明大に力の差を見せられるが、目標の日本一に向けて成長を誓う

弓道

 伝統の一戦が今年も開催された。明治大学定期戦は他の試合とは形式が異なり、源平戦と紅白戦によって勝敗を決める。1戦目の源平戦。序盤はリードしていたものの、追いつかれてからそのまま差を広げられてしまい、153中-163中で1戦目を落とした。続く2戦目は明大の先鋒に3人が敗北し、明大有利の展開に持ち込まれてしまう。六峰の田沼翔太(スポ4=東京・桜修館中教校)が明大の次鋒から勝利を挙げるが、その後早大は勝利することができず、紅白戦も落とし0-2で負けが決定した。

  早明戦の始まりは源平戦だ。5人一立で、それぞれのチームが弐ノ立まで準備する。各大学が一立ずつ出して同時に行射し、立が終わるごとに射場を交互に変えながら合計200射の的中数を競う。早大の1立目は壱ノ立で平山侑紀(政経4=東京・早大学院)、神山勝冴(創理2=東京・早大学院)、多田匠吾(先理2=東京・早大学院)が皆中し、18中。続く弐ノ立も連続で的を外す場面もあったが、宮﨑滉巳(社2=埼玉・県浦和)の皆中もあって15中にまとめる。この時点で明大には3中のリードをつけた。この的中差を広げたい早大だったが、直後の2立目では壱ノ立が13中と芳しくなく、明大に追いつかれてしまう。「力負けした」という東海枝主将の言葉通り、早大が大崩れしたわけではなかったがじわじわと差を広げられ、最終的に153中-163中と10中の差をつけられての負けとなった。

神山がチーム最多19中を挙げた

 何とか巻き返したい早大は、2戦目の紅白戦に臨んだ。紅白戦ではそれぞれのチームが一人ずつ選手を出し、1対1で一立を競う。より的中の多い方が残り、負けた方は次の選手を出す。同中の場合はどちらの選手も退場する。相手の大将が敗北した時点で、勝ちが決定するという方式だ。早大は先鋒に、この日19中とチームで最も的中の良かった神山を立て、勢いをつけようと試みた。しかし明大の先鋒が、試合の流れを一気に明大に引き寄せる。早大の3人の選手たちも全員が3中と粘ったが、3度の対戦で全て皆中を決められ、早大は立て続けに三鋒まで失う展開に。次に出た四鋒の平山が同中で相殺となり、ようやく明大の先鋒を降ろすことに成功した。その後明大の次鋒に早大六鋒の田沼が勝利し、早大に初めて白星をもたらすが、明大の三鋒に田沼を含め3人が敗北し、早くも副将の黒羽航平(文構4=東京・早大学院)まで回ることになる。黒羽が同中相殺となり、早大の大将宮﨑と、明大の四鋒が対戦。2-3で宮﨑が敗北となり、早大の敗戦が決定した。

早大唯一の紅白戦勝利を呼び込んだ田沼

 「この1カ月間やってきたことを発揮する場」(東海枝)として臨んだこの明大定期戦。昨季早大は明大に勝利して1部リーグ残留を決めている。しかし現時点の早大では、選手層の厚さなどの地力が明らかに明大より勝っているとは言い難い。その地力が的中の数としてあらわになった定期戦だった。一人一人の的中は安定してきたが、1立ごとの的中にはばらつきがある。また前後の選手が連続で的を外す場面もところどころ見受けられた。早大は流派の所作上、他の大学よりも早く射に入る。つまり常に相手より先行して的中の結果を出していくことになるのだ。この場合当て続けることができれば、相手には大きなプレッシャーになるが、続けて外すと反対に相手に余裕を与えることになる。これらが改善されれば、より安定して高い的中をのぞめるだろう。今季も「日本一」を目標に掲げる早大が、ここからどのようにさなぎを割り開いて、成長を遂げるのか。期待は大きくなるばかりだ。

(記事、写真 新井沙奈)

※掲載が遅くなり申し訳ありません

結果

◇源平戦

【壱ノ立】

大前 田沼 20射14中

弐的 平山 16射12中

   佐藤 4射1中

中  神山 20射19中

落前 多田 20射12中

落  東海枝 20射15中

【弐ノ立】

大前 竹宇治 20射16中

弐的 沢田 20射14中

中  黒羽 20射18中

落前 河野 20射16中

落  宮﨑 20射16中

◇紅白戦 〇勝利 ●敗北 △相殺

神山●3-4

河野●3-4

多田●3-4

平山△2-2

沢田●0-2

田沼〇3-2

  ●2-4

東海枝●1-3

竹宇治●1-3

黒羽△3-3

宮﨑●2-3

●早大0-2明大

コメント

東海枝航平(スポ4=埼玉・県浦和)

――今日の試合を全体的に振り返ってください

 昨年とチームの状況が変わって、何人か頭一つ二つ抜けていた人と少し足りない人とで的中を相殺し合うという感じだったのが、底は上がりました。ですが逆に今まで的中を支えていた人たちが15、16中くらいになって、プラスを稼げていない印象です。ベースができ上がってきているので、そこに上積みできるようにやっていければリーグ戦で130、140中は狙えるところにはいると思います。今日の試合は最初は良かったのですが、明大に追い付かれてから崩れてしまって。追いつかれた焦りがあったのかもしれないですが、力負けしたなというのが正直な感想です。

――この定期戦はチームの中でどういった位置づけをしていましたか

 ちょうど1カ月前くらいにシーズンインをしたので、この1カ月間やってきたことを発揮する場として考えていました。もちろん勝つことも目指しますが、取り組んできたことを発揮することを意識してやってほしいということは、部員たちに伝えていました。数字的には上がっている人もいればもう少し踏ん張ってほしいなという人もいて、だんだん競争関係もできてきているので、これから良くなっていくんじゃないかなと思います。

――主将である自身を2立目の落に入れなかったのには、何か意図を持っていたのですか

 監督ともお話をしながらなのですが、僕と田沼が一年生の頃から同じ立でやってきたというのがまずあります。あとは昨年から竹宇治、宮﨑が当たるようになってきて、来年も考えつつ大前と落のペアを考えました。できれば2年生も新しく作りたいなと思っています。田沼が1立目の大前というのは僕の中で揺るがないですし、チームとしてもそのイメージは強いと思うので、そのペアを崩さずにやっていきたいというのがありました。それから、宮﨑はキャラクター的にも落に向いていると思うので、ぜひ任せたいと思ってこのような感じにしています。

――今日の自身の射はどうでしたか

 ここ1カ月間僕と田沼はほとんど試合に出ていなくて、経験を積ませたい人をメインで試合に出していたので、思ったより試合で当たらなくなっているなという感じでした。練習でも自分の練習よりは、部員の練習を見るということも多かったので。しっかりと当ててチームを引っ張りつつ、技術的な指導も行うというのが主将、副将としては一番だと思うので、練習量が足りなかったというところで反省しないとなと思います。

――チームの中で改善していくところはありますか

 今まで試合に出ていなかった人たちが、7~7割5分くらいで当たるようになってきたので競争意識も持ち始めていますし、これまで試合に出ていた人も刺激されているので、このまま順調に進めば全体的に上がってくると思いますし、勝てる試合も増えてくると思います。

――今季の目標と意気込みをお願いします

 まず日本一というところで選抜(全国大学選抜)とインカレ(全日本学生選手権)はしっかり取りにいきます。あとは王座(全日本学生王座決定戦)があります。王座に行くにはインカレ優勝かリーグ戦で勝つかしかないので、王座を見据えつつ、日本一に向かっていきたいと思います。チーム全体としては今出ている人は四年生が多いので、自分の代だけではなくて下の代も育てつつ強いチームを構築していければと思っています。

神山勝冴(創理2=東京・早大学院)

――今日の射の振り返りをお願いします

 今日は自分のやりたいことができた矢が多かったかなと思います。一本抜いてしまいましたが、それは注意していた部分はだいたいできていたのですが、他の足りないところが出てしまったという感じでした。もっと詰め切れるように練習していきたいと思います。

――どんなところに注意して引きましたか

 もともとすごく早かったのですが、その早気をオフシーズンで結構改善できていて、早いことが原因で外す矢はなかったのでそれは良かったと思います。ですが今度は矢が下に向いてしまうようになったので、それを気を付けるようにしていました。下に抜く矢がなかったのは、今回の試合の大きな成果だと思います。

――このところの調子は良かったのですか

 試合ではだいたい8割くらいの的中率だったので、オフシーズンに入る前に比べれば的中は上がったなと思います。

――先鋒も務めましたが、紅白戦はどうでしたか

 最近的中が出始めていて、今回調子が良さそうだということでその流れで皆中してこいと送り出してもらいました。二本目で外してしまって、でももしかしたら相手が外してしまうということもあるので、最後まで詰め切ろうと思って引きました。

――今季の意気込みをお願いします

 一回は皆中賞を取れるように頑張ります。