東京都学生連盟リーグ戦(リーグ戦)の入れ替え戦が行われた。早大は目標とする1部昇格をつかむため、中大と法大との三つ巴戦に参戦。先攻を取った早大はその利を十分に生かし、1立目で16射皆中を出して後の2校にプレッシャーをかけていく。2立目以降も、大前の山野桃果(先理4=東京・吉祥女)と弐的の山﨑琴葵(社2=東京・早実)を中心に安定した射を披露して、1立目でつけた的中差を守って試合を優位に運んだ。早大が5立目を終えた時点で中大、法大共に逆転が不可能となり、この時点で早大は念願であった1部昇格を実現させた。
早大がずっと目標に掲げ続けた1部まで、あと1勝。試合は早大の4選手が放った、16本の矢によって大きく動いていった。試合前のくじ引きで先攻を取った早大は、1立目から驚くべき集中力で、大前の山野から落の藤井千裕(スポ2=山口・宇部フロンティア大香川)まで流れるように的中していく。そのまま早大は16射を全て射止め、これ以上ないかたちで射場を後にした。後ろを引く2校は、1本でも外せば1立目からリードを許すという状況で、その重圧からか中大11中、法大12中となり、1立目から早大が大きく一歩を踏み出した。
大前として試合を作った山野
2立目以降は早大の安定した射が本領を発揮した。特に山野と山﨑の安定感は強く、二人が流れを作り落前の武川衣万里副将(スポ4=山口・宇部フロンティア大香川)と藤井がそれに続いていった。2立目の1本目で武川がこの日チームで初めて的を外すものの、その後しっかりと修正し3中と役割をこなしていく。2、3立目は山野と山﨑の皆中、武川の3中がありそれぞれ13中を出す。法大は10中を切る立が続いていたが、中大は早大と同じく13中を出しており、試合中盤で的中差を広げることはできなかった。
早大の4立目では山﨑が皆中、武川が3中だったが、ここまで皆中だった山野が2本目で外すなどがあり12中となる。中大が13中を出したことで、的中差が4中に縮まってしまった。次の5立目で13中以上を出せば、他大の結果を待たずに1部昇格が決定する。その最終5立目は3本目までおおむね順調に的中を重ねていたが、自身の20射皆中が懸かった4本目を弐的の山﨑が惜しくも的中させられず、残り2射で11中という状況に。落前の武川が落ち着いて1中を決めると、2立目から思うように的中が出ず苦しんでいた落の藤井が最後の一本を的に入れ、勝利を決める的音が射場に響いた。これによって他大の結果を待たずに、早大が1部昇格を勝ち取った。最終結果は早大67中-法大48中-中大60中となり、60中以上を出し続けてきたリーグ戦の中でも、最高の67中という結果で今季を締めくくった。
チーム最高の19中で勝利に貢献した山﨑
「100点満点」(井上采香主将、文構4=東京・吉祥女)という言葉がふさわしい試合展開を見せてくれた。先攻でいきなり16射皆中を出して試合の流れを掌握し、67中という高い的中で1部昇格をつかんだ。先攻の利点として良い的中が出せれば相手にプレッシャーを与えられるが、その一方で欠点としてはもし的中が振るわなければ相手に勢いを与えてしまうことになる。その難しい状況を早大は完全に味方につけた。1立目の早大は的を外すという想像がつかないほどの高い集中力を見せ、それは試合の流れと射場の空気を変えるのには十分だった。そしてその後も安定した的中を続けて、最終的には他大の結果に寄らず自分たちの力で1部への道を開いたのだ。このシーズン中は練習でできていたことが、本番で発揮できず苦しむ場面も何度もあった。しかし、その経験の一つ一つが選手たちを強くした。上手な弓引きはたくさんいる。しかし上手なだけではなく、強い弓引きでなければ上手な弓引きたちがそろう中で勝ち上がっていくことはできない。早大はこの1年で一段と強くなった。しかし1部には、そして全国にはさらに強い弓引きたちがいる。来季また新しく、そしてさらに強くなった早大が見られるのが楽しみだ。
(記事、写真 新井沙奈)
※掲載が遅くなり申し訳ありません
結果
大前 山野 20射18中
弐的 山﨑 20射19中
落前 武川 20射16中
落 藤井 20射14中
〇早大67中-法大48中-中大60中
コメント
井上采香主将(文構4=東京・吉祥女)
――今日の試合を全体的に振り返ってください
もう言うことなしです。100点満点ですね。それに尽きます。早稲田にいることをすごく誇りに思いました。
――各大学がここに合わせて調整をしてきている中で勝ち切れた要因は何だと感じていますか
今までの積み重ねの結果かなと思っていて、昨年や一昨年はアウェー戦や試合になると崩れるということもあったのですが、今年1年通して練習の的中がホーム戦でもアウェー戦でも試合で出るようになっていて、それは確かな自信になっていたなと思います。それから追い詰められてからの強さというのをすごく身に付けたなと思っていて、例えば最初の滑り出しで的中があまり良くなかったとしても、最終的には60中以上に乗せて目標を達成するということができていたので、ほんとにみんなの努力の結果だと思います。あとは強気で、気持ちで勝てたかなとは思います。
――1年主将として戦ってきた中で、1部昇格をつかんだ今の気持ちを聞かせてください
もうただただ嬉しいですね。大変なこともたくさんあったし、辛かったこともたくさんありましたが、その時その時で毎回監督やコーチ、いろいろな人に助けていただいて。あとはもう後輩たちが頑張っている姿を見せてくれることで、私をものすごく励ましてくれていたので、最後1部昇格を決めて引退できるというのは幸せ者だなと思います。
――後輩たちに伝えたいことがあれば、お願いします
今年は選手として出る人が結構限られている部分がありましたが、今年1年でみんなすごく射は良くなったと思っていますし、今日の入れ替え戦を見て試合楽しいなって思ってくれたと思うので、試合は楽しいものだと思って、自信を持って果敢に挑んで1部でも優勝してほしいです。
山野桃果(先理4=東京・吉祥女)
――今日の射について振り返ってください
前回のリーグ最後の試合から今日までにかけて、少しやることを変えてずっとやってきていました。それをまだ試合でやったことがなかったので少し不安はあったのですが、やることを決めて練習でもうまくいっていたので、それを信じて、あとは会と残心を頑張ろうと決めていました。今日はコンセプト的には後悔がないようにというのがあって、決めたことができれば、もし当たらなかったとしても後悔はないだろうなと思っていたので、決めたことも全部やり切れて、満足のいく射だったと思います。
――調整は順調にできたということですか
そうですね。いつもだとガクンと下がってしまう時があるのですが、やることが決まっていて落ち着いてできたので、順調にやることを確認していい流れで今日に持ってこられたと思います。
――以前このチームが1部に上がるチャンスだとお話されていましたが、実際に昇格を決めた今の気持ちはいかがですか
ようやく上がれたなという感じです。ぎりぎりであまり良くない的中で上がったとか、自分の射には満足いっていないけれど上がれたというよりは、満足のいく射でみんなが当たっていいチームの状態でしっかり差をつけて勝てましたし。ただ上がれたというだけでは後悔が残るかなと思うのですが、そういうことなくしっかり上がれて。自分も弓道は終わりなので、すんって(笑)いい気持ちで終われて、しかも後輩たちに1部昇格したというのを残していけるというのは、自分が4年間やってきた中での目標を達成して終われるので、個人としてもチームとしても良かったなと思います。
――大学4年間の弓道は自身でどう振り返りますか
ほとんどずっと大前で引かせてもらって、早稲田の大前だとちゃんと言えるような、早稲田の大前として恥ずかしくないような自分の射でいようと思って、それをずっと継続してきました。最後もリーグ戦でしっかり大前で全部出て、入れ替え戦も大前でしっかり当てて終われたというのは、集大成の試合だったなと思います。今までもずっと頑張って会をもとうとか、残心を決めようとか、やることをやり切ろうとか思っていても、何本かはできない矢があったりしました。今日は外してしまったのもありますがそういう嫌な抜き方ではなかったですし、大前で終われたというのもありますし、いい的中で終われたましたし。4年間周りや指導陣の方が大前で引かせてくれたのもありがたいですし、自分もよく頑張ったなあと(笑)、自分で自分を褒めて終われることが一番良かったと思います。
山﨑琴葵(社2=東京・早実)
――今日の射の振り返りをお願いします
リーグの5週目が終わってから3週間空いたのですが、その3週間で自分の中で射をもう一度見つめ直して、これを直そうとかこうやって引こうとか一つずつやっていったことがこの1週間で固まってきていました。それを今日の試合で出し切れたので、自分の中では納得のいく射になりました。
――どのような意識で今日の試合に臨みましたか
先週から今週にかけてだんだんと仕上げていったので、先週と今週が一番調子が良くて、先週なんかは20射皆中も2回出したり19、18中など高い的中が出ていたので、そんなに不安はなく、いつも通り自分の中で落ち着いて引ければ大丈夫だという自信にはつながっていました。リーグの最後の試合で、4年生の先輩方と引く試合も最後だという意識があったのでプレッシャーを感じると同時に、そこで気負いすぎてしまうといつもの自分の射と違ってしまうので、普段通りに落ち着いて引こうと考えていました。
――今季全体を振り返って自己評価をしてください
昨年の自分と比べたら確実に成長したなと思っていて、例えば伸び合いの習得は絶対に昨年より身に付いてきたし、弓手も昨年よりも自分の中でこれだと思える弓手に近づいていて、射型としては成長しているなと感じました。その一方で大事な試合では思うように的中が振るわなかったり、思うように自分の力が発揮できなくて結果につながらなかったり、精神面で気負いすぎてしまったりして、自分にプレッシャーをかけすぎたというか、悔しさの残る試合は多かったです。
――来季はどのように取り組んでいきたいですか
個人としてはまだまだ課題も多いので来季に向けて、こいつに任せれば大丈夫だくらいの安心感を与えられる選手になりたいというのと、射の面でももっと成長して綺麗な射型を身に付けたいというのもあります。チームとしては4年生も抜けてしまうし、今までは先輩たちに助けてもらうこともすごく多かったですが、学年も上がって今度は自分も上級生になるので、自分のことだけではなくて周りの選手や後輩たちのこともしっかり見ていけるように、視野の広い選手になりたいと考えています。