地方勢の勢い(岡山大、名大の勝利)
2025年、大学ラクロス界に衝撃が走った。広島会場で開催された全日本大学選手権準々決勝。中四国1位の岡山大が関西王者・京大を撃破し、2019年以来崩されていなかった関西の壁を突破した。関東王者・明学大と名大が激突した準決勝でも、サドンビクトリーの末に名大が劇的勝利。東海地区勢として初の決勝進出を決め、歴史的快挙を成し遂げた。地方勢が決勝の舞台に上がってくるのは、2019年の東北大以来となる。
早大リーグ戦全勝
その前に立ちはだかるのが、伝統と実力を兼ね備えた古豪・早稲田大学だ。そんな彼らも、関東学生リーグ戦(リーグ戦)当初は、明大戦、獨協戦、東大戦と一点差での勝利が続いた。転機となったのは、リーグ4戦目の明学大戦。8-3で明学大を下し、チームとして掲げる10点台に大きく近づいた。リーグ戦を通して、僅差で勝ち切るチームから相手を圧倒するチームにまで成長した野澤組。積み上げてきたその強さを武器に、リーグ戦全勝、そしてFINAL4突破と着実に学生日本一への歩みを進めてきた。

歓喜に包まれたFINAL4
準々決勝、準決勝での歩み
全日本大学選手権でも早大のその強さは遺憾無く発揮される。準々決勝の福岡大戦。アウェイ独特の空気感をものともせず、序盤から猛攻撃を仕掛ける。試合を大きく動かしたのは、この試合MVPに選ばれたMF小林三四郎(教4=神奈川・浅野)。彼の得点を皮切りに一気に相手を突き放し、8-2で準決勝進出を決めた。
決勝進出をかけた大一番の相手は、関西王者・京大を撃破し、勢いに乗る岡山大。下剋上を狙い、先手先手で攻撃を仕掛ける相手に対し、早大は持ち前の固い守備で対抗する。さらにこの試合では、早大の強みであるフルフィールドオフェンスが存分に機能した。ディフェンスの選手も積極的に攻撃に参加し、誰もが得点を決められるチームへと変貌。こうして早大は岡山大との一戦を制し、6年ぶりの優勝に大手をかけた。

決勝進出を決めた岡山大戦
最終決戦でのチームのキーマン
決勝戦では拮抗(きっこう)した試合展開が予想される。簡単には引き下がらない名大に対し、早大がどこまで主導権を握り、リードを広げられるかが勝負の鍵となる。その中でチームに流れをもたらし、目標に掲げる10点台に乗せるにはこの男の活躍が欠かせない。準決勝の岡山大戦でもその決定力を余すことなく発揮し、チーム最多となる4得点を記録したAT花井コルトンヘイズ(国教4=アメリカ・マッキントッシュ)。9歳から磨いてきた彼の技術はまさしく本物だ。どこからでも打てるポテンシャルの高さを武器に、決勝の舞台でも存在感を示したい。
強力なオフェンスユニットを中心となって作り上げてきたAT小川隼人(政経4=東京・早実)にも注目だ。彼こそが、早大の攻撃陣を束ねる真の司令塔。広い視野で攻撃を組み立て、勝負どころでは自ら点を奪う。幾度となくチームを救ってきた頼れるオフェンスリーダーが、この日もチームを勝利へと導いてくれることだろう。
さらには、攻撃の原点ともいえるグラウンドボールの精度の高さにも注目したい。中でもDF野澤想大主将(政経4=東京・桐朋)、DF中原健太副将(商4=東京・早大学院)はチーム内屈指の実力を誇る。日本代表に選出され、高いレベルでその技術を磨いてきた二人。技術面、そしてメンタル面でも常に仲間を鼓舞しづけてきた。「先輩たちの過去の思いも背負って勝ちにこだわりたい」(野澤)。そう心に誓い今シーズンを走り抜いてきた二人が、主将・副将として、部訓「巧より強たれ」を背中で示す。

「今、ここ、自分」を体現しよう
6年ぶりに青木組が成し遂げた偉業を再び
チーム一丸となって歩んだその先に、どんな結末が待っているのかは誰にもわからない。それでも選手らは、試合終了のホイッスルがなるその瞬間まで、泥臭くボールに食らいつく。育成リーグ、Bリーグ、新人戦ウィンターカップと、チーム一丸となって全カテゴリー優勝へのタスキをつないできた。その想いも背負って、最後まで自分たちのラクロスを貫き通そう。全カテゴリー優勝という偉業へ、残されたピースはあとひとつ。仲間が見守る最高の舞台で、自分たちの4年間の答え合わせをしよう。いよいよ学生王者の座をかけた、最後の戦いが幕を開ける。
(記事 高津文音)