土壇場で大逆転劇!勝負強さ光り優勝果たす

男子ラクロス
1Q 2Q 3Q 4Q 延長
早大
慶大
▽得点者
青木俊汰2、中小路2、岡田、大村、丸太、宮脇

  今年で27回目を迎えた伝統の一戦・早慶定期戦(早慶戦)。毎年盛り上がりを見せる一戦だが、今年は例年をはるかに上回る劇的な展開をみせた。前半をリードして終えるも、第3クオーター(Q)に3失点と崩れ、迎えた第4Q。激しい追い上げを見せると、試合終了まで残り45秒のところでAT青木俊汰主将(法4=東京・早大学院)が同点弾を決め、決着は先にゴールを決めたチームの勝利となるサドンデスへ。最後はMF中小路渉(社4=埼玉・川越)が終止符を打ち、8−7で試合終了。早大は鮮やかな大逆転劇を演出し、2年連続の優勝を果たした。

  慶應のアタックは凄まじかった。AT岡田康平のゴールで幸先よく先制したものの、その後はディフェンスが忙しい。隙を突かれ無人となったゴールに放たれたショットを、DF青木秀斗副将(人4=東京・城北)がなんとかかき出すヒヤリとした場面も見られた。第2Qになっても相手の勢いは変わらないが、それで黙っている早大ATではない。めまぐるしく攻防が変わる中で、少ない好機を逃さなかった早大は、3−2とリードした状態で前半を終える。しかし第3Q、なんとか封じてきた慶應のアタックがついに火を吹く。G勝本勇人(社3=東京・早大学院)が幾度もスーパーセーブを見せるも、フェイスオフを奪われ、終始早大ゴール周りで慶應にボールキープされた早大は、相手の勢いを止められない。ミスも加わり、一気に3失点。逆転を許し、試合は最終・第4Qを迎える。

先制し喜ぶ選手たち

  勝負の第4Q、流れを戻したい早大であったが、開始直後に失点すると、その後も追加点を奪われ、試合終了まで残り5分で2点ビハインドと非常に苦しい状況となる。攻撃の中核を担うAT青木俊主将もこの日は満足にプレーさせてもらえず、自慢の得点能力が影を潜めていた。それでも青木俊はこの逆境を悲観していなかった。「絶対いつかチャンスが来るから、その時にきっちり仕事ができればいいなって思ってプレーしてた」。熱がこもるスタンドの応援を後押しに、ここから、早大の猛反撃が始まる。残り2分、青木俊がゴール前右サイドから振り抜き1点を返すと、直後のMF半場涼介(スポ4=都東大和南)のショットは惜しくもゴールポストを直撃。試合終了が迫り、息をのむような展開の中、残り45秒、ゴール裏のDF奈須由樹(文3=東京・早実)からのパスを受け取った青木俊が正面から放った強烈なロングショットは、慶應のゴールネットを揺らした。土壇場で同点に追いついた早大。決着は先にゴールを決めたチームの勝利となるサドンデスへと持ち越される。

  会場のボルテージは最高潮の中で迎えたサドンデス。「絶対に勝つという感じでした」(中小路)と、気合い十分の早大は、いい流れをそのままにフェイスオフを奪い、一気に相手ゴール前までボールを運ぶと、パスをつなぎ、相手の一瞬の隙を待った。パスが中小路に渡った時、その一瞬は訪れた。「一番練習していた形でのシュートでした」と中小路が振り返る左サイドから振り抜いたショットは、相手ゴールにまっすぐに突き刺さった。スコア8−7。この瞬間、激動の試合に幕が下された。

土壇場で同点弾を決め笑みを見せる青木俊主将

  六大戦(東京六大学リーグ)から約1ヶ月。青木俊主将は「決して順調ではなかった」と振り返る。しかし、青木俊主将だけにとどまらず、多くの選手の口から出たのが、4月末に行われた早慶戦合宿での成長だった。「早慶戦合宿でみんなで腹を割って話して、そこから勝利への執念を持つことができた」と青木秀副将。プレーしている選手だけでなく、ベンチ、スタンドの全員が一つになったからこそ、このような劇的な勝利を収めることができたのだろう。シーズン前半のヤマ場と位置付けられている早慶戦を見事優勝という結果で終えた青木組。『真の日本一』という目標は確実に近づいている。チーム全員でつかんだこの日の喜びを胸に、青木組のさらなる成長に期待だ。

(記事 中島和哉、写真 石井尚紀、村上萌々子)

男女でのアベック優勝は13年ぶりの快挙

コメント

AT青木俊汰主将(法4=東京・早大学院)

――今日の試合を振り返っていかがですか

早慶戦は苦しい展開になるとは予想してたので、いい意味で予想通りというか、心の余裕度としては、こういう感じかなというメンタルで自分はいましたね。

――優勝して率直な気持ちはいかがですか

この時期なので、内容がどうこうよりは結果にこだわろうという話は試合前からずっとしてたので、内容はいい内容とは言えなかったんですけど、最後まで出てた人たちも諦めずにやったし、それをやれたのもスタンドの、メンバーに入れなかった部員であったり、OBの方であったり、保護者の方であったり、早稲田が一丸となって、最後の最後まで諦めないで応援してもらえてたことが、最後にこうして勝利に繋がったのかなって、今本当に強く思うので、率直に嬉しいですし、この一丸になった感じをまたリーグ戦でもみんなで作っていけたら、また勝ちに繋がるのかなって思うので、すごい嬉しい気持ちと、すごい学んだなって気持ちが今ありますね。

――第4Q、土壇場で2連続ゴールを決めました。得点を振り返っていかがですか

試合を通して本当に自分がなかなかオフェンスにも絡めないような形で、自分の思いどおりにいかなかったし、慶應のディフェンスが上手かったのでさせてもらえなかったっていうのもすごいあったんですけど、冷静にっていうのを試合前からすごい思ってて、絶対いつかチャンスが来るから、その時にきっちり仕事ができればいいなって思ってプレーしてたので、土壇場でああやって点を決めれたっていうのは、これからずっとプレーをしていく中で、いい経験になったというか、なかなかこういう展開で、このくらいの観客の前で、あの局面で、シュートを打てる機会がないと思うので、その中でしっかり結果を出せたのは、少しは成長したのかなって気持ちが自分の中でありますね。

――六大戦(東京六大学リーグ)で唯一勝てなかったのが慶大でした。そこから1ヶ月、チームはどのように成長しましたか

いいことだけじゃなくて、けが人だったり、チームでやろうと決めた方針に対して、なかなかチームにコミットせず、変更したり、色々と、決して順調じゃなかったんですけど、最後の2週間、早慶戦合宿くらいから、本当にチームが一つになっている感じが自分の中にあって、自分自身もちょっと変えた部分があって、それがチームに対してコミットしたなって感じもあるので、Aチームだけじゃなくて、B(チーム)、C(チーム)、コーチの方を含め、チームが一丸になっているのをすごい感じてここ1ヶ月過ごしてました。

――今後に向けて課題はありますか

本当に内容がひどかったので、そこはしっかりみんなで反省して、修正して、またもう一段階、二段階さらに強い場所っていうのを見せていかなきゃいけないので、しっかりリーグ戦に向けて、もっと競争意識を高めながら、今日出てないメンバーがリーグ戦出るのも全然ありえると思っているので、もっと競争意識をみんなんで高めていって、もっと強い早稲田をリーグ戦でみなさんに見せれたらなって思っています。また日本一目指して頑張っていきたいと思います。

DF青木秀斗副将(人4=東京・城北)

――今のお気持ちはいかがですか

結果として勝てたことが良かったです!

――慶大には強力なATの選手がそろっていましたが

どういうプレーが多い、といったスカウティングを一人一人にフォーカスしてやって、対策をしてきたんですけど、やっぱり本番のスカウティングでは分からないところ、向こうの立石(AT立石真也、3年)とかは1年生から出ていて3年目で、自分は今年が初めてで、彼の方が場慣れしていて一枚二枚上手だったなと正直なところ感じました。

――第1Qには無人のゴールに放たれたボールをかき出されました

勝本(G勝本勇人、社3=東京・早大学院)がグラボに寄ったんですけど、ちょっと取られそうだなと思って、今何をやれるかと考えた時に、最終的に決められなければいい、というのが早稲田のディフェンスのスタイルなので、マークは結構付いていて、空いている選手がいなかったので、自分がゴールマウスに入りました。

――きょうのご自身のプレーの評価は

かなり集中して入りからできて、何個かボールダウンをできたシーンやグラボを拾ってファウルを誘えたシーンがあったので、そこは良かったと思うんですけど、第3Qの途中くらいから足がつっちゃって、去年もあまり多く試合に出られる選手ではなかったのです、フルで出るとなると考えが甘かったなと思いました。早慶戦で終わりではないので、リーグ戦に向けて、自分の弱点、チームの弱点をいい意味で分かったと思うので、解消していきたいです。

――早大の得点後にはDF陣でも盛り上がっているように見えました

雰囲気はかなり良かったです。シーズンが始まってからやばいかなと思う時期があったんですけど、早慶戦合宿でみんなで腹を割って話して、自分の思いも伝えて、そこから一球にこだわるとか、勝利への執念を持つことができて、それを落とさずに早慶戦まで持ってくることができたのは良かったです。

――これからの試合に向けてどのように取り組んでいきたいですか

いい意味でも悪い意味でも注目度はどんどん高まっていると思いますし、その中でおごることなく、目の前の一戦一戦を戦い抜く、一球一球にこだわる、といったところをチームとして全員ができるようになれば、結果も付いてくると思います。目標に掲げているのは日本一なんですけど、日本一だけを見ていて日本一が取れるほど甘い世界ではないので、一戦一戦、一球一球、大事に戦っていきたいです。

G勝本勇人(社3=東京・早大学院)

――今はどのようなお気持ちですか

本当にうれしいの一言に尽きます。

――DF陣はきょうの一戦にどのように臨まれましたか

シーズン当初から攻めるラクロスをしてきて、それが甘い部分がまだまだあって、失点してしまう部分もあったんですけど、うまくいったところもあって、こういう結果に結び付いたと思います。

――接戦となりましたが、どのような心境でプレーされていましたか

ゴーリーは一瞬の勝負なので、かなり緊張しました。でも今メントレリーダーをやっていて、心を乱さないでできたので良かったです。

――ご自身のセービングはいかがでしたか

紙一重でした。いい風に転がって良かったなという安心の気持ちです。

――4年生ゴーリーとして、最後尾からチームを盛り立てられている印象でした

ゴーリーが一番周りを見ることができるポジションなので、そこは意識しています。

――今後の試合に向けて意気込みをお願いします

ステップアップしていかなければいけないと思うので、DF陣はシーズン当初から目指してきた、攻めるディフェンスを詰めていきたいです。

MF中小路渉(社4=埼玉・川越)

――今の率直なお気持ちはいかがですか

スポーツっていいなと思いました。自分の思い描いていた幸せな形になったので、皆で頑張ってきて良かったなと思いました。

――試合を振り返っていかがですか

途中慶應の流れになってしまったところで、MF青木俊汰(主将、法4=東京・早大学院)が2点決めたのはさすがキャプテンだなと思いました。

――苦しい展開の中でも諦めなかった理由はありますか

自分と仲間を信じ切っていたので、絶対勝てると思っていました。

――攻撃陣は昨年からメンバーが大きく入れ替わっていますが、そこは振り返っていかがですか

今年のオフェンスは弱いと色んな人から繰り返し言われて、すごく悔しかった思いもありました。ただ今年のオフェンスメンバーはお互い言いにくいことも全て言い合えて、良い関係だったので、新体制始まってから4ヶ月くらいですごく成長したと思います。それがこういう勝利という結果に繋がってすごく嬉しいです。

――チームとして特に強化してきたところはありますか

グラボの接点とかを、ニュートラルな部分での取り組みを、ハードワークを意識していたので、そこでは絶対負けないようにしようと思っていました。きょう実際負けていなかったので体現出来ていたと思います。きょねんの先輩方が残してくれたものなのですが、それをリーグ戦、プレイオフともう一段階レベルアップしていきたいと思います。

――試合の中でのターニングポイントとなるシーンはどこですか

二つあります。一つはAT大村(雄太郎、政経4=東京・早大学院)のエキストラでの左手のシュートなのですが、彼とは1年生の時から夜一緒に自主練をしていたのですごく感動しました。二つ目は青木俊汰の2得点ですね。キャプテンである彼があのように決めるというのはチームにすごく大きく影響を与えてくれて、さすがだなと思いました。

――決勝点を決めMVPにも輝きました。振り返っていかがですか

決勝点は一番練習していた形でのシュートでした。それがあの場面で入ったというのは今思うと日々の積み重ねが特別になるのだなと思います。とても嬉しかったです。

――延長戦に入る前のチームの雰囲気はいかがでしたか

絶対勝つという感じでした。あの状況だともう気持ちしかないと。気持ちが全面に出た結果、フェイスオフを取ってくれてオフェンスに出来て、皆がつなげてくれたパスを決められたのですごく良かったです。

――最後の早慶戦でした

自分は2年生と3年生の時、直前でけがをしてしまって、すごく早慶戦への思いは強かったので、最後の早慶戦でチームの勝利に貢献出来たこと、最高の仲間と最高の興奮と感動を味わえたことがこの上なく嬉しいです。

――この試合で見つかった、リーグ戦に向けて克服したい課題などありますか

具体的には整理できてないですが、間違いなく今年のオフェンスというのは昨年と違って1月から作り上げているもので、まだまだ本当に未完成で伸びしろしかないと思っています。なのでリーグ戦まで日々成長してリーグ戦とプレイオフも勝ちにいきたいと思います。

――リーグ戦に向けた意気込みをお願いします

きょうは勝てて良かったし素晴らしいことなのですが、まだまだシーズン長いので決して満足することなく、日々の練習を大切に積み重ねていきたいと思います。