【連載】『令和4年度卒業記念特集』第46回 山本芙結/女子ラクロス

女子ラクロス

原動力

 「早稲田の女ラクに入ってよかった」。主将を務めた山本芙結(スポ=静岡)は最後の試合後、ラクロス部にささげた大学生活についてこう語った。ゴーリーとして幾度もの好セーブで、主将として持ち前の声と明るさで、どんな状況でもチームを支えた山本の4年間を振り返る。

指示を出す山本

 山本が早大ラクロス部に入部したきっかけは2歳年上の姉の存在だった。姉たちを見て「先輩たちのキラキラした姿に魅力を感じて、ああなりたい」と思い、ラクロスの世界に飛び込んでいく。姉の姿を見ていた山本は、ラクロス部での生活についても覚悟はできていた。そんな中で、1年時の新人戦では学年主将を務める。しかし、夏に行われた新人戦では、決勝トーナメント1回戦敗退と悔しい結果に終わり、学年主将としても「リーダーとしての至らなさを強く感じて、同期に対して申し訳ないと思うタイミングが多かった」と振り返る。それでもその後の冬の新人戦では準優勝を収め、チームとしても「楽しい雰囲気でラクロスができた」と語るようにチームをうまくまとめることができた。

 2年時は新型コロナウイルスまん延により、思うように練習ができなくなる。チームも分かれての練習を行うことになり、同期と一緒に活動できない寂しさがあったという。それでも、山本はこの年に引退する「姉と一緒に試合に出場する」という目標を掲げ、練習に励んだ。結果として姉とのフィールド上での共演を果たした。3年になると、練習試合で自身のゴーリーとしてのプレースタイルを確立し、技術面で大きくレベルアップを果たす。スタメンにも定着し、「努力した結果が目に見えるかたちで出てきたので、すごくやりがいがあった」と振り返る充実した1年となった。

 そして迎えた最終学年。山本は主将に就任し、大きな改革を行う。それはチームの目標を『日本一』から『関東学生リーグ戦(リーグ戦)ファイナル4進出』へ下げるということだ。ラクロスの実力だけでなく、「人間性の部分を大切にしてラクロスを楽しむ。その先に勝利がつかめれば」という思いをチームメートに伝えると、良く評価してもらったという。こうして新たな目標の下、山本組が始動した。調整も順調に進み、7月に行われた早慶定期戦では負けはしたものの、前年に学生日本一を果たした強豪・慶大相手に自分たちのラクロスを繰り広げる。夏合宿を経てさらにチーム力が高まり、ついに最後のリーグ戦が始まった。最初の2戦で接戦をモノにし、幸先良くスタートできたように思えたがここからが試練だった。続く試合で強豪の明大から接戦を落とし、ファイナル4進出に向け後がない中で迎えた青学大戦では、劇的な逆転負けを喫する。目標達成の可能性がなくなった中での2試合も敗れ、結果としては2勝4敗、2部との入替戦に出ることに。思うようにいかないリーグ戦で、「いつ心が折れてもおかしくないぐらいしんどい場面もあった」が、そんな状況でも山本は下を向かなかった。「自分の取りえは元気な姿で、背中でチームを引っ張ることしかないと思っていた」という山本は、OGなどからの励ましの言葉もあり、空元気ででもチームを明るくさせようと努める。その頑張りもあり入替戦ではチームは13-2の快勝を収め、チームは1部残留を決めた。試合後、山本は安堵感とともに、「他の大学では味わえないようなつながりや喜びを感じられた時は、早稲田の女ラクに入って良かったなと思う」と、ラクロス部での大学生活の充実感を口にした。

攻撃を見守る山本

 山本は主将を務めたこの1年、「誰かの原動力に」という言葉を何度も言ってきた。「ワンプレーワンプレーとか、プレー外での一つの行動、どれを取っても原動力に行きつく」と、自分たちの行動について強く説いてきた。そんな山本の常に笑顔を絶やさず、元気良くチームを率いていた姿は、必ずや誰かの原動力になっていたはずだ。そして、仲間と苦難を何度も乗り越え、ラクロスをやり切ったこの4年間は、これからの山本自身の原動力になるだろう。

(記事、写真 田中駿祐)