【連載】『平成27年度卒業記念特集』 第58回 畑田峻希/ラクロス

男子ラクロス

頂点を目指す理由

 無情にも響き渡る試合終了のホイッスル。その瞬間、選手たちはフィールドにしゃがみ込んだ。その中で、唇をかみしめながらも、チームメイトと握手を交わし、肩を抱き寄せる選手がいた。ラクロス界でその名をとどろかせた畑田峻希(スポ=福井・若狭)だ。順風満帆に思われた競技生活。しかし、その終わりはあまりにもはかないものだった。必死に頂点を目指し続けた四年間。追い求めたものの先には一体何があったのだろうか。

 日本一を目指せる環境に魅了され、入部したラクロス部。初めは自分のプレースタイルを確立することに苦労した。自分よりうまい同期の姿を見て、「負けたくない」と必死に練習をする日々が続く。鍛錬を積み重ねた結果、2年生から関東学生リーグ戦(リーグ戦)に出場。下級生ながらチームを引っ張り、さまざまな賞を獲得した。そして、畑田の活躍は大学ラクロス界だけでは収まらない。3年時には最年少でW杯日本代表に選出され、世界相手にも得点を決めるなど圧巻のプレーを見せつけた。

主将、そしてエースとしてチームに貢献し続けた畑田

  そんな畑田にはある一つの目標があった。「ラクロスといえば畑田と言われるようになりたい」。2、3年時で経験した全日本選手権やリーグ戦ファイナルでの敗戦。悔し涙を流したその時、一番になることは容易ではないと思い知らされる。「どれだけ練習しても足りない」。悔しい気持ちが自らを奮い立たせ、苦しい時にも、日本一のプレーヤーになることを活力に、ラクロスを通して自分自身と向き合い続けた

 そして迎えたラストシーズン。新人戦や早慶定期戦など重要な試合で勝利を収めてきたチーム、そしてエース畑田の存在。多くの人が最後まで勝ち続けると信じていた。しかし、「自分の四年間を披露できなかった」と振り返るように、予想だにしなかった結末が訪れる。畑田はリーグ戦初戦で足を痛めると、3戦目の一橋大戦ではあばらを骨折してしまう。その後の明大戦でまさかのビハインドの展開。勝利のため強行出場した結果、無理がたたって悪化を招いた。チームはブロック戦を勝ち抜いてファイナル4に進出するものの、畑田が復帰したのは試合の3日前。万全の状態で慶大戦に臨むことができなかった。試合は一時猛追を見せるが、宿敵の術中にはまってそのまま敗北してしまう。

 まさかのファイナル4敗退に、試合後悔しさをにじませた畑田。だが、「未練はない」と競技生活を顧みる。「戦績だけでなく、人として胸を張れる集団になってほしい」。後輩に残したその言葉には、トップを目指し続けた畑田の思いが込められていた。関わった全ての人に、感謝の気持ちをプレーで見せる。そのことは、勝利にこだわった理由の大きな一つだ。畑田のラクロス人生のエンディングは、決して納得のいくものではなかった。しかし、日本一を常に掲げ、チームメイト、そして支えてくれた人たちのために、躍動した畑田の姿は多くの人の心に刻まれたであろう。四年間の誇りを胸に、畑田は新たな風に乗って、これからも夢へと挑み続ける。

(記事 後藤あやめ、写真 田島光一郎氏)