前半 | 後半 | 計 | ||||||||
早大 | 3 | 2 | 5 | |||||||
慶大 | 1 | 2 | 3 | |||||||
▽得点者 山邊2、吉見2、倉田 |
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「ワセダ、ワセダ、シアワセダ!!!」。早大ラクロス部女子の歓喜の声が慶大日吉陸上競技場にこだました。先制点こそ献上したが、第2クオーター(Q)1分にMF吉見彩(スポ3=早稲田渋谷シンガポール)の得点で勝ち越すと、リードを維持したまま最終Qへ。8分には吉見が勝負を決定づけるフリーシュートを沈めて5-3。試合はこのままタイムアップとなり、2-9で大敗を喫した昨年の雪辱を果たし、3年ぶりに早慶定期戦(早慶戦)で勝利を収めた。
試合開始のドローを確保したのは慶大。早大ディフェンスの外側で丁寧にボールを回してポゼッションする慶大に対して、なかなか主導権を握ることができない。5分にはMF溝口友梨奈(3年)のフリーシュートで先手を許す。それでも、8分に自陣でグラウンドボールを拾ったMF湯浅愛子(人4=神奈川・日大藤沢)から前線で動き出したAT関口安香里(スポ4=東京純心女)にロングパスが通る。惜しくも得点とはならなかったが、今年取り組む『ランアンドガン』スタイルが徐々に機能し始める。11分、素早いパス回しで揺さぶり、最後は慶大守備陣を振り切ったMF山邊七菜子(基理2=日女大付)がフリースペース・トゥ・ゴールの侵害を誘発してフリーシュートを獲得。これを山邊が落ち着いて流し込み、振り出しに戻した。第2Qは一進一退となった第1Qから一転、早大ペースで進んでいく。1分、リスタートのボールを受けた吉見が相手ディフェンスを5人抜き去り、圧巻のランシューで逆転ゴールを奪うと、3分にはMF倉田瑠々(文構2=東京・早実)がフリーシュートを決めて追加点。その後は連動したプレスで慶大に好機をつくらせず、2点差をつけてハーフタイムを迎えた。
得点を決め喜ぶ選手たち
第3Q6分、MF日野美咲(3年)に技ありのショットで1点を返されはしたものの、最優秀選手賞を受賞したG稲田初絵(スポ4=東京・国分寺)が安定したセービングを披露して流れを渡さない。オフェンス陣は積極的に1on1を仕掛けていき、慶大ゴールに迫る。するとエンドが変わった第4Q2分、スペースに走り込み、吉見のパスに反応した山邊がこの日2点目を決めて4-2。7分には再度1点差とされるが、1分後にゴール正面の絶好の位置でのフリーシュートを吉見がネットに突き刺した。そしてついにその瞬間が訪れる。5-3で試合終了を告げる笛と共に、フィールドの選手たちは一斉に駆け寄って熱い抱擁を交わす。現4年生が1年生の時以来、実に3年ぶりの早慶戦勝利に酔いしれた。
3年ぶりの優勝に笑顔あふれる選手たち
宿敵・慶大に早慶戦の通算成績で5勝20敗1分と大きく負け越しており、関東学生リーグ戦(リーグ戦)でも幾度となく苦汁を飲まされてきたが、今季は東京六大学リーグと早慶戦で2連勝。新ルール施行によって、フィールドプレーヤーは12人から10人となり、従来よりピッチの大きさも広くなった中で、オフェンシブなラクロスを存分に発揮している。攻撃面では、『ランアンドガン』を合言葉に、スペースを活用しながら手数をかけずにゴールへと襲い掛かった。一方守備面では、一人一人が対峙(たいじ)する選手に粘り強く食らい付いた。「狙っていることはみんなできているので、あとは今後技術面を高めてリーグ戦に向けて詰めていこうと思っています」(MF竹野翠主将、政経4=東京・西)。勝ってかぶとの緒を締め、竹野組が悲願の日本一に向けて勝負の夏をまい進する。
(記事 石井尚紀、写真 村上萌々子)
コメント
竹野翠(政経4=都西)
――今の気持ちを教えてください
率直に嬉しいです。自分たちが1年生の時に4年生が早慶戦勝利っていうものを見せてくれて、それ以来ずっと負けてて、自分たちの代しか早慶戦勝利を見たことがなかったけど、今年勝利することができて、後輩たちに同じような喜びを繋げていけたと思うので
、二重で嬉しいです。
――優位に試合を運んでいました。チームでなにを意識してプレーされてましたか
慶應が後半に強いってことはずっと言われてたので、前半からガンガン攻めていって、前半にリードするのと、それを後半に繋げていきたいと思っていました。
――今年は『ランアンドガン』というスローガンを掲げていますが、六大戦からチームはどのように成長してきましたか
今日もけっこうランアンドガンは意識してて、表現できてた部分もいっぱいあったんですけど、やっぱりランアンドガンをする上で基礎技術が追いついていない部分がありました。狙ってることはみんなできてるので、あとは今後技術面を高めてリーグ戦に向けて詰めていこうと思っています。
――今後に向けた課題を教えてください
先ほどと重なる部分もあるんですけど、やっぱりランアンドガンをするための技術力をもっと詰めるってことと、アタックの得点力がまだまだ低いなと思ったので、アタックでいかに点を取るかっていうのをもっともっと考えなきゃいけないなと思ってます。
AT前田桃子副将(政経4=埼玉・早大本庄)、MF宮尾和佳奈副将(スポ4=福島・白河)
――3年ぶりの早慶定期戦勝利となりました
宮尾 3年ぶりというのが大きいです。
前田 私たちが勝利を見た最後の代だったので、なんとしても(負ける)流れを止めたいと思っていました。
――今年の東京六大学リーグでは慶大に勝利を収められていましたが
宮尾 でも慶応はそういうときに強いので、そこは緊張感を持ちながらやりました。
――チームとしてきょうの試合のプランはありましたか
前田 自分たちの『ランアンドガン』という走ってどんどん点を取りに行くという姿勢は変えずにやっていこうと心掛けていました。
宮尾 とりあえず速くゴールに向かうという意識…。
前田 相手のディフェンスがセットされていない状態で点を奪いにいくというのは意識しているところです。
――守備面では慶大がパスの出しどころにてこずっているように見えました
宮尾 プレッシャーをかけることを今年は意識していて、ATが頑張って走ってくれている分、ディフェンスは締めて守っていこうという共通認識ができて良かったです。
――目標の日本一に向けてこれからどのように過ごしていきたいですか
前田 上の方に「やりたいことは明確だけど基礎技術が追い付いていない」と言われたので、そこを詰めて、夏の暑い場でも走っていけるような体力づくりもしていきたいです。
宮尾 リーグ戦までまだ時間があるので、自分たちのやりたいことを見直して、詰めていきたいです。
金久保真優 (政4=東京・早実)
――今回最後の早慶戦となりましたが、試合を終えた今の気持ちをお願いします
勝ちたいという思いと、本当に勝たなきゃという思いがあって。だからうれしいという気持ちもあるんですけど、勝てて良かったという安心感も結構多いです。というのも私たちが1年生の時の4年生が優勝しているのを見ている最後の代というのもありますし、なんだかんだここぞというときに1、2年負け続けていて。私たちも正直チームとしての自信もなかったので、ここで1回勝つことで今後の日本一に向けての大きな自信になって、チームがまとまるきっかけになったんじゃないかなと思います。
――きょうのチーム全体のプレーについてはいかがでしょうか
私はディフェンスのリーダーをしているので、ディフェンス面について言わせていただくと、今年のディフェンスは元からの個の力が強い子が本当に多くて、連携自体は早慶戦ということで最初は委縮しちゃって思い切った連動だとか、みんなで奪いに行くというのがなかったかなと思うんですけど、やっぱり個の力を信じて思い切り奪っていこうというのを途中から意識して、修正できたと思います。ディフェンスでつらい流れの時も耐えて勝利につなげられたんじゃないかなと思います。
――ご自身としては今回の慶大戦でどのように守っていこうと思いましたか
六大学戦で課題だったのが、ゴール前で守れそうなのに最後ポロっと落としたボールを私たちが取り切れなくて打たれてしまうだとか、やられるのがわかっていたのに、こっちの寄せが甘くて最終的に打たれてしまうという、私たちのミスが続いたゆえのものが多かったなということでした。なので、そこはしっかり絶対になくして、慶大を変に意識しすぎずに私たちが絶対にやりたいプレーというのを強くやっていこうと決めていました。
――次のリーグ戦に向けてどのようにチームを作っていきたいと思いますか
ディフェンス自体は、きょうの早慶戦で自信はついたと思うんですけど、やっぱりチームのディフェンスとしてはまだまだな点があると思うので、そこの連携力を高めたいと思います。チーム全体としては、やっぱり早慶戦とかこういう大事な試合の時に出れる選手というのが少ないと思うので選手層を厚くしたいというのと、下級生も上級生もしっかり自分で考えてみんなに発信して、自信をもってみんなでプレーができたらどんどんチームがまとまってくるんじゃないかなと思います。
稲田初絵(スポ4=東京・国分寺)
――きょうのプレーを振り返っていかがでしたか
早稲田はずっと負けていたので、今年は絶対に勝とうと、最初の入りからチーム全員で強気で、勝ち気で行こうという良い雰囲気で入れたので、プレーも最後まで粘ってできたので、勝ち切れたかなと思います。
――ディフェンスはどのように意識してプレーされていましたか
ディフェンスは今年、奪うディフェンスというのが目標なので、最初から気を抜かないで、ディフェンスが受け身にならないように、強気で奪うディフェンスをしていました。
――きょうは奪うディフェンスを出すことはできましたか
結構低くなってしまったりとか、奪いきれない部分もあったのですが、よく粘ったなと思います。
――最後の早慶戦でしたが、どのような気持ちできょうは望まれましたか
最後の早慶戦で、早稲田は3年前に勝ってから勝てていなかったので、私たちが後輩にここで勝つ姿を見せないと、早稲田が勝った姿を見たことがない代だけになってしまうので、それもあって絶対に勝ちたい気持ちがありました。その気持ちでチーム一丸となってスローガンで『挑む』とあるように、みんなで挑戦者の意識をもって、最後まで戦い抜けたと思うので、勝ちにつながったと思います。
――昨年は敗れて優秀賞、今年は勝ってMVPに選ばれましたが、早慶戦になると燃える部分はありますか
そうですね。早慶戦はゴーリーが点を入れられてしまうと、それが全てで失点されると負ける、本当にゴーリーの責任なので、自分が絶対に止めようという意識で、早慶戦だけではないですけど、そういう気持ちで挑みました。
MF吉見彩(スポ3=早稲田渋谷シンガポール)、MF倉田瑠々(文構2=東京・早実)
、
――今の率直なお気持ちを聞かせてください
倉田 早慶戦で勝ちたいと思ってこの4ヶ月やってきたので嬉しいです。
吉見 大好きなチームで勝てたのでとても嬉しいです。
――試合振り返っていかがですか
倉田 個人的にはショットを打つシーンがたくさんあったのですが、それが決めきれなかったのが悔しかったです。チームとしては相手に決められてもそこで崩れないで、自分たちの流れを最後まで維持できたので良かったと思います。
吉見 DF陣がボールを奪ってくれたりショットを止めてくれたりしたのですが、それをクリアで焦ってしまってうまくつなげなかったりアタックセットで点につねげなかったのは悔しかったです。でも結果的に勝ちきれたので皆の自信になったと思います。
――流れを相手に渡さなかった理由は何だったと思いますか
倉田DFがいつもだったら崩れてしまうような場面で、きょうは自信に溢れていて見ていて安心感がありました。それによって、チーム全体としても良い流れをキープできたのではないかなと思います。
吉見 いつも通りのプレーをしていたら勝てると確信していたので、普段の冷静さを保っていこうという声かけをしたり、同点になっても色んな戦略を考えていたりしたことが、良かったかなと思います。
――4年生が多い中下級生として出場しているという点で、特に意識することはありましたか
倉田 1Q目はすごく緊張していて頭の中が真っ白だったのですが、プレーしていくと普段の感覚がだんだん戻ってきて、先輩方がフォローして下さったこともあり、思いっきりプレーすることができました。
吉見 初めての早慶戦で緊張していたのですが、先輩方が何も考えずにいつも通り楽しんで、とか暴れてこい、といった優しい声かけをたくさんして下さったのでいつも通り落ち着いてプレーすることができました。
――この先のリーグ戦に向けて意気込みをお願いします
倉田 チームの目標は日本一ですが、今のままでは届かないと思うので、これから基礎力も応用の部分もどちらも鍛えていって強くなって勝ちたいです。
吉見 きょねん一昨年で、日本一の高い壁を見てきたのでこのままでは届かないと思うのですが、早慶戦勝てたことがいいステップになったのかなと思うので、このままいい流れでリーグ戦に向かっていけたらと思います。
――これから強化していきたいところはありますか
倉田 自分としては、まだ強いプレッシャーの中での基礎など基本的なことがまだまだだと思うのでリーグ戦に向けて確実にしていきたいです。チームとしては、きょうの早慶戦みたいに流れの中でも自分たちの気持ちを上げていけるようにしていきたいです。
吉見早稲田は毎年DFが強いチームと言われているのですが、ATリーダーの私がもっとATを強くしたいです。きょうもロースコアでしたが、もっと得点して、DFが守ってくれている分大差で勝てる試合をつくってっていきたいと思います。