三大学定期戦の最終日、早大は強豪関大を迎えて対戦した。女子は現状のベストメンバーで臨んだが、一度ついた的中差を縮められないまま最終立を迎える。ここで一気に逆転し、目標の60中には届かなかったものの三大学定期戦で初の勝利をつかんだ。男子は抜きつ抜かれつの接戦になった。こちらも最終立で的中差を広げて、難しい試合をものにした。特に弐ノ立の安定感が際立ち、また小熊悠人(政経3=東京・早大学院)が公式戦で初めて20射を引き通すなど、新しい戦力を多く出すことができた三大学定期戦であったと言える。
先に行われた女子の試合では、この三大学定期戦を通して初めて早大は現状のベストメンバーをそろえたが、1立目は皆中者なしで10中となり、12中を出した関大に最初から差をつけられてしまう。そしてこの2中差が試合終盤になるまで、数字以上に大きな差として表れてくる。先攻を取っていた早大は続く2、3立目でそれぞれ12中、10中を出すが、後攻の関大も全く同じ的中数で一向に差を縮めることができない。早大は4立目に亀卦川響主務(法3=東京・早実)を投入して流れを変えようとするが、ここでも関大と同じ的中数で、最初につけられた2中差を全く動かすことができないまま最終立に入ることに。後に引く関大に少しでもプレッシャーを与えるような射をしなければならない早大は、井上采香主将(文構4=東京・吉祥女)を入れて流れを引き寄せたいところ。12中を出して関大の結果を待っていると、関大は9中。早大は最後に逆転して54中-53中とし、今年度の三大学定期戦で初めての勝利を手にした。
3試合すべてに出場した山﨑琴葵(社2=東京・早実)
一方の男子は関大相手に大接戦を繰り広げた。早大は壱ノ立は下級生を中心に、弐ノ立は上級生を中心に立を構成して試合に臨んだ。1立目、壱ノ立では大前の竹宇治雄介(政経2=東京・早実)と落の宮﨑滉巳(社2=埼玉・県浦和)の2年生コンビが奮闘。そろって皆中を出し11中とするものの、関大は13中でこの時点で2中の差をつけられてしまう。ただこの試合での早大の弐ノ立の存在感は大きく、13中をあげすぐに逆転に成功し、この立を24中-23中と1中リードで終えた。2立目は弐ノ立の3人が皆中したこともあって、関大の猛追を逃れる。しかし3立目で追いつかれ、同中で後半戦を戦うことに。ここで途中出場の佐藤我音(先理1=東京・早実)を含め壱ノ立のうち3人が皆中し、貴重な1中のリードをもたらした。最終立では、この立から出場した酒井駿輔(文構2=東京・海城)など合わせて4人の皆中者を出して逃げ切り、120中-116中と4中差の接戦を制した。
公式戦で初めてフル出場した小熊
男女両方とも展開は違えど、苦しい戦いを勝ち切った。女子は相手に先行される展開の中、差を広げさせない粘り強い射で最後の逆転につなげた。試合続きで選手たちも決して調子が良くはなかった中で、勝ち切れたということは今後の大きなプラス材料になるだろう。男子も1立ごとに目まぐるしく順位が変わる中で、チームとして戦い抜くことができていた。立の中で誰かが崩れたとしても、他の誰かが補うことで立全体が崩れることを防ぎ、どちらかの立がうまくいかなくても、もう一方の立が相手に追いついた。「競った場面が多くてプレシャーのかかる1本が多かった」(小熊)中で、その1本を一人一人が乗り越えていった結果が、この二つの勝利につながっている。3連戦で疲労も溜まる中、三日間出場し続けてチームの勝利に貢献した選手が何人もいた。特に竹宇治は3試合全て19中と大車輪の活躍だった。また一方でこの試合での小熊をはじめ、公式戦で初めて20射を引き切った選手も何人もいた。これはそれぞれの選手たちの自信につながるだけでなく、チーム全体の自信になる。これから始まるリーグ戦は、勝たなければいけない戦いだ。勝たなければ1部昇格も1部で順位を上げていくこともできない。この戦いを経て強く大きくなった早大が、その射で勝利をつかむことに期待したい。
※掲載が遅れてしまい申し訳ありません
(記事、写真 新井沙奈)
結果
【女子】
大前 山野桃果(先理4=東京・吉祥女) 20射14中
弐的 山﨑 20射17中
落前 武川衣万里副将(スポ4=山口・宇部フロンティア大香川) 12射7中
亀掛川 4射1中
井上 4射2中
落 藤井千裕(スポ2=山口・宇部フロンティア大香川) 20射13中
○早大54中-関大53中
【男子】
壱ノ立
大前 竹宇治 20射19中
弐的 神山勝冴(創理1=東京・早大学院) 8射3中
佐藤 12射6中
落前 渡部瞭太(文3=東京・海城) 16射8中
酒井 4射4中
落 宮崎 20射16中
弐ノ立
大前 黒羽航平(文構3=東京・早大学院) 20射17中
弐的 東海枝航平(スポ3=埼玉・県浦和) 20射16中
落前 小熊 20射14中
落 大澤暢主将(創理4=東京・早実) 20射17中
○早大120中-関大116中
コメント
小熊悠人(政経3=東京・早大学院)
――今日の射を振り返ってください
ここ二日間はずっと補欠で一回も出ていなかったというところで、せっかく出たからには爪痕を残さなければというふうに考えていました(笑)。3中を切らないということを目標にしていたのですが、最初の矢を外しがちだったり、守りに入った矢を外してしまったりと攻めきれない気持ちの弱さがありました。その一方で粘って当てきれた1本もあったと思っていて、どの立でもいい矢はありましたし皆中も一つ出せたというところで、得るものはあったかなと考えています。
――ではどちらかと言えば納得のいく射でしたか
うまくいったものは納得がいくのですが、それが出る確率がまだ調整しきれていないところがありました。7割の的中はチームでいうと下から3番目で、まだまだ物足りないところはあります。例えば弐の立で言えば17中17中16中が並んでいる中で、一人2本落ちて14中というのはやはり足を引っ張っています。あとは的中も立を重ねるにつれて尻すぼみになっていて、前半は良かったのですが後半は2中2中でした。これが逆だったら前半で交代になっていた可能性も大いにあるので、20射を引き切る力という部分でとても課題を感じました。
――公式戦でフル出場する機会はこれまであまりなかったと思います
そうですね、20射引き切ったのは今回が初めてで、今まで交代で出ることが多かったので最初から引けたのはシンプルに嬉しかったですし、その中で自分がどこまでできるかを試すことができました。その結果的中がだんだん落ちてくるといった、次につながるものが得られたのは良かったなと思います。
――試合に入ると緊張するタイプですか
緊張するんでしょうかね、こう守りに入るというか弱気になる部分があります。よくやることをやってというふうに言うと思いますが、やることをやり切れなかったというところが弱い部分かなと思います。
――リーグ戦に向けての意気込みをお願いします
今日は競った場面が多くてプレシャーのかかる1本が多かったのですが、リーグ戦になったらそういう展開が多くなってくると思うので、甘い1本が許されない状況になってきます。弱気とかのんきなことを言っていないでしっかり1本を詰められるように、どんどん後輩も育ってきているので切磋琢磨(せっさたくま)して高め合っていけたらと思っています。
山﨑琴葵(社2=東京・早実)
――今日の射を振り返っていかがですか
三大学定期戦の三日目ということもあり、集中力が途切れがちだったなと思っていて、それが顕著に抜いた矢に現れていたと思います。
――この3試合すべて出場していましたが、疲れなどはありましたか
多少の疲れはあったと思いますが、しっかり毎日気持ちを切り替えなおして、いっぱい寝て試合に臨みました。いい矢もたくさんあったのでそこまで疲れが射に影響したということはないと思います。それよりも早稲田を背負って試合に出ているんだという気持ちの方が大きかったです。
――チーム全体の結果としてはどう感じていますか
チームとして60中を目標にしているので、54中という結果は悔しい気持ちはあります。ですが引いている時はあまりチームの的中を意識していなくて、引くときは自分の射に集中して自分が当てることがチームの勝利につながると思っているので、終わってみたらという感じの方が強いです。
――ではやはりチームの勝利が嬉しかったですか
そうですね。前の2試合とも自分も出ていたのに勝利につなげられなかったので、今日の勝利は嬉しいなと思います。
――選手の皆さんもベストコンディションではない中で、この試合は厳しいなと思うところもありましたか
試合が始まる前からチームのみんなもそうですし、監督コーチも含めて関西大さんはとても強い大学だと思っていて、三大学定期戦最終日ということもあって私も気合いを入れて臨んでいました。厳しいと感じるときもありましたがそれを覆さないといけないので、流れの中でも自分は自分の射に集中して、悪い空気を引きずらないようにしっかり当てて流れを変えようと思いながら引きました。
――リーグ戦に向けて意気込みをお願いします
まず一番は早稲田の一員として、チームの1部昇格ために的中に貢献したいと思います。個人としては去年リーグ戦で都学(東京都学生弓道連盟)の的中3位になって東西(東西対抗戦)にいくことができたので、今年も十傑に入って東西に行くためにも頑張りたいと思います。
竹宇治雄介(政経2=東京・早実)
――今日の射の振り返りをお願いします
ここずっと調子は良かったのですが、今日に関しては的中は良かったのですが射に関しては甘い部分が出てしまった矢が多かったかなという感じです。今日は本当に当たって良かったという感じで、同じように引いたとしても少しでも甘くなれば外れてしまうということが今後絶対に出てくると思うので、そういうところは反省していきたいと思っています。
――この3連戦の全ての試合で19中という結果についてはどう感じていますか
結果については本当に満足していて、19中以上を目標にしてやっていたのでそれが達成できたのが良かったなと思います。当たらないと何も始まらないので、数字だけでも当てられたのは良かったと思います。
――全ての試合で大前でしたが緊張はしましたか
緊張はしましたね(笑)。特に最初に引く1本目は早大の1本目になるので、どうしても当てないといけないですし、特に関学大では先攻だったので絶対当てないといけない雰囲気の中で引いたので緊張しました。ただそこまでどうしようもないほどの緊張という感じではありませんでした。
――何度か大澤暢主将(創理4=東京・早実)に声を掛けられていましたが、どんなことを話しましたか
油断すると甘くなってしまって、インカレの団体、個人もですし、この3連戦も同じような抜き方をしてしまっていました。甘くなると抜くし、甘くならずに最後まで詰め切れれば当たるという感じだったので、それについて声を掛けていただいていました。
――リーグ戦への意気込みをお願いします
この的中のままいけるというふうには正直自分でも思えていないのですが、この三日間の的中をしっかり自分の自信にして、全部当てるんだというくらいの気持ちをもってリーグ戦に向かって練習していきたいと思っています。