フィールドスポーツにおいて、得点を決めるのはオフェンス陣と思われているかもしれない。だが、早大ラクロス部のディフェンス陣はその概念を超越する。関東屈指の堅い守りで失点を許さないだけではなく、相手から奪ったボールを一気に前線まで運び、時には得点もあげる攻守ともに長けたディフェンス陣なのだ。第2回目の今回は、早大ディフェンス陣の要であるG勝本勇人(社4=東京・早大学院)、DF中島大介(社4=東京・早実)、DF奈須由樹(文3=東京・早実)、DF平塚弘喜(政経3=東京・早大学院)の4名にお話を伺った。
※この取材は10月9日に行われたものです。
昨年から主力として活躍する先輩後輩の仲の良さが伺えました!
「のびしろがあるチーム」(平塚)
――今年のチームについてどのような印象をお持ちですか
中島 いい意味で真面目かなと思います。頭いい部分もあるし頭かたい部分もあって。ラクロス脳自体はあって、やればできるんですけど、できなかったり詰められなかったりっていう甘さもあります。
平塚 今年のチームはのびしろがあるチームだと思っています。昨年は4年生が主力のほとんどのチームだったので、その主力がごっそり抜けて初めて試合出る人が多い中で、開幕戦の慶応戦に負けてからしっかり修正できた部分が多くて、チームの伸び具合が大きいチームかなと思ってます。
――チーム結成の時、今年はどのようなディフェンス陣にしようとお話しされていましたか
奈須 先生お願いします。
勝本 中島大先生お願いします。
平塚 (中島選手は)みんなから先生って呼ばれてるんですよ。
中島 去年は攻めるオフェンス、攻めるディフェンスということで、前からどんどん奪おうとしてたんですけど、今年は去年ほど点を取られずにしっかり守りきって、奪えるところで奪うという形で、隙を見せず隙を突くというのを目指してやってきています。
機転の効いた頭脳プレーが魅力のDFリーダー・中島
――リーグ戦5試合は4勝1敗でブロック2位通過でした。振り返っていかがですか
奈須 苦しかったですね。
平塚 初戦で慶応に負けたのが精神的にきつくて、これ以上負けられないという状況の中で4試合戦わなければいけなかったので、そういった面では背水の陣というか、プレッシャーの中で戦い抜けたのは自分たちの強みになったので、ファイナル4で追いつかれても最後勝ち切れたのかなと思います。
――特に印象に残っている試合はありますか
勝本 開幕戦だな。
平塚 あの日最初雨でめちゃめちゃ寒かった。
勝本 後半晴れて、クロスの感覚が変わって大変でした。早慶戦(早慶定期戦)もギリギリの試合だったので、おごらずしっかり準備して行ったので、油断はなかったんですけど。
――そして迎えたファイナル4。振り返っていかがですか
中島 苦しかったね。
平塚 苦しかった。
奈須 相手のオフェンスに上手く崩されたのではなくて、自分たちのミスから崩れて、それに対応できず失点というのが何個も続いて、すごくもったいない失点ばかりでした。オフェンスがあんなに点を取ってくれているのに、ディフェンスが守り切れなかったのがすごい印象的です。
――勝本選手はスーパーセーブを連発されていましたね
平塚 勝本さんはすごいんですよ。ほんとに。勝本さんがいるから、僕たちは前向いてディフェンスしていられるわけで。
奈須 勝本さんが調子悪い日あんまり見たことないです。基本いつも止めてくれます。
勝本 結構苦しかったんですよ、その試合も。だけど、4年生っていうのもあって、最後まで楽しもうという意識が強くて、どんなに辛くて緊張しても、自分のベストのプレーができていれば、それでいいかなという気持ちでやっています。
平塚 4Q(第4クオーター)で追いつかれて、結構暗い雰囲気になっていたんです。そんな時、秀斗さん(青木秀斗副将、人4=東京・城北)が「楽しんでいこう」と言っていて。それを見て自分とか勝本さんで「笑おう」と言い合っている中で、中島さんが本当に暗い顔していて(笑)。
奈須 めっちゃ拗ねてるんです(笑)。一人で端っこで歩いていて。
平塚 僕が(中島選手に)「どうしたんですか」と声をかけても「おう」しか言わなくて。あれ何があったんですか。
中島 あれはもう…ほっといてほしくて。
一同 (笑)。
中島 あの時は何も考えてなかったですね(笑)。
幾多ものピンチを救ってきた絶対的守護神・勝本
――リーグ戦をこれまで戦ってきて、個人としてはプレーの出来はいかがですか
勝本 全体的には良かったかなというのが個人的な感想です。開幕戦の慶応戦はかなりいいパフォーマンスができて、自分の中でも過去一番くらいの出来だったので、それが自信になって、そこからいい流れでここまでやってこれたという感じがします。毎日毎日積み重ねてやってきて、そのいい調子を維持できたのが、結果的にこの前の試合の良いパフォーマンスに繋がったのかなと思います。
中島 良くもなく悪くもなくという感じですが、毎試合必ず1ミスはしていたので、そこは直していかなければなと思います。でもできている部分も多々あったので、そこは良かったのかなと思います。
平塚 僕は今年のリーグ戦で点を取ることを常に意識していたんですけど、そう言っていると点が取れなくて。だから今回のファイナル4は何も言わなかったんですけど、やっぱり取れなくて。関係ないんだなと思いました(笑)。目標にしていた得点が取れなかったので、自分的には詰めの甘さがあったと思っています。
奈須 僕は去年リーグ戦でたくさんファールしてしまったんですよ。でも今年はファールを一つもしていないので、結構大人になったのかなと思います(笑)。プレー面でも、僕は点を取れたので(笑)。2点取れたので、良かったのではないかなと思います。
――リーグ戦に限らず、今シーズンを通して自分のここが変わった、成長したと感じる点はありますか
平塚 僕はオフェンスに対する意識が変わりました。今年は去年よりもフルフィールドオフェンスに力を入れていて、得点源にもなっているので、オフェンスへの参加が勝敗に繋がっているので、練習でも積極的にオフェンスの練習に入るようにしています。
奈須 僕は去年の対談でみんなから「怖い」と言われたんですよ。今年はだいぶ落ち着いたかなと思います。あと僕もオフェンス面では、法大戦から急にオフェンスの手応えを得られました。
中島 自分の1on1(1on1ディフェンス)の形を変えたかなと思います。クロスで行きがちだったところもプッシュで対応するように変えたりしています。去年よりは良くなっていると思います。
勝本 去年より確率の高いプレーを心がけています。去年はガンガン攻めるというコンセプトだったので、プレーでも隙を狙ってどんどん攻めていたんですけど、今年は中島がさっき言ったように、失点をしないというコンセプトだったので、それに合わせてしっかりやれたのが成長かなと思います。
――ことしのディフェンス陣の特徴はどのようなところにあると思いますか
勝本 器用だよね。なんでも出来るといえば出来るところが強みかなと思います。
平塚 色々な大学の守り方を真似してやることもあるんですけど、それをすぐ実践できてしまうので、一人一人が技術を持っていて、その集合体なのかなと思います。
中島 器用に関連して言うと、試合中の修正力も強みだと思います。第1Q終わった後の反省で、しっかり立て直せて、修正できて、結果第2Qの失点がすごい少なかったというデータもあるので、それも強みかなと思います。
――皆さんは昨年から主力として出場されていたと思いますが、ことしお互いよかったと思う点はありますか
勝本 長い付き合いなので、コミュニケーション取らなくても、だいたい何がしたいのか分かりますね。
中島 上級生に対して、下級生がいい意味でガツガツ行けると言うか、学年の壁はすごいいい環境でできていますね。
奈須 中島さんの扱い方が分かってきましたね。拗ねキャラと言うか(笑)。
中島 拗ねキャラやめよ。人の紹介のところで拗ねキャラって書かれるから。
奈須 これも喜んでますから(笑)。
平塚 中島さんは愛情表現が強めなんですよ。僕も去年結構言われてて、一時期バチバチしてたんですけど、よくよく考えてみたら、確かにそうだなという指摘が多くて。言い方が強いだけで言っていることは正しいし、不器用なんですけど、ほんとにいい人なんですよ(笑)。
勝本 いいフォロー。
平塚 中島さん、後で何か奢ってください。
中島 いいよ。
中島 やったー(笑)。
大きな体格を生かしたディフェンスが魅力の平塚
――ここからはプライベートのこともお聞きしていきたいと思います。今回ディフェンス陣の対談ということで他己紹介をお願いします
勝本 まずは自己紹介してもらうか。じゃあ、平塚。
平塚 高身長で、優しくて、ギャップが魅力的な平塚くんなんですけど、ラクロスでもその性格が出ていて、色々なところに気を配れて、視野が広いと良く言われます。
奈須 平塚のプライベートは結構謎なんですよ。あんまり言ってくれなくて。情報が回ってこないです。隠したがり屋。
平塚 照れ屋なんですよ。サプライズ精神(笑)。
勝本 中島は…。
平塚 中島さんは充実してますよ。試合にも友だちたくさん応援来てますよね。
奈須 (高校時代に早実で)後輩の僕でも知ってるような人も来てるんですよ。
勝本 中島は友達多いよな。愛されキャラ。
中島 愛されてはないね(笑)。
平塚 勝本さんは彼女大好き人間ですよ。彼女も勝本さん大好き人間です。
中島 確かに。
平塚 勝本さんは本当にすごいんですよ。本当に。
奈須 今日何回目だよ(笑)。
平塚 一途でかっこいいですね。奈須は…。
勝本 奈須はファイナル4日前から…。
平塚 (奈須は)勉強熱心なんですよ。
奈須 ファイナル4の4日前から介護体験実習というのに行っていて、一度も練習に行けませんでした(笑)。ファイナル4本番でいきなり試合で。
中島 結構怒られてたよね(笑)。
――オフの日は何をされているんですか
勝本 僕は筋トレしてUber Eats(ウーバーイーツ)でバイトしてます。
平塚 僕は午前中は寝て終わりますね。僕らの代はオフの前日にみんなで集まって遊んだりしていることが多いので。午前中は寝て、午後はバイトしていることが多いですね。
中島 僕は家庭教師です。
勝本 ほら、先生だ。
平塚 ホワイトボードで戦術を書くときも(中島さんは)書きたがるんですよ。そしてそのまとめが上手いという。そして指していくんです。だから中島先生なんですよ(笑)。
――試合前や試合前日のルーティーンや集中法などがあれば教えてください
平塚 僕は試合の前日の夜は、自分が食べたい、自分の好きなものを食べてますね。好きなものを食べて気合いを入れています。
奈須 僕は試合前にバラードを聴いています。みんな激しい音楽で(テンションを)上げていくじゃないですか。僕は(テンションを)上げると余計に緊張してしまうんですよね。だからゆっくり目の音楽を。
勝本 何聴いてるの?
奈須 back numberが多いです。
平塚 恋だな(笑)。
奈須 back numberしか知らないんですよ(笑)。
リーグ戦中に得点を決めガッツポーズをする奈須
「この4年間の集大成」(中島)
――ではここからはファイナル、そして今後に向けての質問をさせていただきます。ファイナルの相手が東大に決まった時はどう思われましたか
中島 自分は2年生の時から試合に出させていただいているので、この4年間の集大成の試合になるなと思って、楽しみにしています。
勝本 相手は東大になったんですけど、自分がやるべきことをやるだけなので、どこが相手とかはあまり思わず、自分がやるべきことをやろうと思っています。
奈須 ファイナルの相手が去年と同じ東大なので、面白いなと思いました。
平塚 僕は正直意外な部分もありました。個人的には慶大が来るかなと思っていた中で、東大が来たので、(東大は)接戦に強かったり、プレーオフに強かったりと、クセのあるチームなので、慶大に勝って来た東大とやるのは、ちょっと手ごわいかなと思っています。
――今後の試合において注目してほしいプレーや、ご自身の強みを教えてください
勝本 自分は結構フィールドに関与する動きをするのが好きなので、そういうところも含めて、ただ立ってるだけじゃないんだぞというところを見て欲しいです(笑)。
平塚 僕はオフェンス参加ですね。どれだけフルフィールドオフェンスで得点に関われるかを自分の中で意識しているので、ファイナルは点を取りたいですね。
奈須 僕はゴールパフォーマンスですね。点をもし取れたらクリロナ(クリスティアーノ・ロナウド)のゴールパフォーマンスを絶対にすると決めています。ぜひ後ろから見ていただきたいですね。ヘルメットをした後ろ姿はなかなかいい感じのものなので(笑)。
中島 僕は、去年はファイナルからライドが攻撃の起点になっていたシーンが多かったので、今年もライドをしっかりとやるのと、パスカットを見ていただければなと思います。
――キープレーヤーとなるのはどなただと思われますか
平塚 僕は同学年の菊池明彦くん(MF、商3=東京・武蔵野北)です。彼は応援がすごくて、彼の声はグラウンドを響き渡るんですよ。(試合中も)よく聞こえて来て、それが僕らの力になっていて、逆に相手の力を落としてくれているので、彼の声は今後の試合でも大事になって来ると思います。
奈須 僕は同じキャンパスの竹内凛くん(MF、文構3=東京・早大学院)です。いつも一緒に授業を受けてるんですけど、最近Aチームに上がって来まして。彼は中大戦のサドンデスでも臆することなく、「俺が行く。俺が出る」と言える強気のある選手です。且つ、最近Aチームに上がって来た選手なので、他大にも知られていないので、彼が東大戦で活躍してくれると、東大もびっくりするのかなと思います。期待してます。
中島 僕は宮脇くん(MF宮脇昇汰、商2=東京・早大学院)です。まだ2年生なんですけど、2年生とは思えないようなプレーをしていて、4年生のように頼れて、安心して任せられるような選手です。彼は基本ディフェンスなんですけど、オフェンス参加もできる選手なので、オフェンス陣とともに頑張って欲しいなと思います。
勝本 僕は小林大祐(AT、社3=東京・早稲田)ですね。ここまで勝ち上がってこれた要因は、彼の攻めきる力というか、得点力が大きいと思っていて。彼はものすごいプレーをするわけではないんですけど、確実に決めきる力とか、一人で考える力とかが秀でていて、そういう彼のひたむきなところがファイナルでも発揮されるのではないかと期待しています。
――最後に今後の試合への意気込みをお願いします
勝本 この時期までラクロスができているのはすごいありがたいことなので、この試合まで勝ち上がって来れたことへの感謝を忘れず、最後まで楽しんで、全力で東大にぶつかっていって、その先も続けられるように頑張りたいと思います。
奈須 ファイナル4同様、授業であったり、就活であったりと、ラクロス以外も大変な環境が続いてしまうんですけど、俺はこれだけ色々なことをやって来たからこそ、絶対に勝つぞという気持ちは誰よりもあるので、それを前面に発揮して頑張りたいと思います。
平塚 僕は点を取ります(笑)。
中島 4年間の集大成ですし、一昨年ファイナルで負けた時の悔しさも残っているので、駒二(駒沢公園第二球技場)での試合は絶対に勝ちきりたいなと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 中島和哉、髙橋さくら)
それぞれの意気込みを書いていただきました!
◆勝本勇人(かつもと・はやと)(※写真左)
1997(平9)年10月15日生まれ。176センチ、78キロ。東京・早大学院高出身。社会科学部4年。早稲田の守護神としてゴールを守る勝本選手。試合前日は蒸気でホットアイマスクをつけて眠り、当日の朝はブルーベリーを食べるというルーティーンがあるそうです。しっかりとケアされた目は、東大のどんなシュートも見逃しません!
◆中島大介(なかじま・だいすけ)(※写真中央左)
1998(平10)年1月3日生まれ。176センチ、71キロ。東京・早実高出身。社会科学部4年。SNSアプリ『Snapchat(スナップチャット)』を使っている中島選手。オフの日はスナップチャットで後輩の平塚選手と近況を報告し合うそうです。面倒見の良さで後輩からの信頼も厚いDFリーダー・中島選手を起点とした堅いディフェンスは必見です!
◆奈須由樹(なす・ゆうき)(※写真中央右)
1998(平10)年6月1日生まれ。174センチ、80キロ。東京・早実高出身。文学部3年。筋トレをするとすぐに筋肉が付くという奈須選手。その体格に目がいきがちですが、実は俊足の持ち主でもあります。高校の体育祭の200メートル走では、陸上部を抑えて学年1位になったことも。フィジカルだけでなく、スピードにも注目です!
◆平塚弘喜(ひらつか・ひろき)(※写真右)
1998(平10)年10月13日生まれ。186センチ、83キロ。東京・早大学院高出身。政治経済学部3年。試合前日は好きなものを食べるという平塚選手。ファイナル4の前夜はカルビをガッツり食べて英気を養ったそうです。大きな体格を生かした『ガッツ』あふれるプレーで、相手の攻撃を防ぎます!