっていなくて。慶大の選手は昨年日本一に輝いたということで、リスペクトもあり怖さもありました。しっかり対策はしていたのですが、慶大のメンバーが思っていたメンバーと違ったという予想外のこともありました。

――前半は攻め込まれる時間が長かったですが

 相手のうまさもあると思いますが、私たちのミスで(点を)奪われてしまったという感じです。会場に飲まれてしまったのかミスが多かったです。

――ハーフタイムではどのような話をされましたか

 ハーフの時点で点差がすごい開いていたので、いつもは上野(美桜)が全体に声をかけてくれるのですが、私から円陣でラクロスは4Qまであるということで、最後まで粘り強く行きたいというのと、試合始まったときの笑顔がみんな消えていたのでもう一回楽しもうという話をしました。

――4Qで1点差まで追い上げた攻撃はいかがでしたか

 勢いとか流れとかもあったと思いますが、(パスが)つながって最後決め切るところで決めきれていたので、(前から)あれができていたら、という感じです。

――リーグ戦に向けて意気込みをお願いします

 早慶戦で1点差までいけて良かったねではなくて、六大戦からずっと言ってますが課題が顕著に表れたと思うので、しっかり課題として捉えてチームでもう一回引き締め直していって、リーグ戦でFINAL4に行けるように頑張りたいです。

DF片岡咲季(文構4=埼玉・早大本庄)

――試合を振り返っていかがですか

 個人としても、チームとしても課題が明確になった試合だと思うので、それを解決してリーグ戦を迎えたいと思います。

――優秀選手に選出されましたが

 ありがたいなと思います。

――ディフェンスで良かった点と課題点を教えてください

 良かった点は、1on1で慶大のアタックに対してもしっかり守れていた点です。課題としては、慶大のキーマンが明確だったからこそ、その人にそもそもボールを持たせないだとか試合の中で戦術を変えていく必要があったかなと思います。

――自陣から敵陣まで自らボールを運んで攻め込むシーンも多く見られましたが

 その前に私のせいで1失点してしまったので、その分取り返そうと思ってゴール前まで行きました。

――リーグ戦に向けて意気込みをお願いします

 今日は課題が明確になったいい試合だったと思います。部員全員で早稲田の強みと弱みを認識した上で、練習に挑めたらいいなと思います。

AT上野美桜(国教4=東京・立川国際中教校)

――早慶戦にどのような思いで臨みましたか

 個人的には最後の早慶戦だったので、思いも強かったですし負ける気もしなかったです。自分は緊張しないタイプなので、もう楽しみでたまらなかったという感じです。

――早慶戦に向けてどのような準備をしてきましたか

 今年は自分が戦術幹部なので、ありとあらゆる攻め方やシチュエーションを図に落とし込んだり、言葉にしたりして練習からやってきました。ガッツやパワーというよりは頭を使ったオフェンスを作って、それをフィールドでもできたなと思います。

――慶大のディフェンスはいかがでしたか

 ラクロスのディフェンスにはマンツーマン(ディフェンス)とゾーン(ディフェンス)があるのですが、他大学はマンツーマンが多い中で、慶大さんは場所を守る特殊なゾーンディフェンスをやってこられるので、独特な戦術に対して注力してやってきました。さすがというかやりづらさはありましたが、しっかり対策はできました。

――4Qの自身の攻撃についてはいかがですか

 みんなが走ってボールを最前線まで運んできてくれて、最後決め切るところは自分の役割でもあるので、できたなとは思います。ただ、もう気づいたら打って気づいたら打ってで怒涛(どとう)でした。

――リーグ戦に向けて意気込みをお願いします

 早慶戦に対してチームとして、個人として準備してきたところは自信になったと思います。どういうディフェンスに対する戦術を立てるかは未定ですが、やることをしっかり練習ですることと、自分がリーダーとして図に落とし込んでより強化した、頭を使うようなオフェンスをつくり上げることが目標です。