格上明大に健闘するも、僅差で敗北

弓道

 長い伝統を誇る明治大学定期戦が、リモート形式ではありつつも無事に実施された。明治大学定期戦では、通常とは異なる三つの形式で試合を行い、先に2勝した方が勝利となる。早大はこの伝統の一戦に勝利し、全関東学生選手権や全国大学選抜大会に向けて勢いをつけたいところ。しかし、格上の明大相手に健闘するものの、3戦目まで駒を進めることなく敗北。敗北はしてしまったが、今回の僅差での勝負は次戦以降に向け収穫の多い試合となった。

 1戦目に行われたのは源平戦。通常の団体戦では同じチームの選手たちが同じ立で行射を行う一方、源平戦では一つの立で異なるチームの選手たちが交互に射る。ところが、今回はリモート形式ということで、通常の団体戦と同じかたちで行われた。前半は明大の好的中により、2立目を終えた時点で7中差を追いかける展開となった。そして迎えた後半、田沼翔太(スポ2=東京・桜修館中教校)、長沼俊太郎(社4=東京・早大学院)、陳歆宇(教2=中国・一零一高)の活躍もあり、3〜5立目では差を縮めることに成功。しかし、惜しくも明大には及ばず151―153の2中差で源平戦を終えた。

 

20射17中の活躍を見せた陳

 続いて2戦目に行われたのは紅白戦。1対1で各4射を射り、的中の多かったチームは選手を変えず、少なかったチームは次の選手に交代する。同中だった場合は、両チームとも選手が交代となる。10人ずつ選手を出し、一方のチーム全員が敗退するまで行われる。最初に射に臨んだのは源平戦でも活躍を見せた陳。見事皆中を決めるものの、相手選手も皆中を決め同中となり、退いてしまう。その後、2度の引き分けを挟み、相手のリードを許す展開となった。ところが、7立目で射に立った渡部暸太(文2=東京・海城)の活躍で逆転に成功。渡部は4射を4立行って、16射15中と意地を見せた。最後に田沼が大将として出てきた13立目、対戦相手も同じく大将の戸来洸太(明大)だった。二人は中学時代の同級生。「お互い高い的中率だったことで、お互い良い意識で、あいつには負けないぞという意識で引けたのが結果として出た」と田沼が語るように、3立連続で同中となる接戦を繰り広げた。それでも最後は戸来に軍配が上がった。16立目、2―3で惜しくも敗北し、試合が終了した。

 

逆転を決めた渡部

 伝統的な明大との定期戦。勝利は逃してしまったものの、源平戦では2中差、紅白戦では僅差での敗北であり、得るものも多い試合だった。試合後、西野敏哉監督(昭58商卒=神奈川・厚木)は「どこに勝負があるかわからない。一本一本を大事に」とコメントした。監督の言葉と、各選手が今回得た課題と自信を胸に、宿敵・慶大との定期戦に臨む。

(記事、写真 中村日菜美)

 

結果

▽源平戦

壱ノ立

大前 田沼 20射18中

弐的 大澤暢(創理3=東京・早実) 20射14中

中  善村泰成(教4=東京・早実) 20射14中

落前 渡部 20射16中

落  長沼 20射17中

 

弐ノ立

大前 東海枝航平(スポ2=埼玉・浦和) 20射15中

弐的 陳 20射17中

中  村岡晃輔(文構3=群馬・高崎)20射16中

落前 村上史哉(法4=熊本) 20射14中

落  本野凜太郎(人4=東京・國學院久我山) 20射10中

 

▽紅白戦

陳  △4―4

東海枝△3―3

善村 △2―2

村上 ●2―3

村岡 △3―3

本野 ●1―3

渡部 ○4―2

   ○3―2

   ○4―2

   △4―4

大澤 △3―3

長沼 ●3―4

田沼 △4―4

   △3―3

   △3―3

   ●2―3

 

コメント

渡部暸太(文2=東京・海城)

――格上の明大が相手でしたが、今回の試合全体を振り返っていかがでしたか

源平戦と紅白戦という形式でやっていて、源平戦は20射のいつもやっている立ということもあっていつも通りでやっていこうと思っていたのですが、甘い矢が1立に1本出てしまいました。源平戦に関しては消極的に抜いてしまって、気持ち的に負けてしまった部分があって後ろに2本、気持ち的には勝っていたが少し力が入り過ぎていて2本というのが今の反省です。源平戦についてはもっと気持ち的な部分をコントロールして、中心に集められるようにというのを意識してやっていきます。紅白戦に関しては、いつもとは違う形式だったのですが、今週1対1での自主練習を各自するようにと本野主将から言われていて、それをやっていて今まで負けたことがなかったので、自信を持ってやることができたと思います。自分的には、源平戦の20射の立の反省があって、その上で紅白戦に臨むことができたので、1本抜いてしまったのですが、それを全部生かし切れたと思います。

――紅白戦では4立続きましたが、勝ちが続くほどプレッシャーはありましたか

勝ちが続いていくとその後の相手は絶対に強くなっていくと思うので、2立目の1本目を抜いた後は、絶対に抜けないというプレッシャーはもちろんあって、結構疲れました。

――プレッシャーのある中、どのように気持ちを整えていましたか

自分のペースでというのが1番でした。僕は引くのがゆっくりなので、その時間にしっかり自分の気持ちを立て直して、いつも通りやれば当たるというのを心がけて、真ん中を狙って、少しミスしても的には入るかなという気持ちでいました。抜いてしまったら負けるけど、当てなければ勝てないので、しっかり当てるという強い気持ちでした。

――今後続いていく試合に向けて意気込みをお願いします

シーズン入ってから明大には結構こだわりというか、絶対に勝ちたいと思っていたので、その上で今日、敗戦というかたちにはなったのですが、自分の中で得るものはありました。今日の紅白戦のようなかたちでも絶対に抜けないというのを意識して、自分ができたというのを自分の中で自信にして、一立一立重ねていって、全て当てられるようにというのを今後の試合でもやっていきたいと思います。

田沼翔太(スポ2=東京・桜修館中教校)

――源平戦では20射18中の活躍、紅白戦では大将を務められましたが、どのような心持ちで臨みましたか

源平戦に関しては結構大前でずっと引いていたので、大前というのはわかっていて、紅白戦も昨日から大将になるかもしれないという話があったので、大役を務めるという気持ちもありました。けれど、やはり相手校が明大ということがあって、明大と早大がそもそもライバルという感じなので、明大にいる戸来が同期で仲も良くて、お互い高い的中率だったことで、お互い良い意識で、あいつには負けないぞという意識で引けたのが結果として出たと思います。

――紅白戦で相手と同中が続いていたときの心情はどうでしたか

同中でもつれこめたというのは、相手の大将が当たるのは知っていたので、3中出したときは正直ラッキーだなと思いました。自分が抜いたときにも、負けるにしても2―4で負けるのは格好悪いので、意地でも食らいついて、持った矢は当ててやろうという気持ちでできたのが、結果的に3―3でつなぎ止められたと思います。

――今回の試合を踏まえて、課題と次戦以降につなげていきたい点はありますか

課題としては、ケガの影響もあってあまり練習できていなくて、後半抜いてしまったのは体力的な部分が多かったので、これから試合で全関(全関東学生選手権)や選抜(全国大学選抜大会)で優勝するとなると何本も引かなければならないので、体力をつけるという部分と、疲れても気持ちで粘れるような射ができたらいいなと思います。これからの試合に向けては、明大や慶大などのライバルも絶対に上位に食い込んでくるので、学校としても、メンバーとしても、個人個人としても相手に負けないぞという強い気持ちを持って、西野監督もおっしゃっていたように一本一本大切にして、その1本を当てるという気持ちで引いていければいいかなと思います。