日本一を決める戦いが始まろうとしている。今年の全日本学生選手権(全日本インカレ)では、8月10日(水)から同月12日(金)まで近的大会が東京・日本武道館で、同月13日(土)には遠的大会が東京・全日本弓道連盟中央道場で開催される。今回で70回の節目を迎えるこの大会で、早大弓道部はどんな射を披露してくれるのか。7月2日(土)、3日(日)に行われた個人予選では男子が5人予選を通過し、本戦へと駒を進めた。女子では前回の全日本インカレで個人2位の山﨑琴葵(社2=東京・早実)が、予選通過をつかみ取った。その個人予選の様子と共に今大会の展望をお届けする。
先に男子の個人予選が2日(土)に行われた。男子の通過基準は1次予選が2射1中以上、2次予選が4射皆中というものだった。男子は参加した26人中17人が2射1中以上を出し、1次予選を通過。ここからさらに4射皆中しなければ、個人本戦に進出することはできない。まず最初に通過したのは、この日全射的中した竹宇治雄介(政経2=東京・早実)。その後3年生の黒羽航平(文構3=東京・早大学院)、沢田潤一郎(文3=神奈川・南)、田沼翔太(スポ3=東京・桜修館中教校)、渡部瞭太(文3=東京・海城)が続々と皆中し、計5人が予選通過を決めていった。1年生の神山勝冴(創理1=東京・早大学院)も健闘したが、最後の1本が的に入らず悔しがる姿を見せた。神山以外にも2次予選で4射3中が5人おり、着実に選手層に厚みが増していることがうかがえる。個人戦はもちろんだが、団体戦も楽しみになってくる結果だと言えるだろう。
竹宇治と同じく全射皆中で予選を通過した渡部
翌3日(日)には女子の個人予選が行われた。女子の通過基準は1次予選が4射3中以上、2次予選が2射皆中で、1次予選から高い的中が求められた。そのため参加した15人のうち、1次予選を通過したのは6人にとどまる。2次予選に進んだ6人全員が1中以上の的中は残すものの、2本とも外すことができないという緊張もあり、2射皆中して本戦への切符をつかんだのは山﨑ただ一人だった。前回の全日本インカレで2位という成績を残した山﨑自身も、「もし抜いてしまったら、昨年の土俵にも立てない」と強い決意で臨んでいた。個人戦では、前回の自身を超えようと努力を続ける山﨑の射に注目したい。女子部全体として見ても1次予選では、ほとんどの選手が2中以上を出しており、選手層の底上げは確実に結果として表れている。選手たちが持っている本来の力を、本番でいつも通り出せるかどうかが団体戦のポイントになりそうだ。
今大会で個人優勝を狙う山﨑
またこの他にも遠的大会には男女4人ずつが出場する。男子は近的の予選を通過した田沼と渡部に加え、宮﨑滉巳(社2=埼玉・県浦和)と昨年のインカレ遠的大会で決勝射詰まで残った東海枝航平(スポ3=埼玉・県浦和)の二人が出場。女子は山﨑と共に2年生の藤井千裕(スポ2=山口・宇部フロンティア大香川)、3年生の亀卦川響主務(法3=東京・早実)、最後の全日本インカレとなる4年生の山野桃果(先理4=東京・吉祥女)の出場が決まっている。近的のみならず、遠的でも早大の躍進に期待したい。
今回の近的大会の個人予選ではコロナの影響を鑑みて、本戦会場での密を避けるために予選通過の基準が例年より高く設定されていた。もちろん大会に参加する選手に感染を広げないためにも、必要な措置ではあるのだろう。しかし従来の基準であれば通過していたが、今回の基準にはあと1歩のところで届かなかったという選手もたくさんいる。コロナの影響がまだ色濃く残る中でも、自身が目指す射のために奮闘し続ける弓引きたちの思いを乗せて、全日本学生選手権の幕が上がる。その中で早大の選手たちは、どんな『早稲田の射』を見せてくれるだろうか。
(記事、写真 新井沙奈)
結果
近的予選通過者
男子 黒羽航平、沢田潤一郎、田沼翔太、渡部瞭太、竹宇治雄介
女子 山﨑琴葵
予選後のコメント
沢田潤一郎(文3=神奈川・南)
――予選を振り返っていかがですか
最近はけがもあって調子が上がらない状態が続いていてという中で迎えた個人予選だったので、今の状態でどこまでいけるかなという感じで臨みました。射の内容も自分の中でそこまで良くはなかったので、運が良かったなという感じです。
――どういうところが今日の結果につながったと感じていますか
調子が悪かったなりに当たるポイントはあったので、そこだけは忘れなかったというところと、後は気合いですかね(笑)。
――2次予選で的中を重ねるにつれて、緊張は増しましたか
初矢は感覚も良かったのですが、2本目は当たらない矢がたまたま入ってしまった感じでした。それで逆に緊張はほぐれました。これが入るんだったらいけるかなみたいな感じでしたね(笑)。
――本戦に向けて意気込みをお願いします
1カ月開くので、それだけあれば調子も戻せると思うので、本戦に向けて当たっていた時の自分の射ができるようにしたいです。バージョンアップして本戦でいい結果が出せるように、練習に励んでいきたいと思います。
竹宇治雄介(政経2=東京・早実)
――今日の射を振り返っていかがですか
付け矢(本番前の練習)はすごくいい内容でずっと引けていました。試合に入ってからは、1次予選の1本目は怪しかったのですが的に入ってくれました。2次予選も多少危ない矢はありましたが、結果的に全部的に入ってくれたので良かったかなと思います。
――付け矢の調子が良かったと伺いましたが、ここ1週間で考えても調子は良い状態でしたか
ここ1週間は本当にこれまでの弓道人生の中でと言ったら言い過ぎですが(笑)、一番調子がいい状態でした。大学4年間で一番個人で通過するチャンスかなと思っていたので、通過できて良かったです。
――外から見ていて集中力が高いと感じましたが、ご自身ではどうでしたか
本当に射位に入ったら、的に当てるということだけに集中できていたかなと思います。
――どういった部分がうまくいって今日の的中につながったと思いますか
先週1週間ずっと調子が悪くて、全部的の下に矢が行ってしまう感じでした。先輩に指導をもらって、打起し以降の矢線のイメージを上の方に修正して、そこから入ってきてずっと伸び合うということを意識した結果として、今週はずっと調子がいいです。それが今日もできたかなと思っています。
――本戦への意気込みをお願いします
期間が開くので、今みたいな調子で1カ月いけるかと言ったらそうではないかなと思います。いかに浮き沈みの沈みの部分を抑えるかということが重要になってくると思うので、できる限りこの調子を維持して本戦でいいところまで行けるように頑張っていきたいと思います。
神山勝冴(創理1=東京・早大学院)
――今日の振り返りをお願いします
今まで通りのことができたかなとは思いますが、最後いつもの悪い癖が出てしまいました。そこは夏のしっかり練習できる時間に改善していきたいと思います。
――最後あと1本というところでしたが、緊張はありましたか
緊張というよりかは当てたいという気持ちが大きくて、やるべきことが頭の中からなくなってしまったというのが大きいかなと思います。
――調子は良かった方ですか
最近練習に来れていなくて、そのまま試合だったので調子はあまり良く分からないです。
――全関東学生選手権(全関東)の予選から成長を感じた部分はありましたか
ある程度試合慣れができてきたのかなという感じはありますね。裏試合で慶応とやった時に出してもらったのが、結構大きかったかなと思います。
――残念ながら通過はなりませんでしたが、今後に向けてどのように取り組んでいきますか
春に比べて秋の方が授業数が少なくなって、練習に参加する頻度が増えるので、もう少し実力が付けられるかなと思います。
武川衣万里副将(スポ4=山口・宇部フロンティア大香川)
――今日の射はいかがでしたか
自分の中でやるべきことはちゃんとできていたので、後はもう少し周りに気を取られずにしっかり集中できたら、1次で後ろに抜いた4本目の矢も2次で後ろに抜いた2本目も当てられたのではないかなというのは反省点ですね。
――予選はどちらとも止め矢を外していますが、どういった部分が影響したと考えていますか
2次予選は山﨑の皆中の拍手に気を取られてしまって、集中力が切れてしまったのが大きかったです。もう少し周りの環境に影響されずに、自分のやりたいことだけを考えてやったらたぶん当たったと思うので、簡単に言うと集中力が切れた感じですね。環境のせいにはしたくないですが(笑)。
――周りのことを除けば、やりたいことはできていたということですか
そうですね。教育実習から帰ってきて初めての試合でもあったので、緊張に勝てるかという不安はありました。ただ自分のやりたいことはできていたのでそこは良かった点として捉えて、次の試合では今日うまくできなかった集中力や止め矢が弱いところをしっかり改善していきたいです。
――大学最後の1年というところでこれからどのように臨んでいきますか
あっという間に終わってしまったなというのが大きくて、ただやっぱり最後までやり切るということは常に思っています。1日が終わる時も本当に今日はこれで終わっていいのかと考えますし、1日1日できることを考えながら成長していきたいです。最後には東西(東西学生選抜対抗試合)などもかかってきますし、そういったところに向けてもしっかり練習していきたいと思います。
山﨑琴葵(社2=東京・早実)
――今日のご自身の射を振り返ってください
今日は自分でやると決めていたことを一つ一つ実行して的に入った矢が多かったので、自分の中では結構納得しています。
――全射的中での通過ですが、全関東から変化はありましたか
この1週間で自分の中でこれで本当に当たるのかということを一つずつ確認していって、今日に向けて一つ一つ高めてきました。
――前回の全日本インカレでは個人で2位でしたが、インカレに向けての意気込みは強かったですか
はい。昨年のインカレ予選も6射全て的中して通過したのですが、そこから1年間練習しているので自分の中では大丈夫だという思いと、もし抜いたらどうしようという気持ちがありました。ここでもし抜いてしまったら、昨年の土俵にも立てないと思っていたので、緊張はしました。
――では自分自身でプレッシャーをかけて臨んだということですか
はい。絶対に今年こそは優勝したいと思っていたので、まずは予選をしっかり通過しないといけないなと自分にプレッシャーをかけていました。
――本戦に向けて意気込みをお願いします
全関東での日本武道館のアリーナでは自分の射が崩れてしまって、団体も個人もあまり的中が振るいませんでした。今回はそういうことがないように、試合で通用する射をできるように精度を高めていきたいと思います。
橋本美優(スポ1=東京・国学院)
――今日の射を振り返ってどうでしたか
最近は結構早気になってしまうので、納得のできない射が続いていたのですが、今日はしっかり伸ばせました。楽しく引くことができたので、通過はできませんでしたが良かったと思います。
――1次予選通過の立はどういったところが良かったと思いますか
今日はこれを意識するということを一つ決めて挑んだので、ずっとそこを意識してやれたのが良かったと思います。
――その意識したことが実際の射につながっていったということですか
そうですね。それが結果につながったと思います。
――2次予選は1本目で外すことになってしまいましたが、緊張はありましたか
結構ずっと緊張していて、もう足も震えていました(笑)。
――今日の結果をどのようにこれからの試合に活かしていこうと考えていますか
高校の時も弓道部だったのですが、大会では1本しか当たったことがなかったんです。大会で当てることが自分の中ですごく楽しいなと思うので、今後も自分が楽しみながら引いた結果いい射ができて、早稲田の勝利に貢献できたらいいなと思います。